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番外編
この姿にサヨナラを(亮輔side)6
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*
次の日の夕方。
朝香が乗って帰る予定の新幹線到着時間に合わせて迎えに行く。
(あーちゃん、ビックリするだろうなぁ)
昨日店を出てすぐに『雨上がり珈琲店』へと向かった。先にカットを終えた智樹がそこでのんびりとコーヒーを飲んでいるというので、彼女よりも先に夕紀にこの姿を見せることとなったのだが、智樹と夕紀は予想以上に驚きのリアクションを見せ、夕紀は熱々のコーヒーを盛大にぶちまけてしまう程であった。
(あーちゃんに喜んでもらいたくて髪型戻したけど……どんな反応くるか分からなくて不安だ)
智樹も夕紀も「似合っている」と褒めてくれたし、周囲の客からの視線も熱く好印象をもらえていたような気がする。
似合っていると皆が感じてくれるならきっと朝香も受け入れてくれるに違いないと、就寝時は安心出来ていたのだが、いざ対面する時が近付くと自信を無くしてしまう。
やがて、改札口が人で混み合い始めた。
(そろそろか……)
朝香は小柄で歩く姿も可愛いらしいので、人混みであっても見つけやすいと以前より感じていた。だから、すぐに朝香が荷物をたくさん抱えて改札口に近付いている様子を捉える事が出来、亮輔は右腕を高々と挙げてみせる。
「あーちゃ」
しかし、即座に
(やばい! これ、俺に気付いてくれない可能性大かも?!)
とまたネガティブな感情に包まれる。
今までは「向日葵さん」と呼ばれるに値する金髪パーマがあったから、片腕を挙げた瞬間気付いてもらえただろうが、今は黒髪ショートでどこにでも居るような「ただデカいだけの男」に成り下がっている。
(ああ~どうしよう!)
距離はまだ離れているが、さっきから数回彼女と目が合っているような感覚はある……なのに彼女の反応は薄い。
(いつもより声を張り上げて名前呼ばないと分かりにくいよね? でも人前で「あーちゃん」なんて大声だしたらあーちゃん恥ずかしがるよね?? どうしようどうしよう)
金髪パーマ時代も見た目だけ威圧してただけで内面はネガティブ隠キャ野郎のままであった亮輔。武装を外した今、デメリット部分が詳らかにされているので余計にウジウジしてしまう。
結局右腕は挙げたままその場でオロオロしていると……
「あ!! りょーくん?!」
改札を通ったばかりの朝香がこちらへトコトコと近付いてくれた。
「お、おかえり……あーちゃん」
(うっ……気付いてもらえたけど情けない……)
なるべく悟られないよう朝香に笑顔を向けてみたものの、弱々しい声で出迎える羽目となった点を悔やみ内心落ち込んでしまっている。
「えっ、えっ、えっ……りょーくんだよね?! やっぱりりょーくんだよね??!! 間違いないよね?!」
当の朝香は目をキラキラと輝かせながら自分の前に立っていて、可愛らしい驚き声を発してくれている。
(あーちゃん可愛い♡)
彼女の表情が可愛すぎて、先程までのネガティブなウジウジがどうでもよくなってしまった亮輔は
「うん……あーちゃんに惚れ直してほしくて、金髪パーマやめてみた」
彼女の手を握り、先程とは異なる……心の内から滲み出るような笑顔を向けた。
「惚れ直すだなんて……私はりょーくんの事素敵だなって今も思ってるよ?」
微笑み返す朝香の笑顔は夕陽に負けないくらいに眩しい。
「もっともっと素敵って、あーちゃんには思ってほしいんだ」
「もっともっとって、りょーくんってば欲張りだなぁ」
「そりゃあ欲張りになるよ。大好きなあーちゃんにいっぱいいっぱい求められたいから。
俺のことをひたすらに求めてほしいから……だから、自分をブラッシュアップしていきたいっていうか」
人目を気にせず照れ臭い台詞を言ってしまったが、代わりにポジティブな心を手に入れられたように亮輔は感じている。
「やぁん、照れちゃう♡」
「ふふふ♡」
互いに照れ笑いし……それから、手を繋いで帰路についた。
「『向日葵さん』だった頃も素敵だったけど、今の黒髪のりょーくんもとっても素敵♡」
その夜。ベッドで重なり合いながら囁く朝香の声に亮輔の心はまた満たされて
「じゃあ、あーちゃんが満足するまで今夜は頑張っちゃう♡」
充填されたエネルギーをそのまま朝香に注ぎ込んだ。
「やああぁん♡ 頑張りすぎたら溶けちゃうぅ♡」
「溶けちゃお♡ 一つになって、トロトロに溶けたらもっと気持ちいいよ♡」
仮初の武装を外す事は、今の亮輔にとって良い選択であったのだろう。
真の自分を再び手に入れた亮輔は、不安な気持ちに時折苛まれながらも、それでも生きる気持ちをしっかりと持って……
「あーちゃん大好き、だいすきぃ♡♡♡」
「ふあぁぁぁぁん♡♡♡」
照れ臭い台詞をなぞるようにブラッシュアップし続けていくのだろうから。
次の日の夕方。
朝香が乗って帰る予定の新幹線到着時間に合わせて迎えに行く。
(あーちゃん、ビックリするだろうなぁ)
昨日店を出てすぐに『雨上がり珈琲店』へと向かった。先にカットを終えた智樹がそこでのんびりとコーヒーを飲んでいるというので、彼女よりも先に夕紀にこの姿を見せることとなったのだが、智樹と夕紀は予想以上に驚きのリアクションを見せ、夕紀は熱々のコーヒーを盛大にぶちまけてしまう程であった。
(あーちゃんに喜んでもらいたくて髪型戻したけど……どんな反応くるか分からなくて不安だ)
智樹も夕紀も「似合っている」と褒めてくれたし、周囲の客からの視線も熱く好印象をもらえていたような気がする。
似合っていると皆が感じてくれるならきっと朝香も受け入れてくれるに違いないと、就寝時は安心出来ていたのだが、いざ対面する時が近付くと自信を無くしてしまう。
やがて、改札口が人で混み合い始めた。
(そろそろか……)
朝香は小柄で歩く姿も可愛いらしいので、人混みであっても見つけやすいと以前より感じていた。だから、すぐに朝香が荷物をたくさん抱えて改札口に近付いている様子を捉える事が出来、亮輔は右腕を高々と挙げてみせる。
「あーちゃ」
しかし、即座に
(やばい! これ、俺に気付いてくれない可能性大かも?!)
