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線香花火

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147.それぞれの別れ

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自衛隊と人民解放軍の戦車が千葉県千倉の海岸線、

海底ケーブル格納センターで睨み合っている中、

八雲村にも動きが有った。

早朝、まだ朝靄(あさもや)が晴れない中、自衛隊装甲車が1台。

装甲車はディーゼルエンジンだ。

周囲に特有の匂いを放ちながら八雲村の道を走って来ていた。

行き先は、サーバー棟だ。

ブロロロロロロロロロロロ・・・・・・・・。

サーバー棟の駐車場に到着すると、

八雲村航空自衛隊駐屯地から派兵された自衛隊員が二人、

素早く降りてきた。

二人共、両手にはマシンガンを携えていた。

そして、サーバー棟からは、

人民解放軍鬼忍から奪い取ったステルス迷彩服を着た三人が出てきた。

その三人とは・・・館田・才羽、そして牧坂だ。

「お待たせしました!!」

「川口1等陸佐からの命により参りました!!」

「陸上自衛官の澤田です!!」

「航空自衛隊の美濃部です。」

「初めまして。館田です。」

そう言うと館田は二人としっかりと握手をする。

「こちらが才羽さん、こっちが牧坂です。」

館田は代表として二人を自衛官に紹介した。

そして、才羽、牧坂も、

自衛官の澤田と美濃部ともしっかりと握手する。

「川口から命をかけて館田さん達をお守りして来い!!」

「と、言われて来ました!!」

「あ、いや、命は懸けなくて良いですよ。」

館田は、自衛官二人の情熱に圧倒されて困惑する。

「我々は、そのつもりで、ココに来ております!」

「何なりとお申し付け下さい!!」

「あ・・・、うん、ありがとう。じゃあ、僕たちも乗り込むよ。」

「はい!!」


「あなた・・・。」

恵津子が大きな保冷バッグを館田に渡そうとする。

「ありがとう、こんなに沢山の食料、作るの大変だったろ?」

「ううん、平気よ。」

「お父さん!!」友美が恵津子の隣から出てきた。

「友美!?なんで来たの!?内緒にしておいたのに!?」

「お父さん、友美をナメてもらっては困るわよ~。」

「アタシ、いくつになったと思ってんの?」

「いや、まだ小学生だろ?」

「フフフ。女の子は、男と違って成長が早いのよ!!勘も鋭いしね!」

「お母さんが夜なべしてれば誰でも分るわよ!!」

「まあ、キッチンでお母さんが夜なべしてれば気づくかあ?」

「で、男だらけでどこに行くの?」友美は興味津々で聞いている様だ。

「うん?あ、ああ、ちょっと伊勢志摩に海水浴に・・・・・。」

「海水浴?オトコだけで?兵隊さん連れて?フーン?」

「ハハハ・・・。友美には勝てないなあ?」

館田は、唯一自分の娘が苦手

・・・というか見透かされている感が困惑させている。

「友美!!お父さんを困らせちゃダメ!」

恵津子が助けに入ってきてくれた。

「ええ---!!??」友美はぐずり始めた。

「さあ、学校に行く準備しなきゃでしょ!?」

「お父さんは学校行かなくて良いのにい。」友美は不貞腐れている。

「友美、また帰ってきたら話すからさ、ね?」館田も友美を説得する。

「ブ---!!絶対だよ!?自分達だけお出かけするのってズルいよ!!」

「あなた、もういいから行って下さいな!」

