見えない明日に揺れる僕たちは

多田莉都

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第7章

Dance Dance Dance(Misaki with Aykaka) 2

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 次の日の朝、少し肌寒さを感じながら7時前に地区センター前に行ってみた。
 すると、自動ドアの前で彩夏が踊っていた。そして、もう一人の女子がいた。美咲だった。

「はい、ここで、後ろ、後ろ、4回、で、5,6,7,8、クルーって右回転、はい、右、左」

 彩夏の声に合わせて美咲が踊っている。
 流れている曲のテンポが本来の曲よりも少し遅かった。美咲に教えるためにBPMを変えているのかもしれない。テンポが違っても彩夏のキレは健在だった。そして美咲もその動きについていっている。

 美咲がこんなところで朝練をしていたなんて知らなかった。もしかしたら昼もこんな風に練習しているんだろうか。「人一倍、努力してるよ?」という彩夏の言葉が頭の中で蘇った。

 そして「あんな風にすぐうまくなれたらいいよな」と思っていた自分が恥ずかしかった。何も知らずに僕は何を言っていただろう。美咲だってこんなにも努力をしていたのだ。

 彩夏の放つ光を美咲も取り込んでいるみたいで、強い光になっているようだった。

 美咲は大変なはずなのに笑顔も浮かべていて、朝モヤの中だからか、普段とは違う笑顔に見えて、正直なところ僕はしばらく目を離せなくなっていた。僕の知らない美咲がそこにはいた。

 ふと我に返り、この練習風景も撮っておこうとスマホで二人を捉えていると、

「え……佑?」

 美咲が僕に気づいた。額に汗を浮かべて息を切らしたまま、こっちを見ていた。

「なんでこんな朝早くに歩いてんの……」
「彩夏から聞いたんだけど、オマエ、頑張ってんだなぁ……知らなかった。美咲、すごいな……」
「いや別にすごくないし」

 と淡々と言うと、美咲はそっぽを向いてしまった。彩夏は笑顔を浮かべたまま僕を見て、目で「わかったでしょ?」と訴えているようだった。僕は頷く。

「やるからには私は本気でやるよ? 彩夏とすっごいのやりたい。AC-BEの奴らにだって負けないぐらいなのを彩夏とやりたい」

 美咲がタオルで汗を拭きながら言った。その目から負けず嫌いな美咲の意志が伝わってきて僕は思わず笑みがこぼれた。
 
「うん。本当に美咲が子供の頃からやってたらヤバかったと思うよ」
「AC-BEでも選抜チーム入れたかな」
「行けたかもねぇ。美咲のレベルアップが本っ当に半端ないし」
「ま、そこは私の才能ってやつ?」
「自分で言うなぁ。調子乗りすぎ」
「えー、そう? 自分でもこんなにレベルが上がるって思わなかったんね。このペースなら来週には彩夏にも勝てそうな気がするよ?」
「気のせいだね。私に勝つなんてまだまだまだ無理。十年早い」
「彩夏も調子乗ってるじゃん」

 二人が楽しそうに笑った。僕は会話に入っていけないほど二人の会話は弾んでいた。
 美咲のレベルアップもすごいし、努力を重ねたのみ美咲本人で、そこは認めなければいけない。

「美咲はすげーうまくなったよ、マジで」
「でしょ? 見直した?」
「うん、ちょっと感動できるレベル。いや、彩夏ももちろんだけど。二人ともこんなにすごいんだって思った」

 僕は純粋に褒めたのに、なぜか二人は一瞬、お互いの顔を見合わせた後、大笑いをし始めた。

「何、急に褒めてんの? 気持ち悪っ」
「美咲の言うとおりだよ、気持ち悪い」
「なんなんだよ、オマエらぁ」
「ま、ダンスは私がなんとかするからさ、仕切りは頼むよ」

 彩夏が言った。美咲も隣で頷いた。
 
「佑のリーダーシップはすごいと思ってるよ、マジで」

 さっきの僕の言葉をわざとらしく真似をしたように美咲は言った。
 「やれやれ……」と僕もわざとらしく息を吐く。
 
「しょうがないからやってやるよ、足引っ張るなよ」
「期待してる」
「失敗許さねーぞ」

 つい数日前までギクシャクしていたはずだったが、もうそんなことは忘れてしまいそうなぐらい朝焼けの中で僕らはにぎやかしく笑った。
 差し入れで持ってきたスコーンを三人で食べながら、文化祭は絶対に成功させたい、させなければいけないと僕は思った。


 ただ、少し不安に思うこともあった。
 美咲やメンバーたち一人ひとりのために彩夏はここ最近、多くの時間を割いている。彩夏にかかる不安は相当なはずだ。このままのペースで大丈夫なのか、そこが心配だった。
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