前世を思い出した巫女は神のもとに行きたい

だるま

文字の大きさ
37 / 54
二人の夢

17

しおりを挟む
「落ち着けと言われても……なにがどうやら。
今まで、ミコト様のことは見たことがありませんし、こんなこと初めてですよ。」

「だから身体が馴染んだと言っただろう?」

「身体が馴染む?
どう言う事ですか?俺に何かされたのですか?」
俺にも浄化の力が目覚めたとか?
そしたらサニアに会えるだろうか。

「そうだな……最近お前に起きた事があるだろう?」

「最近…まぁ婚姻しましたね。」

「ああ、一つ一つ確認しても仕方がないが、私はお前とサニアの相引きなどは始めから知っているぞ?」

「⁈」
サニアとのことは誰も知らない事。これは…本物と思っていいだろう。

「やっと私が神であると認めたようだな。」

「申し訳ございません。
あなた様を見たのも初めてでしたので。代々領主の血筋であろうと、あなたを視認することはありませんでしたので。」

「まぁ、疑うのも仕方がないが、これからお前を始めとし、領主の血筋は私の姿が見えるようになるだろう。」

「何故そのような事を?」
俺からそんな力を授けられたのかわからない。

「今回の血の儀式……」
血の儀式?ああ、ミコト様も見ていたのか。

「あれは慣例なのでしょう?」

「そうだ、領主が婚姻するたびに、この儀式が執り行われる。まだこの儀式の本当の意味は聞かされていないだろう?」

「はい。まだ教えることはできないと。俺が継ぐ時にと言われています。」

「お前が望むなら今教えてやるが?」

「それは、あなたが見えるようになった事に関係するのですか?」

「そうだな……」

ミコト様は悲しそうな顔をして誰かを見ているようだった。
この儀式はミコト様はよく思ってない?

「教えてください。俺がこれからこの領地を管理する事になります。それに…神殿を変えていくつもりです。」

「お前とサニア…私から見たら結ばれてもよかったと思っていた。元々、神殿の血の伝承なんぞ力を保つ事にもならん。それが今の力が衰弱する原因だ。」

「では、サニアと結ばれる事は禁忌ではなかったのですね。」

「ああ、もう遅いがな……」

「……」
そうだ。俺はもう、妻を娶っている。もう、あの頃に戻ってサニアを寄り添う事は出来ない。

「あの子はもう…この世にはいない。」

「えっ…」
今なにを言った?この世にいない?サニアが?

「ミコト様!サニアがもうこの世にはいないとはどういう事ですか⁈」
俺は無礼を承知でミコト様に喰ってかかった。
しかし、ミコト様は抵抗はせずただ俺を見ていた。


「言葉の通りだ。もうこの世にはいない。死んだのだ。」

言葉が出てこない。死んだ?何故?病気?事故?
彼女になにがあったんだ……

「お前は会っただろう?最後に神殿で、サニアのを飲んだだろう?」

「あの奉仕者がサニアだった?じゃあ、あの既視感はサニアだったと……思い違いじゃなく、直感で認識していた?」

「そこまで想っていたのならあの子を手放さなければよかったと思うがな。
人は役目だ掟だと縛られ生きたいように出来んのだな…」

「あの儀式の後サニアは死…んだと?」
突然の事で受け入れられない。でも、聞かなければ…
あの儀式の本当の意味……それと関係があるのか…

「儀式の本当の意味…」

「そうだ。あれは、神殿からお前に捧げられた供物……次期領主が領地を納める事を、私、土地神に生贄を捧げる事で繁栄を約束する。そしてそこまでして称えられるとして、領主は神殿には口出しできなくなると言う盟約だ。」

「じゃあ…サニアは生贄に…?」

「ああ…お前が去った後、毒を飲み苦しまずに死んだ。」

足元がぐらぐらする。頭がついていかないが、明確に神殿に対して憎悪を抱いた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

婚約破棄ブームに乗ってみた結果、婚約者様が本性を現しました

ラム猫
恋愛
『最新のトレンドは、婚約破棄!  フィアンセに婚約破棄を提示して、相手の反応で本心を知ってみましょう。これにより、仲が深まったと答えたカップルは大勢います!  ※結果がどうなろうと、我々は責任を負いません』  ……という特設ページを親友から見せられたエレアノールは、なかなか距離の縮まらない婚約者が自分のことをどう思っているのかを知るためにも、この流行に乗ってみることにした。  彼が他の女性と仲良くしているところを目撃した今、彼と婚約破棄して身を引くのが正しいのかもしれないと、そう思いながら。  しかし実際に婚約破棄を提示してみると、彼は豹変して……!? ※『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも投稿しています

