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本編
ネコと野獣1
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*
『フラワーショップ田上』で数十分程度時間を潰したからか、大学カフェテリアで配達物を渡しても図書館で読書していても向日葵さんと顔を合わさずにいられた。
今日はそのまま1人で帰宅し源さんで食材を受け取り現在は203号室のキッチンで夕飯作りをしている。
(向日葵さんからは連絡きてないなぁ)
朝香帰宅時、103号室の照明は暗いままだった。今はそこから1時間近く経過しているが駐輪場にバイクが置かれていないのでまだ帰宅していないのかもしれない。
(2人分作っちゃった……どうしよう、これ)
源さんからいつものように2人分の食材を受け取ったので、つい今日もいつも通りの感覚で向日葵さんの分も作ってしまっている。彼が不在ならこの分をラップかけて冷蔵庫保存して翌日にでも自分が食べてしまってもいい。
そんな事をぼんやりと考えていたのだが……。
(私だけ先に食べるのもなぁ……)
奥さんと会話する時間を設けたとは言え、問題解決した訳ではないし心のモヤモヤが晴れた訳でもない。
(黒猫ちゃんのルームウェアきてちょっとでも気分上げようかなぁ)
まだまだ食欲の湧かない朝香は、昨日買った服の中から下着とルームウェアを引っ張りだし着替えてみる。
「わぁ♡ 可愛い♡ えへへ♪」
向日葵さんには内緒で購入した下着とルームウェアは実際袖を通しても可愛らしく、気持ちが高揚していく。
(食欲ないからこのまま横になっちゃお♡)
朝香は無邪気な気持ちをそのまま楽しんでしまおうと前向きに考え、猫耳のついたフードを頭にかぶってベッドへゴロンと寝転がった。
「ふふふ~♡ きもちい~~♡♡♡」
今までオシャレを楽しんで来なかった分、昨日の買い物デートは楽しかったしこうして気に入った服を身に付けるとテンションが上がってより楽しくなってくる。
…………が、しばらくすると
「向日葵さんに見せたいなぁ……」
その心地良さを大好きな人と共有したいという欲求が高まってきた。
「エッチな事されても、大好きなのは変わらないもん……」
改めて朝香は気付いたのだ。
昨夜向日葵さんにあのような事をされても、嫌いにはなれなかったしそもそも嫌悪を持っていないのだと……。
(された事にビックリしただけで、イヤじゃなかったんだよね……私は)
昨夜の出来事を思い出してもまだドキドキしている。
(優しい向日葵さんにもオオカミな部分はあるんだ。だって向日葵さん自身「野獣」って認めてて否定しないんだもん……)
着ているルームウェアや下着の心地良さ以上に向日葵さんの舌や指は気持ち良かったし、また経験してみたいと朝香は今もそう考えている。
(夕方奥さんと話せて本当に良かったなぁ……そうじゃなかったら自分の気持ちにちゃんと気付けなかったと思うから)
こ気持ちに気付く事が出来たのは今日『フラワーショップ田上』で会話した奥さんの存在に他ならない。また奥さんと顔を合わせた時は感謝の言葉を述べようと朝香は心に決めた。
*
小1時間ゴロゴロしながら過ごしていた朝香だったが、階下で物音がしたのでムクッと起き上がる。
(向日葵さん帰ってきたのかな?)
嬉しさと緊張が入り混じり、胸がドキドキと高鳴る。
(今すぐ会いたい! 会ってちゃんと話がしたい!)
気持ちばかりが先行し、着の身着のまま玄関を開けて外へ出る。
サアアアァッという霧雨の音や雨粒、湿気を含んだ冷たい空気。
それらをさほど気にかける事なく朝香はカンカンと外階段を降り、103号室のインターフォンを押す。
照明がパッと室内で明るく照らされたと思ったらすぐに玄関扉が内側から開いて……
「向日葵さんっ! あのっ、私っ!!」
彼の顔が見れた嬉しさから名を大きく呼んで喋り始めたのだが
「ちょっ! あーちゃん!! なんて格好してんだよ!!!!!!」
目の前の向日葵さんは朝香よりも大きな声を張り上げて叱り
「えっ」
周囲をキョロキョロと見回しこの場に朝香しか居ないのを確認した後で
「雨降ってるんだから中に入って! 今すぐ!!」
慌てた様子で朝香の腕をグイッと引っ張り室内へと入れ、すぐにバタンと玄関扉を勢いよく閉めたのだった。
(えっ?! 何? なになになに??!)
