6 / 27
6. 朝のカフェテリア
しおりを挟む
「よぉ!金曜はお疲れぇっー!」
片手を上げ、陽気に挨拶する近藤。今日は濃紺のスーツにペンシルストライプのワイシャツが映えるスタイル。いつものように整えた前髪を気にしつつ、健人に近づいてくる。
「あ…お疲れっす…」
言葉少なに返事する健人。
週始まりの月曜の朝。
仕事に向かうべく足早に歩くサラリーマン。眠たげにあくびしながら歩く女性や、知り合いを見つけるや駆け寄るスーツ姿の若い男女。オフィス街のいつもの変わりない朝の風景。
高層ビルの1階に店を構えるカフェテリア。その店の軒下には、パリを彷彿させるかのように、路面に面したテーブル席がいくつか並び、朝の穏やかな日差しが降り注ぐ。
その1つに腰掛け、モーニングコーヒーを飲んでいた健人の横に、近藤は腰掛けた。
「なになに?そのうっすい反応ー!気分さがるじゃん!この前のライブそんな楽しくなかった?」
健人の肩に腕をかけ、やたらハイテンションで話しかけてくる。
「近藤さん、テンション高いすっね」
陽気な近藤とは真逆に、湿っぽく顔色が冴えない 健人が答えた。
「当たり前じゃん!すげーお気にのバンドのライブ行ってきたんだからさー、俺今日からまた仕事頑張れるわっ!」
と、健人がテーブルに置いていた紙コップのミネラルウォーターを一口飲んだ。
「ちょー、近藤さん、それ俺のっすよ…」
「なーに固いこと言ってんだよぉー!お前さぁ、何か調子悪くねぇ?さてはライブに興奮しすぎてお疲れちゃんとか?」
「…っぶっ」
健人の脳裏にブワァッと広がる、下半身に伸びた手とペニスを握りしめるワインレッドのネイルの指が鮮明に蘇り、顔を赤らめると同時に、飲んでいたコーヒーを思わず吹き出した。
「うわっ!きったねーな!お前マジ疲れてんの?意外と体力なくねぇ?」
「こっ、近藤さんが朝から変なこと言うからですよ!!!」
真っ赤になりながら、慌てふためいて、バックパックから取り出したティッシュでテーブルにこぼれたコーヒーを拭きながら、健人は動揺を誤魔化そうとする。
「へっ?俺変なこと言った?変なのは、お前の方じゃん、何赤くなってだよ、熱でもあんじゃねぇの?ライブんときも気が付きゃ、途中で抜け出してるし、終わった後も飲みに誘ったのにさっさと帰るしさー!夜にメッセージ送っても返事しねーし」
(…あ…あんな状態で近藤さんと飲みになんかいけねーよ…パンツも汚れて気持ち悪かったし…)
さらに顔を赤らめる健人。
「ほんとに調子悪いんなら、今日は帰っていいぞ。部長には俺から言っといてやるから」
近藤は心配そうに言葉をかけると、健人の肩をポンと軽く叩いた。
「そこまでじゃないっすよ、大丈夫っす」
「そっか、それならいいけどな」
髪をワシャワシャしながら健人の頭を撫でると立ち上がり、カフェテリアの席から路面へ出ようとする近藤は、何かを思い出したかのように立ち止まると振り返った。
「あ、そういや健人、1つ向こうの通りに、新しくカフェできたみたいでさ、ほら、前から噂になってたお店!コーヒー割引券もらったからさ、昼飯の後、一緒に行くか?」
「いいっすねー、行きます行きます!先輩の奢りっっすよね!?」
「こんな時だけ先輩呼ばわりって!なぁーに調子いいこと言ってんだよ!」
振り返らずに、手だけヒラヒラさせながら歩く近藤。
セルフサービスのカップを片付けながら、健人も近藤の後ろを追いかけるようにカフェを後にし、オフィスへと向かった。
片手を上げ、陽気に挨拶する近藤。今日は濃紺のスーツにペンシルストライプのワイシャツが映えるスタイル。いつものように整えた前髪を気にしつつ、健人に近づいてくる。
「あ…お疲れっす…」
言葉少なに返事する健人。
週始まりの月曜の朝。
仕事に向かうべく足早に歩くサラリーマン。眠たげにあくびしながら歩く女性や、知り合いを見つけるや駆け寄るスーツ姿の若い男女。オフィス街のいつもの変わりない朝の風景。
