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こうして全てが上手くいくと思っていた計画だが、一つだけフランシスカの計算外なことが起きた。
「ごめんなさい、ジャック。本当にあればっかりは悪気はなかったの」
「………………もう、いいよ。頭をあげて」
「許してくれるの?」
「許すも何ももうしちゃったことは仕方ないでしょう?」
ジャックの機嫌が完全に治った訳ではない。今後のことを考えると頭は痛いし、この件が終わって『ジャック』に戻ったらお屋敷に引きこもってしまいたいくらいだ。けれど引きこもる引きこもらないは全てが終わらなければ選択する余地すら与えられない。だからジャックは生まれて初めて深々と頭を下げるフランシスカを許すしかないのだ。わざわざ靴を脱いでソファに乗ったかと思えば足を畳んで両手に額を付けた時は何かと思ったが、これが彼女なりの最大級の謝罪らしい。一体どこから仕入れてきた情報なのか不明ではあるものの、彼女の表情は真剣そのもの。ならば一件が片付いた後にその話をじっくりと聞かせてもらうことでこの話は片付いたことにしてしまおう。
「それに計画が台無しになるってことはないんでしょう?」
それよりも今大事なのは今回のフランシスカのヘマで計画が変わってしまわないかということだ。頭をあげたフランシスカが開けたスペースにジャックは腰を掛けて、最重要なことを尋ねた。するとフランシスカは今までとは打って変わってキラッキラの顔をジャックへと向けると、開いた右手で胸元をパチッと叩いた。
「そっちは大丈夫! むしろ想定外の大収穫があったくらいよ! まさかあんなに簡単に『アイリーン』が釣れるなんてね!」
ホクホクと喜びを見せるフランシスカ。どうやら今回の、今日の昼頃起きた事件での被害者はジャックだけらしい。
なら安いもの……なのかなぁ。
ジャックは遠くを見つめながら、今日の出来事とフランシスカの謝罪内容を重ね合わせた。
遡ること数刻前――
ジャックが記憶していた通り、男子生徒は全員もれなく実技のテストが待ち受けていた。もちろん入学から一度たりとも足を運んでいない『ジャック』もその対象には含まれている。それを理解していたフランシスカは任せてくれと自信満々な視線をジャックへと送り、教室を後にした。本当に大丈夫なのだろうか? ジャックは心配になりながらも、テストを見守りについていくことも出来ず、だからといって護衛のレッドを向かわせるわけにもいかない。仕方ないとジャックは渋々『フランシスカ』として大人しくお裁縫の授業を受けることにした。
残されたジャックは気を少しでも紛らわせるために一心不乱にチクチクと布に糸の跡をつけていく。そしてわずか半刻と経たずに見事な薔薇の刺繍を仕上げて見せた。ジャックが刺繍を始めたのは半年前。フランシスカとして学園にやってきて、初めてこの授業を受けた時のことである。けれどもたった半年にして才能を開花させ、急成長を遂げていたのだ。おそらく今のジャックの刺繍技術は幼少期より家庭教師から教わっていたフランシスカをも凌ぐことだろう。それにはいつものお茶会メンバーだけではなく、教室中のご令嬢達、そして先生までもが感嘆の声を上げた。
「さすがシザー家のご令嬢だわ!」
「是非私にも教えていただけませんか?」
「わ、私も!」
「もちろんですわ」
こうして教室ではジャックもとい『フランシスカ』の刺繍講座が開かれることとなった。
そして時同じくして、『ジャック』は『ジャック』で男子生徒達に取り囲まれていた。
ただしきゃっきゃと高い声が部屋中を飛び交っているジャックとは違い、フランシスカを取り囲む者のほとんどが顔を地面に突っ伏して声すらも上げることはないのだが。
「ごめんなさい、ジャック。本当にあればっかりは悪気はなかったの」
「………………もう、いいよ。頭をあげて」
「許してくれるの?」
「許すも何ももうしちゃったことは仕方ないでしょう?」
ジャックの機嫌が完全に治った訳ではない。今後のことを考えると頭は痛いし、この件が終わって『ジャック』に戻ったらお屋敷に引きこもってしまいたいくらいだ。けれど引きこもる引きこもらないは全てが終わらなければ選択する余地すら与えられない。だからジャックは生まれて初めて深々と頭を下げるフランシスカを許すしかないのだ。わざわざ靴を脱いでソファに乗ったかと思えば足を畳んで両手に額を付けた時は何かと思ったが、これが彼女なりの最大級の謝罪らしい。一体どこから仕入れてきた情報なのか不明ではあるものの、彼女の表情は真剣そのもの。ならば一件が片付いた後にその話をじっくりと聞かせてもらうことでこの話は片付いたことにしてしまおう。
「それに計画が台無しになるってことはないんでしょう?」
それよりも今大事なのは今回のフランシスカのヘマで計画が変わってしまわないかということだ。頭をあげたフランシスカが開けたスペースにジャックは腰を掛けて、最重要なことを尋ねた。するとフランシスカは今までとは打って変わってキラッキラの顔をジャックへと向けると、開いた右手で胸元をパチッと叩いた。
「そっちは大丈夫! むしろ想定外の大収穫があったくらいよ! まさかあんなに簡単に『アイリーン』が釣れるなんてね!」
ホクホクと喜びを見せるフランシスカ。どうやら今回の、今日の昼頃起きた事件での被害者はジャックだけらしい。
なら安いもの……なのかなぁ。
ジャックは遠くを見つめながら、今日の出来事とフランシスカの謝罪内容を重ね合わせた。
遡ること数刻前――
ジャックが記憶していた通り、男子生徒は全員もれなく実技のテストが待ち受けていた。もちろん入学から一度たりとも足を運んでいない『ジャック』もその対象には含まれている。それを理解していたフランシスカは任せてくれと自信満々な視線をジャックへと送り、教室を後にした。本当に大丈夫なのだろうか? ジャックは心配になりながらも、テストを見守りについていくことも出来ず、だからといって護衛のレッドを向かわせるわけにもいかない。仕方ないとジャックは渋々『フランシスカ』として大人しくお裁縫の授業を受けることにした。
残されたジャックは気を少しでも紛らわせるために一心不乱にチクチクと布に糸の跡をつけていく。そしてわずか半刻と経たずに見事な薔薇の刺繍を仕上げて見せた。ジャックが刺繍を始めたのは半年前。フランシスカとして学園にやってきて、初めてこの授業を受けた時のことである。けれどもたった半年にして才能を開花させ、急成長を遂げていたのだ。おそらく今のジャックの刺繍技術は幼少期より家庭教師から教わっていたフランシスカをも凌ぐことだろう。それにはいつものお茶会メンバーだけではなく、教室中のご令嬢達、そして先生までもが感嘆の声を上げた。
「さすがシザー家のご令嬢だわ!」
「是非私にも教えていただけませんか?」
「わ、私も!」
「もちろんですわ」
こうして教室ではジャックもとい『フランシスカ』の刺繍講座が開かれることとなった。
そして時同じくして、『ジャック』は『ジャック』で男子生徒達に取り囲まれていた。
ただしきゃっきゃと高い声が部屋中を飛び交っているジャックとは違い、フランシスカを取り囲む者のほとんどが顔を地面に突っ伏して声すらも上げることはないのだが。
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