【R18本編完結&番外編更新中】この雨が上がったら一緒にコーヒーを飲みませんか?

silverchaff

文字の大きさ
124 / 171
番外編

この姿にサヨナラを(亮輔side)6

しおりを挟む


 次の日の夕方。
 朝香が乗って帰る予定の新幹線到着時間に合わせて迎えに行く。

(あーちゃん、ビックリするだろうなぁ)

 昨日店を出てすぐに『雨上がり珈琲店』へと向かった。先にカットを終えた智樹がそこでのんびりとコーヒーを飲んでいるというので、彼女よりも先に夕紀にこの姿を見せることとなったのだが、智樹と夕紀は予想以上に驚きのリアクションを見せ、夕紀は熱々のコーヒーを盛大にぶちまけてしまう程であった。

(あーちゃんに喜んでもらいたくて髪型戻したけど……どんな反応くるか分からなくて不安だ)

 智樹も夕紀も「似合っている」と褒めてくれたし、周囲の客からの視線も熱く好印象をもらえていたような気がする。
 似合っていると皆が感じてくれるならきっと朝香も受け入れてくれるに違いないと、就寝時は安心出来ていたのだが、いざ対面する時が近付くと自信を無くしてしまう。


 やがて、改札口が人で混み合い始めた。

(そろそろか……)

 朝香は小柄で歩く姿も可愛いらしいので、人混みであっても見つけやすいと以前より感じていた。だから、すぐに朝香が荷物をたくさん抱えて改札口に近付いている様子を捉える事が出来、亮輔は右腕を高々と挙げてみせる。

「あーちゃ」

 しかし、即座に

(やばい! これ、俺に気付いてくれない可能性大かも?!)

 とまたネガティブな感情に包まれる。

 今までは「向日葵さん」と呼ばれるに値する金髪パーマがあったから、片腕を挙げた瞬間気付いてもらえただろうが、今は黒髪ショートでどこにでも居るような「ただデカいだけの男」に成り下がっている。

(ああ~どうしよう!)

 距離はまだ離れているが、さっきから数回彼女と目が合っているような感覚はある……なのに彼女の反応は薄い。

(いつもより声を張り上げて名前呼ばないと分かりにくいよね? でも人前で「あーちゃん」なんて大声だしたらあーちゃん恥ずかしがるよね?? どうしようどうしよう)

 金髪パーマ時代もしてただけで内面はネガティブ隠キャ野郎のままであった亮輔。武装を外した今、デメリット部分が詳らかにされているので余計にウジウジしてしまう。

 結局右腕は挙げたままその場でオロオロしていると……

「あ!! りょーくん?!」

 改札を通ったばかりの朝香がこちらへトコトコと近付いてくれた。

「お、おかえり……あーちゃん」

(うっ……気付いてもらえたけど情けない……)

 なるべく悟られないよう朝香に笑顔を向けてみたものの、弱々しい声で出迎える羽目となった点を悔やみ内心落ち込んでしまっている。

「えっ、えっ、えっ……りょーくんだよね?! やっぱりりょーくんだよね??!! 間違いないよね?!」

 当の朝香は目をキラキラと輝かせながら自分の前に立っていて、可愛らしい驚き声を発してくれている。

(あーちゃん可愛い♡)

 彼女の表情が可愛すぎて、先程までのネガティブなウジウジがどうでもよくなってしまった亮輔は

「うん……あーちゃんに惚れ直してほしくて、金髪パーマやめてみた」

 彼女の手を握り、先程とは異なる……心の内から滲み出るような笑顔を向けた。

「惚れ直すだなんて……私はりょーくんの事素敵だなって今も思ってるよ?」

 微笑み返す朝香の笑顔は夕陽に負けないくらいに眩しい。

「もっともっと素敵って、あーちゃんには思ってほしいんだ」
「もっともっとって、りょーくんってば欲張りだなぁ」
「そりゃあ欲張りになるよ。大好きなあーちゃんにいっぱいいっぱい求められたいから。
 俺のことをひたすらに求めてほしいから……だから、自分をブラッシュアップしていきたいっていうか」

 人目を気にせず照れ臭い台詞を言ってしまったが、代わりにポジティブな心を手に入れられたように亮輔は感じている。

「やぁん、照れちゃう♡」
「ふふふ♡」

 互いに照れ笑いし……それから、手を繋いで帰路についた。






「『向日葵さん』だった頃も素敵だったけど、今の黒髪のりょーくんもとっても素敵♡」

 その夜。ベッドで重なり合いながら囁く朝香の声に亮輔の心はまた満たされて

「じゃあ、あーちゃんが満足するまで今夜は頑張っちゃう♡」

 充填されたエネルギーをそのまま朝香に注ぎ込んだ。

「やああぁん♡ 頑張りすぎたら溶けちゃうぅ♡」
「溶けちゃお♡ 一つになって、トロトロに溶けたらもっと気持ちいいよ♡」

 仮初の武装を外す事は、今の亮輔にとって良い選択であったのだろう。

 真の自分を再び手に入れた亮輔は、不安な気持ちに時折苛まれながらも、それでも生きる気持ちをしっかりと持って……


「あーちゃん大好き、だいすきぃ♡♡♡」
「ふあぁぁぁぁん♡♡♡」

 照れ臭い台詞をなぞるようにブラッシュアップし続けていくのだろうから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

年齢の差は23歳

蒲公英
恋愛
やたら懐く十八歳。不惑を過ぎたおっさんは、何を思う。 この後、連載で「最後の女」に続きます。

コワモテ軍人な旦那様は彼女にゾッコンなのです~新婚若奥様はいきなり大ピンチ~

二階堂まや♡電書「騎士団長との~」発売中
恋愛
政治家の令嬢イリーナは社交界の《白薔薇》と称される程の美貌を持ち、不自由無く華やかな生活を送っていた。 彼女は王立陸軍大尉ディートハルトに一目惚れするものの、国内で政治家と軍人は長年対立していた。加えて軍人は質実剛健を良しとしており、彼女の趣味嗜好とはまるで正反対であった。 そのためイリーナは華やかな生活を手放すことを決め、ディートハルトと無事に夫婦として結ばれる。 幸せな結婚生活を謳歌していたものの、ある日彼女は兄と弟から夜会に参加して欲しいと頼まれる。 そして夜会終了後、ディートハルトに華美な装いをしているところを見られてしまって……?

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜

紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。 連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

無表情いとこの隠れた欲望

春密まつり
恋愛
大学生で21歳の梓は、6歳年上のいとこの雪哉と一緒に暮らすことになった。 小さい頃よく遊んでくれたお兄さんは社会人になりかっこよく成長していて戸惑いがち。 緊張しながらも仲良く暮らせそうだと思った矢先、転んだ拍子にキスをしてしまう。 それから雪哉の態度が変わり――。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

処理中です...