恵津子が友美を制止していながら言う。

「分かったよ!友美、伊勢志摩のお土産買って帰って来るからな、絶対。」

「絶対だよ!!お父さん!!」

「うんうん。」館田は友美と恵津子に手を振りながら装甲車に乗り込む。

「・・・・・・・・。」牧坂は周囲を無言で見渡していた。

「牧坂さん?」才羽さんが気付いて声をかける。

「うん?あ、ああ、行こうか。」

「翼くんと弥多彦くんは、今回のミッションをサーバー棟からの支援です。」

「うん、分かってるよ、俺達も乗り込もう。」

「(牧坂は、おそらく真須美さんと大神陽子さんのコト考えているのだろうなあ。)」

装甲車に片手を起きながら館田は牧坂を見る。

ドカドカドカドカ・・・。

自衛官二人は前列の座席に。

館田・牧坂・才羽は後席に乗り込む。

「あんまり広い乗り物では無いのですが・・・、」

「どうかおくつろぎ下さい。」

「ありがとう。」

「そちらの食材は・・・」

「冷蔵庫がそこにございますので、ご利用下さい。」

「へえ・・・?冷蔵庫も有るのかあ?」

館田は感心しながら、恵津子から貰った食材を詰めていく。

「はい、ミッションによっては長丁場になる事も有りますので!」

「それでは出発致します!」

ブロロロロロロロロロロロ・・・・・・・・・。

「・・・・・・・・・。」牧坂は窓を開け、

外の景色を見て黄昏れている。

「お父さ-------ん!!お土産絶対だよ!!」

「ああ、分かってるよ。待ってて」

館田はゆっくり車が動き出したと同時に友美とこんな会話をする。

恵津子は無言で、館田を見ているが、その表情は暗い。

「恵津子・・・。」

「やっぱり、このミッションが」

「どういうモノか察していたんだろうなあ・・・?」

館田は遠ざかる友美と恵津子に向かって手を振りながら呟いた。

「牧坂、真須美さんはお見舞いには来なかったのか?」

「ああ・・・。」

「そうか・・・。」

「まあ、それだけのコトしたからな。」

「・・・・・。」館田は何も言えなかった。

「何ですか!?お二人でしんみりとしたお話してるみたいで!!」

才羽さんは相変わらずハイテンションだ。

「まあ、色々と・・・ね。」館田はやんわりと話題をぼやかした。

「・・・・・。」牧坂は無言のまま、外を眺めている。

「掘り下げたら、マズそうな雰囲気。」

才羽さんは、察して冷や汗流している。

「あ!!??」と思ったら才羽さんは外を指差し大声を出した。

「どうしたの?」館田は、才羽さんに聞いた。

「あの是松村長の家の丘に女性が立っています!!」

「うん?」館田は才羽さんを退けて窓の外を見た。

「あ!!」館田も気付いた。

「・・・おい、牧坂、見ろよ。」

「うん?」反対側の窓を眺めていた牧坂が、

才羽さん側の窓の外を見た。

「あ・・・・・・・。」

「な?」

是松村長宅の小高い丘の上に立っていたのは真須美だった。

遠いので表情までは読み取れないが、

牧坂を見送ってくれているのだろう。

「・・・・・・・真須美。」

牧坂は・・・感慨深く彼女を見つめていた。

その後、高田診療所の小高い丘の見える所まで

車を走らせたが。。。。。

そこには、大神陽子の姿は無かった。

「・・・・・。」牧坂はただひたすら無言だ。

館田は、牧坂にかける言葉が見つからない。

その時。

ゴトゴトゴト・・・。

「ん?」館田が物音に気づいた。

「どうしました?館田さん?」才羽さんが話し掛ける。

「いや、今、後ろが動いたような・・・。」

「動いた?」

次の瞬間。

ガタン!!!!!!

