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彼女と俺の秘めた話
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しおりを挟む「バッカみたい。っていうか、バカップル?」
6日もあった筈の連休も早4日目となり今はもう13日の夜。
予定通り手持ち花火が出来る公園でキャッキャはしゃぎ回る夏実と滉を眺めながら、茉莉は隣に座る俺をいきなり罵倒した。
「まぁ、馬鹿と言われたら俺もそれ以上は言えないな」
「なつこは元から天然ってゆーか、恋愛方面が無知過ぎてアホの子だなぁと思ってたけど、せっかくの連休になつこをどこへも連れて行かずにイチャイチャばっかりするおっさんもおっさんだと思う!」
「一応イチャイチャばっかりじゃなくて、まったりDVD観たり夜景観たりはしたんだけどな」
「夜景観に行くしか外出てないじゃん! 夏の太陽を浴びなさいよ太陽を!! 健全にっ!!!」
「…………仰る通りで」
どうやら単純に花火がしたかったのは滉と夏実の2人だけだったようで、茉莉は引率役の俺が座るベンチへ一緒に腰掛けこうして喋っている訳だ。
「一応なつこからおっさんの体質の事も聞いて知ってるよ? それでも『煙草の臭いや煙で死んでもいいから可愛い彼女に夏の楽しみを与えてあげたい』って気持ちを持てばいいじゃん!」
「いやでもそれは去年まで散々やってきたからなぁ……」
「なつこは受験しないんだからこの夏遊び放題なのにぃ」
「あー、でもそれは茉莉や滉に悪いって言ってたよ。だからこの花火を楽しみにしてたみたいだった」
「へぇ~! なつこめっちゃいい子!!」
「そのくらい夏実はお前らの事が大好きみたいだな」
夏実の親友西里茉莉は、身長が150センチに満たないくらい小さい癖に、態度は一丁前にデカい。
私服も女子高生を満喫しているような典型的な韓流女子ファッションをしており「休日はどうせSNS映えするスポットを滉と歩き回ってるんだろ?」と言いたくなる雰囲気をプンプンさせている。
そして滉も全く同じなのだが茉莉は俺を一目見た時から「おっさん」と呼び、既にそれがニックネームのように扱われている。
だからこっちも少し前から「茉莉」「滉」と呼び捨てにし、互いに気を遣わないフランクな関係を会う度に楽しんでいた。
「茉莉もすりゃいいじゃん、花火」
俺はキャッキャ声を上げて楽しんでいる160センチ男女を指差して、茉莉もその輪の中に入れてやろうとしても
「いいの。もうそんな花火で喜ぶ歳じゃないし」
と、見た目に反してドライな事を口にして俺の側から離れようとしない。
「……あいつら楽しそうにしてるの、嫉妬しないんだ?」
という俺の問いに茉莉は
「なつこと滉はそんな関係じゃないから」
とドライに答え
「じゃあ滉はベンチに座る俺と茉莉に嫉妬してるんじゃないか?」
と別視点からの質問を俺がまた投げかけてみると
「あれが? そう見えんの? おっさん頭ん中大丈夫??」
と茉莉は馬鹿にする。
「…………確かにあいつら、俺と茉莉を一切見ずに遊んでるもんな」
「でしょ? それに周りだって私達の事、親子くらいにしか思われてないよ」
「俺、父親かよ」
「そう、それか引率の保護者」
「やっぱり父親じゃねぇか。茉莉かあいつらか誰かの違いってだけで」
「そうよ! 誰もおっさんが私かなつこの彼氏だなんて思わないって。だから一緒に喋っても違和感ないわけよ」
「なるほど」
夏実とは違い、この女の口の達者さには30男の俺を言いくるめる勢いさと力がある感じがする。
茉莉とそれなりに会話を楽しんでいるが、感情として「楽しい」と感じてるかと問われれば決してそうではなく、端的に述べれば茉莉は俺にとって可愛い女では無い。
「じゃあ、夏実と滉はずっと前からあんなに仲が良いのか?」
滉と一緒に無邪気な声をあげる夏実の表情を見つめながら俺がまたまた質問すると
「何それ。私とか滉とかに訊いといて実はおっさんジェラってんの? キモすぎるんだけど!」
と茉莉のドン引き声が耳を刺してきた。
「違ぇよ。やけに夏実が滉に協力的だからさぁ。
滉の実家の手伝いだって、夏実が先に名乗り上げたんだろ?茉莉からノザキ電器店が大変って話を聞いたにしても、滉から夏実にお願いしたんじゃないって滉の姉から聞いたぞ」
実際、俺もあんなガキみたいな滉に嫉妬はしていない。
今までこいつらに夕飯奢ってやってる時だって、滉と茉莉は終始イチャイチャしてるを俺らに見せつけていて、夏実もそれに対して微笑ましいような笑顔を向けていたし……何より2人は身長のバランスも丁度良い。
俺と夏実とは違い、あの2人は誰がどう見たって「可愛らしいラブラブカップル」だと思う。
「あぁ~……その事かぁ。一応3人で遊ぶことも多いんだけどさぁ、友達として凄く仲が良いの。なつこと滉は」
俺の言葉に茉莉は間延びした声を出しながら返答した。
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