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28 SEPO通信Vol.1の巻

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6月30日水曜日。
明日から期末試験を控えた教室に、四時間目終了のチャイムが鳴り響く。

ヴヴヴヴヴッ ヴヴヴヴヴッ ヴヴヴヴヴッ

そこかしこでスマホのバイブが震えだす。
俺の記憶に色濃く残る過去事例、その三回とも、俺のスマホはスルーされたが、さすがに学校主催の一斉配信までは、俺をハブりに来なかったようだ。

「『SEPO通信』って何これ?」
「『Sex Education Planning Office』って性教育かよっ!」
「なんか漫画とかあるよー」

冒頭にはPTA向けのお硬い文章。
昨今社会問題となっているリベンジポルノがあーたらこーたら。
海外では常識化している生徒向けの教育を、国内では他校に先駆けいち早く取り入れました的な言い訳を並べ立て、メインの漫画に関しても『高校生の交際トラブルに詳しい専門家のお話を元に、生徒の皆さんに伝わりやすい漫画という様式を取り入れ』なぞという前置きがなされていたりする。

記念すべき初回の漫画はあまり凝ったストーリーにはせず、あくまでも『sex education』という試みが、PTAに潰されない用、細心の注意を払ったものだ・・・が、チャラ男への悪意はオブラートに包んでいない。



=====

【シーン1】チャラ男がチョロ子にハメ撮りをお願いする。

チャラ男「まじ絶対誰にも見せないしー、なんていうか二人の想い出?残したいじゃん?」
チョロ子「えー、でもー、そういうのって危ないっていうしー。やっぱ恥ずかしー、みたいな?」
チャラ男「大丈夫だってー。俺とチョロ子、ずっと一緒じゃん?それにー、チョロ子と一緒に居られない時も、コレ見て大好きなチョロ子を身近に感じたいしー、お願いっ!一生のお願いっ!」
チョロ子「もー、特別だよぉ?絶対人に見せたらダメだかんねー」

【シーン2】チャラ男、クラス男子のグルチャでハメ撮り画像自慢。

[チャラ男] つーか、男なら生っしょ?中出し決めてなんぼっしょ?
[モブ男A] チャラ男くんマジパネー
[チャラ男] つーかお前ら、クラスの女子のマンコ、見たことあんの?
[モブ男B] 無理っしょ?アイツラ大学生とかじゃねーと眼中ねーって
[チャラ男] ふーん。まっ、俺は見たけどね?ってか当然中出し決めてっけどね?
[モブ男A] えー、さすがにそれはチャラ男くんでも無理っしょ?盛りすぎっしょ?
[チャラ男] あっ?そゆこと言っちゃう?そうまで言われっと俺も黙ってらんねーわ。ホレ。
※添付:チョロ子のハメ撮りダブルピース画像

[モブ男B] 神降臨!つーかチョロ子まじ食っちゃったんだ?
[モブ男A] チャラ男くん、マジパネー!うらやましす!
[チャラ男] まっ、実際チョロ美とチョロ江も食ってんだけどね。お前らもまー頑張れよ。

【シーン3】チョロ子、拡散されてるのに気づかず当校。

チョロ子「おはよー」
クラスメイト「シーン(ヒソヒソヒソヒソ)」
友人A「ちょっ!チョロ子!こっちこっち」

友人A、チョロ子を廊下の隅へ拉致。

友人A「あのね、ショック受けないよう、冷静に聞いて」
チョロ子「えっ?なに?怖いんだけど?」
友人A「この写真、どうも学校中に拡散されてるみたいなの」

友人A、話題のハメ撮り画像を表示。

チョロ子「えっ・・・なんで・・・誰にも見せないって言ったのに・・・」

【シーン4】昼休みのチョロ子、チャラ男を校舎裏に呼び出す。

チョロ子「酷いよチャラ男くん!誰にも見せないって約束したじゃないっ!」
チャラ男「いやごめんって。まじごめんて。ついね?つい?悪気とかなかったし?仕方ないじゃん?」
チョロ子「こんな事になって・・・わたし、もう学校来れない・・・」
チャラ男「あー、そーなん?つーか、俺もチョロ子と別れっかって思ってたし、ちょーどよくね?」
チョロ子「えっ・・・なんで?チャラ男くんが約束破ったからこんな事になったんだよ?」
チャラ男「いや、なんつーの?さすがにアレっしょ?学校中にマンコ晒した女と付き合ってるとか?無理っしょ実際?じゃ、げんきでねー」

=====



「うっわ、コレ、チャラ男くず過ぎっしょ!」
「つーかこんなんされたらマジ引きこもっから」
「チョロ子・・・男見る目なさすぎだよねー」
「そもそもハメ撮りさせてる時点でアウトっしょー」

昼休みの教室、反応は上々。
俺は滑り出しの一歩に成功したことに達成感を感じながら日野と机を合わせる・・・俺っ、何ヤッた!?

