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陽の光霞ませる、強い香りを持つもの

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 仕事のエピソードを話している花ちゃんの口からは毎日のように「今日のお客さんのお子さんがね」が出てくるし、やはりそうなんだろうなという気はしていた。

「ま、『子ども好き』イコール『子ども欲しい』じゃないから!愛する人と一緒に居たってケースもあるし坊やは気にする必要なし!」

 ユリさんは撫でていた僕の白毛カツラをペシッと軽く叩いた。

「へ?」
「……なーんてね♪ ふふふ♡」

 その優しい叩き方やおちゃらけた笑いは、明らかに「太地である僕と花ちゃんとの関係を熟知している」と言っているようにしか感じられなくて

「ユリさん……あの!」

 退出しようとするユリさんの方をすぐに振り向いたんだけど

「じゃあ退室時間だから帰るわね。坊やも早く片付け済ませてもう1枠頑張りなさいよっ!」

 もう、扉の隙間からこちらに手を振る長い指しか見えなかった。


 パタンと、扉が完全に閉まる音がして……

「っ……」

 スズさんが退室した時とは全く別の意味で、僕はリョウらしい表情ではいられなくなる。

「今日の僕、ユリさんの言い方以上に変だ」

 胸の鼓動がうるさく高鳴る。

「急いで片付けてとしてもうひと頑張りしなくちゃ!」

 僕の手足は、いつも以上に機敏に動き早く家に帰らなければという気持ちに追い込まれた。



 花の名前をつけた女性達から求められるのは嬉しいし、求められた事を誠心誠意込めた行動によって返してその結果女性達が前進して幸せになってほしいと思う。

(花ちゃんは僕を求めていて、今とっても幸せなんだよねきっと……。
 向いてる仕事に就けていて、家に帰って僕の顔見ても幸せそうにしてくれてて、僕が触れる度に甘い声を聞かせて幸せそうにお昼寝して……8時間僕の帰りを待って、公園で待ち合わせてお散歩デートして……イチャイチャして)

 花ちゃんがこれからも前進して幸せになっていく未来に僕も含まれていると、存在していると……そう確信しながら僕は仕事部屋を綺麗に清掃していった。


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