JとRの一流論

伸蔵

文字の大きさ
1 / 1

JとRの一流論

しおりを挟む
俺はR、盗人だ。
盗人と言ってもただの盗人じゃない、俺に盗めない者など無い、天才的な盗人だ。

つい先週だって、あのナポレオン・ボナパルトの義娘、オランダ王妃オルタンス・ド・ボアルネが一時期所有していたとされると20カラットのピンクダイヤ[オルテンシア]をかの有名なルーブル美術館から盗んだばかりだ。
盗んだ過程は少し粗く、スマートに手に入れたとは言い難いがそれでも結果、物は俺の手の中にある。

俺は欲しい物なら何でも盗むし、何でも手に入れてきた。ただ、俺1人ではこう上手く行かない。相棒、いや親父と言った方がいいかな。ジョージの存在がでかい。
表向きは俺の行きつけのバーのマスターだが、情報屋であり、売買の仲介屋でもある。
俺はジョージの情報を盲目的に信じてる。今まで大きく外れた事は無いし、何よりこの情報で命拾いした事が何度となくあったからだ。仕事の腕もいい、盗人稼業は仲介屋無しには成立しない。
どんなに高価な物を盗んだって、下手に売ろうものならすぐに足がつき、逃亡生活を続けなきゃいけなくなるし、土台盗品を何の信用も無しに買い取ってくれる世間知らずはこの世にそうはいない。
ジョージはそんな難しい仕事をいつもいとも容易くこなしてくれる。

そんなジョージがこの前俺に気掛かりな事を言ったんだ。俺も相当飲んでたし、その時はそこまで気にならなかったんだが、ジョージは確かにこう言ったんだ。
「R、お前さんも早く一流にならなきゃな。」って、つまり今の俺は一流じゃないって事だろう。
もし、あれが本当にあった会話なら、納得行かない。到底納得できる事じゃ無いぜ。ジョージも飲んでいたし、酒のせいかとも考えたがそんな筈は無い。
今までジョージの言った事で意味が無い事など唯の一度も無かったからだ。

翌晩、俺はジョージに真相を確かめるべくバーへと向かった。
道中もずっと考えていたが、俺の事をジョージが一流と認めたく無い理由があるとすれば、これしか無い。
ジョージはアルセーヌ・ルパンが好きで、俺はルパンじゃ無いって事だ。
バーに着き、ジョージに会釈をするといつものバーボンのロックが出された。
それを飲みきる前に、我慢出来ずにジョージに問いかけた。

「ジョージ、この前の話だが、分かったよ。」

「何だい?珍しいじゃないか、こんな時間に口を開くなんて。」

「いや何、この前の話がどうしても気になってね。」

「この前の話?はて、なんの事だい?」

「おいおい、分かっているくせに。この前俺が一流じゃ無いって話をしてきただろう?あの事だけど、あんたが俺に何を言いたいか分かったんだよ。」

「ああ、ああ、あの事ね。俺のつまらん親心だよ。聞き流してくれりゃあ、いいんだよ。」

「いやいや、ジョージ。俺はあんたの言う事だけは素直に聞くって決めてるんだ。まあ、聞いてくれ。ジョージ、あんたは綺麗に仕事をした時俺を褒めてくれただろう?まるでアルセーヌ・ルパンみたいな見事な仕事だったって。」

「ああ、あの時の仕事は上手かったなぁ。他の客がいなきゃその時の話をもう一度振り返りながらお前と飲みたいもんだ。」

「確かに、でも俺の基本的なやり方はそんな上手く無い。怪我人も出すし、時には死者まで出しちまう。特に前回のルーブル美術館爆破は警備員・美術館の学芸員・一般客併せて7名死んだし、重軽傷者は30名を超える、テロ行為と言われてもしょうがない結果となっちまった。全て俺の仕事が雑だったせいだが、ただ言わせてもらうと今の警備は尋常ではない強固なものになっちまってる。ジョージも分かってくれると思うが、あんな所から人・物一切傷つけずに狙った物を手に入れるなんて無理だぜ。あんたはそれでもやれる奴が一流だって言いたいんだろうが、そんな奴はいないし、今後も現れないぜ。」

