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37 地道な努力の巻
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会合を終え、帰宅した俺達は今日も松橋家のリビングでテーブルを囲む。
カリカリ カリカリ カチカチッ カリカリ
一人だけ違う音が混じってるのは、俺がノートPCを持ち込んでるからだ。
カリカリ カリカリ カリカリ 『Oh~Yeah ! Oh Yeah~ ! Yes come to me !』
カリカリ カリカリ 『あっはぁ~ん♡』 カリカリ
「ちょ!あんたっ!人が勉強してる時にエロサイト見てんじゃないわよっ!」
「ケンタ・・・生でわたしの見れるのに、他のも見たいの?」
「心外な!依頼の為の大事な仕込みやってんの。一人でやってたらそれこそコソコソシコってるみたいだから、わざわざココでやってんだろ?」
俺が探してるのは有料サイト。
誰でもアップできて、再生回数に応じてマージンが貰えるタイプで、なおかつ日本の援交モノが多いとこ。
「いいわけがセコい!」
「ケンタ・・・」
「違うって!仮に約束取り付けたとして、確認もせずに成功したって信じるとかバカだろ?かといってソイツがどっかのサイトにアップしたかどうかなんて、実際確認のしようがねーし、あらかじめアップするサイトを誘導しとけば気休め程度でも確認できんじゃん!」
「・・・どうやって誘導すんのよ?」
「こういうサイトって海外だから基本英語だろ?だからエロサイト業者になりすまして『アップすればお金貰えるよ~』って親切なHow toチラシを日本語で作んだよ。で、ソイツの部屋にコツコツポスティング。そうなれば、いざ拡散しようってなった時に、どうせなら金も貰えるココにすっかって思うじゃん?」
「そんなのあるんだー」
「おう。しかも念の為、一度アップしても投稿者が簡単に削除できるサイトじゃなきゃダメだから、なかなか見つかんないだよ。女子高生モノが多いとこじゃないと釣れないだろうし」
「ふーん・・・榊、勃たないのによく知ってんだ?」
「俺だって生まれた時から勃たなかったわけじゃないかんな?」
「ケンタ・・・やっぱりまだ、私じゃないと勃たないの?」
「いや・・・ソレがですね?隣にリコが居るとどうやらそれなりにいけるみたいで、まぁ完全覚醒ではないものの、健二も寝ぼけ眼くらいには変形してきてる」
「あっ、そーゆの知ってる!『射精管理』っつーんだよ!それ!」
「ちげーからっ!ぜんぜんちげーからっ!」
「えー、だってソレ、理子に管理されてんじゃん?射精管理じゃん?」
「っていうか女子高生がそういう股間にグッとくる単語を連発するんじゃありませんっ!禁欲生活一週間で、健二もいろいろ大変なんだかんなっ!」
リコが我慢してるのに自分だけ自家発電するのもちょっとアレなので、この六日間、ガチで禁欲生活!
ちな、するとしてもオカズはリコのくぱぁしか使えない!
男子高校生にはマジキビシイ!
「私らだって一緒だっつーの!つーか私なんて二ヶ月以上エロいコトしてねーつーのっ!」
日野は社会人になるまで『もうヤラない』宣言をしてる。
「凛子、ほんとに高校卒業するまでシないの?」
「しない。つーか大学入れたら大学でもシねー。だからってチャラになるとは思ってねーけど、なんつーか、馬鹿やったケジメ・・・あっ、でも榊との約束は例外だかんな?理子の前でなんだけど・・・まぁ、どっちにしてもEDだしな?」
「うん、リコとシまくってる俺が言っても説得力無いけど、アリだと思う、そういうの」
「わたしは無理だー。一回知っちゃったら、我慢するなんて無理っ!」
「因みにこのご時世でも、結婚初夜が初めてって女子、確か20%くらい居るらしいぞ」
「まじで!?」
「おう。今の世代で初体験年齢を平均値にすると18歳になるけど、一番多いのは20歳だった。やけに早いのが少数居て、それが平均値ぐんと下げてんだな。だからなんつーか『高校生で処女童貞は恥ずかしい』っていうのは、完全にマスメディアの世論操作だ」
「・・・いまの、かなりグサッと来た・・・私ってほんとバカだ・・・まんま踊らされてバカばっかやって来てた・・・やばい、ちょっとホンキで落ち込んで来たかも・・・」
「まぁアレだ。かくゆう俺も、少なからず童貞で恥ずかしいって感覚はあったし。日野のいいところはその程度の事で無くなんねーよ」
「大丈夫だよ凛子。ケンタはちゃんと凛子の事、大事にしてくれるって」
