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本編
ネコと野獣3
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*
「あ、鳴った」
「あーちゃんも♡」
「やぁん、恥ずかしい♡」
「俺も恥ずかしいよ。でも同時に鳴ったのは嬉しいかも♡」
深夜帯に入ってくると流石に朝香と向日葵さんのお腹はクルクルと音を立て、2人は照れ笑いする。
「ご飯ね、ラップして冷蔵庫に入れてるの。良かったら一緒に食べる?」
朝香の提案に向日葵さんは大きくブンッと頷いたのだが……
「あー、えっと。ごめんね、昨日スイーツ買ってくるって約束したのに無駄にしちゃったんだ。アイス買ったのに溶けてぐちゃぐちゃになって」
昨夜の事を思い出したのか、すぐにシュンとした表情になる。
「ううん、いいの。また今度ね♪」
朝香は彼を慰めるよう、額をスリスリと撫でた。
彼は朝香によく頭を撫でたりポンポンしてくれるが、彼はこの金髪ウェーブのヘアスタイルにかなりのこだわりを持っているようで崩れるのを過剰に心配する。だから朝香が彼を慰めたり褒めたりしたくなったら背中を撫でたり額を撫でたりして気持ちを伝える事にしていた。
「んもぅ♡ あーちゃん大好き♡ 大好きぃ♡」
朝香の細やかな心遣いは彼のツボらしく、大好きを繰り返してはギューッと強いハグで返してくれる。
「えへへ♡ 幸せ♡」
「じゃあ、あーちゃんのご飯ご馳走になるね!」
「うん! 今日の魚料理はパンガシウスの香草焼きだよー」
「パンガシウスってなぁに? あーちゃん」
「食べるまで内緒♡」
「ふふっ、あーちゃんのいじわる」
「ふふふ♡」
お腹がグーグー鳴って仕方ないのに、大好きな人とハグして会話のキャッチボールするのも止められない。
(ラブラブに戻れてるのかなぁ……)
今日は一日ずっとモヤモヤを抱えていたが、もう完全に解消されていると朝香は実感する。
*
「パンガシウスって白身魚なんだ!」
向日葵さんは目をキラキラさせながら夢中で箸を進めていた。
「うん、輸入品だから個人の魚屋さんで置いてあるの珍しいなーって思ってたらね。源さんが『朝香ちゃんみたいな若い子の魚料理バリエーション増えて欲しいから』って最近は業者と取引きするようになったみたい」
「えっ?! 俺達の為なんだ?」
「うん! ありがたいよね! 特に源さん、私と一緒にご飯食べてる人が肉より魚派だって知ってるから」
朝香がそこまで話すと、向日葵さんはまた目を潤ませて
「俺達っていうか俺の所為じゃん……」
また悲しそうな表情をする。
向日葵さんは滅多に肉類を口にしない。ハムやソーセージならまだ食べられるのだがそこまで好きではなく「仕方なく食べられるギリギリの肉」らしい。だから朝香はここ数ヶ月ずっと牛・豚・鶏は外食でしか口に出来ていないのだ。
「まぁ、私もお魚は好きだから! 源さんのお魚新鮮で美味しいし!」
唇のキスが出来ない、セックスが出来ない
髪や頭を触られたくない、刃物が触れない、肉類が食べられない
今日の今日まで朝香はさほど気にしてこなかったが向日葵さんは制約が多過ぎるように感じるし、キスに至っては先程「したい気持ちがあるのだ」と本音を朝香に漏らしていた。
(吐くって……言ってたよね、たしか)
あの時は彼の言葉を聞き取るのに必死でついスルーしてしまったが、彼は確かにそう言っていたと思い起こす。
「「ご馳走様でした」」
食べ終わり、いつものように2人とも同時に手を合わせたが……
「あのね、向日葵さん」
「ん?」
今日ばかりは色々訊いてもいいのではないかと、彼に向き直る。
「向日葵さんが私としたいのに我慢してるって話を……詳しく聞いてみたいなって、思うの。大好きな向日葵さんのことをちゃんと理解したいから」
ただの興味本位ではなく、彼を知る為の大事な手段。
その意図をきちんと朝香が伝えたので、向日葵さんはゆっくりと頷いて
「そうだよね……うん、ちゃんと話す」
そう、了承してくれたのだが……
「でも一つね、あーちゃんに条件がある」
向日葵さんは人差し指を朝香の胸元へと突き立てて
「黒猫ルームウェアとさ、開いたファスナーからチラ見えする黒ブラがエロ過ぎて刺激強いんだ……あと、ショーパンで隠しきれてない太ももとか」
と、現在の朝香の破廉恥な格好を指摘する。
「ひゃあ♡」
(そうだ! ずーっと黒猫ルームウェアの格好だったの忘れてた!!)
個人的には可愛い部屋着だと思っていても、向日葵さんにとっては過激な服装に感じるのだろう。
(あー! 確かに私がご飯レンチンして準備してる間、壁の方向いて見ないようにしてたかも!!)
