I.B.(そこそこリアルな冒険者の性春事情!)

リカトラン

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1st season 第一章

005 合同訓練 - 三日目

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「昨日はアルフレッド様の活躍で、皆固くなる事も無く格上のモンスターに相対できたね。普段は初日がガチガチで、2回目の今日それなりの戦果を目指す流れなんだけど・・・」
「ふむ・・・貴族の末席に身を置く者として兵卒の先陣を切るは当然の事」
「よし、今日は本来のパーティーだけで格上のモンスターを捌く練習の意味で、モンスター単体に対して1パーティー。モンスターが3体だったら3パーティーを当てるような流れで行ってみようか。」
「「「「「はい!」」」」」

昨日と同じルートをパーティー単位で移動を開始する。
予め敵モンスターの数を特定する為、アルフレッド様の従者であるハインツが斥候役を買って出た。
ハインツのギフトは『斥候適正(大)』だ。
気配察知・地形把握などの能力が上昇するらしく、アルフレッド様を補佐する従者としてこの上ない人材だ。

「1km先の小川にオークが2体居ます」
「よし、『ライジングスター』と『覇道剛剣』の2パーティーで行ってみよう。残りのパーティーは風下から静かに接近して300m手前で見学ね」

ザックの指示で2パーティーが先行する。
ライジングスターはタンク・ソードアタッカー・ヒーラーの教科書構成3名、覇道剛剣は何故なにゆえその名前を付けたのか、自分より大きなタワーシールドを担ぐタンクが2人に弓術士2人、小柄な女性のみのパーティーで二枚のシールドにすっぽりと全員が収まる。
ハンドシグナルのやり取りで左右にわかれ、各々のパーティーが担当するターゲットに接敵する。
残り50m、覇道剛剣の二人が弓矢を放った。
鉄鏃の矢が手前側オークの左肩と背に突き立つ・・・死なない!
奇襲を受けたオークが怒りの雄叫びをあげると接敵する7名がビクリと硬直する。
50mの距離があるとは言え野にさらされた少数の人間、集団心理が働いた昨日とは打って変わり、2・5mの醜悪な巨体に戦慄する。
覇道剛剣めがけ突進する2体のオーク。
勇敢にもライジングスターのタンクが分断作戦を試みる。

「こいやーっ!」

初日の講義を活かし、矢を受けていない方のオークにカイトシールド越しの体当たりを敢行・・・『ドガーン!』という衝突音とともに弾き返された。
当たり前である。
もしも停車中だったとしても、人間が軽トラック相手に躊躇なし全力体当たりを実行したらどうなるだろうか?
まして相手も突進してくる。
双方の時速が30km/h程度だったとしても相対速度は60km/h。
停車中の乗用車に追突した自転車部の若者が即死した例が実際にある。
この世界の冒険者がレベルアップによって人の領域を超えているとは言え、無事で居られるわけがない。

「ヒール!!!」

ヒーラーの回復魔法がタンクに飛ぶ。
分断作戦こそ成功したものの、タゲを取ったタンクは地べたで気絶中、回復するまでソードアタッカーが一人で対峙しなければならない。
もしもアタッカーが紙装甲の中遠距離職だったら、この時点で全滅が確定していた。

一方、覇道剛剣の四名は?
二枚のタワーシールドを四名で支え、なんとかオークの突進を防ぐことに成功。
シールドの裏側へ回り込もうとするオークの正面をキープし続け、石斧での打突威力が最小となるようグイグイと盾を押し付ける。
弓2本でこの状況からどう攻撃するのかと思いきや、盾の裏に隠れたまま両手に持ったでザクザクとオークの顔面を突き刺している。
パニック状態なのか、怒声とも悲鳴ともとれる叫び声がオークにも伝播し、一旦下がればいいものの、石斧を投げ捨て狂える女性陣の打突から両手で必死に身を守り始めた。
ネタ編成と思われたが意外に強い。

再びライジングスター。
回復したタンクがポジションに着くも、直前の恐怖から立ち直れないのか腰がひけまくってタゲを取れない。
無傷のオークはタンクを無視してソードアタッカーに襲いかかろうと鬼ごっこの様相である。

気づけば覇道剛剣のオークは絶命していた。
返り値に染まり、目の座った四人が矢でザクザク、盾でドカドカ、すでに動くことの無い躯を殴り続けている。

そこから数分後、ライジングスターのヒーラーが魔力切れとなり、フォローに入ったザックが一刀の元にゲームセットを宣言した。
ザックの狙い通り、昨日の快進撃でエルベの森を舐めきっていた冒険者たちは、その後も頭から冷水を浴びせられ続けた。
終盤、いよいよカイン達の出番が巡ってくる。

「距離200、ビッグボア×1、向かってきますっ」
「シシラル・ヴィレッジ、行けるか?」
「「はいっ」」
「他は200m後退、走れっ!」

ビッグボアの突進は早い。
号令から接敵まで多く見積もっても10秒。
カインたちには厳しい状況だ。

氷壁アイスウォール!!!」
「ほぅ・・・」

シールドを構えたカインの5m先に突如氷の壁が出現する。
その対処を見たザックが感嘆の声を漏らす。

『ドガーン!』

ユリアの作り出した氷壁はビッグボアの脚を止めることこそできなかったが、速度を殺すには充分だった。

「ぜってぇ止めるっ!」

シールド下部を10cmほど地面に突き刺し、自身は重心を落としながらも足の裏は水平に保つことで大地に踏ん張らず、左右のバランスを均一にしてビッグボアを待ち構える。
衝突インパクト

『ズザザザザザッ』

固定した腕から伝わる衝撃を脚の裏に逃し、ズリズリと土の上を滑る。
ユリアの手前2mほどで一人と一匹は停止した。
この距離なら外すことは無い。

氷槍アイスジャベリン!!!」

カインの右後ろに飛び出して射線を確保、至近で放たれた氷の大槍がビッグボアの左肩から腹部を貫通する。
モンスターの巨体が『ビクリ』と痙攣した瞬間、硬い頭蓋に戦斧が叩き込まれた。

『バギンっ!』

硬質な板が割れるような音、一拍おいて獲物が崩れ落ちる。

『ドッ、シーン』

「・・・すげぇ」
「マジで止めやがった」
「なんで二人でやれるんだよ?」

昨日とは打って変わってのボロボロの戦果、すっかり意気消沈していた冒険者たちの目に、憧憬の光が灯るのだった。
因みにアルフレッド様は通常運転でシルバーエイプを屠っていたが、自然すぎてスルーされた事も記しておく。

~~~~~

「なんか、やれちゃったな俺達」
「カイン、かっこよかったよ~」
「いや、ユリアの氷壁アイスウォールが絶妙だった。いきなりだったのにすごいよ」
「えへへへへ~」
「いい経験になったな」
「うん、帰ったら今後の貯蓄計画も練り直せるね?」
「えっ、こっち来るの?」
「ビッグボアって儲かるらしいよ~?ふふふ」

未婚にして、乙女にして、既に主婦の貫禄を出すユリアであった。
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