彼の慌てっぷりに朝香はさっきとは別のドキドキを感じていると
「もうあーちゃん! なんてエッチな格好してんだよっ! 昨日のアレで警戒心持ってくれてないと俺マジで何するか分かんないよ? 本当に大丈夫なの?!」
向日葵さんが金髪を揺らしながらプリプリ怒っているようで、言葉では朝香を叱っているのだが……
「向日葵さん、顔ニヤけてるよ?」
彼の顔はやけに嬉しそうで口元がニヤけて弛みっぱなしなのだ。
「そ、そりゃあニヤけるだろ。あーちゃんめちゃくちゃエロカワなんだから!」
朝香に指摘されて恥ずかしかったのか、向日葵さんは唇に力を入れキュッとタコみたいに尖らせる。
「エロカワ……」
「うん、あーちゃんの服、エロいし可愛いしめちゃくちゃエロい」
ニヤニヤしたりタコになったりと彼の表情筋は忙しなく動いていて何だか面白い。
(エロい2回言った……)
昨夜は朝香を抱き締めいやらしく舐めていた彼が、今では本当に可愛らしく見えるので
「向日葵さんはめちゃくちゃ可愛いよね」
と、素直な感想を述べてニッコリ笑うと
「もう……あーちゃんはなんでそんなに俺を煽るんだよっ!」
「きゃ」
向日葵さんは怒り口調になりながら朝香を横抱きにしてソファまで連れて行く。
「俺がどれだけ……悩んで、我慢しても」
ボスッと座面に朝香の背中が埋まり、その直後に向日葵さんが覆い被さる。
「あーちゃんがエロかったらどうしようもなくなるんだよ……」
悲痛な声をあげながら向日葵さんは朝香を抱き締め、黒猫フードの隙間に自らの顔を埋めると躊躇いなくやわらかな首や肩にむしゃぶりつく。
『フラワーショップ田上』で数十分程度時間を潰したからか、大学カフェテリアで配達物を渡しても図書館で読書していても向日葵さんと顔を合わさずにいられた。
今日はそのまま1人で帰宅し源さんで食材を受け取り現在は203号室のキッチンで夕飯作りをしている。
(向日葵さんからは連絡きてないなぁ)
朝香帰宅時、103号室の照明は暗いままだった。今はそこから1時間近く経過しているが駐輪場にバイクが置かれていないのでまだ帰宅していないのかもしれない。
(2人分作っちゃった……どうしよう、これ)
源さんからいつものように2人分の食材を受け取ったので、つい今日もいつも通りの感覚で向日葵さんの分も作ってしまっている。彼が不在ならこの分をラップかけて冷蔵庫保存して翌日にでも自分が食べてしまってもいい。
そんな事をぼんやりと考えていたのだが……。
(私だけ先に食べるのもなぁ……)
奥さんと会話する時間を設けたとは言え、問題解決した訳ではないし心のモヤモヤが晴れた訳でもない。
(黒猫ちゃんのルームウェアきてちょっとでも気分上げようかなぁ)
まだまだ食欲の湧かない朝香は、昨日買った服の中から下着とルームウェアを引っ張りだし着替えてみる。
「わぁ♡ 可愛い♡ えへへ♪」
向日葵さんには内緒で購入した下着とルームウェアは実際袖を通しても可愛らしく、気持ちが高揚していく。
(食欲ないからこのまま横になっちゃお♡)
朝香は無邪気な気持ちをそのまま楽しんでしまおうと前向きに考え、猫耳のついたフードを頭にかぶってベッドへゴロンと寝転がった。
「ふふふ~♡ きもちい~~♡♡♡」
今までオシャレを楽しんで来なかった分、昨日の買い物デートは楽しかったしこうして気に入った服を身に付けるとテンションが上がってより楽しくなってくる。
…………が、しばらくすると
「向日葵さんに見せたいなぁ……」
その心地良さを大好きな人と共有したいという欲求が高まってきた。
「エッチな事されても、大好きなのは変わらないもん……」
改めて朝香は気付いたのだ。
昨夜向日葵さんにあのような事をされても、嫌いにはなれなかったしそもそも嫌悪を持っていないのだと……。
(された事にビックリしただけで、イヤじゃなかったんだよね……私は)
昨夜の出来事を思い出してもまだドキドキしている。
(優しい向日葵さんにもオオカミな部分はあるんだ。だって向日葵さん自身「野獣」って認めてて否定しないんだもん……)
着ているルームウェアや下着の心地良さ以上に向日葵さんの舌や指は気持ち良かったし、また経験してみたいと朝香は今もそう考えている。
(夕方奥さんと話せて本当に良かったなぁ……そうじゃなかったら自分の気持ちにちゃんと気付けなかったと思うから)
こ気持ちに気付く事が出来たのは今日『フラワーショップ田上』で会話した奥さんの存在に他ならない。また奥さんと顔を合わせた時は感謝の言葉を述べようと朝香は心に決めた。
*
小1時間ゴロゴロしながら過ごしていた朝香だったが、階下で物音がしたのでムクッと起き上がる。
(向日葵さん帰ってきたのかな?)
