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どちらを選ぶべきかと悩んでいると、少年はダリュカの背中を後押しする情報を与えてくれる。
「一気に読むならこの本ですが、一つ一つに特化した本はA棚とNE棚にある本がオススメです。そういえば西方の大きなお祭り、一般的に知られているのとは別の日程でもう一つ地元民のみのものがあって」
「その話乗った」
「ありがとうございます。あなたに会えてよかった」
「大げさだろ。早速タイトルと棚をこれに書いてくれ」
「わかりました。ちょっとお借りしますね」
少年はダリュカからメモを受け取るとサラサラとペンを走らせていく。
書いてもらったものを頼りに本を集めて、少年の元に帰る。
「あのさ」
「見つからない本がありました?」
「いや、全部あったけど。それよりここじゃ目立つだろうし、奥に入らないか?」
「奥……」
ダリュカが指差す先にあるのは仮眠場所として解放された司書室である。飲食可能で、ドアも閉められるので隠れ場所としてはちょうどいい。だが少年は先ほどとは打って変わって身体を硬くする。
本を取りに行った際に感じたが、ここは少々入り組んでいて、階段も多い。蔵書数が多いだけあって棚は多く、高さもまちまちだ。
どこにどんな本があるか把握している彼がここを隠れ場として選んだ理由がよくわかる。手が届くほどの近距離にいるとはいえ、不意をつけば簡単に逃げられると思ってのことだろう。
だが個室に入ってドアを閉められればそうはいかない。窓があると言ってもここは3階。近くに飛びうつれそうな木もない。ウサギ獣人ならひょいっと飛べるが、人間の少年には難しいだろう。
少年の今の状況を考えると素直に頷けないのは分かる。だが、図書館は飲食厳禁。入り口にも書いてあったし、本を持ってうろついていた時に職員から「これから食事をとるようなら奥の部屋を使ってください。それと出来れば王子とする時も……」と声をかけられた。どうやらここで王子が来るのを待つ算段だと思われたらしい。そのようにすると伝えて戻ってきたので、ダリュカが運んできた食事を図書館内で取るのはやめて欲しい。
「個室が嫌なら無理に図書館の中で食事を済ませろとは言わない。だがここはダメだ。ルール違反だし、本が汚れる」
「それも、そう……ですよね」
「とりあえず俺はこの本奥に置いたら食事取りに行ってくるから」
「え、もう?」
「ここもいつまでいられるか分からない以上、早めに約束を果たした方がいいだろ。なるべく持ち運べるようなのとか選んでいつも何かしら奥に置いておくようにするから、好きな時に食うなり持って行くなりしてくれ」
「……はい」
「心配しなくても襲わないし、だれかを呼んだりもしない」
怯える少年を置いて、ダリュカは食堂へと向かった。
たくさん並ぶ料理の中からチーズ、ナッツに果実など、しばらく放置していても大丈夫そうなものを中心に選んでトレイに乗せて行く。
パンはバケットを袋に入れてバッグに入れる。またどこかに長時間潜む者がいることを想定してか、飲み物の隣にいくつか木のボトルが置いてある。ご自由にお使いくださいとの張り紙があるので、遠慮なく三本借りて水を注いだ。一本は自分で飲む用、そして二本は少年用だ。
足りなくなったら自由に取りに来られるダリュカとは違い、場合によっては図書館から去らねばならない彼には多めに持たせてやらねばと思ったのである。ボトルが空になればそれにナッツやなんかを入れて持ち運ぶことも出来る。袋に入れてもいいが、手元にボトルがあればいざという時にどこかで飲み水も補充できる。持って行かせるに越したことはない。
小銭入れとして持ってきた小さな袋を持って行かせるのもーー。
「ナッツ、もう少しもらっておくか」
「ダリュカ!」
「お前も食事をしにきたのか」
「ああ、それにしてもいつにも増してすごい量だな」
キルシュカに言われて手元を見ればナッツ以外のものも増えてしまっていた。まだ一日半あるので余るということはないが、目を丸くされても仕方ないだろう。
「なるべく図書館から出たくないから多めにとってある」
「なるほどな~。俺は昼過ぎに一回食べにきてるが、スープとかも美味いぞ? 取っていかないのか?」
スープか。余裕があるうちに温かいものを食べさせておくというのも……なんて、考えがよぎったがすぐに打ち消した。過度な世話を焼いてやることもないだろう。
「トレイに乗らないからいい」
「持って行ってやろうか?」
「いや、食べたくなったら後でもらいにくる」
「そっか。んじゃ俺はここで食べて行くからまた後で」
「ああ」
キルシュカと別れて司書室に向かうと、部屋の端に雑に置かれた布団を発見した。ダリュカが覗いた時には綺麗に畳まれていたはずである。使われたにしてはそれ以外の場所が整ったままなのは不自然すぎる。
中で待っていたのは彼なりの信頼の証なのだろう。だが隠れるならもっと上手くやらなければ見つかってしまう。今までどうやって逃げてきたのか。指摘したい気持ちをグッと堪え、トレイを置いて席に着く。
