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本編
田上の奥さん3
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「そういえばね、付き合ったばっかりの頃かなぁ。健ちゃんが私に夏用ワンピース買ってくれた事があったの。
職場は一緒だから、買い物デートして私が『いいなぁ』って一目で気に入ったワンピースを『初デートの記念に買ってあげる』って」
「えっ! そんな事があったんですか?」
奥さんから聞いた話は昨日の朝香と状況がソックリだったので両目を見開かせる。
そんな朝香を見ながら奥さんはウンウンと頷き「良い思い出」だと語っていく。
「うん。試着室で着てみて、サイズピッタリでデザインも良かったから『このまま着てデート続けよう』って健ちゃんもテンション上がっちゃってね。すごーく楽しいデートになったし……」
「ほぅ」
「その後行ったホテルも、エッチも、すごーーーく盛り上がっちゃった♡」
「!!!!」
「しかもね、健ちゃんったら私をホテルのベッドに押し倒してさぁなんて言ったと思う? 『男が好きな人に服をプレゼントするのは、その後で可愛いキミを脱がせたいからだよ』って言ったのよ~~~!!!
もうね、衝撃発言過ぎると思わない朝香ちゃんっ! 今となったら黒歴史レベルよ! 一体何を参考にしてそんな発言してきたんだか。あーもうっ! 今思い出しても笑っちゃうぅ♡」
奥さんはそのままあっけらかんとした表情でイチャイチャの詳細をバラしたので思わず朝香はずっこけそうになってしまった。
(ちょっとちょっとちょっと奥さぁぁん!! 健人さんに了解得ずにそんな話しちゃっていいの?!!)
頬と耳を熱くしながら慌てふためく朝香に対し、奥さんはまだケラケラと笑いながら「昔話よ昔話っ」とまだ戯けた様子でいる。
(昔話っていうけど、さっき奥さん「情熱的」って話したからきっと今もそんな感じって事に……あぁ~! 健人さんのそういう部分夕紀さん知らないだろうな。私が先に知っちゃって良かったのかなぁ)
自分どころか夕紀すら知らない田上健人のあれこれを聞くのは恥ずかしいしどう反応すればいいのか朝香は分からなくなってしまった。当然脳は混乱しているし顔どころか全身にまで熱が充満していく。
(でもでもっ! 健人さんと奥さんはご夫婦なんだもんね。お付き合い期間から数えると10年以上って言ってたし)
奥園茉莉が『フラワーショップ田上』にアルバイトとして勤務を始めたのが15年ほど前。田上健人15歳、奥園茉莉18歳の時だったそうで、毎日顔を合わせている内に2人は惹かれ合い健人が高校を卒業した後で交際が始まったのだと、朝香は夕紀と健人の双方から話を聞いている。
長い付き合いを通して愛を深め……あと数ヶ月もしたら第二子が誕生する。
そしてその喜ばしい幸せはやはり夫婦の深い愛や触れ合いがなければ存在しない。身近な人物のセクシーな面を知るのは非常に照れ臭いが外野がそんな事を言ってられる場合ではないのだ。
(健人さんだって奥さんの前ではオオカミになる……でも、それって奥さんにとって嫌な面でもなんでもなくて喜んで受け入れてるんだよね?)
ヤギみたいな草食男子の健人がオオカミになるのも彼の一面なのだし、妻が照れもせず今も朝香を前にして堂々としているのは、そんな健人も愛している証拠とも言えるのだ。
「って……ことはぁ、私が昨日彼にされたのも健人さんの言う『脱がせたい』だったんでしょうかぁ」
愛し合う行為は素晴らしいものであると朝香は思う。だからこそ奥さんの思い出話を昨日の出来事と重ねてしまったしついそんな質問までしてしまった。
朝香も訊かずにいられなかったのだ。彼がなぜあのような恥辱行為を自分にしてきたのか。彼が自分を好意的に見ているのは明らかで買い物もドライブデートも楽しかったからこそ、あの時向日葵さんがどのような心境でいたのか朝香はとても気になっている。
「朝香ちゃんの彼がどんな心境だったのか、私は想像でしか判断出来ないけど」
奥さんはまず、そう前置きをした上で朝香に向かってニッコリと微笑み……それから
「朝香ちゃんの事が大好きで大好きでたまらなくなって、なおかつ自分がプレゼントした服を身に付けてお部屋の前で待ってくれてるみたいな状況になったらさ。
そりゃあハグだけじゃ我慢出来なくなっちゃうんじゃない?」
先程とは違い、言葉を慎重に選びながら朝香を諭してくれる。
「ハグだけじゃ……我慢、出来ない……」
そのまま言葉を繰り返す朝香に対し、奥さんは愛おしそうに自分のお腹を撫で……
「そうよ。人間って理性的な部分があるのと同じくらい、情熱的で野生的な部分もある。常にシーソーみたいに揺れながらもバランスを取って思い悩む生き物なのよ。
それって他の種族にとっては非常識で効率悪いと感じるかもしれないけどさ、私はそれこそが人間の醍醐味だと思うのよね」
感慨深い表情をしながら、そのように話を終わらせたのだった。
職場は一緒だから、買い物デートして私が『いいなぁ』って一目で気に入ったワンピースを『初デートの記念に買ってあげる』って」
「えっ! そんな事があったんですか?」
奥さんから聞いた話は昨日の朝香と状況がソックリだったので両目を見開かせる。
そんな朝香を見ながら奥さんはウンウンと頷き「良い思い出」だと語っていく。
「うん。試着室で着てみて、サイズピッタリでデザインも良かったから『このまま着てデート続けよう』って健ちゃんもテンション上がっちゃってね。すごーく楽しいデートになったし……」
「ほぅ」
「その後行ったホテルも、エッチも、すごーーーく盛り上がっちゃった♡」
「!!!!」
「しかもね、健ちゃんったら私をホテルのベッドに押し倒してさぁなんて言ったと思う? 『男が好きな人に服をプレゼントするのは、その後で可愛いキミを脱がせたいからだよ』って言ったのよ~~~!!!