【完結】離婚を切り出したら私に不干渉だったはずの夫が激甘に豹変しました

雨宮羽那
恋愛
 結婚して5年。リディアは悩んでいた。  夫のレナードが仕事で忙しく、夫婦らしいことが何一つないことに。  ある日「私、離婚しようと思うの」と義妹に相談すると、とある薬を渡される。  どうやらそれは、『ちょーっとだけ本音がでちゃう薬』のよう。  そうしてやってきた離婚の話を告げる場で、リディアはつい好奇心に負けて、夫へ薬を飲ませてしまう。  すると、あら不思議。  いつもは浮ついた言葉なんて口にしない夫が、とんでもなく甘い言葉を口にしはじめたのだ。 「どうか離婚だなんて言わないでください。私のスイートハニーは君だけなんです」 (誰ですかあなた) ◇◇◇◇ ※全3話。 ※コメディ重視のお話です。深く考えちゃダメです!少しでも笑っていただけますと幸いです(*_ _))*゜

「転生したら推しの悪役宰相と婚約してました!?」〜推しが今日も溺愛してきます〜 (旧題:転生したら報われない悪役夫を溺愛することになった件)

透子(とおるこ)
恋愛
読んでいた小説の中で一番好きだった“悪役宰相グラヴィス”。 有能で冷たく見えるけど、本当は一途で優しい――そんな彼が、報われずに処刑された。 「今度こそ、彼を幸せにしてあげたい」 そう願った瞬間、気づけば私は物語の姫ジェニエットに転生していて―― しかも、彼との“政略結婚”が目前!? 婚約から始まる、再構築系・年の差溺愛ラブ。 “報われない推し”が、今度こそ幸せになるお話。

【完結】探さないでください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
私は、貴方と共にした一夜を後悔した事はない。 貴方は私に尊いこの子を与えてくれた。 あの一夜を境に、私の環境は正反対に変わってしまった。 冷たく厳しい人々の中から、温かく優しい人々の中へ私は飛び込んだ。 複雑で高級な物に囲まれる暮らしから、質素で簡素な物に囲まれる暮らしへ移ろいだ。 無関心で疎遠な沢山の親族を捨てて、誰よりも私を必要としてくれる尊いこの子だけを選んだ。 風の噂で貴方が私を探しているという話を聞く。 だけど、誰も私が貴方が探している人物とは思わないはず。 今、私は幸せを感じている。 貴方が側にいなくても、私はこの子と生きていける。 だから、、、 もう、、、 私を、、、 探さないでください。

夫に捨てられた私は冷酷公爵と再婚しました

香木陽灯
恋愛
 伯爵夫人のマリアーヌは「夜を共に過ごす気にならない」と突然夫に告げられ、わずか五ヶ月で離縁することとなる。  これまで女癖の悪い夫に何度も不倫されても、役立たずと貶されても、文句ひとつ言わず彼を支えてきた。だがその苦労は報われることはなかった。  実家に帰っても父から不当な扱いを受けるマリアーヌ。気分転換に繰り出した街で倒れていた貴族の男性と出会い、彼を助ける。 「離縁したばかり? それは相手の見る目がなかっただけだ。良かったじゃないか。君はもう自由だ」 「自由……」  もう自由なのだとマリアーヌが気づいた矢先、両親と元夫の策略によって再婚を強いられる。相手は婚約者が逃げ出すことで有名な冷酷公爵だった。  ところが冷酷公爵と会ってみると、以前助けた男性だったのだ。  再婚を受け入れたマリアーヌは、公爵と少しずつ仲良くなっていく。  ところが公爵は王命を受け内密に仕事をしているようで……。  一方の元夫は、財政難に陥っていた。 「頼む、助けてくれ! お前は俺に恩があるだろう?」  元夫の悲痛な叫びに、マリアーヌはにっこりと微笑んだ。 「なぜかしら? 貴方を助ける気になりませんの」 ※ふんわり設定です

侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています

猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。 しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。 本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。 盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。

今宵、薔薇の園で

天海月
恋愛
早世した母の代わりに妹たちの世話に励み、婚期を逃しかけていた伯爵家の長女・シャーロットは、これが最後のチャンスだと思い、唐突に持ち込まれた気の進まない婚約話を承諾する。 しかし、一か月も経たないうちに、その話は先方からの一方的な申し出によって破談になってしまう。 彼女は藁にもすがる思いで、幼馴染の公爵アルバート・グレアムに相談を持ち掛けるが、新たな婚約者候補として紹介されたのは彼の弟のキースだった。 キースは長年、シャーロットに思いを寄せていたが、遠慮して距離を縮めることが出来ないでいた。 そんな弟を見かねた兄が一計を図ったのだった。 彼女はキースのことを弟のようにしか思っていなかったが、次第に彼の情熱に絆されていく・・・。

処理中です...