「いや、つーかさ?理子。ホンキで榊と私がシちゃってもいーんかよ?」
「本気だよ。わたし、ケンタとこの先80年くらい一緒に居るんだもん。その間ずっと、わたしだけを見てて貰うなんて無理だと思う。だったらいっそ、もう一人、そこに凛子が居て、それ以外によそ見が出来ないくらいに、二人がかりで捕まえておくって、現実的にアリな作戦だと思ってる」
「榊もアタマおかしいけど、理子も大概だよな・・・っていうか逆に理子のほうが飽きて、他のオトコに目移りする可能性だって充分あんじゃね?ってかその確率のが高くね?」
「うん、あると思う。実際、三組に一組の夫婦が離婚するっていうし、カタチだけの結婚が残って、不倫してる人達だって沢山いる。でも、わたしは絶対イヤ。だからちゃんとケンタにお願いしてるもん。もしもわたしにまた好きな人が出来たら、その時のわたしが何を言おうと、絶対に浮気なんかさせないでって。無理やりにでも部屋に監禁して、他の男の事なんて思い浮かべられないくらいメチャクチャにしてって」
「・・・いや、そんなん今は良くっても、そん時の理子的にダメじゃね?」
「ううん、ダメじゃない。わたしがこのタトゥーを消さない限り、この約束は有効」
「まぁ、リコのタトゥー、消すのに一年くらいかかるらしいし、その間冷静に考えて、それでもやっぱり俺と離れたいって答えが出るなら、その時が俺達の終わりだな。俺も異論は無い。っていうか本人を前にこんな事言うのも気まずいけど、リコ、日野の事、そんなふうに考えてたんだ?」
「うん。わたしだって、ケンタ以外を好きになるなんて絶対無いと思ってた。でも、二人の間に溝が出来た隙を狙われたら、自分でもどうしようも無かった・・・だから、何かがあって、二人がギクシャクしてるときに、ケンタが誰かに誘惑されちゃうって、きっとあると思う。でも、そんなとき、凛子がいたら、きっと同時に隙なんて出来ない・・・えと・・・凛子には凄い申し訳ない事言ってる自覚はある・・・わたし、どうしてもケンタのお嫁さんになりたいし・・・ごめん・・・でも、わたし一人でケンタを繋ぎ留められなくなる可能性が怖い・・・」
うん、どうしてこうなった?
俺は別にハーレムなんて望んでない。
あんなのは架空の話だからエロいんで、リアルに自分がそこに置かれたら、罪悪感で胃に穴あくだろ?
「なんつーか・・・たしかにさ?私も榊の事はアレだ。でもその、理子みたいにアレじゃ無いじゃん?だからソコまで先見た話とかされてもちょい気まずい」
「うん、まぁ、リコの考えはわかった。でも、俺としてはなんだ、色々と先送りしておきたいんだけどどうだろう?」
「とりま、理子に射精管理されてるうちはウヤムヤにさしといて貰っていい?なんつーか、恋愛とか悩んでていい立場じゃねーって自覚してっし」
「うん、ごめんね?なんかぶっちゃけちゃって?」
ふむ・・・リコがそんなふうに考えてるとは、思ってもみなかった。
っていうか俺が日野をどうしたいのかは明白だ。
親友ポジションでずっと隣に居ながらも、日野とは恋人になりたくない。
二股とか俺の貧弱なハートが保つ気がしないからだ。
かといって、他の男に日野がヤラれるのは絶対に嫌だ。
つまり、俺の望みは最初から破綻してる。
誰にも渡したくないが責任は取りたくない。
最低だ。
「うっし、じゃ、気をとりなおして二人は勉強再開な。俺はちょっと出かけてくるから」
「ずりーし!」
「ケンタ、どこいくの?」
「あー、肝心の相手の自宅がわかんないから、会社まで行って尾行する。遅くなるかもしんないな」
「マジで?そこまですんの?」
「ああ、明日は土曜だから、今日やんないと来週んなっちゃうしな・・・っていうか金曜で飲みに出られたらアウトだけど」
「えと、ごはん、どうする?」
「先食べてて。俺は・・・うん、陽子さんの日だから帰ってから食べるよ」
「わかった」
ただ出かけるだけならロードで行けるのに、尾行となると電車で行くしか無い。
うだるような暑さの中をトボトボと歩きつつ、リコの言ったことをもう一度思い起こしてみる。
なるほど、たしかに合理的だ。
係争中の二者は、たとえ自分に非があっても折れられないものだ。
だからこそ第三者の介入が必要になる。
例えば俺とリコがギクシャクして、互いに不満が募ったとして、それが二人だけだったら『もういい、女なんて他にも居る!』となりかねない。
そこにもうひとり、日野という存在があったなら、俺は間違いなく日野に向かう。
そしてリコはどうだろう?