高層ビルの1階に店を構えるカフェテリア。その店の軒下には、パリを彷彿させるかのように、路面に面したテーブル席がいくつか並び、朝の穏やかな日差しが降り注ぐ。
その1つに腰掛け、モーニングコーヒーを飲んでいた健人の横に、近藤は腰掛けた。
「なになに?そのうっすい反応ー!気分さがるじゃん!この前のライブそんな楽しくなかった?」
健人の肩に腕をかけ、やたらハイテンションで話しかけてくる。
「近藤さん、テンション高いすっね」
陽気な近藤とは真逆に、湿っぽく顔色が冴えない 健人が答えた。
「当たり前じゃん!すげーお気にのバンドのライブ行ってきたんだからさー、俺今日からまた仕事頑張れるわっ!」
と、健人がテーブルに置いていた紙コップのミネラルウォーターを一口飲んだ。
「ちょー、近藤さん、それ俺のっすよ…」
「なーに固いこと言ってんだよぉー!お前さぁ、何か調子悪くねぇ?さてはライブに興奮しすぎてお疲れちゃんとか?」
「…っぶっ」
健人の脳裏にブワァッと広がる、下半身に伸びた手とペニスを握りしめるワインレッドのネイルの指が鮮明に蘇り、顔を赤らめると同時に、飲んでいたコーヒーを思わず吹き出した。
「うわっ!きったねーな!お前マジ疲れてんの?意外と体力なくねぇ?」
「こっ、近藤さんが朝から変なこと言うからですよ!!!」
真っ赤になりながら、慌てふためいて、バックパックから取り出したティッシュでテーブルにこぼれたコーヒーを拭きながら、健人は動揺を誤魔化そうとする。
「へっ?俺変なこと言った?変なのは、お前の方じゃん、何赤くなってだよ、熱でもあんじゃねぇの?ライブんときも気が付きゃ、途中で抜け出してるし、終わった後も飲みに誘ったのにさっさと帰るしさー!夜にメッセージ送っても返事しねーし」
(…あ…あんな状態で近藤さんと飲みになんかいけねーよ…パンツも汚れて気持ち悪かったし…)
さらに顔を赤らめる健人。
「ほんとに調子悪いんなら、今日は帰っていいぞ。部長には俺から言っといてやるから」
近藤は心配そうに言葉をかけると、健人の肩をポンと軽く叩いた。
「そこまでじゃないっすよ、大丈夫っす」
「そっか、それならいいけどな」
髪をワシャワシャしながら健人の頭を撫でると立ち上がり、カフェテリアの席から路面へ出ようとする近藤は、何かを思い出したかのように立ち止まると振り返った。
「あ、そういや健人、1つ向こうの通りに、新しくカフェできたみたいでさ、ほら、前から噂になってたお店!コーヒー割引券もらったからさ、昼飯の後、一緒に行くか?」
「いいっすねー、行きます行きます!先輩の奢りっっすよね!?」
「こんな時だけ先輩呼ばわりって!なぁーに調子いいこと言ってんだよ!」
振り返らずに、手だけヒラヒラさせながら歩く近藤。
セルフサービスのカップを片付けながら、健人も近藤の後ろを追いかけるようにカフェを後にし、オフィスへと向かった。
0
あなたにおすすめの小説
寂しいを分け与えた
こじらせた処女
BL
いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。
昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。
【完】君に届かない声
未希かずは(Miki)
BL
内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。
ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。
すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。
執着囲い込み☓健気。ハピエンです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる