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1st season 第一章
008 治療の対価
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「&^%S(#*^>:@'q!)-~#$」
「*^%:<S%^@**^^%#(」
~~~~~
「わた・・し・・せい・・・で・・・」
「・ん・・とは・・い・し・・よう・・・く・・」
~~~~~
「ユリアっ!・・・くっ・・・痛え・・・あれ?」
「カインっ!・・・本当に良かった・・・死んじゃうかと思った...」
「ユリアっ、怪我は?大丈夫?」
「わたしは大丈夫。気を失ってただけみたい」
「カイン君、二日も意識が戻らなかったんだよ?普通なら死んでた」
「ザックさんが助けてくれたんですか?」
「メルだよ。エルベの森の帰りに、突然カイン君が現れたんだ。腕は変な方に曲がってるし、内蔵はみ出してるし、アンデッドかと思ったよ?ヒーラーのメルが居なかったらここまでももたなかったね」
「ありがとうございました。メルさんには改めてお礼に伺います」
「意識が戻ってよかった。担当の魔法医を呼んでくるよ」
「カイン・・・ごめんなさい」
「え、どしたの?」
「・・・わたしが無理に狩場を変えたから・・・わたしが林道をそれて森に入ったから・・・カインを殺しちゃうとこだった」
「ユリア、ちがう。二人で決めて、二人で失敗した。もうそんな事言っちゃダメだよ?」
「・・・ありがとう」
『コンコン』
「担当医のサガミです。意識が戻られてよかった」
「治療ありがとうございました。命の恩人です」
「いえ、それが私達の仕事ですから。経過の説明をさせて頂いても?」
「はい、お願いします」
「カインさんの傷病は主に四箇所。左肘の粉砕骨折。右橈骨の骨折と一部欠損。内蔵破裂および一部欠損。著しい血液の損失。以上四項が主で、その他全身打撲、裂傷諸々です。」
「はい。なんか言葉で聞くと重症みたいですよね?トウコツというのは手首の骨ですか?」
「みたいでは無く極めて重篤でした。発見時にヒールを使ってもらっていなければ、今、あなたは、ここにいませんでした。」
「・・・」
「内臓破裂と左肘粉砕骨折は各2回のエクストラヒールで完治しています。」
「エクストラヒールですか...」
「失った血液はまだ足りませんが、食事によって徐々に回復していきます」
「はい」
「問題は・・・右橈骨の一部欠損ですね...発見者から状況を聞いた限り、ユリアさんを担ぎ上げるために無茶をしたのでしょう。皮膚を突き破った骨の先端が3cm以上無くなってしまっているのです。」
「カイン・・・」
ユリアが泣きそうな声を漏らす。
「欠損は魔法治療だけでは治すことができないのです」
カインは右手に視線を向けるが木箱に入れられた右手首は確認する事が出来ない。
「現状は木箱の中で固定し、薬の効果で壊死を遅延させています」
「つまり・・・もう、動かない?」
「いえ、私は『魔法だけでは』と申しました。錬金術と組み合わせれば、完治させる事も可能です」
「先生っ!お願いします。カインの腕を治して下さい!」
「ここから先の選択肢は3つ。落ち着いて聞いて下さい。1.下肢切断、2.外装骨格による固定、3.錬金骨子による接合の3つです」
「切断・・・ですか?」
「はい。それが一番確実で、安価な方法です。2番の外装骨格とは手首から肘の手前までを部分板金鎧で覆い、固定する方法になり、指先の感覚はある程度残りますが、指そのものは僅かに動かせるだけでしょう。最後の錬金骨子とは、秘術で作り出された骨と融合する金属を用いる手術で、ほぼ元通りに治りますが、多少高額な施術となってしまいます」
「その、錬金術にはいくら必要ですか?」
「金貨20枚ほどでしょう。ここまでにエクストラヒールが計四回、他の治療を含めると金貨7枚がかかってしまっています。」
「27枚・・・」
カインが口を開く。
「少し考えさせて貰えますか?」
「はい。但しあまり時間はありません。遅くとも明日までには決めて頂かないと、切断以外の選択肢は無くなってしまいます」
「カイン・・・」
「わかりました。明日までに決めさせてもらいます」
カイン、ユリア、ザック・・・残された三人を沈黙が包む。
「参ったな・・・片腕じゃ冒険者はもう無理か」
「無理じゃないよ!金貨27枚、あと18枚、なんとかしよっ?ダメだよ、わたしのせいでカインが・・・」
「ユリアのせいじゃ無いって言ったろ?大丈夫、ユリアが無事だったんだから、むしろラッキーだよ」
「・・・」
「ザックさん、二人だけにしてもらっていいですか?」
「構わないよ・・・ただ、あとでもう一度顔を出しに来る。ウチのメンバーと相談したら何かいい手があるかも知れないしね」
「ありがとうございます。でも、ザックさんたちには命を救ってもらえただけでコレ以上のご迷惑は・・・」
「うん、まぁ期待はしないで。とりあえずまた来るよ」
平静を装いつつも、カインの心中は混乱を極めていた。
利き腕が無くなる。
冒険者で無くなる。
どうやって生きていく?
どうやってユリアを守る?
