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しつこいです
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次の日
わたしはいつも通り仕事に行く。
「おー。おはよう。
ユエさん神殿での呼び出しはちやんと行ったのかい?」
「あっおはようございます。
ええ。ちゃんと出てきましたよ。」
「そうかい。帰ってきたと言うことは巫女にならなかったんだね~
巫女になったら高待遇だから、ここより給料いいんじゃないかな。」
「ははは。まぁそんな世界とは無縁だったってことですよ。わたしはここでの仕事が好きですし、これでよかったんですよ。」
「そうかい?じゃあ今日もよろしく頼むね。」
「はい。」
世の中身の丈にあった生活っていうのがいいと思う。
前世での神殿でも贅沢な装飾はされていた。当時は流石に私利私欲には走ってなかったけど、とても信仰に熱い人たちだった。当時のあの神殿の世界は異常だった。力を弱らせないために一族間での近親婚なんかはざらだった。それだけあの中は異常だった。掟にガチガチだった。裏切り者も絶対許さないほどに…
昔のことを思い出し、気が沈むので仕事に打ち込むことにした。
今日はカウンターでの業務だ。
貸出や返却の受付をしていると
下を向いて作業していたところに影がさした。
「こんにちは。お嬢さん」
「……」
「えっと昨日会ってるけど覚えてる?」
「………人違いではないでしょうか?」
「えっいや昨日会ったでしょ⁈
洞窟でさ!」
「いえ…
わたし昨日のことはよく覚えてないのです。」
「はい?」
「あの仕事がありますので、御用がなければお引き取りください。」
「えっ⁈」
もちろんこの人のことは覚えている。どうしてとぼけてるかって?面倒だから。昨日のこと絶対聞くでしょう。巻き込むでしょ?
このまま知らぬを貫いてこの人には帰ってもらいたいのだけど…
「これはこれは領主様ではないですか。
今日はどうされたのです?」
えっ領主…流石にびっくりだ。
わたし不敬者だな…捕まるかも…
しかし、館長!いつも部屋にこもってるのになんで今日に限って出てくるんだよ!
「どうも館長。
近くを寄ったものだからね。寄らせてもらったところ、この子が目に入ってね。つい声をかけてしまったんだよ。
館長この子少し貸してもらえないかな?」
⁈チャラい発言でこのままわたしを連れて行く気か!
「わたし仕事が「構いませんよ。」……」
館長…恨みますよ。
**********
領主様とわたしは近くのカフェに行くことになった。
道中周りの目線がまとわりつく。
この人、すごく人目引く!
注目集まってる!
たしかに見目はいいよね、金髪に綺麗な紫の目。何よりイケメンだ。
わたしは少し距離をとってついていくことにした。
「さて、やっと落ち着いて話ができるね。昨日も神殿に戻ったら君いないんだもんね。」
カフェに着いたはいいが、領主様は他に話を聞かれたくないのだろう。店員に個室を用意してもらっていた。
わたしはしばし付き合うしかないのだろう。
情報は最低限に。
この人と深く関わるのはまずいのだ。
「まず、改めて自己紹介を。
わたしはユエと申します。あの図書館で勤めておりまして、なんの取り柄もない小娘でございます。」
「小娘ね…
では俺も返さねばね。
俺はアトス。
アトス・ヴェーヌス。ここの領主だ。
さて、ユエさん。
君は昨日のことは覚えていないのかな?」
「………申し訳ございません。覚えています。」
一応観念したそぶりは見せとこう…
「うん。よかった。
話ができそだ。
君は神殿に入るのを拒んだと聞いたのだが間違いないんだよね。なんで?」
「はい。ズバリ言いますが、面倒だからです。」
「え?面倒?」
「はい。
わたしは規則だの規律だのに縛られるはごめんなのです。
わたしは今こうして、仕事を得て自分で生計を立てております。この生活が気に入っております。
いきなり降って湧いた神殿での生活など許容できません。」
「はぁ。こんなこと言う子初めてだな。
まぁ自分がしっかりしてると言うのか…
でも、浄化はしてくれるんだね。祠でだけど。」
「はい。それもあのマダム…もとい貴婦人の方にそのように話はついております。
領主様ならお聞きになっているのでは?」
「うん。あの人俺の母なんだよ。」
マダム…領主様の母だったのか…
「では、わたしに確認に来なくてもよかったのではないですか?」
「やっと現れた巫女だからね。
俺としても管理する者として話しておきたかったって言うのもあるんだよ。
君、呼んでも僕の城にも来なさそうだったからね。」
「特に…行く理由がありませんね。」
「君になくても俺は君のことをもっと知りたいと思っているよ?」
「気にかけていただく必要はありません。
確認が取れたのでしたらわたしはもう仕事に戻りたいのですが。」
「ああ、今日はこれ以上引き止めるのもよくないね。
改めて城に来て話をしようじゃないか。
ね?」
なんで繋げようとするのよ。
「…………仕事に差し支えなければ…」
「じゃあ館長宛に君の召喚命令出すことにするから、大きな顔で出てきたらいいよ。」
「目立ちたくないのですが…もうちょっと穏便に…」
「うん?じゃあ城での書庫の整理依頼とでもしようか?