「R、お前そんなこと考えてたのか。確かに俺はルパンの様に盗める事が出来れば良いと思ってる。ただ、それは理想の話で現実はそんなに甘くない事くらい知っているさ。お前のやり方は確かに荒い所もあるが、やっぱりお前は特別さ。前回の仕事だってお前以外には出来ないと思っとるよ。」

「そうなのかい。ジョージがそう思ってくれているんなら気が楽になったよ。じゃあ、俺に足りない点ってのは何なんだい?」

「さっきも言ったがお前は特別だよ。個人的にもそうなんだが、盗人としても天才さ。ただ、まだ無駄に労力を使っている様な気がしてね。まあ、老人の戯言さ、余り気にしないでおくれ。いつまでもここにいる訳にはいかないんでね。仕事してくるよ。」

そう言い残して、ジョージはバーのマスターとして他の客の相手をしに行った。

何だよジョージ。気になるぜ。
その日は早々にバーを後にした。解決されなかった問題をやっつける為だ。
数十カ所ある自宅の中からいつもはランダムに選んで休むのだが、今晩は1番近い所へと向かう事にした。
考える時間をより多く取りたいのと、バーの近くのあの部屋が落ち着くので考えがまとまり易いと考えたからだ。

ベッドに寝転んで見るとやはりここは落ち着く。いい場所だ。眠気がきたが少し考え始めたら覚醒してきた。
ジョージが俺に言ってくれた事を1つずつ思い返してみる。
どれも恩義せがましくなく、心に染み入る様な台詞ばかりだ。
ジョージへの感謝の気持ちが湧いてくるばかりで、イマイチ本題へのヒントが掴めない。今度ジョージにお礼の品でも持って行こうかと、考えが本筋から脱線した時に、ふとある考えが浮かんだ。
今からすぐにジョージのバーに向かいたい所だが、外はすっかり明るくなっている。ジョージも俺と一緒で寝ぐらを幾つか用意している様で把握していない。
俺クラスになると探し出すのはさほど難しい話では無いが、踏み込まないのが俺たちの稼業の暗黙のルールだ。
さすがに俺も疲れたし、今は寝よう。
答えが見つかって気持ち良く寝られそうだ。

目覚めるとすっかり夕暮れ時となっていた。もう間もなく暗くなるだろう。
すぐにでもジョージと話したい所だが、ルーティンワークのトレーニングをサボる訳にはいかない。身体の仕上がり具合がそのまま生死に直結する事になり得るからだ。2時間みっちり汗を流した後、はやる気持ちを抑えつつシャワーを浴び、着替えてからいよいよお待ちかねの時間だ。

ジョージのバーはいつも流行るでもなくかといって廃れる訳でも無い、適量の客がいつもいる。恐らくだがジョージがそうコントロールしているんだろう。そういう事が出来る男だ。
ジョージに軽く会釈するとあちらからこっちに声を掛けてきた。

「また来てくれたのかい?まさか昨日の件じゃないだろうね」

意味深な微笑みを見て気付いたんだが、ジョージは俺が今日来る事さえコントロールしていたのかも知れない。まあ、俺の意思もそこにはしっかり入っているのだから望むところだ。

「参ったよジョージ。御察しの通りその件の答えがわかった様な気がしてね。今日は一流に認定して貰いに来たんだよ。」

「分かってはいたがお前さんは本当に負けず嫌いというか意思が固いと言うか、今日は客も少ないし引きも早いだろう、気がすむまで付き合うよ。」

「ありがとう。そうして貰えると助かるよ。」

今日は話をする為に帰りの早い客ばかり入っているのか?恐ろしい男だなぁなんて思いつつ、本題に入る

「俺は昨日、あれから色々考えてまずあんたに御礼を言わなきゃいけない事に気が付いたんだ。まずはいつもありがとう。俺はジョージがいないと何も出来やしない。」

「おやおや、そんな事かい?俺はお前が駆け出しの時から知って目を掛けてきた息子みたいなもんだ。仕事の報酬だって貰い過ぎな位貰ってるし、何よりお前は俺の夢を実現してくれる信仰の対象でもある。御礼をする事はあっても、される事は無いよ。」

