3 / 12
成ろうが、成るまいが知識は人の為になる
翌月からユリアの公爵令嬢教育が始まった。時間が掛かったのは、教師の選定から開始したためだった。婚約者筆頭と呼ばれ始めた頃、ユリアは10歳になっていた。
シルヴィアはユリアの公爵令嬢教育を口出しせず見守った。
ユリアは自分に似て気が強く、弱音を吐いたら負けと考えるタイプだった。
頑固で嫌となったらとことん曲げない。だからこそ上手く載せれば、努力は惜しまないし実力を積み重ねることができる。
(王妃になろうと、なるまいと覚えた知識は最終的にはユリアの糧になるだろう。)ほくそ笑む笑顔を見て、イスツィアは溜息をついた。
イスツィアは公爵家の嫡男にしてユーフミナ家の跡継ぎであり、ユリアより5つ年上の15歳だ。穏やかで天使のように優しかった妹のエーリア、お転婆で気が強く明るい妹ユリア、歳の割に落ち着いて穏やかだが時に鋭い意見を言う弟のセルシオ。4兄妹として育ったが、母に似たユリアが王妃に?と思うと胃が痛くなりそうだ。大人しく王妃として国を治めるなんて、無理じゃないか?奇跡的に第1王子であるエディオン王子に恋でもしない限りは・・・。(無いな、いや無い無い)ユリアが王子に恋する姿が思い浮かばない。王子は齢11歳にして国1番の美少年とか、神童と誉高いがユリアはそういうのには関心がない。無頓着といった方がいいかもしれない。きっとそういう所も母に似ている。母は穏やかで平凡な容姿、没個性の父に愛情のほぼ全てを傾けていると言っていい。
シルヴィアは、銀髪に蒼く澄んだ美しい瞳をした美女だ。父一筋でなければ傾国の美女と呼ばれたかもしれない。外見だけであれば、母に1番よく似たのがエーリアであり、次に弟のセルシオだ。ユリアは両親両方によく似ていて、父にそっくりなのがイスツィアだ。父が大好きなシルヴィアは特にイスツィアを可愛がってくれていると思う。
〘母上も、あの性格でなければなぁ。 〙
父が絡むと過激になる母を思った。イスツィアは母に似た妹の気性からユリアが王妃になることは反対だった。いつか助言を求められたら嫌がるユリアの意志を尊重するようにして、反対しよう。密かな決意を固めたイスツィアだった。
ユリアは中々お母様の魔力を上回ることが出来ず焦っていた。
王子に会うお茶会から逃れる為の脱走や、仮病も言い訳に使うのは限界に来ている。お母様のわる~い顔はもう見たくない。うーんどうしたらいいんだ!
何かヒントが見つからないか、書庫をゴソゴソ探し回り本をひっくり返して見た。
魔力をグーンと上げるような都合いい本など見つかるはずがなかった。
「あ~もう!」本棚を力任せにドンとどつくと、本がほぼなくなっていた本棚はドドんと反対側に倒れた。連鎖するように次々ぶつかった本棚が倒れてしまう。ヤバい!と思った時には遅かった。
「うわぁー。どうしよう~。」
書庫には半分傾いた本棚が10架あまり・・・。魔法が使えるなら自分で片付けられるが、今の自分には無理だ。元来面倒くさがり屋のユリアは考えるのを放棄した。ちょっと片付けようとした振りだけでもしようと、身近に落ちていた本を拾い上げた時に"それ"を見つけた。
「うん?なんだろうコレっ?」
古ぼけた青い背表紙のそれは昔の日記のようだった。タイトルに〈特定魔法を限界突破する方法! 〉と幼い子供が書いたような字で書かれている。なんだろうとパラパラと捲ると、あるページで釘付けになった。ふんふん。ふんふんふん。ふんふんふーん!読み進めるうちに興奮し過ぎて鼻血が出そうになった。慌てて鼻の付け根を抑える。(そうか!別に全ての魔法でお母様を超える必要はないんだわ。私に必要なのは〈その他の魔法 〉なのだもの。お母様にバレないように〈その他の魔法 〉を極めれば良い!できる。できるわ!)ユリアは無意識だったが、ニタリと笑ったわるーい顔はシルヴィアそっくりだった。
ーーーーーーーーーーー
ユリアが手に取ったのは、現国王の祖母にあたる、賢妃と名高かった故キャサリンの幼い頃の日記だった。(シルヴィアに取っては大伯母にあたる)ユリアが興奮しながら見ていたのは、魔封じの腕輪も含めた罰を受けた時にどう対応して切り抜けたかといった、今のユリアにとっては指導書みたいなものだった。
ユリアよりも、とんでもないことを色々やらかしていたキャサリンだったが、幸い前々国王と恋に落ちて賢妃と呼ばれることになった。ユーフミナ公爵家の血を受けた者は恋に盲目になることが多かった。
ーーーーーーーーーー
閑話休題
ユリアは、書庫の惨状をシルヴィアに知られ、拳でコメカミグリグリの罰をまた受けて涙目になった。(書庫の本棚はシルヴィアの魔法で元の状態に直ぐに戻った)
自室でこっそり日記を取り出す。
ふむふむ、ふんふんふーん!
