気配消し令嬢の失敗

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退屈でない日常:王子と賢妃キャサリン



エディオン・スタンダール。スタンダール王国の第1王子として産まれ、将来の国王になることが定められた運命だった。

エディオンは産まれながらにして膨大な魔力を持っていた。だが、幼い体の器では受け止め切れない程の魔力だった為、魔力増大症に掛かってしまった。曾孫の魔力増大症に憂いた賢妃キャサリンは、独自魔法を創成しエディオンの病を救った。数々の偉業を成し遂げたキャサリンの功労の1つだ。キャサリンには他にも曾孫が数人いたが、幼い頃に病を患ったエディオンを特に可愛がっていた。

ある日の昼下がり、エディオンをお茶会に招いたキャサリンは緑の背表紙の本を渡した。それは、キャサリンの日記帳だった。
「きっといつか役に立つと思うから、持っていて。」
パラパラと捲ると、まず最初に

〘嘘つき女は詐欺師。追い出す為の10ヶ条!〙

とあり読み進めるとえっ?と思う事ばかりだった。エディオンは賢妃キャサリンとしての曾祖母しか知らない。しかし日記にはお転婆な公爵令嬢キャサリン・ユーフミナの若かりし頃のやらかした数々が書いてあった。目が点になっている曾孫に茶目っ気タップリにウインクする。

「これはねぇ、昔、サルヴィオーネ学園でスティーブ曾祖父や有力貴族の令息達を魔法で誘惑した悪い女がいてね。私が成敗した時の話よ。」

ニヤリと笑った顔はどこかシルヴィアにも似たわるーい顔だった。エディオンは知るよしもなかったが。

「魅了という魔法で人の精神を操ったの。危うく私は悪者に仕立てあげられて、処分されるところだったわ。」まぁ、私が見破ったんだけどね。と1人で頷いている。
そして、10ヶ条を説明しだした。ユリアが知っていた〘嘘つき女は詐欺師。必ず記録せよ!〙はその内の1つだったのだ。
卒業式のプロムで、スティーブ曾祖父をシバいた話はさすがに曾祖父に同情した。(曾祖母様が怖すぎる。絶対敵に回したら行けないタイプだ。)賢妃キャサリンを尊敬していたが、恐ろしさを感じたのは初めてだった。

この騒動は、最終的には記録した魔法石で詐欺師女の嘘がばれ、処分されたとの事だった。「記録よ記録!結局証拠が物を言うのよ!」熱弁を振るう賢妃キャサリンにキャサリン・ユーフミナの幼い頃の面影を見た。

かつて王国1の美女と呼ばれ、数多の業績を残した賢妃キャサリン。明るく、強く何より賢い。これに茶目っ気と恐ろしさをプラスしたら最強だ。
(ああっ、曾祖母様のような方を妃に迎えられたら退屈することは無いだろうな。)エディオンの胸に理想の女性としてキャサリンの名が刻まれたのはその時だった。
ニヤリと笑うわるーい顔も、同時にエディオンの記憶に刻まれたのだった。

「高貴な人間には、色んな人間が寄ってくるわ。貴方も学園に行くでしょうけど、覚えておいて。身分差があるのにズカズカと詰め寄ってくる相手には注意しなさい。特に周囲の人間が理由もなく持ち上げたり、溺愛する女がいたら詐欺師女と同じ魅了もちかもしれないわ。だから貴方にはこの魔法を覚えて欲しいの。」

そこのページにはこう書いてあった
〈 特定魔法を限界突破する方法!改!〉

「覚えれば、精神魔法には絶対にかからなくなるわ。大丈夫。エディオンは私並に魔力があるからコツさえ掴めば、直ぐに覚えられるわ。一緒に頑張りましょうね。」
ニッコリ優しくキャサリンは微笑んだ。

そこから〈 特定魔法を限界突破する方法!改!〉の特訓が始まった。精神魔法と言っても10種類近くある。
まだ8歳だったエディオンには過酷ではあったのだが、乗り越えて修得した時の喜びはひとしおだった。キャサリンに教えを受けながら、楽しく充実した日々だった。
退屈だなんて1日も思わなかった。あの日までは・・・

賢妃キャサリンの葬儀の日は雨だった。天も曾祖母様の死を嘆いているのか・・・。眠るように逝った、半ば伝説となっていた賢妃の死に国中がその死を悼んだ。
悲しくて目を閉じる。いつか、曾祖母様のような女性と出会えるだろうか?
(あんな素晴らしい女性が、おいそれと居るわけが無いが。)諦めと悲しみ。そして僅かな期待を小さな胸にしまい込んだ。
この時、エディオンは9歳。エーリア・ユーフミナと婚約を結ぶ4ヶ月前の出来事だった。
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