ムカついてる相手の俺に何を言われても聞く耳持たないだろう。
その時他に好きな男が居れば、そいつの所に向かうはずだ。
しかしそこで日野に『ほんとにいいの?理子が要らないなら私、独占しちゃうけど?』なんて言われたら、たぶんちょっと踏みとどまる。
日野と俺が揉めた場合も同じだろう。
問題はリコと日野が揉めた場合だ。
完全に地獄だ。
俺に出来ることと言えば、ひたすら土下座して二人に鉾を収めるよう懇願するしかない。
なるほど・・・コレ、ハーレムに見えて、パワーバランスは完全に俺が下僕になるわけだ。
合理性だけで考えれば本当に合理的だが、事は人間、感情がある。
嫉妬心でドロドロにならないとは思えないんだけど・・・なんとなく、それはそれで恋愛が長続きする要因としても作用しないでも無いような・・・いや、ダメだな。
反対の立場だったら耐えられない。
っていうか耐える以前にあり得ない。
そもそもリコに向ける愛情と日野に向ける愛情は違う。
リコの事はグチャグチャに犯したいけど、日野に対してそんな嗜虐欲求は持ってない。
他の男に渡すのが嫌なだけで、孕ませたいわけじゃない。
んー・・・どうすりゃいいんだ?・・・いっそヤッてみたら何かが変わるんだろうか?
・・・無理だった。
勃たないじゃん!
うん、先送り先送り。
人生は長い。
とりあえず今は、目の前のビルから出てきたおっさんをきっちりハメる事に集中しよう。
カリカリ カリカリ カチカチッ カリカリ
一人だけ違う音が混じってるのは、俺がノートPCを持ち込んでるからだ。
カリカリ カリカリ カリカリ 『Oh~Yeah ! Oh Yeah~ ! Yes come to me !』
カリカリ カリカリ 『あっはぁ~ん♡』 カリカリ
「ちょ!あんたっ!人が勉強してる時にエロサイト見てんじゃないわよっ!」
「ケンタ・・・生でわたしの見れるのに、他のも見たいの?」
「心外な!依頼の為の大事な仕込みやってんの。一人でやってたらそれこそコソコソシコってるみたいだから、わざわざココでやってんだろ?」
俺が探してるのは有料サイト。
誰でもアップできて、再生回数に応じてマージンが貰えるタイプで、なおかつ日本の援交モノが多いとこ。
「いいわけがセコい!」
「ケンタ・・・」
「違うって!仮に約束取り付けたとして、確認もせずに成功したって信じるとかバカだろ?かといってソイツがどっかのサイトにアップしたかどうかなんて、実際確認のしようがねーし、あらかじめアップするサイトを誘導しとけば気休め程度でも確認できんじゃん!」
「・・・どうやって誘導すんのよ?」
「こういうサイトって海外だから基本英語だろ?だからエロサイト業者になりすまして『アップすればお金貰えるよ~』って親切なHow toチラシを日本語で作んだよ。で、ソイツの部屋にコツコツポスティング。そうなれば、いざ拡散しようってなった時に、どうせなら金も貰えるココにすっかって思うじゃん?」
「そんなのあるんだー」
「おう。しかも念の為、一度アップしても投稿者が簡単に削除できるサイトじゃなきゃダメだから、なかなか見つかんないだよ。女子高生モノが多いとこじゃないと釣れないだろうし」
「ふーん・・・榊、勃たないのによく知ってんだ?」
「俺だって生まれた時から勃たなかったわけじゃないかんな?」
「ケンタ・・・やっぱりまだ、私じゃないと勃たないの?」
「いや・・・ソレがですね?隣にリコが居るとどうやらそれなりにいけるみたいで、まぁ完全覚醒ではないものの、健二も寝ぼけ眼くらいには変形してきてる」
「あっ、そーゆの知ってる!『射精管理』っつーんだよ!それ!」
「ちげーからっ!ぜんぜんちげーからっ!」
「えー、だってソレ、理子に管理されてんじゃん?射精管理じゃん?」
「っていうか女子高生がそういう股間にグッとくる単語を連発するんじゃありませんっ!禁欲生活一週間で、健二もいろいろ大変なんだかんなっ!」
リコが我慢してるのに自分だけ自家発電するのもちょっとアレなので、この六日間、ガチで禁欲生活!