興奮してきたユリアは、知らずに独り言を言っていたのに気づかなかった。
呼ばれたかと勘違いしたメイドが、声をかけた上で部屋を訪れたが全く気づくこともなく・・・メイドはそっと扉を閉めた。
それから2ヶ月後、ユリアは限界突破の奇跡を起こすことに成功したのだった。
公爵家では叱られるので魔法は使わないが、外出先ではバレないように使うことができる!
お茶会でもパーティーでもドンと来いよ!
ユリアは得意気に小さい胸を張った。
誰にも打ち明けられない秘密だったので、誰も褒めてはくれなかったが。
こうして居るのか居ないなのかわからない令嬢が誕生したのだった。
あら?あの方居たかしら?参加されていた?あの方、影が薄いわよね。顔が思い出せないわ。
そんな周りの評価を聞く度に密かにユリアは喜んだ。
「ユーフミナ公爵家の地味で影が薄い令嬢。」ユリアはいつしかそう呼ばれるようになっていた。
あなたにおすすめの小説
お飾りの私と怖そうな隣国の王子様
mahiro
恋愛
お飾りの婚約者だった。
だって、私とあの人が出会う前からあの人には好きな人がいた。
その人は隣国の王女様で、昔から二人はお互いを思い合っているように見えた。
「エディス、今すぐ婚約を破棄してくれ」
そう言ってきた王子様は真剣そのもので、拒否は許さないと目がそう訴えていた。
いつかこの日が来るとは思っていた。
思い合っている二人が両思いになる日が来ればいつの日か、と。
思いが叶った彼に祝いの言葉と、破棄を受け入れるような発言をしたけれど、もう私には用はないと彼は一切私を見ることなどなく、部屋を出て行ってしまった。
私の願いは貴方の幸せです
mahiro
恋愛
「君、すごくいいね」
滅多に私のことを褒めることがないその人が初めて会った女の子を褒めている姿に、彼の興味が私から彼女に移ったのだと感じた。
私は2人の邪魔にならないよう出来るだけ早く去ることにしたのだが。
あなたを忘れる魔法があれば
美緒
恋愛
乙女ゲームの攻略対象の婚約者として転生した私、ディアナ・クリストハルト。
ただ、ゲームの舞台は他国の為、ゲームには婚約者がいるという事でしか登場しない名前のないモブ。
私は、ゲームの強制力により、好きになった方を奪われるしかないのでしょうか――?
これは、「あなたを忘れる魔法があれば」をテーマに書いてみたものです――が、何か違うような??
R15、残酷描写ありは保険。乙女ゲーム要素も空気に近いです。
※小説家になろう、カクヨムにも掲載してます
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
【完結】悪役令嬢な私が、あなたのためにできること
夕立悠理
恋愛
──これから、よろしくね。ソフィア嬢。
そう言う貴方の瞳には、間違いなく絶望が、映っていた。
女神の使いに選ばれた男女は夫婦となる。
誰よりも恋し合う二人に、また、その二人がいる国に女神は加護を与えるのだ。
ソフィアには、好きな人がいる。公爵子息のリッカルドだ。
けれど、リッカルドには、好きな人がいた。侯爵令嬢のメリアだ。二人はどこからどうみてもお似合いで、その二人が女神の使いに選ばれると皆信じていた。
けれど、女神は告げた。
女神の使いを、リッカルドとソフィアにする、と。
ソフィアはその瞬間、一組の恋人を引き裂くお邪魔虫になってしまう。
リッカルドとソフィアは女神の加護をもらうべく、夫婦になり──けれど、その生活に耐えられなくなったリッカルドはメリアと心中する。
そのことにショックを受けたソフィアは悪魔と契約する。そして、その翌日。ソフィアがリッカルドに恋をした、学園の入学式に戻っていた。
【完結済】次こそは愛されるかもしれないと、期待した私が愚かでした。
こゆき
恋愛
リーゼッヒ王国、王太子アレン。
彼の婚約者として、清く正しく生きてきたヴィオラ・ライラック。
皆に祝福されたその婚約は、とてもとても幸せなものだった。
だが、学園にとあるご令嬢が転入してきたことにより、彼女の生活は一変してしまう。
何もしていないのに、『ヴィオラがそのご令嬢をいじめている』とみんなが言うのだ。
どれだけ違うと訴えても、誰も信じてはくれなかった。
絶望と悲しみにくれるヴィオラは、そのまま隣国の王太子──ハイル帝国の王太子、レオへと『同盟の証』という名の厄介払いとして嫁がされてしまう。
聡明な王子としてリーゼッヒ王国でも有名だったレオならば、己の無罪を信じてくれるかと期待したヴィオラだったが──……
※在り来りなご都合主義設定です
※『悪役令嬢は自分磨きに忙しい!』の合間の息抜き小説です
※つまりは行き当たりばったり
※不定期掲載な上に雰囲気小説です。ご了承ください
4/1 HOT女性向け2位に入りました。ありがとうございます!
婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。
風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。
※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。
婚約者に愛する人が出来たので、身を引く事にしました
Blue
恋愛
幼い頃から家族ぐるみで仲が良かったサーラとトンマーゾ。彼が学園に通うようになってしばらくして、彼から告白されて婚約者になった。サーラも彼を好きだと自覚してからは、穏やかに付き合いを続けていたのだが、そんな幸せは壊れてしまう事になる。