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本編
初デート3
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*
「海だ~!! すっごく綺麗!!」
ど緊張の中スタートしたデートだったが、海上の有料道路に差し掛かると朝香の意識は太平洋へと奪われた。
「あーちゃんって、海が好きなの?」
それまで黙り込んでいたのに急に興奮した声を上げたのだから、流石の向日葵さんも驚いたらしい。こちらに目線を向けながら質問してくれた。
「うん! 好きっていうか、憧れ? かな。
私の生まれたところは海があっても内海だったし遠かったんだよ。実家は山と川に囲まれた田舎なの」
「内海ってことは瀬戸内海かな? 中国地方とか四国地方?」
向日葵さんからの質問ではじめて自分の出身地をまだ話していなかった点に気付いた朝香は
「山口県の南側だよ」
と答えた。
「山口……へぇ~、意外だなぁ」
朝香が方言や訛りを出さないからか、向日葵さんの目がまんまるに見開く。
「そうなの。太平洋はやっぱりおっきいなぁ~! スケールが違うよ! スケールが!!」
山や川に囲まれて育ってきた分、海への憧れは多少なりともある。夕紀の仕事を助ける意味で関東へ越してきたが、やはりいつかは太平洋をじっくりと望みたいと思っていた。
山口県は県南こそ瀬戸内海に面しているが県北はまた違った海の魅力があり、水族館だって美味しい海鮮だって豊富に手に入るのだが、マグロの赤身が美味しいと感じたのは魚屋『源』から分けてもらった刺身が初めて。
だから眼前に広がる海には興奮してしまうし、目的地でありこの道路を渡った先にあるというアウトレットモールも楽しみになってくる。
「ふふふっ♪」
まだ目的地に着いていないのに興奮しまくっている朝香が面白いのか、向日葵さんはクスクスと笑い出した。
「んむぅ……」
自分の行動のガキっぽさに反省した朝香は、話題を変えようと
「向日葵さんはさ、今日のアウトレットで自分の服とか買うの?」
と、質問をしてみた。
「んー……服はある程度揃ってるんだよなぁ。基本的に兄や知り合いの美容師から貰っちゃうから」
すると予想の斜め上の返答が来たので
「あのオシャレ服の数々は貰い物なの?!っていうか美容師さんって知り合ったら服も貰えちゃうもんなの??!」
頭の中がパニック状態になる。
(確かに向日葵さんの服はどれも生地が良くて高そうだなって思っていたけど……もしかして向日葵さんの家族ってお金持ち?)
「えっ……あー、その。食事と同じで着るものも興味ないから。大学生になるし服は毎日必要になるからってどんどん譲ってもらってたらいっぱいになったっていうか」
彼がお金持ちであるなら、朝香と同じ庶民的アパートに住んでいるのはおかしい。
「大学入ってからかぁ……だからあんなに大人っぽくてオシャレなんだね」
(逆にお兄さんは服と車が趣味で、それにお金かけてるってだけなのかなぁ)
彼の兄が高級車持ちなのも不思議に感じてしまうが、お金の使い方は人それぞれであって無知な朝香が口出ししていいものではないし
「まぁ、そんなところかな。流石に靴は自分で買うけどね」
「靴……」
向日葵さんが履くスニーカーも上質。けれど服は貰い物で靴にだけお金をかけられるのであれば学生の身分でも理屈が通るのだ。
「服、俺も少し買おうかな。兄から貰う服は俺も好みなんだけど煙草臭いんだよ。着る前に煙草臭を消すのが面倒でさぁ」
「たばこ……」
そして「コンビニオーナーである彼の兄がベビースモーカーである」という知識も朝香の脳内にアップロードされた。
「今日のお買い物で向日葵さんの素敵なお洋服が見つかるといいね」
気を取り直し明るく振る舞う朝香の声に
「でもね、あーちゃんの夏服をいっぱい買ってあげたい気持ちもあるんだよ。今着てるあーちゃんの服は可愛いし、いつもの服装も全部ダメってわけじゃないんだけど、一緒に服を見てお互いの好みを擦り合わせていくのも楽しいかなって思ってさ♪」
向日葵さんはよりにこやかな表情で応えるので
「確かにそういうの、デートっぽいし私も向日葵さんの服選んでみたいな♪」
朝香も今日のデートがより楽しくなってきた。
「あのね、あーちゃんが今日のデートOKしてくれて良かったし、兄から車もスムーズに借りられて本当に良かったって思ってるんだよ♪
あと、俺が車を運転出来る事もアピールしたかったし。普段はアパートとコンビニをバイクで通うくらいしかしないけど、あーちゃんに俺のイイところを見せてあーちゃんに惚れなおして貰いたいな! なんてね♡」
それなのに向日葵さんは茶目っけたっぷりなセリフを朝香に吐いてきたものだから、体温はどんどん上昇してどうすればいいか分からなくなり
(もうっ!! 向日葵さんってばイケメンが過ぎるよぅっ!! イケメンかつイケボで茶目っ気たっぷりなセリフ言うだなんて、私の心臓が何個あっても足りないよぉ!!)