微塵も気付いてなかった。
馬鹿すぎる。
クソガキにも程がある。

「日野、話、きいてくれ・・・外、いいか?」
「・・・ん」

歩きながらリコに、昼は用が出来たから一緒に食えないとメッセする。
校舎を遠く離れ、グラウンドの脇、雑木林の影に向かい合う。

「申し訳なかった」

心の底から申し訳なく思う。
真摯な思い出頭を下げた。

「・・・いいよっ・・・バカなことしてたの私だし、榊が悪いわけじゃない」

「いいや俺が悪い!話になんねー。最低の屑だ!こんなん・・・日野が傷つくに決まってんじゃん・・・また調子にのって、日野のこと全然気づかなかった・・・ほんとごめん・・・申し訳ない・・・」

怒っても、泣いてもいない。
だからといって傷ついてないわけがない。

「実際・・・アレ読んで、周りの反応聞いてると、ちょっとクルよね・・・でも榊はほんと悪くないよ。アレ読んで、私みたいにバカな事すんの、躊躇する子、絶対増えるし、むしろいいことしたんだって」

「いいわけねーじゃん!他の連中なんて知ったことか!それで日野が傷ついて、そんなの・・・いいわけねーじゃん」

「んー、じゃあさ?お詫びって事で、ちゅーしてよ?榊は絶対そんな風におもわねーって、頭ではわかってんだけど、やっぱ、私の体が汚いか「ムッチュゥゥゥゥッ」」

日野の華奢な体。
折れるほどに抱きしめてキスをした。
チュッって感じの軽いやつでも、舌を入れるディープなやつでも無い。
ガサツで、下手くそで、一生懸命なやつ。

かつて無いほどに至近距離で見る日野の顔。
かっと目を見開き、ただただ驚きにワタワタしていた。
やがてゆっくりと、日野を解放する。
お互いに真っ赤だ。

「・・・つーか躊躇、無さ過ぎじゃね?」

「いや・・・その・・・ほら・・・アレだ・・・うん・・・急いでしないと、やっぱ気が変わったとか言われたら、勿体無いじゃん?・・・折角かわいい子からのお誘いなんだし?」

