【完結】彼女が18になった

チャフ

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俺と彼女の可愛い悋気(りんき)

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「そういえば今でも金券ってやってるんだっけ?」
「やってるっぽい。事前に理由なく滉の彼女から千円札抜き取られたから、多分金券に替えてくれてると思うんだが」

 教室棟の階段を上りながら静華に訊かれた事を淡々とした感じで返事すると、 

「何それ」

 とクスクス笑われる。

(いや、俺も正直思ったよ「何だそれ」って)

 俺がまだ文化祭の日程も何も聞かされてない頃に茉莉から「損させないから! 絶対損させないから!」と滉や夏実の居る前で千円札取られてその時は本当に意味が分からなかったのだが、数日前に夏実経由からメール画像で金券に換金した旨と茉莉のクラスの模擬店商品を確保しておく連絡が届いてようやくその意味を知った。

「滉の彼女のクラスへ行けば、金券とかき氷がゲット出来る筈」
「へー、模擬店かき氷やるんだ! ……って、今日暑い日だし時間も昼過ぎだし残ってんのかな?」
「そう、滉の彼女……茉莉まつりっていうんだけどアイツ信用ならない時あるからそれが心配でさぁ。金券だけ受け取って何も食えないとかあり得そうなんだよ」
「そうなったらすぐに他の模擬店行って金券消費しなきゃね」
「そういう事だな。もうこんな時間だから他の模擬店も商品残ってんのか怪しいけど」

 盆休みの勉強会で昼飯買いに行かせたら勝手に北海道フェア行って肉弁当を購入し、残りの金を自分の買い物の足しにするような女だ。「損させないから」の言葉を信用しようとすると痛い目に遭うことを俺は既に経験済みだ。
 何も食えない、買えないとなったら帰りに売店行って現金に戻しておくしかないだろう。


 茉莉のクラスに近付くと、静華はとびきり嬉しそうな表情になった。

「なつかしー! かき氷のクラスって、8組だったんだ! 私達も3年の時8組だったよね!」
「えっ? ……あぁ、そうだっけ?」

 かつての自分のクラスを忘れた訳ではないのだが、静華の目の輝きの所為でついそのような口をついてしまう。

「あっ! 看板もTシャツもパロってて可愛い♪」

 静華が嬉しそうな声をあげた3年8組の教室出入り口には、ハワイの有名かき氷店を担任の名前に差し替えたパロディ的店名がド派手に掲げられており、そこに貼り付けられたかき氷画像もやはりそれに寄せた感じの見た目をしている。

 だが、教室内を覗いてみるとメニュー欄の上から「売り切れ」の文字が貼り付けられていて、「悪い方の予想が当たってしまった」とガックリ来てしまった。

 静華も俺と同じように教室内を目でグルッと見回し、それから微笑み顔で俺の肩をポンッと叩く。

「懐かしの教室、じっくり見たかったけど仕方ないねー」
「茉莉呼んで金券だけ受け取るか……」

 今日は一日中真夏のように暑かったのだから、俺らの分を確保しておきたいと言っても無理な話だったのだろう。
 片付け作業に入っている生徒の中から背の低い茉莉を探そうとしたその時、かき氷店のパロディTシャツ姿の女子生徒がこっちにパタパタと小走りに近付いてきた。

「すみません! 今ちょうど売り切れになってしまったんです」

 教室出入り口でボーっと立っている長身の大人2人がよっぽど邪魔だったのだろう、説明なくとも理解できる状況をわざわざ言いに来てくれたようだ。

「……そうみたいなんで、西里茉莉にしざとまつり呼んでいただけますか?彼女に用があるんで」

 俺も俺で、この位置から身長150センチ未満の茉莉を探すのに限界があったから女子生徒に呼んでもらった方が早いんじゃないかと考えを切り替えた。

 女子生徒は俺の要求に一瞬「えっ」と小声で俺らを交互に見てからすぐ後ろに振り向いて……

「西里さーん!! なんかぁ、から呼ばれてるよー!」

 と、大声で呼び掛ける。

「「??!!」」

 それに対し、俺も静華も驚いて互いの顔を見合わせたのは言うまでもない。
 尚且なおかつその所為で片付け作業中の生徒全員が俺らの方へ視線を集中させてきて一気に恥ずかしくなってしまった。

「えっ? ご夫婦って、誰と誰?」

 かき氷器を置いた作業台周辺で何やら話をしていた女子生徒の集団の中から耳慣れた声がして、その中から茉莉がひょっこりと姿を現わす。
 そして茉莉の目が俺を捉えた瞬間お腹を抱えて笑いだし、「おいでおいで」のハンドサインをしてきた。

「何?」
「どしたの西里さん?」

 周囲も不思議そうにその様子に首を傾げる中、茉莉だけが爆笑していて、ヒーヒー引き笑いをしながら

じゃないよー! 私が予約って言っといた『』だよ!」

 と、生徒達に俺と静華の説明をする。

「えええ!? あの人達が?」
「おっさんじゃないし! イケメンだし!」
「じゃあ、ふとん屋さんってあのお姉さんの事?!」
「お姉さん超美人なんだけど!!」

 俺も静華も全く状況が掴めないまま、高校生に勝手に笑われたり勝手に驚かれたりしている事実にたじろいでしまうが、俺らをご夫婦呼びした女子生徒が

「えっと……中に入って下さい」

 と教室内に招き入れた。

「本当に入っていいの?」
「さぁ? かき氷の確保はしてたっぽいけど」

 俺らも首を傾げたが、女子生徒にまだ残してあった席に案内され言われるがままに着席する。
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