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第一章 見習い聖女編
第十六話 王城へ
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登城の日。
エレーナが屋敷を出ると、二十名ほどの騎士が待ち構えていた。
その身に纏うは聖教徒の証である白銀の鎧。
アストレア聖教の聖教徒騎士団である。
「聖女エレーナ様に敬礼!」
金の刺繍が入ったマントを翻し、大柄で熊のような男が叫ぶ。
マントを身に着けているのはこの男を含め二人。
「「「はっ!」」」
ジャキン、と全員が一斉に剣を抜き、胸の前に掲げた。
あまりの迫力に飛び上がりそうになったが、エレーナはエレガントに我慢した。
「敬礼止め!」
マントの大男の号令で、騎士たちが一斉に剣を鞘に納める。
一糸乱れぬ動きに感嘆の声がでそうになるが、エレーナはエレガントに我慢した。
「騎士の皆さん、本日はどうかよろしくお願いします」
あくまで平静を装うと、大柄の男が一歩前に出てマントを翻しながら直立敬礼をした。
「お初にお目にかかります聖女様。我輩は徒騎士団団長のドルーズ・ウーゴでござる。本日は聖女様の護衛、謹んで遂行させていただきまする」
豪華なマントを身につけたもう一人の男が、ドルーズ隊長の肩を気安く叩く。
「もう、隊長ったら、堅苦しいんすよ。聖女様といっても、この通りまだ年端もいかない女の子なんすから、もっと砕けた感じの方が喜ばれるっすよ? ね、聖女様?」
男の目は糸のように細く、笑っているのにもかかわらず表情がぼやけて見える。
まるで狐のような男だった。
エレーナの眉がピクリと動く。
今ならわかる。
男のふざけた態度の意味を知っている。
エレーナに探りを入れているのだ。
どれだけ失礼な態度が許されるのかと。
エレーナの反応次第では、この男の態度はさらに馴れ馴れしくなっていくだろう。
父を侮辱した、あの時のグリッセンのように。
――冗談じゃないわ。
エレーナは怒りを隠そうともせずに睨みつける。
「初対面にも関わらず、名を名乗ることもせずに聖女である私に馴れ馴れしく話しかけるとは……。これがあの音に聞こえた聖教徒騎士団のレベルなのですね。正直失望しましたわ」
狐顔の男が糸目を見開いて、冷や汗を流しながら直立敬礼をした。
「し、失礼しました! 俺っち……いや、わたしは聖教徒騎士団副団長を努めさせていただいております、クリム・ハーメイです! 聖女様に対する失礼な物言い、大変申し訳ありませんでした!」
隣を見ると、騎士団長のドルーズが、オーガのような顔で副団長のクリムを睨んでいた。
こめかみには青い血管が、針で指したら破裂するのではないかってくらい、極太く浮き出ている。
――こ、怖っ。
ドルーズは雷鳴のような声でクリムを怒鳴りつけた。
「こ、こ、このクソうつけ者がぁぁぁっ! よりによって聖女様をお守りする大事な初任務でこのような大失態をしでかすとは! そこに直れ! その薄汚い首、叩き切ってくれるわぁぁぁっ!」
なんと本当に剣を抜いてしまった。
「ひ、ひぃぃぃっ! せ、聖女様! どうか隊長をお止めくださいぃぃっ!」
――は? この程度のミスで殺しちゃうの!?
内心で焦りながらも、エレーナはエレガントに振る舞った。
「止めなさい、ドルーズ。クリムの先の言動は聖女である私を試したのです。そうですよね、クリム? それでどうでしたか? 私はあなた方が仕えるに値する人物足り得ましたか?」
いいから話を合わせなさい、と瀕死の副団長へ必至のアイコンタクトをした。
「へ? あ、あー、そうっす! そうっすよ! 俺っちは聖女様を試しちゃったんす! その結果は合格も合格、大合格っすよ! ぜひ仕えさせていただきたい所存っす! なんつって! いや、本当っすよ! 仕えたいっす! 仕えさせてくださいっす!」
「む? なるほど、そうであったか。だがいきなり聖女様を試すのは関心せんな。今度からは聖女様にお伺いをたててから試すが良い」
ドルーズは剣を鞘に収めた。
「了解っす!」
なにかずれているような気がするが、とりあえず無事に挨拶も終わり、エレーナは馬車へ歩いた。
馬車の前では騎士団の鎧に身を包んだグリッセンが、直立敬礼のまま待機していた。
元々凛々しい顔をしているグリッセンだが、髪を整え鎧を着ると更に男らしさが増している。
エレーナが馬車に到着するタイミングで、グリッセンが扉を開けた。
その間、ずっと目を伏せている。
これでいい。
これが正しい関係なのだ。
エレーナが主で、グリッセンは従。
主であるエレーナが距離感を間違えると、従であるグリッセンがその応対に迷うことになる。
もう軽口で語り合うことができない寂しさはあるが、これでいいのだ。
エレーナが馬車に乗り込むと、グリッセンがなにも言わずに追従する。
もちろんエレーナもグリッセンに声をかけることはない。
「とてもエレガントでございます、エレーナ様。八十点です」
先に乗っていたシスター・クレアが初めて八十点以上をを出してくれた。
その横に座るサイモン教皇も満足げに頷いている。