ちな、するとしてもオカズはリコのくぱぁしか使えない!
男子高校生にはマジキビシイ!
「私らだって一緒だっつーの!つーか私なんて二ヶ月以上エロいコトしてねーつーのっ!」
日野は社会人になるまで『もうヤラない』宣言をしてる。
「凛子、ほんとに高校卒業するまでシないの?」
「しない。つーか大学入れたら大学でもシねー。だからってチャラになるとは思ってねーけど、なんつーか、馬鹿やったケジメ・・・あっ、でも榊との約束は例外だかんな?理子の前でなんだけど・・・まぁ、どっちにしてもEDだしな?」
「うん、リコとシまくってる俺が言っても説得力無いけど、アリだと思う、そういうの」
「わたしは無理だー。一回知っちゃったら、我慢するなんて無理っ!」
「因みにこのご時世でも、結婚初夜が初めてって女子、確か20%くらい居るらしいぞ」
「まじで!?」
「おう。今の世代で初体験年齢を平均値にすると18歳になるけど、一番多いのは20歳だった。やけに早いのが少数居て、それが平均値ぐんと下げてんだな。だからなんつーか『高校生で処女童貞は恥ずかしい』っていうのは、完全にマスメディアの世論操作だ」
「・・・いまの、かなりグサッと来た・・・私ってほんとバカだ・・・まんま踊らされてバカばっかやって来てた・・・やばい、ちょっとホンキで落ち込んで来たかも・・・」
「まぁアレだ。かくゆう俺も、少なからず童貞で恥ずかしいって感覚はあったし。日野のいいところはその程度の事で無くなんねーよ」
「大丈夫だよ凛子。ケンタはちゃんと凛子の事、大事にしてくれるって」
「いや、つーかさ?理子。ホンキで榊と私がシちゃってもいーんかよ?」
「本気だよ。わたし、ケンタとこの先80年くらい一緒に居るんだもん。その間ずっと、わたしだけを見てて貰うなんて無理だと思う。だったらいっそ、もう一人、そこに凛子が居て、それ以外によそ見が出来ないくらいに、二人がかりで捕まえておくって、現実的にアリな作戦だと思ってる」
「榊もアタマおかしいけど、理子も大概だよな・・・っていうか逆に理子のほうが飽きて、他のオトコに目移りする可能性だって充分あんじゃね?ってかその確率のが高くね?」
「うん、あると思う。実際、三組に一組の夫婦が離婚するっていうし、カタチだけの結婚が残って、不倫してる人達だって沢山いる。でも、わたしは絶対イヤ。だからちゃんとケンタにお願いしてるもん。もしもわたしにまた好きな人が出来たら、その時のわたしが何を言おうと、絶対に浮気なんかさせないでって。無理やりにでも部屋に監禁して、他の男の事なんて思い浮かべられないくらいメチャクチャにしてって」
「・・・いや、そんなん今は良くっても、そん時の理子的にダメじゃね?」
「ううん、ダメじゃない。わたしがこのタトゥーを消さない限り、この約束は有効」
「まぁ、リコのタトゥー、消すのに一年くらいかかるらしいし、その間冷静に考えて、それでもやっぱり俺と離れたいって答えが出るなら、その時が俺達の終わりだな。俺も異論は無い。っていうか本人を前にこんな事言うのも気まずいけど、リコ、日野の事、そんなふうに考えてたんだ?」
「うん。わたしだって、ケンタ以外を好きになるなんて絶対無いと思ってた。でも、二人の間に溝が出来た隙を狙われたら、自分でもどうしようも無かった・・・だから、何かがあって、二人がギクシャクしてるときに、ケンタが誰かに誘惑されちゃうって、きっとあると思う。でも、そんなとき、凛子がいたら、きっと同時に隙なんて出来ない・・・えと・・・凛子には凄い申し訳ない事言ってる自覚はある・・・わたし、どうしてもケンタのお嫁さんになりたいし・・・ごめん・・・でも、わたし一人でケンタを繋ぎ留められなくなる可能性が怖い・・・」
うん、どうしてこうなった?