嬉しい事を言ってくれる。にやついている場合じゃないがつい笑いたくなるのを我慢しながら俺は続けた。

「そこで気付いた訳だ。俺はあんた無しじゃ生きられない。あんたの情報無しじゃ、仕事をやりきる事さえ出来ないだろうし、とっくにとっ捕まっちまってるだろう。仮に成功したって、物を処理する事が出来ず途方に暮れていただろう。一匹狼の俺にあんたの様なコミュニティーを作る事など3度生まれ変わったって無理な話だ。つまり、俺は半人前だって事だろう?あんたがいなくちゃダメなんだ。悪いが当分は引退させる訳にはいかない。これからも宜しく頼むぜ。」

「そうかい、そうかい。ありがとう。まずはそんな風に思って貰ってる事に感謝だ。ただ、お前さんは少し勘違いしているよ。」

「おいおい、またハズレだって言いたいのかい?冗談だろう?実際俺はあんた無しじゃ、生きていけないんだぜ。それ以外の答えなんて無いだろう。」

「いやいや、お前さんは勘違いをしているんだよ。R、お前は自分には俺の様なコミュニティーは作れないって言っていたが、それはお前が他の力に頼る必要が無かったって証拠さ。優秀な奴ほど他の奴に頼る必要が無くなり、結果的に僅かな繋がりで事足りちまうのさ。俺たちの様な人間は繋がりが少なければ少ないほどリスクも少なくできる。繋がりは少ない方がいい。でも俺がいろんな繋がりを持っているのはそれが無いと生きていけないほど実力が無い三下だって事なのさ。優秀なお前ならすぐにだって俺の代わりがつとまるよ。」

「そう簡単な話じゃないと思うが、ここでは一旦よしとしよう。」

そうだ。問題はそこじゃない。
なぜ俺が一流と認めてもらえないかを今日こそ突き止めるのだ。

「じゃあ、何なんだよジョージ。俺に足りないものはいったいなんなんだ?」

「足りないと言うべきなのか正確には分からんが、お前は優秀過ぎるんだよ。だから抜けちまってる所があるのさ。ヒントをやるからもう一度自分で考えてきたらどうだい?」

「いや、今日中に・・・いや、わかった。あんたの言った通り考えてくる事にしようかね。自分で考える事に意味が有るんだろ?わかってるさ。明日、また来るよ。ヒントってやつを貰えるかい?」

「いいとも、いいとも。お前はやっぱり特別だよ。お前の真面目さに与えるヒントはハート・オブ・エタニティ。後は自分で考えな。」

「ハート・オブ・エタニティ?ああ、俺のお気に入り、ブルーダイヤの事かい?あれは手に入れるのが大変だったからなぁ。正直あの時は死ぬかと思ったよ。今までの仕事で1番危なかったんじゃないかな?何かとトラブルが重なってさ。人生終わる時ってのはこう言うタイミングなんだろうなと不思議と納得したもんさ。」

「確かにあの時の怪我は酷かったよな。いつもの闇医者も最初は無理だって、俺にはっきり言ってきたんだぜ。」

「ははぁん。今晩眠れない程考え込む必要は無くなったようだぜ。」

「つまり、どう言う事だい?」

「つまり、俺に足らない点が分かったって事だよ。確かにあの時もやばかったが他にも俺は危ない橋をいくつも渡ってきた。あんたの忠告も聞かずに無茶な計画を立て、それに挑戦してきた。結果、生死をさまようような怪我を何度か経験した。そんなことじゃダメなんだよ。もっとリスクを抑えた仕事をしていかなきゃ、歳を重ねてから通じなくなる。そうゆう事なんだろ?確かに耳が痛いよ。」

「まあ、それもそうだがね。お前さんが成し遂げた事から考えれば、それ位のリスクは付きまとうものだろうし、お前の超人的な身体能力が無ければとっくにあの世行きさ。今ここにいて、俺と話をしている。それもお前の実力があるからこそさ。お前さんが言ってきた事は全て足りない部分ではあるものの、類い稀な才能がカバーしているとも言える。もっと単純な事なんだよ。ハート・オブ・エタニティ。今日は帰ってしっかり考えておいで。」

