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退屈な日常:王子と婚約者候補達
ある日、国王から呼び出されエーリア・ユーフミナ公爵令嬢と婚約が決まったことを知らされた。
父上曰く、魔力増大症を患った私の為にユーフミナ公爵令嬢を選んだとの事だった。
ユーフミナ公爵家は家系的に魔力が高い子供が産まれやすいが魔力増大症になることは無い。曾祖母様が編み出した、創世魔法は残されているが、膨大な魔力が必要な為、曾祖母様亡き後操れる魔法使いがいない。
魔力増大症に苦しんだ私を見ていた父上は、ユーフミナ家の令嬢との子供なら同じ病に掛かることは無いだろうと考えたのだ。
私は黙って話を聞いていた。ユーフミナ公爵令嬢との子供だからと言って魔力増大症にかからないとは言えないと思ったが敢えて口には出さなかった。
スタンダール王国には、王族と五大公爵家、10侯爵、その他の貴族が存在する。王は公爵家から王妃を娶るのが通常の習わしだ。公爵家に妙齢の令嬢がいない時には、侯爵家の令嬢を娶る時がある。例外は他国の王女との政略結婚などである。侯爵以下の貴族は即妃になるか愛妾になるかのどちらかだ。
(おそらく、血が濃すぎるのだ。)
血が濃すぎる故に、過大な魔力を持ったり、ほぼ魔力が無く産まれてくることがあるのだと思う。父上はおそらく知ってるのだろうが、消去法としてユーフミナ公爵令嬢を娶ることにしたのだろう。
愛がある結婚は、最初から諦めている。
ただ、ユーフミナ公爵家と聞いて若干の希望をいだいた。曾祖母様に少しでも似ていたら・・・退屈な日々も楽しく過ごせるかもしれない、と。
エーリア・ユーフミナ公爵令嬢と初めて会った時、正直ガッカリした。美しく穏やかで天使のようなご令嬢。皆はそう褒めたたえたが、私にはそれだけのような気がした。曾祖母様のような明るさや、覇気のような物が無い。言葉にするのが難しいが、生命力の熱さを感じられない。人形のように見えた。
だが、私はエーリア嬢を見誤っていた。意に沿わぬ婚約はお互い様だったことを失念していたのだ。
獣人国イルゼアのセルドオ王子が、15歳になったのを機にサルヴィオーネ学園へ留学することになった。彼が王に挨拶に来た際、たまたま王妃教育の為登城していたエーリア嬢を私の婚約者として紹介した時事件が起こった。
人が恋に落ちた瞬間を初めて目撃した。
セルドア王子とエーリア嬢は固まってお互いだけを見つめていた。ジワジワと頬に赤みがさし、瞳が潤んでいく。熱い溜息をついた彼女は最早人形ではなかった。
「この人は私の番だ!私の妻とする!」
突然そう言ってエーリア嬢を抱き上げると、縦抱きのまま走り去った。
まるで突風が吹いた如く、止める暇もなどなかった。登城した時と同じ馬車に乗って、そのままイルゼアに帰ってしまった。
学園も外交もあったものでは無い。しかも公爵家から見たら誘拐に等しい。
当然、厳重に抗議したが一向にエーリア嬢を返す気配はなく公爵夫人が、説得する為イルゼアに赴いたが遅々として状況は変わらなかった。
そんなある日イルゼアから報せがあった。
「獣人にとって番は唯一無二の存在。賠償には応じるが、ご令嬢は返せない。」
私自身は、恋に落ちる二人を見ていたので仕方が無いと思った。悔しさや悲しさなどは一切感じていなかった。
だが、施政者として、いつも感情を抑えている父上が感情を顕に怒っていた。
「賠償すれば良いという問題ではないわ!おのれ!よくもエディオンの婚約者を攫いおったな!イルゼアめ、開戦するなら受けて立つぞ!」頭から湯気を出しそうな勢いで喚き立てる父上を真っ青な顔をして宥めていたのは、宰相とユーフミナ公爵だった。
苛立ちの為か、穏和と評判のユーフミナ公爵に父上が無茶苦茶なことを言うことも多かった。
「お前の娘だ。早く奪い返してこい。」
「エディオンに何かあったら戦争になるから、お前が今すぐ決闘を申し込んでこい。セルドア王子を傷つけても赦されるのは、立場的にお前だけだからな。」
私がいた時はできるだけ父上を諌めたが、父上の癇癪に振り回され、公爵は一気にやつれていった。