俺は別にハーレムなんて望んでない。
あんなのは架空の話だからエロいんで、リアルに自分がそこに置かれたら、罪悪感で胃に穴あくだろ?
「なんつーか・・・たしかにさ?私も榊の事はアレだ。でもその、理子みたいにアレじゃ無いじゃん?だからソコまで先見た話とかされてもちょい気まずい」
「うん、まぁ、リコの考えはわかった。でも、俺としてはなんだ、色々と先送りしておきたいんだけどどうだろう?」
「とりま、理子に射精管理されてるうちはウヤムヤにさしといて貰っていい?なんつーか、恋愛とか悩んでていい立場じゃねーって自覚してっし」
「うん、ごめんね?なんかぶっちゃけちゃって?」
ふむ・・・リコがそんなふうに考えてるとは、思ってもみなかった。
っていうか俺が日野をどうしたいのかは明白だ。
親友ポジションでずっと隣に居ながらも、日野とは恋人になりたくない。
二股とか俺の貧弱なハートが保つ気がしないからだ。
かといって、他の男に日野がヤラれるのは絶対に嫌だ。
つまり、俺の望みは最初から破綻してる。
誰にも渡したくないが責任は取りたくない。
最低だ。
「うっし、じゃ、気をとりなおして二人は勉強再開な。俺はちょっと出かけてくるから」
「ずりーし!」
「ケンタ、どこいくの?」
「あー、肝心の相手の自宅がわかんないから、会社まで行って尾行する。遅くなるかもしんないな」
「マジで?そこまですんの?」
「ああ、明日は土曜だから、今日やんないと来週んなっちゃうしな・・・っていうか金曜で飲みに出られたらアウトだけど」
「えと、ごはん、どうする?」
「先食べてて。俺は・・・うん、陽子さんの日だから帰ってから食べるよ」
「わかった」
ただ出かけるだけならロードで行けるのに、尾行となると電車で行くしか無い。
うだるような暑さの中をトボトボと歩きつつ、リコの言ったことをもう一度思い起こしてみる。
なるほど、たしかに合理的だ。
係争中の二者は、たとえ自分に非があっても折れられないものだ。
だからこそ第三者の介入が必要になる。
例えば俺とリコがギクシャクして、互いに不満が募ったとして、それが二人だけだったら『もういい、女なんて他にも居る!』となりかねない。
そこにもうひとり、日野という存在があったなら、俺は間違いなく日野に向かう。
そしてリコはどうだろう?
ムカついてる相手の俺に何を言われても聞く耳持たないだろう。
その時他に好きな男が居れば、そいつの所に向かうはずだ。
しかしそこで日野に『ほんとにいいの?理子が要らないなら私、独占しちゃうけど?』なんて言われたら、たぶんちょっと踏みとどまる。
日野と俺が揉めた場合も同じだろう。
問題はリコと日野が揉めた場合だ。
完全に地獄だ。
俺に出来ることと言えば、ひたすら土下座して二人に鉾を収めるよう懇願するしかない。
なるほど・・・コレ、ハーレムに見えて、パワーバランスは完全に俺が下僕になるわけだ。
合理性だけで考えれば本当に合理的だが、事は人間、感情がある。
嫉妬心でドロドロにならないとは思えないんだけど・・・なんとなく、それはそれで恋愛が長続きする要因としても作用しないでも無いような・・・いや、ダメだな。
反対の立場だったら耐えられない。
っていうか耐える以前にあり得ない。
そもそもリコに向ける愛情と日野に向ける愛情は違う。
リコの事はグチャグチャに犯したいけど、日野に対してそんな嗜虐欲求は持ってない。
他の男に渡すのが嫌なだけで、孕ませたいわけじゃない。
んー・・・どうすりゃいいんだ?・・・いっそヤッてみたら何かが変わるんだろうか?
・・・無理だった。
勃たないじゃん!
うん、先送り先送り。
人生は長い。
とりあえず今は、目の前のビルから出てきたおっさんをきっちりハメる事に集中しよう。
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