そう言うと、ジョージは店の仕事を始めちまった。まだまだ答えには遠いって事か。まあいい、今日はジョージの言った通りに大人しく帰って考えるとしよう。

「じゃあ、また。」

ジョージに別れを告げて早速家路に急ぐ。リスクを考えて今日はアジトの場所を変えるとしよう。

シャワーを浴びて、ベッドに横になる。
考えれば考える程纏まらない。纏まらないものの考えてたら神秘的なあのブルーダイヤを見たくなってきた。
ハート・オブ・エタニティ。久しぶりに俺のお宝コレクションを見に行くか。
公共の交通機関は時間的にもう使えない。各家の近くに隠している車で倉庫まで行く事にした。

久しぶりにきた倉庫は俺の記憶とは少し違って見えたが、ここで間違いない。
周りの景色が大分変わったからだろう。
まだ格納してなかった、オルテンシアを手に10ヶ月振りに倉庫のセキュリティーを解除する。
この倉庫には今までの盗品の全てが保管されており、俺が独自に開発した、防犯設備で完璧に守られている。



はずだった。



幾ら探しても目当てのハート・オブ・エタニティが見つからないのだ。
そんなはずは無い。
そう言い聞かせながら、何度も置き場所周辺を確認する。盗んだお宝はジャンル別に場所を割り振っている為、宝石がここの場所以外にあるはずが無い。


嫌な予感が鳥肌となって全身を駆け抜ける。


倉庫のセキュリティーが破られたのでは無いか?そんなはずは・・・・・ある。
破れないセキュリティー等無い、と言うのは俺が良く知っている。
ただ、俺以外の盗人になど、破れるわけが無いとたかをくくっていただけだ。

念の為、俺は全ての宝をチェックした。

やられた。
13アイテム無くなっている。
しかもどれも入手が困難で高値がつくと予想される持ち運びしやすいサイズのものばかりだ。

ジョージは知っていたのだ。俺の倉庫の現状と、セキュリティーの甘さを。


俺を裏切ったのか?疑惑と怒りが沸々と沸いてきたが直ぐに真実にたどり着いた。

ジョージはこれが言いたかったのだ。

俺の予想が当たっているならジョージはまだ店で待ってくれている筈だ。

俺は倉庫を後にして、急いでジョージのバーへと向かった。

バーに着いたのは明け方だったが、俺の予想通り店の鍵はかかっておらず、ジョージが椅子を並べて横になっていた。

「遅かったじゃないか。あまり、老人に無茶させるのは感心せんな。」

「ああ、ジョージ。すまない。俺は天才的に抜けてるんだな。」

「いやいや、そんなことはないよ。盗みに関して天才的過ぎるだけさ。だからリスクだって、乗り越えちまうし、普通じゃ出来ない事まで出来ちまう。当然と言えば当然の結果さ。」

「そう言ってもらえると気が楽になるよ。ところでジョージはいつから気付いてたんだい?」

「2週間程前かな?ハート・オブ・エタニティが売りに出されてるって情報が入ってきてね。偽物かと思ったが、念の為確認して貰ってた結果がつい先日出てね。お前に仕事について考えてもらういい機会になったって訳だよ。」

「なるほどね。おかげでわかったよ。一流の盗人は誰も傷付けず、無闇矢鱈と盗む必要も無く、自分の身を危険に晒すこともない。 ある程度実力のある奴がリスクをおかして盗んだ物を頂いちまえば、確かにそいつは一流だ。当分盗みはやめて、お宝の処理に当たる事にするよ。あんな倉庫に置いとく訳にはいかないからな。ジョージ、あんたの助手として、商品の流し方を教えては貰えないかい?」

「お安い御用だよ。お前さんなら直ぐに覚えるさ。これからも末長く頼むぜ。一流の盗人が相棒だなんて俺も鼻が高いよ。やっぱり、お前は特別さ。」



すっかり明けた新しい日に、その朝日と同じ位眩しく輝く未来が待ち受けるであろう一流の盗人がここ誕生した。

同時に今となっては業界で1番有名な参考話「JとRの一流論」が誕生したのである。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

ナースコール

wawabubu
大衆娯楽
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

処理中です...