ネイルの残像

有森崎あたる

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23. デートのお誘い

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《今日、会える?》

スマホの画面の文字を何度も何度も確認する千春。

「え?マジ???」

画面を見ては、驚いたり喜んだり。

「ほんとに?!」

自宅の部屋で、しばらく身じろぎもせず、喜びを噛みしめると、大声で叫んだ。

「健人から、デートのお誘いがきたっっっ!!!」

思わずガッツポーズ。

「ど、どうしよう…もうすでに緊張してきた…」








「ねえ、彰宏くん」

事務所に、ひょっこり現れた千春は、上代の横に立ちはだかった。

「定休日なのに、わざわざ店に立ち寄って、どうしたんですか?忘れ物でもしましたか?」

表情ひとつ変えずに、上代はパソコンを睨んでいた。

千春は、上代の側から離れようとせず、気づいてと言わんばかりに、髪の毛を触る。

微動だにせずに事務所で売上状況を確認している上代に、千春は擦り寄ってみせて、また髪を触る。

「どう?この髪?」

「はあ?」

「ちょっとドライヤーで巻いてみたんだけど、変かな?」

髪の毛先をくるくると指先に巻いてみては、上代に褒めて!褒めて!とアピールしてみせる。

「今、仕事中で、忙しいんですが!」

見向きもせずに、千春に言い返す。

「ちょっとぐらい、いいじゃーん!」

戯れる千春に、はいはい、と頷くと、

「いいんじゃないですか?今日も可愛いですよ…」

「ほんと?ほんと?じゃあさぁー!このネイルは?新作なんだぁー!!!さっき慌てて行ってきて、やってもらったんだぁ~」

バッ!と、10本の指を広げて、上代の目の前にネイルを披露する。

ワインレッドのベースに、ラメや、キラキラと光るラインストーンがあしらわれている。

「えらく、気合が入ってますね、もしかして?健人君ですか?」

ふふっと、千春は嬉しそうに微笑み、頬を赤らめながら、

「今日会うんだぁ…これから」

「ほほぉー!」

やっと仕事の手を止め、千春の方に振り返ると、上代は、

「やっと仲直りできましたか?」

うん…と、千春は頷くと、

「まあね…あれから健人と話し合って…」

「それで?」

「まずは、お互いをよく知ろうってなって…今日、会う約束したんだぁ…」

照れながら話す千春。

「つまり?付き合い始めたということですね?」

「ま、まあそうなるよね」

頬を赤らめる千春を、マジマジと見つめると、上代は驚いてみせた。

「今更、照れることもないでしょう?バージンなわけでもありませんし」

「彰宏くんっっっ!!!」

ちょっと!ちょっと!!と言いたげな千春は、声を荒げた。

「今!それ言わないでくれる?!僕にとっての初恋は、健人ひとりなんだから!!!」

と、腕を組みながら、プンプン!と頬を膨らませた。

上代は、苦笑いしながら、

「そうですね、やっと願いが叶ったわけですから…」

「そう!そうなんだ!それでね、最初は、2人の時間をたくさん持とうって健人が…」

とろけそうな笑みを浮かべながら、嬉しそうに話す千春。
そんな彼を慈しむように眺めると、ふむ…と腕組みをした上代は、

「まあ、彼は元々ノンケですしね、すぐに男と…言うわけにはいかないでしょうし、ゆっくり時間をかけて進むのもいいでしょうね」

「うん…頭っから、拒絶するんじゃなくて、こんな僕を認めてくれてるだけでも、嬉しいんだ」

ニコッと微笑む千春を見て、上代は、祈るように囁いた。

「私の可愛い従兄弟殿、幸せになりなさい」

「ありがとう!彰宏くん!じゃあ、行ってくるね!」

嬉しそうに千春は、事務所を後に、駆け出していった。

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