それでどう?」
城に呼ぶのは決定なのか…
ぐいぐいくるなこの人。
「呼ぶのは一回だけですよね?」
「一回で済むかは君次第かな?」
「くっ…要件が終わればわたしは元の仕事に戻ります。今の生活を乱したくありませんので、これはわたしからの条件です。」
「本来、君が俺に条件出せる立場ではないんだけどね。
足元見られてるみたいだし、ここは了承としておくよ。」
「…ありがとうございます。」
この人食えない…
わたしはいつも通り仕事に行く。
「おー。おはよう。
ユエさん神殿での呼び出しはちやんと行ったのかい?」
「あっおはようございます。
ええ。ちゃんと出てきましたよ。」
「そうかい。帰ってきたと言うことは巫女にならなかったんだね~
巫女になったら高待遇だから、ここより給料いいんじゃないかな。」
「ははは。まぁそんな世界とは無縁だったってことですよ。わたしはここでの仕事が好きですし、これでよかったんですよ。」
「そうかい?じゃあ今日もよろしく頼むね。」
「はい。」
世の中身の丈にあった生活っていうのがいいと思う。
前世での神殿でも贅沢な装飾はされていた。当時は流石に私利私欲には走ってなかったけど、とても信仰に熱い人たちだった。当時のあの神殿の世界は異常だった。力を弱らせないために一族間での近親婚なんかはざらだった。それだけあの中は異常だった。掟にガチガチだった。裏切り者も絶対許さないほどに…
昔のことを思い出し、気が沈むので仕事に打ち込むことにした。
今日はカウンターでの業務だ。
貸出や返却の受付をしていると
下を向いて作業していたところに影がさした。
「こんにちは。お嬢さん」
「……」
「えっと昨日会ってるけど覚えてる?」
「………人違いではないでしょうか?」
「えっいや昨日会ったでしょ⁈
洞窟でさ!」
「いえ…
わたし昨日のことはよく覚えてないのです。」
「はい?」
「あの仕事がありますので、御用がなければお引き取りください。」
「えっ⁈」
もちろんこの人のことは覚えている。どうしてとぼけてるかって?面倒だから。昨日のこと絶対聞くでしょう。巻き込むでしょ?
このまま知らぬを貫いてこの人には帰ってもらいたいのだけど…
「これはこれは領主様ではないですか。
今日はどうされたのです?」
えっ領主…流石にびっくりだ。
わたし不敬者だな…捕まるかも…
しかし、館長!いつも部屋にこもってるのになんで今日に限って出てくるんだよ!
「どうも館長。
近くを寄ったものだからね。寄らせてもらったところ、この子が目に入ってね。つい声をかけてしまったんだよ。
館長この子少し貸してもらえないかな?」
⁈チャラい発言でこのままわたしを連れて行く気か!
「わたし仕事が「構いませんよ。」……」
館長…恨みますよ。
**********
領主様とわたしは近くのカフェに行くことになった。
道中周りの目線がまとわりつく。
この人、すごく人目引く!
注目集まってる!
たしかに見目はいいよね、金髪に綺麗な紫の目。何よりイケメンだ。
わたしは少し距離をとってついていくことにした。
「さて、やっと落ち着いて話ができるね。昨日も神殿に戻ったら君いないんだもんね。」
カフェに着いたはいいが、領主様は他に話を聞かれたくないのだろう。店員に個室を用意してもらっていた。
わたしはしばし付き合うしかないのだろう。
情報は最低限に。
この人と深く関わるのはまずいのだ。
「まず、改めて自己紹介を。
わたしはユエと申します。あの図書館で勤めておりまして、なんの取り柄もない小娘でございます。」
「小娘ね…
では俺も返さねばね。
俺はアトス。
アトス・ヴェーヌス。ここの領主だ。
さて、ユエさん。
君は昨日のことは覚えていないのかな?」
「………申し訳ございません。覚えています。」
一応観念したそぶりは見せとこう…
「うん。よかった。
話ができそだ。
君は神殿に入るのを拒んだと聞いたのだが間違いないんだよね。なんで?」
「はい。ズバリ言いますが、面倒だからです。」
「え?面倒?」
「はい。
わたしは規則だの規律だのに縛られるはごめんなのです。
わたしは今こうして、仕事を得て自分で生計を立てております。この生活が気に入っております。
いきなり降って湧いた神殿での生活など許容できません。」
「はぁ。こんなこと言う子初めてだな。
まぁ自分がしっかりしてると言うのか…
でも、浄化はしてくれるんだね。祠でだけど。」
「はい。それもあのマダム…もとい貴婦人の方にそのように話はついております。
領主様ならお聞きになっているのでは?」
「うん。あの人俺の母なんだよ。」
マダム…領主様の母だったのか…
「では、わたしに確認に来なくてもよかったのではないですか?」
「やっと現れた巫女だからね。
俺としても管理する者として話しておきたかったって言うのもあるんだよ。
君、呼んでも僕の城にも来なさそうだったからね。」
「特に…行く理由がありませんね。」
「君になくても俺は君のことをもっと知りたいと思っているよ?」
「気にかけていただく必要はありません。
確認が取れたのでしたらわたしはもう仕事に戻りたいのですが。」
「ああ、今日はこれ以上引き止めるのもよくないね。
改めて城に来て話をしようじゃないか。
ね?」
なんで繋げようとするのよ。
「…………仕事に差し支えなければ…」
「じゃあ館長宛に君の召喚命令出すことにするから、大きな顔で出てきたらいいよ。」
「目立ちたくないのですが…もうちょっと穏便に…」
「うん?じゃあ城での書庫の整理依頼とでもしようか?
それでどう?」
城に呼ぶのは決定なのか…
ぐいぐいくるなこの人。
「呼ぶのは一回だけですよね?」
「一回で済むかは君次第かな?」
「くっ…要件が終わればわたしは元の仕事に戻ります。今の生活を乱したくありませんので、これはわたしからの条件です。」
「本来、君が俺に条件出せる立場ではないんだけどね。
足元見られてるみたいだし、ここは了承としておくよ。」
「…ありがとうございます。」
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