もうね、衝撃発言過ぎると思わない朝香ちゃんっ! 今となったら黒歴史レベルよ! 一体何を参考にしてそんな発言してきたんだか。あーもうっ! 今思い出しても笑っちゃうぅ♡」
奥さんはそのままあっけらかんとした表情でイチャイチャの詳細をバラしたので思わず朝香はずっこけそうになってしまった。
(ちょっとちょっとちょっと奥さぁぁん!! 健人さんに了解得ずにそんな話しちゃっていいの?!!)
頬と耳を熱くしながら慌てふためく朝香に対し、奥さんはまだケラケラと笑いながら「昔話よ昔話っ」とまだ戯けた様子でいる。
(昔話っていうけど、さっき奥さん「情熱的」って話したからきっと今もそんな感じって事に……あぁ~! 健人さんのそういう部分夕紀さん知らないだろうな。私が先に知っちゃって良かったのかなぁ)
自分どころか夕紀すら知らない田上健人のあれこれを聞くのは恥ずかしいしどう反応すればいいのか朝香は分からなくなってしまった。当然脳は混乱しているし顔どころか全身にまで熱が充満していく。
(でもでもっ! 健人さんと奥さんはご夫婦なんだもんね。お付き合い期間から数えると10年以上って言ってたし)
奥園茉莉が『フラワーショップ田上』にアルバイトとして勤務を始めたのが15年ほど前。田上健人15歳、奥園茉莉18歳の時だったそうで、毎日顔を合わせている内に2人は惹かれ合い健人が高校を卒業した後で交際が始まったのだと、朝香は夕紀と健人の双方から話を聞いている。
長い付き合いを通して愛を深め……あと数ヶ月もしたら第二子が誕生する。
そしてその喜ばしい幸せはやはり夫婦の深い愛や触れ合いがなければ存在しない。身近な人物のセクシーな面を知るのは非常に照れ臭いが外野がそんな事を言ってられる場合ではないのだ。
(健人さんだって奥さんの前ではオオカミになる……でも、それって奥さんにとって嫌な面でもなんでもなくて喜んで受け入れてるんだよね?)
ヤギみたいな草食男子の健人がオオカミになるのも彼の一面なのだし、妻が照れもせず今も朝香を前にして堂々としているのは、そんな健人も愛している証拠とも言えるのだ。
「って……ことはぁ、私が昨日彼にされたのも健人さんの言う『脱がせたい』だったんでしょうかぁ」
愛し合う行為は素晴らしいものであると朝香は思う。だからこそ奥さんの思い出話を昨日の出来事と重ねてしまったしついそんな質問までしてしまった。
朝香も訊かずにいられなかったのだ。彼がなぜあのような恥辱行為を自分にしてきたのか。彼が自分を好意的に見ているのは明らかで買い物もドライブデートも楽しかったからこそ、あの時向日葵さんがどのような心境でいたのか朝香はとても気になっている。
「朝香ちゃんの彼がどんな心境だったのか、私は想像でしか判断出来ないけど」
奥さんはまず、そう前置きをした上で朝香に向かってニッコリと微笑み……それから
「朝香ちゃんの事が大好きで大好きでたまらなくなって、なおかつ自分がプレゼントした服を身に付けてお部屋の前で待ってくれてるみたいな状況になったらさ。
そりゃあハグだけじゃ我慢出来なくなっちゃうんじゃない?」
先程とは違い、言葉を慎重に選びながら朝香を諭してくれる。
「ハグだけじゃ……我慢、出来ない……」
そのまま言葉を繰り返す朝香に対し、奥さんは愛おしそうに自分のお腹を撫で……
「そうよ。人間って理性的な部分があるのと同じくらい、情熱的で野生的な部分もある。常にシーソーみたいに揺れながらもバランスを取って思い悩む生き物なのよ。
それって他の種族にとっては非常識で効率悪いと感じるかもしれないけどさ、私はそれこそが人間の醍醐味だと思うのよね」
感慨深い表情をしながら、そのように話を終わらせたのだった。
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