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★デビュタント〜デビュー編〜★
婚約破棄
しおりを挟む「アルベール・デュラン公爵令息!!あなたと婚約破棄致しますわ!!」
会場の奥からとんでもない言葉が響き渡り、皆がそちらに視線を向けた。
セイラも例に違えることなく魔獣肉を食べる手を止め声のしたほうを見る。
声の発生源は…この国唯一の王女であるベアトリス王女のものであった。
そのベアトリス王女の隣には金髪の長髪を後ろで一つに縛っている青年が寄り添っていた。
顔立ちは中性的で整っており、筋肉のあまりついていない身体はスラッとしていた。
典型的な貴族令息といったイメージだ。
もっとも、セイラに言わせれば
"筋肉がなくてナヨっとしすぎね。
やっぱり男性は魔獣を倒せてナンボよね!!あんな優男お呼びでないわ!!"
と思っていたのはご愛嬌である。
そんなベアトリス王女と優男の対面に位置するのは今婚約破棄を告げられたアルベール・デュラン公爵令息。
こちら側からは彼の背中側に位置するため顔は見えないが、艶やかな漆黒の黒髪を綺麗に切り揃え、服の上からでもバランスよく筋肉が付いているのが遠目でも分かるほどだ。
"えっ、絶対にあの優男よりこちらの筋肉男のほうがいいじゃない!!"
どちらにも失礼な言い方だが、セイラはデュラン公爵令息のような筋肉のある男性が好みらしい。
そんな無礼なことを考えてる間にも話は進んでいた。
「アルベール・デュラン公爵令息、あなたは私と仲の良いシャルル・ブランシェ男爵令息に嫉妬をし、周囲にバレないよう醜い嫌がらせを行っていたそうね!!」
…どうやら、ベアトリス王女の中では筋肉男が優男に嫌がらせをしたことになっているらしい。
セイラは"嫌がらせなんてちまちましたことしなくてもあんな優男簡単に始末できるでしょうに…"と物騒なことを考えながらことの成り行きを見守っていた。
「…なっ!?…ベアトリス王女、私は誓ってブランシェ男爵令息に嫌がらせなど行っておりません!!
きっと何かの間違いかと!!」
「あなたはシャルルが嘘をついているとおっしゃいますの!?
シャルルはあなたの嫌がらせに心を痛ませ、怯えながらも、あなたに悔い改めて欲しいと!!勇気を振り絞って私にあなたの悪行を告発してくれたのですよ!!」
「私は何もしておりませんし、ブランシェ男爵令息とは本日が初対面でございます!!
彼に嫌がらせすることなどできるはずがございません!!」
筋肉男…もといアルベールはベアトリス王女に反論するが王女はアルベールが嫌がらせをしたと決めつけ聞く耳を持たない。
そんなやりとりに正義感の強いセイラは段々とムカムカしてきていた。
"いくらなんでも優男の肩を持ちすぎじゃないの!?
筋肉男の話は全く聞いてないじゃないの!!"
そう思っていても話は勝手に進んでいく。
「ベアトリス様…私のために怒ってくださり、ありがとうございます。
私はデュラン公爵令息が過ちを認め、謝罪をしてくだされば、それだけで構いません…。」
そう儚げに微笑みながら王女に告げるシャルル。
先程からベアトリス王女がシャルルを名前で呼んでいることもそうだったが、シャルルが親しげにベアトリス王女のことを名前で呼んだことに周囲は息を呑んだ。
しかし、渦中の者たちは周囲の状況には全く気が付かず、それどころか、シャルルの儚げな表情に心を打たれた王女は感極まったように宣言した。
「…なぜシャルルがこんなに苦しまなければならないの!?
早く過ちを認め、シャルルに誠心誠意謝罪をしなさい!!
そうでなければ、アルベール・デュラン公爵令息とはこの場を持って婚約破棄致しますわ!!」
「そんな…私は本当に何もしておりません!!」
「あくまで認める気はないというのね。
いいわ。それならば…
近衛!!この者をひっ捕えて牢へ入れておきなさい!!
王女である私に対する不敬と王女の友人に対する不敬よ!!」
なんともめちゃくちゃな言い分である。
しかし、王女には逆らえないのか他の貴族から擁護の声は上がらず、近衛も申し訳なさそうな表情を浮かべアルベールを拘束しようとした。
張本人のアルベールはというと絶望したかのように地面に蹲っていた。
そんなアルベールの姿を見て、セイラは咄嗟にあることを思いついた。
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