「一気に読むならこの本ですが、一つ一つに特化した本はA棚とNE棚にある本がオススメです。そういえば西方の大きなお祭り、一般的に知られているのとは別の日程でもう一つ地元民のみのものがあって」
「その話乗った」
「ありがとうございます。あなたに会えてよかった」
「大げさだろ。早速タイトルと棚をこれに書いてくれ」
「わかりました。ちょっとお借りしますね」
少年はダリュカからメモを受け取るとサラサラとペンを走らせていく。
書いてもらったものを頼りに本を集めて、少年の元に帰る。
「あのさ」
「見つからない本がありました?」
「いや、全部あったけど。それよりここじゃ目立つだろうし、奥に入らないか?」
「奥……」
ダリュカが指差す先にあるのは仮眠場所として解放された司書室である。飲食可能で、ドアも閉められるので隠れ場所としてはちょうどいい。だが少年は先ほどとは打って変わって身体を硬くする。
本を取りに行った際に感じたが、ここは少々入り組んでいて、階段も多い。蔵書数が多いだけあって棚は多く、高さもまちまちだ。
どこにどんな本があるか把握している彼がここを隠れ場として選んだ理由がよくわかる。手が届くほどの近距離にいるとはいえ、不意をつけば簡単に逃げられると思ってのことだろう。
だが個室に入ってドアを閉められればそうはいかない。窓があると言ってもここは3階。近くに飛びうつれそうな木もない。ウサギ獣人ならひょいっと飛べるが、人間の少年には難しいだろう。
少年の今の状況を考えると素直に頷けないのは分かる。だが、図書館は飲食厳禁。入り口にも書いてあったし、本を持ってうろついていた時に職員から「これから食事をとるようなら奥の部屋を使ってください。それと出来れば王子とする時も……」と声をかけられた。どうやらここで王子が来るのを待つ算段だと思われたらしい。そのようにすると伝えて戻ってきたので、ダリュカが運んできた食事を図書館内で取るのはやめて欲しい。
「個室が嫌なら無理に図書館の中で食事を済ませろとは言わない。だがここはダメだ。ルール違反だし、本が汚れる」
「それも、そう……ですよね」
「とりあえず俺はこの本奥に置いたら食事取りに行ってくるから」
「え、もう?」
「ここもいつまでいられるか分からない以上、早めに約束を果たした方がいいだろ。なるべく持ち運べるようなのとか選んでいつも何かしら奥に置いておくようにするから、好きな時に食うなり持って行くなりしてくれ」
「……はい」
「心配しなくても襲わないし、だれかを呼んだりもしない」
怯える少年を置いて、ダリュカは食堂へと向かった。
たくさん並ぶ料理の中からチーズ、ナッツに果実など、しばらく放置していても大丈夫そうなものを中心に選んでトレイに乗せて行く。
パンはバケットを袋に入れてバッグに入れる。またどこかに長時間潜む者がいることを想定してか、飲み物の隣にいくつか木のボトルが置いてある。ご自由にお使いくださいとの張り紙があるので、遠慮なく三本借りて水を注いだ。一本は自分で飲む用、そして二本は少年用だ。
足りなくなったら自由に取りに来られるダリュカとは違い、場合によっては図書館から去らねばならない彼には多めに持たせてやらねばと思ったのである。ボトルが空になればそれにナッツやなんかを入れて持ち運ぶことも出来る。袋に入れてもいいが、手元にボトルがあればいざという時にどこかで飲み水も補充できる。持って行かせるに越したことはない。
小銭入れとして持ってきた小さな袋を持って行かせるのもーー。
「ナッツ、もう少しもらっておくか」
「ダリュカ!」
「お前も食事をしにきたのか」
「ああ、それにしてもいつにも増してすごい量だな」
キルシュカに言われて手元を見ればナッツ以外のものも増えてしまっていた。まだ一日半あるので余るということはないが、目を丸くされても仕方ないだろう。
「なるべく図書館から出たくないから多めにとってある」
「なるほどな~。俺は昼過ぎに一回食べにきてるが、スープとかも美味いぞ? 取っていかないのか?」
スープか。余裕があるうちに温かいものを食べさせておくというのも……なんて、考えがよぎったがすぐに打ち消した。過度な世話を焼いてやることもないだろう。
「トレイに乗らないからいい」
「持って行ってやろうか?」
「いや、食べたくなったら後でもらいにくる」
「そっか。んじゃ俺はここで食べて行くからまた後で」
「ああ」
キルシュカと別れて司書室に向かうと、部屋の端に雑に置かれた布団を発見した。ダリュカが覗いた時には綺麗に畳まれていたはずである。使われたにしてはそれ以外の場所が整ったままなのは不自然すぎる。
中で待っていたのは彼なりの信頼の証なのだろう。だが隠れるならもっと上手くやらなければ見つかってしまう。今までどうやって逃げてきたのか。指摘したい気持ちをグッと堪え、トレイを置いて席に着く。
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