そんな中、ユーフミナ公爵家の次女ユリア・ユーフミナ嬢との婚約話が持ち上がったのだった。
父上はユリア嬢との婚約話でやっと機嫌を直したように見えた。
しかし、日を追うごとに公爵の白髪が増えていく。早く婚約式の準備を進めろと責っ付く父上を何とか誤魔化している様子だった。
私は密かにユーフミナ公爵家に忍ばせている間者に事情を探らせた。
「王妃になりたくない、だと。」間者からの報告に驚いた。貴族として産まれれば、ノブレス・オブリージュの意味は分かっているはずだ。だが、ユリア嬢は魔法で姿を消すなど破天荒な手段で公爵へ抗議しているという。
ユリア嬢はかなり変わった令嬢らしい。曾祖母様と少し似ているのかもしれない。淡い期待が灯ったのはその時からだった。
ある日、ユーフミナ公爵夫人がイルゼア国から帰還したと挨拶にやって来た。
ユーフミナ公爵夫人たっての依頼で父上と公爵夫妻3人だけの話し合いの場が設けられた。
会談後、呼び出された私は父上の顔色が真っ青になっていることに気づいた。気遣う私に、心配するなと仰ったが指先が小刻みに震えていた。
その場で、ユリア嬢は婚約者候補の1人と見なすこと、学園卒業後に正式な婚約者を選ぶ予定とする。しかし私がこの人と決めたらその時点で婚約者とすることができる。と決まったと告げられた。
婚約者候補はユリア嬢を含めて5名。公爵家から2人、侯爵家から3人。
公爵家はユリア嬢、もう1人はイザベラ・バード(4歳)。イザベラ嬢は数合わせだろう。実質ユリア嬢が婚約者候補の筆頭となる。
ユリア嬢が、婚約者から婚約者候補に変更となった理由は分からないが、逆らうことは出来ない。
こうして、私と婚約者候補達の定期的な逢瀬などが始まったのだ。
結論から言うと、興味が無い令嬢達とのお茶会は退屈でしかなかった。
熱心に話しかけてくるが、話の中身が無さすぎる。王子教育で磨いた笑顔を貼り付けながら、興味が無いことを悟られないようにしながら聞き流す。このお茶会にユリア嬢はまだ出席していない。彼女が来れば何かが変わるだろうか?退屈な日常が、少しでも変わってくれればいいのに。
数ヶ月がたってからやっと彼女に出会うことが出来た。
父上曰く、魔力増大症を患った私の為にユーフミナ公爵令嬢を選んだとの事だった。
ユーフミナ公爵家は家系的に魔力が高い子供が産まれやすいが魔力増大症になることは無い。曾祖母様が編み出した、創世魔法は残されているが、膨大な魔力が必要な為、曾祖母様亡き後操れる魔法使いがいない。
魔力増大症に苦しんだ私を見ていた父上は、ユーフミナ家の令嬢との子供なら同じ病に掛かることは無いだろうと考えたのだ。
私は黙って話を聞いていた。ユーフミナ公爵令嬢との子供だからと言って魔力増大症にかからないとは言えないと思ったが敢えて口には出さなかった。
スタンダール王国には、王族と五大公爵家、10侯爵、その他の貴族が存在する。王は公爵家から王妃を娶るのが通常の習わしだ。公爵家に妙齢の令嬢がいない時には、侯爵家の令嬢を娶る時がある。例外は他国の王女との政略結婚などである。侯爵以下の貴族は即妃になるか愛妾になるかのどちらかだ。
(おそらく、血が濃すぎるのだ。)
血が濃すぎる故に、過大な魔力を持ったり、ほぼ魔力が無く産まれてくることがあるのだと思う。父上はおそらく知ってるのだろうが、消去法としてユーフミナ公爵令嬢を娶ることにしたのだろう。
愛がある結婚は、最初から諦めている。
ただ、ユーフミナ公爵家と聞いて若干の希望をいだいた。曾祖母様に少しでも似ていたら・・・退屈な日々も楽しく過ごせるかもしれない、と。
エーリア・ユーフミナ公爵令嬢と初めて会った時、正直ガッカリした。美しく穏やかで天使のようなご令嬢。皆はそう褒めたたえたが、私にはそれだけのような気がした。曾祖母様のような明るさや、覇気のような物が無い。言葉にするのが難しいが、生命力の熱さを感じられない。人形のように見えた。
だが、私はエーリア嬢を見誤っていた。意に沿わぬ婚約はお互い様だったことを失念していたのだ。