「ごめん向日葵さんっ!! 今すぐ着替えてくるねっ!!」
恥ずかしくなってきた朝香はクローゼットからTシャツとジーパンを引っぱって風呂場へ駆け込む。
(あぁぁ~やらかしたぁ。そりゃ向日葵さんだって野獣化しちゃうし、昨日の二の舞って感じたらそりゃ思い詰めて泣いちゃうよね)
これには本気で後悔し、反省した。確かに彼は言っていたのだ朝香の格好は「エロカワ」であると……。
「あ、鳴った」
「あーちゃんも♡」
「やぁん、恥ずかしい♡」
「俺も恥ずかしいよ。でも同時に鳴ったのは嬉しいかも♡」
深夜帯に入ってくると流石に朝香と向日葵さんのお腹はクルクルと音を立て、2人は照れ笑いする。
「ご飯ね、ラップして冷蔵庫に入れてるの。良かったら一緒に食べる?」
朝香の提案に向日葵さんは大きくブンッと頷いたのだが……
「あー、えっと。ごめんね、昨日スイーツ買ってくるって約束したのに無駄にしちゃったんだ。アイス買ったのに溶けてぐちゃぐちゃになって」
昨夜の事を思い出したのか、すぐにシュンとした表情になる。
「ううん、いいの。また今度ね♪」
朝香は彼を慰めるよう、額をスリスリと撫でた。
彼は朝香によく頭を撫でたりポンポンしてくれるが、彼はこの金髪ウェーブのヘアスタイルにかなりのこだわりを持っているようで崩れるのを過剰に心配する。だから朝香が彼を慰めたり褒めたりしたくなったら背中を撫でたり額を撫でたりして気持ちを伝える事にしていた。
「んもぅ♡ あーちゃん大好き♡ 大好きぃ♡」
朝香の細やかな心遣いは彼のツボらしく、大好きを繰り返してはギューッと強いハグで返してくれる。
「えへへ♡ 幸せ♡」
「じゃあ、あーちゃんのご飯ご馳走になるね!」
「うん! 今日の魚料理はパンガシウスの香草焼きだよー」
「パンガシウスってなぁに? あーちゃん」
「食べるまで内緒♡」
「ふふっ、あーちゃんのいじわる」
「ふふふ♡」
お腹がグーグー鳴って仕方ないのに、大好きな人とハグして会話のキャッチボールするのも止められない。
(ラブラブに戻れてるのかなぁ……)
今日は一日ずっとモヤモヤを抱えていたが、もう完全に解消されていると朝香は実感する。
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「パンガシウスって白身魚なんだ!」
向日葵さんは目をキラキラさせながら夢中で箸を進めていた。
「うん、輸入品だから個人の魚屋さんで置いてあるの珍しいなーって思ってたらね。源さんが『朝香ちゃんみたいな若い子の魚料理バリエーション増えて欲しいから』って最近は業者と取引きするようになったみたい」
「えっ?! 俺達の為なんだ?」
「うん! ありがたいよね! 特に源さん、私と一緒にご飯食べてる人が肉より魚派だって知ってるから」
朝香がそこまで話すと、向日葵さんはまた目を潤ませて
「俺達っていうか俺の所為じゃん……」
また悲しそうな表情をする。
向日葵さんは滅多に肉類を口にしない。ハムやソーセージならまだ食べられるのだがそこまで好きではなく「仕方なく食べられるギリギリの肉」らしい。だから朝香はここ数ヶ月ずっと牛・豚・鶏は外食でしか口に出来ていないのだ。
「まぁ、私もお魚は好きだから! 源さんのお魚新鮮で美味しいし!」
唇のキスが出来ない、セックスが出来ない
髪や頭を触られたくない、刃物が触れない、肉類が食べられない
今日の今日まで朝香はさほど気にしてこなかったが向日葵さんは制約が多過ぎるように感じるし、キスに至っては先程「したい気持ちがあるのだ」と本音を朝香に漏らしていた。
(吐くって……言ってたよね、たしか)
あの時は彼の言葉を聞き取るのに必死でついスルーしてしまったが、彼は確かにそう言っていたと思い起こす。
「「ご馳走様でした」」
食べ終わり、いつものように2人とも同時に手を合わせたが……
「あのね、向日葵さん」
「ん?」
今日ばかりは色々訊いてもいいのではないかと、彼に向き直る。
「向日葵さんが私としたいのに我慢してるって話を……詳しく聞いてみたいなって、思うの。大好きな向日葵さんのことをちゃんと理解したいから」
ただの興味本位ではなく、彼を知る為の大事な手段。
その意図をきちんと朝香が伝えたので、向日葵さんはゆっくりと頷いて
「そうだよね……うん、ちゃんと話す」
そう、了承してくれたのだが……
「でも一つね、あーちゃんに条件がある」
向日葵さんは人差し指を朝香の胸元へと突き立てて
「黒猫ルームウェアとさ、開いたファスナーからチラ見えする黒ブラがエロ過ぎて刺激強いんだ……あと、ショーパンで隠しきれてない太ももとか」
と、現在の朝香の破廉恥な格好を指摘する。
「ひゃあ♡」
(そうだ! ずーっと黒猫ルームウェアの格好だったの忘れてた!!)
個人的には可愛い部屋着だと思っていても、向日葵さんにとっては過激な服装に感じるのだろう。
(あー! 確かに私がご飯レンチンして準備してる間、壁の方向いて見ないようにしてたかも!!)
「ごめん向日葵さんっ!! 今すぐ着替えてくるねっ!!」
恥ずかしくなってきた朝香はクローゼットからTシャツとジーパンを引っぱって風呂場へ駆け込む。
(あぁぁ~やらかしたぁ。そりゃ向日葵さんだって野獣化しちゃうし、昨日の二の舞って感じたらそりゃ思い詰めて泣いちゃうよね)
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