つい腰をくねらせ身悶えしてしまった。
何となく自分の買い物に付き合ってもらうのは申し訳ない気がするし気恥ずかしい。
がしかし、高級なものに目が肥えていて美的センスもずば抜けている向日葵さんにファッションコーディネートをしてもらった方が手っ取り早いのは事実なので
「色々教えて下さいっ! お願いしますっ!」
恥ずかしくなりながらも朝香はペコッと頭を下げた。
「うんっ! 買い物デート楽しもうねあーちゃん♡」
「海だ~!! すっごく綺麗!!」
ど緊張の中スタートしたデートだったが、海上の有料道路に差し掛かると朝香の意識は太平洋へと奪われた。
「あーちゃんって、海が好きなの?」
それまで黙り込んでいたのに急に興奮した声を上げたのだから、流石の向日葵さんも驚いたらしい。こちらに目線を向けながら質問してくれた。
「うん! 好きっていうか、憧れ? かな。
私の生まれたところは海があっても内海だったし遠かったんだよ。実家は山と川に囲まれた田舎なの」
「内海ってことは瀬戸内海かな? 中国地方とか四国地方?」
向日葵さんからの質問ではじめて自分の出身地をまだ話していなかった点に気付いた朝香は
「山口県の南側だよ」
と答えた。
「山口……へぇ~、意外だなぁ」
朝香が方言や訛りを出さないからか、向日葵さんの目がまんまるに見開く。
「そうなの。太平洋はやっぱりおっきいなぁ~! スケールが違うよ! スケールが!!」
山や川に囲まれて育ってきた分、海への憧れは多少なりともある。夕紀の仕事を助ける意味で関東へ越してきたが、やはりいつかは太平洋をじっくりと望みたいと思っていた。
山口県は県南こそ瀬戸内海に面しているが県北はまた違った海の魅力があり、水族館だって美味しい海鮮だって豊富に手に入るのだが、マグロの赤身が美味しいと感じたのは魚屋『源』から分けてもらった刺身が初めて。
だから眼前に広がる海には興奮してしまうし、目的地でありこの道路を渡った先にあるというアウトレットモールも楽しみになってくる。
「ふふふっ♪」
まだ目的地に着いていないのに興奮しまくっている朝香が面白いのか、向日葵さんはクスクスと笑い出した。
「んむぅ……」
自分の行動のガキっぽさに反省した朝香は、話題を変えようと
「向日葵さんはさ、今日のアウトレットで自分の服とか買うの?」
と、質問をしてみた。
「んー……服はある程度揃ってるんだよなぁ。基本的に兄や知り合いの美容師から貰っちゃうから」
すると予想の斜め上の返答が来たので
「あのオシャレ服の数々は貰い物なの?!っていうか美容師さんって知り合ったら服も貰えちゃうもんなの??!」
頭の中がパニック状態になる。
(確かに向日葵さんの服はどれも生地が良くて高そうだなって思っていたけど……もしかして向日葵さんの家族ってお金持ち?)
「えっ……あー、その。食事と同じで着るものも興味ないから。大学生になるし服は毎日必要になるからってどんどん譲ってもらってたらいっぱいになったっていうか」
彼がお金持ちであるなら、朝香と同じ庶民的アパートに住んでいるのはおかしい。
「大学入ってからかぁ……だからあんなに大人っぽくてオシャレなんだね」
(逆にお兄さんは服と車が趣味で、それにお金かけてるってだけなのかなぁ)
彼の兄が高級車持ちなのも不思議に感じてしまうが、お金の使い方は人それぞれであって無知な朝香が口出ししていいものではないし
「まぁ、そんなところかな。流石に靴は自分で買うけどね」
「靴……」
向日葵さんが履くスニーカーも上質。けれど服は貰い物で靴にだけお金をかけられるのであれば学生の身分でも理屈が通るのだ。
「服、俺も少し買おうかな。兄から貰う服は俺も好みなんだけど煙草臭いんだよ。着る前に煙草臭を消すのが面倒でさぁ」
「たばこ……」
そして「コンビニオーナーである彼の兄がベビースモーカーである」という知識も朝香の脳内にアップロードされた。
「今日のお買い物で向日葵さんの素敵なお洋服が見つかるといいね」
気を取り直し明るく振る舞う朝香の声に
「でもね、あーちゃんの夏服をいっぱい買ってあげたい気持ちもあるんだよ。今着てるあーちゃんの服は可愛いし、いつもの服装も全部ダメってわけじゃないんだけど、一緒に服を見てお互いの好みを擦り合わせていくのも楽しいかなって思ってさ♪」
向日葵さんはよりにこやかな表情で応えるので
「確かにそういうの、デートっぽいし私も向日葵さんの服選んでみたいな♪」
朝香も今日のデートがより楽しくなってきた。
「あのね、あーちゃんが今日のデートOKしてくれて良かったし、兄から車もスムーズに借りられて本当に良かったって思ってるんだよ♪
あと、俺が車を運転出来る事もアピールしたかったし。普段はアパートとコンビニをバイクで通うくらいしかしないけど、あーちゃんに俺のイイところを見せてあーちゃんに惚れなおして貰いたいな! なんてね♡」
それなのに向日葵さんは茶目っけたっぷりなセリフを朝香に吐いてきたものだから、体温はどんどん上昇してどうすればいいか分からなくなり
(もうっ!! 向日葵さんってばイケメンが過ぎるよぅっ!! イケメンかつイケボで茶目っ気たっぷりなセリフ言うだなんて、私の心臓が何個あっても足りないよぉ!!)
つい腰をくねらせ身悶えしてしまった。
何となく自分の買い物に付き合ってもらうのは申し訳ない気がするし気恥ずかしい。
がしかし、高級なものに目が肥えていて美的センスもずば抜けている向日葵さんにファッションコーディネートをしてもらった方が手っ取り早いのは事実なので
「色々教えて下さいっ! お願いしますっ!」
恥ずかしくなりながらも朝香はペコッと頭を下げた。
「うんっ! 買い物デート楽しもうねあーちゃん♡」
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