獣人国イルゼアのセルドオ王子が、15歳になったのを機にサルヴィオーネ学園へ留学することになった。彼が王に挨拶に来た際、たまたま王妃教育の為登城していたエーリア嬢を私の婚約者として紹介した時事件が起こった。
人が恋に落ちた瞬間を初めて目撃した。
セルドア王子とエーリア嬢は固まってお互いだけを見つめていた。ジワジワと頬に赤みがさし、瞳が潤んでいく。熱い溜息をついた彼女は最早人形ではなかった。
「この人は私の番だ!私の妻とする!」
突然そう言ってエーリア嬢を抱き上げると、縦抱きのまま走り去った。
まるで突風が吹いた如く、止める暇もなどなかった。登城した時と同じ馬車に乗って、そのままイルゼアに帰ってしまった。
学園も外交もあったものでは無い。しかも公爵家から見たら誘拐に等しい。
当然、厳重に抗議したが一向にエーリア嬢を返す気配はなく公爵夫人が、説得する為イルゼアに赴いたが遅々として状況は変わらなかった。
そんなある日イルゼアから報せがあった。
「獣人にとって番は唯一無二の存在。賠償には応じるが、ご令嬢は返せない。」
私自身は、恋に落ちる二人を見ていたので仕方が無いと思った。悔しさや悲しさなどは一切感じていなかった。
だが、施政者として、いつも感情を抑えている父上が感情を顕に怒っていた。
「賠償すれば良いという問題ではないわ!おのれ!よくもエディオンの婚約者を攫いおったな!イルゼアめ、開戦するなら受けて立つぞ!」頭から湯気を出しそうな勢いで喚き立てる父上を真っ青な顔をして宥めていたのは、宰相とユーフミナ公爵だった。
苛立ちの為か、穏和と評判のユーフミナ公爵に父上が無茶苦茶なことを言うことも多かった。
「お前の娘だ。早く奪い返してこい。」
「エディオンに何かあったら戦争になるから、お前が今すぐ決闘を申し込んでこい。セルドア王子を傷つけても赦されるのは、立場的にお前だけだからな。」
私がいた時はできるだけ父上を諌めたが、父上の癇癪に振り回され、公爵は一気にやつれていった。
そんな中、ユーフミナ公爵家の次女ユリア・ユーフミナ嬢との婚約話が持ち上がったのだった。
父上はユリア嬢との婚約話でやっと機嫌を直したように見えた。
しかし、日を追うごとに公爵の白髪が増えていく。早く婚約式の準備を進めろと責っ付く父上を何とか誤魔化している様子だった。
私は密かにユーフミナ公爵家に忍ばせている間者に事情を探らせた。
「王妃になりたくない、だと。」間者からの報告に驚いた。貴族として産まれれば、ノブレス・オブリージュの意味は分かっているはずだ。だが、ユリア嬢は魔法で姿を消すなど破天荒な手段で公爵へ抗議しているという。
ユリア嬢はかなり変わった令嬢らしい。曾祖母様と少し似ているのかもしれない。淡い期待が灯ったのはその時からだった。
ある日、ユーフミナ公爵夫人がイルゼア国から帰還したと挨拶にやって来た。
ユーフミナ公爵夫人たっての依頼で父上と公爵夫妻3人だけの話し合いの場が設けられた。
会談後、呼び出された私は父上の顔色が真っ青になっていることに気づいた。気遣う私に、心配するなと仰ったが指先が小刻みに震えていた。
その場で、ユリア嬢は婚約者候補の1人と見なすこと、学園卒業後に正式な婚約者を選ぶ予定とする。しかし私がこの人と決めたらその時点で婚約者とすることができる。と決まったと告げられた。
婚約者候補はユリア嬢を含めて5名。公爵家から2人、侯爵家から3人。
公爵家はユリア嬢、もう1人はイザベラ・バード(4歳)。イザベラ嬢は数合わせだろう。実質ユリア嬢が婚約者候補の筆頭となる。
ユリア嬢が、婚約者から婚約者候補に変更となった理由は分からないが、逆らうことは出来ない。
こうして、私と婚約者候補達の定期的な逢瀬などが始まったのだ。
結論から言うと、興味が無い令嬢達とのお茶会は退屈でしかなかった。
熱心に話しかけてくるが、話の中身が無さすぎる。王子教育で磨いた笑顔を貼り付けながら、興味が無いことを悟られないようにしながら聞き流す。このお茶会にユリア嬢はまだ出席していない。彼女が来れば何かが変わるだろうか?退屈な日常が、少しでも変わってくれればいいのに。
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