「ありがとう、シスター・クレア」
馬車は動き出す。
目指すは王城。
エレーナが屋敷を出ると、二十名ほどの騎士が待ち構えていた。
その身に纏うは聖教徒の証である白銀の鎧。
アストレア聖教の聖教徒騎士団である。
「聖女エレーナ様に敬礼!」
金の刺繍が入ったマントを翻し、大柄で熊のような男が叫ぶ。
マントを身に着けているのはこの男を含め二人。
「「「はっ!」」」
ジャキン、と全員が一斉に剣を抜き、胸の前に掲げた。
あまりの迫力に飛び上がりそうになったが、エレーナはエレガントに我慢した。
「敬礼止め!」
マントの大男の号令で、騎士たちが一斉に剣を鞘に納める。
一糸乱れぬ動きに感嘆の声がでそうになるが、エレーナはエレガントに我慢した。
「騎士の皆さん、本日はどうかよろしくお願いします」
あくまで平静を装うと、大柄の男が一歩前に出てマントを翻しながら直立敬礼をした。
「お初にお目にかかります聖女様。我輩は徒騎士団団長のドルーズ・ウーゴでござる。本日は聖女様の護衛、謹んで遂行させていただきまする」
豪華なマントを身につけたもう一人の男が、ドルーズ隊長の肩を気安く叩く。
「もう、隊長ったら、堅苦しいんすよ。聖女様といっても、この通りまだ年端もいかない女の子なんすから、もっと砕けた感じの方が喜ばれるっすよ? ね、聖女様?」
男の目は糸のように細く、笑っているのにもかかわらず表情がぼやけて見える。
まるで狐のような男だった。
エレーナの眉がピクリと動く。
今ならわかる。
男のふざけた態度の意味を知っている。
エレーナに探りを入れているのだ。
どれだけ失礼な態度が許されるのかと。
エレーナの反応次第では、この男の態度はさらに馴れ馴れしくなっていくだろう。
父を侮辱した、あの時のグリッセンのように。
――冗談じゃないわ。
エレーナは怒りを隠そうともせずに睨みつける。
「初対面にも関わらず、名を名乗ることもせずに聖女である私に馴れ馴れしく話しかけるとは……。これがあの音に聞こえた聖教徒騎士団のレベルなのですね。正直失望しましたわ」
狐顔の男が糸目を見開いて、冷や汗を流しながら直立敬礼をした。
「し、失礼しました! 俺っち……いや、わたしは聖教徒騎士団副団長を努めさせていただいております、クリム・ハーメイです! 聖女様に対する失礼な物言い、大変申し訳ありませんでした!」
隣を見ると、騎士団長のドルーズが、オーガのような顔で副団長のクリムを睨んでいた。
こめかみには青い血管が、針で指したら破裂するのではないかってくらい、極太く浮き出ている。
――こ、怖っ。
ドルーズは雷鳴のような声でクリムを怒鳴りつけた。
「こ、こ、このクソうつけ者がぁぁぁっ! よりによって聖女様をお守りする大事な初任務でこのような大失態をしでかすとは! そこに直れ! その薄汚い首、叩き切ってくれるわぁぁぁっ!」
なんと本当に剣を抜いてしまった。
「ひ、ひぃぃぃっ! せ、聖女様! どうか隊長をお止めくださいぃぃっ!」
――は? この程度のミスで殺しちゃうの!?
内心で焦りながらも、エレーナはエレガントに振る舞った。
「止めなさい、ドルーズ。クリムの先の言動は聖女である私を試したのです。そうですよね、クリム? それでどうでしたか? 私はあなた方が仕えるに値する人物足り得ましたか?」
いいから話を合わせなさい、と瀕死の副団長へ必至のアイコンタクトをした。
「へ? あ、あー、そうっす! そうっすよ! 俺っちは聖女様を試しちゃったんす! その結果は合格も合格、大合格っすよ! ぜひ仕えさせていただきたい所存っす! なんつって! いや、本当っすよ! 仕えたいっす! 仕えさせてくださいっす!」
「む? なるほど、そうであったか。だがいきなり聖女様を試すのは関心せんな。今度からは聖女様にお伺いをたててから試すが良い」
ドルーズは剣を鞘に収めた。
「了解っす!」
なにかずれているような気がするが、とりあえず無事に挨拶も終わり、エレーナは馬車へ歩いた。
馬車の前では騎士団の鎧に身を包んだグリッセンが、直立敬礼のまま待機していた。
元々凛々しい顔をしているグリッセンだが、髪を整え鎧を着ると更に男らしさが増している。
エレーナが馬車に到着するタイミングで、グリッセンが扉を開けた。
その間、ずっと目を伏せている。
これでいい。
これが正しい関係なのだ。
エレーナが主で、グリッセンは従。
主であるエレーナが距離感を間違えると、従であるグリッセンがその応対に迷うことになる。
もう軽口で語り合うことができない寂しさはあるが、これでいいのだ。
エレーナが馬車に乗り込むと、グリッセンがなにも言わずに追従する。
もちろんエレーナもグリッセンに声をかけることはない。
「とてもエレガントでございます、エレーナ様。八十点です」
先に乗っていたシスター・クレアが初めて八十点以上をを出してくれた。
その横に座るサイモン教皇も満足げに頷いている。
「ありがとう、シスター・クレア」
馬車は動き出す。
目指すは王城。
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