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細い身が絡まり合い、一本の紐となる

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「叱られた子どものような表情ね……仕方のない子」
「……」
「でも、リョウの事を色々思っている子達も居るの。
 こういう仕事は楽しいばかりじゃなく身も心も負担がくるでしょう? 『リョウも早く自分達と同じ位置まで来て欲しい』って優しい気持ちをかけてくれる子もいるし、『もっと長時間働いてくれなきゃ自分に負担が来るばかりだ』と苛立いらだつ子もいる」
「苛立つ……ですか」

 ご主人様はやはり「ご主人様」で「飼い主」だと感じた。
 ケースケくんだけでなく全てのセラピストの気持ちを理解し、俯瞰的に僕達を見ているのだろう。

「どちらの場合でもリョウの成長を願っているのよ……だから理解して、大人になって」

 僕はそれを理解しているからこそ

「……約束の20歳の誕生日まで、あと5ヶ月半です。
 それまでに僕は、なりませんよね?」

 ご主人様の手が僕から離れたこのタイミングで、俯いたまま『約束』の話をした。

「そうね」

 ご主人様はより落ち着いた声で短く返答し

「成人して、リョウが私の元で本格的に働く意志がまだあるのなら正式に雇ってあげる」

 改めて、僕がまだ16歳だった時に交わした『約束』をご主人様は口にする。

「そうなったら、僕は……」
「ケースケと同等の料金で稼働してもらう。リョウには才能があるから」
「……僕にそんな才能、あるんですか?」
「あるから言っているの。特に近頃のリョウはとても良い目つきをしているし、予約が溢れてるくらいなんだから。リョウを求めるお客様はあなたの想像より多いと思いなさい。
 あなたは恵まれているのよ、需要が高くてそれを成し得るだけの能力も持っているのだから」
「……ありがとうございます」

(僕は自分の思う以上に求められている……。
 20歳になったら、ケースケくんと同等のオプションコースも受け持つ……)

 この2つは嬉しくもあるし、花ちゃん以外に反応しない僕の陰茎で果たして仕事をして良いのだろうかという不安もある。

(ケースケくんは敢えて……だけど僕は。この差はかなり大きいんじゃないかな? 僕に出来るのかな)

 ゆっくり顔を上げると、ご主人様はデスクの1番大きな引き出しから何かを取り出する様子が見えた。

「ご主人様?」

 それから白を基調とした女性らしい箱のケースを4箱重ねて無地の紙袋に入れた状態で僕に差し出してくる。

「お年玉よ。リョウは頑張ってるからいっぱいあげる」
「お年玉って……ポチ袋じゃなくて?」

 お年玉をイメージするものとはかけ離れてる見た目に驚きながら紙袋を受け取り、中から長方形の箱を1つ取り出してまじまじと観察する。

「19歳にしては高い『お小遣い』を毎月あげてるんだから、お金なんて有り難み薄いじゃない。同等の額をポチ袋に入れるくらいならそういうものの方がリョウの役に立つと思って」
「……お菓子の箱、ですか?」

 外箱の表側に書かれている商品名を読んでもピンと来ず、軽いしお菓子の箱っぽい可愛らしさ溢れるデザインも不思議に思いながら箱を裏返してみてギョッとする。

「お菓子あげる飼い主に見える? 私が。コンドームの箱に決まってるじゃない」
「コッ??!!」

 ご主人様の声と箱の説明書が一致して僕は思わず大きな声を出してしまった。

「そんなに驚くものでもないでしょう?」
「だってこんな外箱見た事ないですし、よく考えたら普通の倍くらいの大きさで4箱もって!! 大量じゃないですか!!」
「箱は大きくても量は入ってないの。むしろ普通のより少ないくらい。」
「にしたって4箱も要りませんって!!」

 僕の大声に耳を塞ぎイヤそうな顔をするご主人様に、僕は顔を熱くしながら反論した。

「要るわよ、必要なものだから。それにこの商品は女の子も男の子も気持ちよくなりやすい良い商品なの。リョウのガールフレンドちゃんにも喜ぶんじゃないかしら?」
「居ませんガールフレンドだなんて!!」
「嘘はダメよ嘘は」
「っ……」

 顔を左右に振って否定する僕にご主人様はセクシーな声をかけながら僕の顔の動きを強制的にストップさせる。

「あなた、良い恋をしてるでしょ」
「え……」

 ご主人様が言い当てた内容にドキッとしていると、あごつままれクイっと斜め上へと持ち上げられる。

「しかも、私と初めて会った頃からずっと心に秘めていた純粋な片想い。それがようやく成就したと、あなたの顔に書いてあるの」

 大人の女性らしい気品あふれる美貌に見つめられ、艶のあるセクシーな唇で「顔に書いてある」なんて言われたから僕はますます顔を熱くした。
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