とまたネガティブな感情に包まれる。
今までは「向日葵さん」と呼ばれるに値する金髪パーマがあったから、片腕を挙げた瞬間気付いてもらえただろうが、今は黒髪ショートでどこにでも居るような「ただデカいだけの男」に成り下がっている。
(ああ~どうしよう!)
距離はまだ離れているが、さっきから数回彼女と目が合っているような感覚はある……なのに彼女の反応は薄い。
(いつもより声を張り上げて名前呼ばないと分かりにくいよね? でも人前で「あーちゃん」なんて大声だしたらあーちゃん恥ずかしがるよね?? どうしようどうしよう)
金髪パーマ時代も見た目だけ威圧してただけで内面はネガティブ隠キャ野郎のままであった亮輔。武装を外した今、デメリット部分が詳らかにされているので余計にウジウジしてしまう。
結局右腕は挙げたままその場でオロオロしていると……
「あ!! りょーくん?!」
改札を通ったばかりの朝香がこちらへトコトコと近付いてくれた。
「お、おかえり……あーちゃん」
(うっ……気付いてもらえたけど情けない……)
なるべく悟られないよう朝香に笑顔を向けてみたものの、弱々しい声で出迎える羽目となった点を悔やみ内心落ち込んでしまっている。
「えっ、えっ、えっ……りょーくんだよね?! やっぱりりょーくんだよね??!! 間違いないよね?!」
当の朝香は目をキラキラと輝かせながら自分の前に立っていて、可愛らしい驚き声を発してくれている。
(あーちゃん可愛い♡)
彼女の表情が可愛すぎて、先程までのネガティブなウジウジがどうでもよくなってしまった亮輔は
「うん……あーちゃんに惚れ直してほしくて、金髪パーマやめてみた」
彼女の手を握り、先程とは異なる……心の内から滲み出るような笑顔を向けた。
「惚れ直すだなんて……私はりょーくんの事素敵だなって今も思ってるよ?」
微笑み返す朝香の笑顔は夕陽に負けないくらいに眩しい。
「もっともっと素敵って、あーちゃんには思ってほしいんだ」
「もっともっとって、りょーくんってば欲張りだなぁ」
「そりゃあ欲張りになるよ。大好きなあーちゃんにいっぱいいっぱい求められたいから。
俺のことをひたすらに求めてほしいから……だから、自分をブラッシュアップしていきたいっていうか」
人目を気にせず照れ臭い台詞を言ってしまったが、代わりにポジティブな心を手に入れられたように亮輔は感じている。
「やぁん、照れちゃう♡」
「ふふふ♡」
互いに照れ笑いし……それから、手を繋いで帰路についた。
「『向日葵さん』だった頃も素敵だったけど、今の黒髪のりょーくんもとっても素敵♡」
その夜。ベッドで重なり合いながら囁く朝香の声に亮輔の心はまた満たされて
「じゃあ、あーちゃんが満足するまで今夜は頑張っちゃう♡」
充填されたエネルギーをそのまま朝香に注ぎ込んだ。
「やああぁん♡ 頑張りすぎたら溶けちゃうぅ♡」
「溶けちゃお♡ 一つになって、トロトロに溶けたらもっと気持ちいいよ♡」
仮初の武装を外す事は、今の亮輔にとって良い選択であったのだろう。
真の自分を再び手に入れた亮輔は、不安な気持ちに時折苛まれながらも、それでも生きる気持ちをしっかりと持って……
「あーちゃん大好き、だいすきぃ♡♡♡」
「ふあぁぁぁぁん♡♡♡」
照れ臭い台詞をなぞるようにブラッシュアップし続けていくのだろうから。
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