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Scene 3
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里依紗がアメリカから帰国後に学生時代の友人と結婚し、更に月日が流れた。
自分の幼い娘の微笑みに母の面影を見い出したことも記憶に新しい、そんなある冬の終わりのことだった
雪音の自宅に綺羅が訪れた。
ドアを開けると、制服姿の綺羅が神妙な顔つきで立っていた。
「雪音さん」
いつも底抜けに明るい綺羅とは思えない低い落ち着いたトーンで名前を呼んだ。
「はい」
雪音が返事をする。
綺羅は頭を下げ、両手で何かを小さなものを差し出した。それは一通の白い封筒だった。その封筒が意味することを雪音は知っていた。
「旦那様の……藤井亮介さんが現世を去られました。魂の評価の結果、亮介さんはこの天国へやってくることになりました。これは……現世で奥様であった雪音さんへの通知書です」
つい先日、亮介は息を引き取った。
里依紗と孫娘の彩音に見送られ、亮介は安らかに現世での時を終えた。眠るようなその終わりに雪音は「お疲れ様」と涙ながらに見送った。
その場面を思い出し、雪音は少しばかり記憶の海に陥っていたが、「雪音さん?」という綺羅の声でハッと我に返った。
差し出されたままの封筒を雪音は両手で受け取り、綺羅へと頭を下げた。
「お忙しいところ恐れ入ります。謹んで受け取らせていただきます。ありがとうございます」
その口上は天国ではよく見かけるものだった。
パートナーが現世を去ることになった場合、このように通知書が元パートナーの元に届く。既に現世を去る瞬間までを見ていた雪音は亮介の死を知っていたが、こうして通知書を手にすると事の重さを尚更に感じた。
長い間、天国で待ち続けてきた雪音にとっては待望のときではあるが、現世を去る瞬間を見ることは身が引き裂かれるような思いだった。
「これからですが……、雪音さんがこの世界でも亮介さんを待っていることを天国の案内人より伝えられます。この町で暮らしていることも雪音さんの同意を得ていますので伝えさせていただきます。その結果、亮介さんがどう判断されるかは……いかなる理由があってもお伝えすることはできません。もっとも私たちもその答えを知る方法もなく……あくまで案内まで……中途半端で申し訳ないです」
「はい。そのことは……存じ上げています。私は亮介さんを待ちます」
その言葉を聞いて、綺羅はもう一度、頭を下げた。
「綺羅ちゃん」
「え、はい」
急に名前を呼ばれて綺羅が頭を上げた。綺羅の目には雪音の柔らかな微笑みが映った。
「つらいお仕事ありがとう。感謝するよ。でも……ここからはいつもみたいに話してくれる?」
雪音のその言葉に綺羅は「はい!」といつものように明るい笑顔を見せた。
封筒をそっと上着のポケットにしまい、一度目を閉じて、心の波を落ちつけてから、雪音はまた目を開けた。
自分の幼い娘の微笑みに母の面影を見い出したことも記憶に新しい、そんなある冬の終わりのことだった
雪音の自宅に綺羅が訪れた。
ドアを開けると、制服姿の綺羅が神妙な顔つきで立っていた。
「雪音さん」
いつも底抜けに明るい綺羅とは思えない低い落ち着いたトーンで名前を呼んだ。
「はい」
雪音が返事をする。
綺羅は頭を下げ、両手で何かを小さなものを差し出した。それは一通の白い封筒だった。その封筒が意味することを雪音は知っていた。
「旦那様の……藤井亮介さんが現世を去られました。魂の評価の結果、亮介さんはこの天国へやってくることになりました。これは……現世で奥様であった雪音さんへの通知書です」
つい先日、亮介は息を引き取った。
里依紗と孫娘の彩音に見送られ、亮介は安らかに現世での時を終えた。眠るようなその終わりに雪音は「お疲れ様」と涙ながらに見送った。
その場面を思い出し、雪音は少しばかり記憶の海に陥っていたが、「雪音さん?」という綺羅の声でハッと我に返った。
差し出されたままの封筒を雪音は両手で受け取り、綺羅へと頭を下げた。
「お忙しいところ恐れ入ります。謹んで受け取らせていただきます。ありがとうございます」
その口上は天国ではよく見かけるものだった。
パートナーが現世を去ることになった場合、このように通知書が元パートナーの元に届く。既に現世を去る瞬間までを見ていた雪音は亮介の死を知っていたが、こうして通知書を手にすると事の重さを尚更に感じた。
長い間、天国で待ち続けてきた雪音にとっては待望のときではあるが、現世を去る瞬間を見ることは身が引き裂かれるような思いだった。
「これからですが……、雪音さんがこの世界でも亮介さんを待っていることを天国の案内人より伝えられます。この町で暮らしていることも雪音さんの同意を得ていますので伝えさせていただきます。その結果、亮介さんがどう判断されるかは……いかなる理由があってもお伝えすることはできません。もっとも私たちもその答えを知る方法もなく……あくまで案内まで……中途半端で申し訳ないです」
「はい。そのことは……存じ上げています。私は亮介さんを待ちます」
その言葉を聞いて、綺羅はもう一度、頭を下げた。
「綺羅ちゃん」
「え、はい」
急に名前を呼ばれて綺羅が頭を上げた。綺羅の目には雪音の柔らかな微笑みが映った。
「つらいお仕事ありがとう。感謝するよ。でも……ここからはいつもみたいに話してくれる?」
雪音のその言葉に綺羅は「はい!」といつものように明るい笑顔を見せた。
封筒をそっと上着のポケットにしまい、一度目を閉じて、心の波を落ちつけてから、雪音はまた目を開けた。
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