「ぷっ・・・ぜってーそんなん思ってねーだろ!?」

「うん、まぁ、反射的に・・・」

「反射的にキスするとか事案すぎね?しかも全然エロくねーし」

「きゅっ、急にボールが来たので・・・とりあえず、この企画ボツにするわ。ほんと、馬鹿でゴメンな?」

「いいよ。続けなよ。コレ、きっと意味あるし。私がこんだけ嫌な気分になっちゃうってことは、そんだけバカやんないで済む女増えんじゃん?」

「いや無茶言うなって。俺、日野が辛いのとか絶対無理だし」

「んーじゃ、交換条件。配信一回ごとにキス一回。異論は認めねー」

「・・・おう」

「つーか・・・馬鹿正直に松橋さんに報告すんなよ?する気だろ?」

「当然する」

「・・・まじ気まずい。つーかハラ減ったし、ダッシュで戻ってメシくーぞ」

「おう」



[健太] とりあえず戻る。合流するか?
[理子] いいよ。今日は日野さんと二人で食べなよ。
[健太] ごめん、そうする。ありがとな。
[理子] ちゅっ♡



「リコが、今日は二人で食っとけってさ」
「うっわー、ますます気まずい、モア気まずい!」



#####



終業のチャイムが鳴り、皆次々と席を立つ。

「おしっ、榊。私は逃げる!あとは任せた!」

2日前から試験期間扱い、全部活活動休止で、居残りも当然禁止。

「おう。一夜漬け、あんま遅くまでやんなよ?本番はまだまだ先だからな?」

「そうしとく。あっ、松橋さん、お疲れー、私帰んねー」

「うん、日野さん、ばいばーい。ケンタ、わたしたちも帰ろ?」

「おう」



言葉少なく昇降口を抜け、駐輪場へ向かう。

「日野さん、大丈夫だった?」

「いや、もう自分の馬鹿さ加減にホント呆れた」

「あー、やっぱり?わたしも周りの反応見て、ちょっとチクっときたから、日野さん心配になった。そしたらメッセ来たから・・・」

「うん、リコ、俺、他にどうしていいかわかんなくて、日野にキスした」

「・・・そっか」

「ゴメンな。でも、もうリコを手放すなんて想像も出来ないし、日野から目を逸らすのも出来ない」

「いいよ。そういう約束。ケンタがまた好きになってくれた途端に、私だけを見ててなんて、そんなズルい事言わない・・・でも、やっぱり時々聞くかも、気になるから・・・日野さんの事、好きになった?」

「大好きだけど、エロい方じゃない。キスも全然エロくなかった。見た目とか好みのハズなんだけど・・・リコとはエロい事したいけど、日野とはやっぱり肩を組みたい。そんな感じ。もしもそれが変わったら、ちゃんと教えるから。知らない事があるかもって、不安になるのはナシな」

「ん。わかった。ズルいけど、ちょっと安心した」



リコの尻を追いかけて、タイトなコーナーを滑り抜ける。
ローテーション回せるところでは、入れ替わりざま、ポンッとその尻を叩く。
前は出来なかった些細な事。
それだけでほっこり幸せになる。
リコもきっとおんなじだ。
だって向こうも叩いてくるから。



#####



最近夕食は五人が増えた。
絶対コレ、俺達を見てる。

親父は微妙、母さんはウザそう、陽子さんはニコニコしてる。

「はい、ケンタ」
「おう、あんがと」

甲斐甲斐しく大皿から取り分けるリコ。

「美鈴、たまにはああいうのやってよ」
「うざっ!っていうかさ?コレってやっぱアレよね?近親相姦?そこんとこどうなの?背徳感とかわいちゃう系?」

この人は・・・家族の食卓にグレネード投げ込むのまじやめて!

「え?そんなの無いよ?ね?ケンタ?」
「あー、まっ、俺はある。妹みたいな感覚あるしね」

「ふーん、ねぇ理子。近親相姦ってハマると抜け出せないらしいわよ?」

「えへへへっ、そうなんだ?あっ、そうだ!美鈴母さん、今夜は緊急事態のお泊り許可を申請しますっ!」

「それはダメよ?ちゃんと緊急のときじゃないと。ルールはルール」

「緊急だよ?だって今日、ケンタが他の子にキスしたんだもん!お泊りしなかったら明日の試験で赤点とっちゃうよ!」

スパーン!

「ケンタっ!あんた何やってんの!」

「うむ。反省はしているが後悔はしていない」
「いいの。わたしもするべきだったって思う。でも、納得するには、安心するには、お泊りが必要です!」

「はぁ・・・例の日野ってコ?仕方ないわね・・・特別よ?」
「うんっ!ありがと、美鈴かーさん!」

「俺はそんなの認めんぞっ!っていうか日野さんって誰?」
「あなたは知らなくていいの」

「健太くん?健太くんは大丈夫?」
「ああ、大丈夫だよ。リコがちゃんと支えてくれてる」
「そう。良かった」

「っていうかさ?理子のタトゥー、ほんとガッコで怒らんないの?普通アウトでしょ?いくらなんでも?」

「あれ?リコ、あれ見せて無いの?」
「あっ、忘れてた。ちょっと待ってて」

パタパタとリコが免罪符をとってくる。
いつの間にかパウチされて、下敷きみたいになってる。

「はいっ、コレ」

めんどくさそうに受け取った母さん。
しばし、文面を眺め・・・

「はぁぁぁぁっ!?何コレ?こんなんどうやったら手に入んのよ!?」

「まぁ、一応。榊弁護士事務所を乗っ取る男だし?このくらいは普通でしょ?」

ドヤった。

「ちょ、あなた、見てみなさいよコレ!」
「どれどれ・・・うっわコレ、おまえ、絶対なんかで脅したろ?」
「えっ、私にも見せて?」

陽子さんが更に手にとる。
なんかこういうの、成績表の報告してるみたいだな。
うん、サービスしとくか。

「まっ、リコが必要とするなら、教頭が校長だろうと市長だろうと、どうにかして取ってくるよ」

「えへへへっー、ケンタだいちゅきっ!」

「うっわー、息子がリップサービスとか覚えやがった。キモっ!」




このあと無茶苦茶せっくす
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