嬉しさと緊張が入り混じり、胸がドキドキと高鳴る。
(今すぐ会いたい! 会ってちゃんと話がしたい!)
気持ちばかりが先行し、着の身着のまま玄関を開けて外へ出る。
サアアアァッという霧雨の音や雨粒、湿気を含んだ冷たい空気。
それらをさほど気にかける事なく朝香はカンカンと外階段を降り、103号室のインターフォンを押す。
照明がパッと室内で明るく照らされたと思ったらすぐに玄関扉が内側から開いて……
「向日葵さんっ! あのっ、私っ!!」
彼の顔が見れた嬉しさから名を大きく呼んで喋り始めたのだが
「ちょっ! あーちゃん!! なんて格好してんだよ!!!!!!」
目の前の向日葵さんは朝香よりも大きな声を張り上げて叱り
「えっ」
周囲をキョロキョロと見回しこの場に朝香しか居ないのを確認した後で
「雨降ってるんだから中に入って! 今すぐ!!」
慌てた様子で朝香の腕をグイッと引っ張り室内へと入れ、すぐにバタンと玄関扉を勢いよく閉めたのだった。
(えっ?! 何? なになになに??!)
彼の慌てっぷりに朝香はさっきとは別のドキドキを感じていると
「もうあーちゃん! なんてエッチな格好してんだよっ! 昨日のアレで警戒心持ってくれてないと俺マジで何するか分かんないよ? 本当に大丈夫なの?!」
向日葵さんが金髪を揺らしながらプリプリ怒っているようで、言葉では朝香を叱っているのだが……
「向日葵さん、顔ニヤけてるよ?」
彼の顔はやけに嬉しそうで口元がニヤけて弛みっぱなしなのだ。
「そ、そりゃあニヤけるだろ。あーちゃんめちゃくちゃエロカワなんだから!」
朝香に指摘されて恥ずかしかったのか、向日葵さんは唇に力を入れキュッとタコみたいに尖らせる。
「エロカワ……」
「うん、あーちゃんの服、エロいし可愛いしめちゃくちゃエロい」
ニヤニヤしたりタコになったりと彼の表情筋は忙しなく動いていて何だか面白い。
(エロい2回言った……)
昨夜は朝香を抱き締めいやらしく舐めていた彼が、今では本当に可愛らしく見えるので
「向日葵さんはめちゃくちゃ可愛いよね」
と、素直な感想を述べてニッコリ笑うと
「もう……あーちゃんはなんでそんなに俺を煽るんだよっ!」
「きゃ」
向日葵さんは怒り口調になりながら朝香を横抱きにしてソファまで連れて行く。
「俺がどれだけ……悩んで、我慢しても」
ボスッと座面に朝香の背中が埋まり、その直後に向日葵さんが覆い被さる。
「あーちゃんがエロかったらどうしようもなくなるんだよ……」
悲痛な声をあげながら向日葵さんは朝香を抱き締め、黒猫フードの隙間に自らの顔を埋めると躊躇いなくやわらかな首や肩にむしゃぶりつく。
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