気配消し令嬢の失敗

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王子の恋:ユリア嬢と王妃教育

ユリア嬢がお茶会やパーティーに出席しなかった理由は表向きは病欠になっていた。
だが、私は公爵家に潜ませている間者メイドからその間の報告を受けていた。

お茶会当日に脱走したこと、明らかに嘘とわかる仮病を言って医者から処方された薬を後でこっそり庭に捨てていたこと。ある日、書庫をぐちゃぐちゃにしてから、魔法の特訓に励んでいること。などが書かれていた。

「時に奇怪な叫びを発したりしている、と。くくくくっ面白い!」

久しぶりに心から笑った。
の令嬢など退屈でしかない。ユリア嬢がお茶会に来ると聞いて胸が高鳴った。

初めてユリア嬢にあった第一印象は公爵夫妻によく似ているというものだった。
全体的な印象は公爵夫人に似ているのだが、目は公爵に似てアーモンド型の大きな瞳で若干タレ目になっている。小さな子犬の潤んだ瞳のようだ。一見した限りでは数々の奇行をしている令嬢とは思えない。美しいというより、愛らしい女性だと思った。
 エーリア嬢は公爵夫人に似てつり目がちだった。10歳にして完璧な淑女に見えたのだが、それが余計に人形に見えたものだった。

鈴が鳴るような美しい声で名を告げると、そそくさと私の席より1番遠く離れた席に座る。小動物のような仕草に、本気で笑いそうになり、貼り付けた笑顔が崩壊しそうになった。慌てて取り繕った。

お茶会の間中、周囲にバレないようにユリア嬢を観察する。不自然なくらい、周りの令嬢がユリア嬢を無視して話していることに気づいた。ユリア嬢はそれを嬉しそうに笑ったり、時には得意気な顔をしていた。

まさか・・・いや彼女ならやりかねない。
こっそり、鑑定の魔法をかけてみる。

■鑑定結果:以下の魔法が発動中
〘気配消し:上級〙、〘認識阻害:上級〙
▼スキル
『特定魔法の限界突破』

なんと、曾祖母様から教わった『特定魔法の限界突破』を彼女は身につけていたのだ。では、彼女の愛らしい容姿も、コロコロと動く令嬢らしからぬ面白い表情も誰も気づいていないのか!
ますます面白い!
初めて会ったその日に、ユリア嬢を妃にしようと決めていた。


ーーーーーーーーーーーーー
私はすぐにユリア嬢を婚約者にしたかった。だが、間者から「王妃になりたくない」といった報告を既に受けている。

無理に婚約者にしたら、彼女のことだ婚約を破棄する為に色んなことをやりかねない。婚約してから、破棄となった場合2代続いての破棄となる為ユーフミナ公爵家にも何らかの処分が下されるやもしれぬ。
どのようにすれば円満に彼女を妃に迎え入れられるのか、公爵夫妻に相談することにした。

私がユリア嬢を婚約者にしたいと話すと、公爵夫妻は目を見合わせた。遠慮がちに夫人が私の真意を確かめてきた。

「あの・・・あの子は本当にお転婆で手のかかる娘でございます。それでもお望みになられると?」
「ああ。彼女がいい。だが、王妃になりたくない様子なのだ。その理由がわかれば、彼女の気持ちを変えることができるかもしれない。理由を知っているか?」

また、夫妻は顔を見合わせた。今度は公爵が話し出した。
「ユリアは、王妃教育を受けたくないと言っていたのです。」
「私が嫌だとかそういう理由ではなく、王妃教育が嫌だと言う理由か?」
「さようでございます。実は今、悪戯の罰として公爵令嬢教育と言うことにして、王妃教育とほぼ同じ教育を受けさせている所なんですが・・・。」
夫妻としては、本当に根をあげたら許すつもりだったとのことだった。
「では今、本人は知らずに王妃教育を身につけ始めているのか。」

面白い!王子は無意識にニタリと笑った。その顔は故賢妃キャサリンとシルヴィアに共通したわるーい顔だった。
イリアス公爵はその顔に嫌な予感がして若干仰け反ったが、隣のシルヴィアは平気な顔をしていた。
イリアスはエディオン王子にもユーフミナ家の血が流れていることを再認識した。恋に盲目一途で重いなユーフミナ家の人間は恋した相手狙った相手は逃がさない。

「どれくらいで王妃教育は終わる?」
「基本的な教育は7年から8年、その後は王宮でないと学べないことがあるかと。」
「長い。5年だ。5年で基礎を終わらせてくれ。」
「はっ。承知いたしました。」
「その間に、ユリア嬢と2人で会ったり、特別な対応をすると逃げると思うか?」
「ユリアの性格上、王子様の好意を感じたら全力で逃げるかと。」
「・・・分かった。ユリア嬢の王妃教育の基礎が終わるまでは本人には悟られぬようにしよう。」
5年は長い。だが、欲しいものを手に入れるためには我慢が必要だ。
ユリア嬢には知られぬ様に定期的に様子を報告して来るように依頼する。

「あと、ユリア嬢が限界突破のスキルを修得していたが、特別に魔法を教えたのか?」
「いっいえあの子は今魔法封じの腕輪をさせています。魔法は使えないはずですが。限界突破とはなんの事でしょうか?」
お茶会で鑑定した内容を話すと、目を白黒させて驚愕していた。夫人が怒りのあまり持っていた扇をバキバキバキッとへし折った。許すまじ!と呟いた夫人を慌て公爵が宥める。
「誠に申し訳ございません。王子様に魔法を使うなどあってはならないことでございます。処分ならなんなりとお受け致します。」
夫妻が頭を下げて謝罪する。
「私には精神魔法は効かぬから、実害は無いがな・・・。そうだなこの件は黙っていてくれないか?」
「はぁ?黙るとは」
「ユリア嬢を叱らず、そのままで居させて欲しい。彼女の本来の姿を見て懸想するバカが出るかもしれないからな。パーティーやお茶会などでは役に立つ魔法だよ。」
私だけが、彼女の愛らしさを分かっていればいい。そう呟くと若干痛いものを見る目で観られたのは気のせいか?
魔封じの腕輪も彼女が学園に上がるまで外さないように依頼した。

王妃教育の基礎を終了したタイミングでユリア嬢を婚約者にするように内々で準備を進めていく。

ユリア嬢を婚約者に据える計画が狂ったのは、王妃教育にあと1年掛かることがわかったこと、曾祖母様が仰っていた"詐欺師女"が出現したことが原因だった。

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