館田達が座っていた後席の後ろのトランクルームの上蓋が

勢いよく開いた。

「ワ!!!!?????」館田達は驚いた。

「ど、どうしました?館田さん!?」前席の自衛官も問いかける。

「プハ----・・・・。」トランクルームから出てきたのは・・・。

翼だった。

「翼!!??」「翼くん!!??」それぞれが驚いて翼に注視する。

「どうして、ここに翼が居るんだ!!??」

牧坂が驚きと少しばかりの怒りをこめて言った。

「い、いや、我々は存じ上げてなかったです!」

自衛官二人は翼が乗り込んでいたのは知らなかったようだ。

「お父さん!!自分達だけで何でも解決しようとしないで!!」

翼は牧坂に向かって堂々と言った。

「何を言っているんだ?お前はまだ子供だろう?」

「そういう区切りは無しで。」

「はあ?」牧坂は呆れている。

「翼くん!僕たちは遊びに行くんじゃ無いんだよ?」

館田も説得しようとするも・・・。

「分かってるよ。だからほっとけないんだよ。」

「翼・・・・・。」牧坂から怒りの感情は消えた。

「僕もお父さんたちの役に立ちたいんだ!!」

「翼くんの狙撃の腕は俺以上です。」

「後方支援では心強い存在になってくれると思いますよ!」

才羽さんが言う。

「・・・・・・。」牧坂は無言のままだ。

今なら引き返す事も出来る。

きっと色々と考えているのだろう。

グローバルセンタービルで翼と牧坂は喧嘩別れしてしまっていた。

村に帰って来てからも翼は牧坂の見舞いにも来ていない。

どういう心情だったか館田は心配していたが・・・。

「じゃあ、後方支援だけで・・・・って条件ではどうだろう?牧坂?」

館田は提案する。

「う、う---ん・・・・・。」牧坂は困惑し迷っている。

「お父さん、お母さんと何か揉めているでしょ?」

「う、うぐ!!??」牧坂はぐうの音も出ない。

「連れて行ってくれたら、僕が一肌脱ぐよ!!」

「ど、どこでそんな言葉を覚えたんだ?」

「そのためにも、二人で無事に帰ろうよ。」

凡そ中学生の、その言葉では無い。

彼なりに今まで色んな修羅場をくぐり抜けてきたのが分る。

「翼くんには勝てないよ、牧坂。」館田はそう言った。

「ですよ、ですよ!!」才羽さんも後押しする。

「・・・・・・・・じゃあ、本当に後方支援しかさせない。」

「それで良いか?」牧坂は渋々了承したようだ。

「うん!!」翼は満面の笑みで返事した。

昔の翼からは想像できないような印象だ。

「あ、あの・・・それでは、高速に乗りますよ!」

「よろしいですか!?」

自衛官の澤田は、彼らに確認した。

「あ、ああ、行ってくれ。」館田は言った。

「了解しました!!」

「翼くんも座席についてシートベルトして下さいよ!!」

美濃部が言った。

「いや、すまないが車を止めてくれ。」牧坂は静かに言った。

「え?牧坂?」館田一同困惑する。

「あ、わ、分かりました。」運転手がそう言って、車を止めた。

「翼、取り敢えず話そう。降りてくれ。」

「え?父さん?」

牧坂と翼は、車を降りて、車道を少し離れた。

「翼、今回は本当に危険なミッションだから・・・、」

「村で大人しく待っていてくれ。」

「危険なミッション?」

「今まででもかなり危険な所に行っていたよね?父さん。」

「ああ、でも今回のは特別だ。」

「だったら、何故、父さんが行かなきゃならないの?」

「そ、それは・・・。」

「なんで、父さんばっかり危険な目に遭わなきゃいけないのさ?」

「・・・・・・翼。」

「何だよ。」

「俺は翼に幸せになって欲しい。」

「だったら、行かなくていいじゃん!」

「翼、仮にここで俺が行かなくて日本がこのままデフォルトだったら、」

「お前が大人になった時、」

「外国人暴徒か中国人が暴れまわったままの社会になる。」

「・・・・・・・・。」

「俺は、翼が大人になる時に、お前が幸せに暮らせる社会にしておきたいんだ。」

「・・・・・でも。」

「大丈夫だ!危険なミッションだけど、必ず帰って来れる。」

「俺のカンはよく当たるのはお前も知っているだろう?」

「・・・・・でも。」

「心配してくれるんだな?」牧坂はそう言って翼の頭をポンと触った。

「!!!!!!」この瞬間に翼は、何かを察した。

「じゃあ、翼は村で母さんと一緒に待っていてくれ。」

そう言うと牧坂は早々と車に乗り込んだ。

「ま、待って!!父さん!!」

翼は何故か、急に必死になって呼び掛ける。

牧坂は車窓から、翼に笑顔で手を振る。

「お、お父さん!ちょ、ちょっと、待って!!」

「嫌な予感がするんだ!!」翼はそう言って

車に向かって走り出すが追いつける訳もない。

翼は、必死に走るが、車はどんどん離れていく。

「あっ!!」翼は、砂利に足を取られ、

何度も前転する形で転んでしまった。

「・・・・・・・いつつつ。」

翼は砂まみれになって立ち上がったが

・・・・車は遥か向こうに消えていった。

「父さん・・・・・・・。」翼は、悔し涙を流しながら、

今来た道をゆっくりと歩き始めた。

何とも因果な事象。

親子二代で同じシチュエーションになるとは

当事者達も気づいて無かったのである。


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