容易く生きられる世界じゃない。
ましてや不具者が生活するには...ユリアにその重荷を背をわせるのか?
俺のせいでユリアの人生から希望が消える?
いっそ死んでいれば...
「ユリア・・・・・・キスして」
「カイン・・・んちゅ」
精一杯優しい顔をつくり、ユリアの瞳を見つめる。
「ユリア・・・愛してる。・・・・・・だから俺は・・・・・・シシラル・ヴィレッジに帰るよ」
「わかった。帰ろ?」
「いや、帰るのは俺だけだ」
「えっ?」
「ユリアにはギフトがある。ずっとどこまでも登っていける。俺は...ここで終わりだ」
「ダメ。そんなの意味がないよ。カインと結婚するための冒険者なのに。カインが居なかったなんにも意味がいないよっ」
「ダメだ。ユリアには幸せになって欲しいんだ。落ちていくだけの俺と居たらダメだ!」
「わかった。私が働く。私が冒険者でいっぱい稼いで、カインは家で待ってて。お願い。男の人にそんな暮らしは辛いかも知れないけど、カインが居なくなるのだけは絶対ダメ!カインが居なくなったら、わたし、死んでやるんだから!」
「お願いだ」
「お願いよ・・・」
互いが大切であればこそ、二人の意見は平行線を辿る・・・どうしようもない・・・どうしたらいいのかわからない。
紡ぎ出す言葉が見つからず、涙だけがとめどなく溢れる。
泣き疲れた二人は、いつしか眠りに落ちていた・・・
『コンコン』
『・・・』
『コンコン』
「「「「「はいるよ(わよ)?」」」」」
~~~~~
「「ダンジョンですか?」」
カインとユリアの声が重なる。
ザックは要塞のメンバーを連れて治療院に戻ってきた。
「そう、ダンジョン。はっきり言えば、2~30,000レアの金なら俺達はどうにでも出来る。でもそれは要塞の全員が文字通り命をチップに稼いだ資金だ。他所のパーティーの君たちに、それをタダでやるとか貸すとかいうのは、冒険者の矜持に欠く話だ」
「はい」
「だが、依頼なら話は別だ」
「依頼・・・ですか?」
「煉獄というダンジョンは知っているかな?」
「いえ、Dランクに上がらないとダンジョンには入れないそうなので、調べていません」
「そうか。馬車で三日ばかり南に行った山の中に煉獄というダンジョンがあるんだ。そのダンジョンには小火竜が出る」
「竜種ですか?」
「そうだ。分厚い鱗に覆われて剣撃は通らず、火炎を吐く魔物だから火魔法への耐性も高い。僕たちでも複数と遭遇したらかなりまずい相手で、討伐ランクはCになる。」
「そんな危険な相手に・・・」
「ところがユリアちゃんが同行してくれるなら、話が180度変わるんだ。」
「氷魔法・・・ですか?」
「そう。サラマンダーの弱点は水、その上位互換である氷魔法はやつらの天敵さ、氷礫でも極端に行動がノロくなるし、氷槍なら一撃で倒せる」
「ほんとうですか!?」
ユリアの目に力が戻る。
「狙いは小火竜の魔石100個。攻撃魔道具に必須の魔石の割に供給が少ないの。ひとつ1,000レアはかたいわ。20個もあればカイン君の治療代、足りない分が賄えるでしょ?」
レイカさんが続ける。
「どんなに強いパーティーでも普通なら一度に100個も集められないわ。ダンジョン煉獄はその名の通り暑いの。灼熱に長時間さらされるだけで人間の体はおかしくなる。根性云々は関係ないわ。血が茹だってしまうの。サラマンダーの出る階層まで行っても、一匹か二匹仕留めたらそそくさと帰らなきゃいけない。でも、ユリカちゃんが居れば、日に一度くらい氷でひんやり体調戻せるでしょ?そして10日間籠もって乱獲するの。だから・・・」
「ユリカちゃんへの指名依頼を出す。」
「内容は要塞のダンジョンアタックへの同行。同行だからEランクでも許可が降りるわ。依頼料は全額前金で金貨20枚。マナポーションはこっち持ち。但し、ダンジョン内では100%こっちの指示に従って貰うし、追加報酬は無しよ」
「勿論、絶対の安全なんて無いから、リスクの事もしっかりと考えて決断して欲しい」
沈痛な面持ちでカインは沈黙する。
しかしユリアの反応は違った。
「行かせて下さいっ!」
「ユリア・・・」
「さっき言ったよね?カインが私を置いてシシラルに帰った死んでやるって?わたし、本気よ?」
「おいおい物騒だな」
「どんな冒険にも危険はつきものでしょ?ザックさんやレイカさん達が居るなら、カインとわたしの二人だけよりずっと安全よ?」
「でも...それでもしもユリカに何かあったら...俺は...」
「わかった。こうしましょ?もしもダンジョンでわたしが死んじゃったら、その時はカインも死んでいいよ。それならわたしは一人で危険を背負うんじゃない。二人で決めて、二人で背負うの!」
「「「「「・・・・・」」」」」
「わかったよ、ユリカ。二人で背負おう。」
「・・・なんつーか、ユリカちゃんて結構凄いな。」
「私が死んだらアンタも死んでいいとか男前過ぎ・・・」
「そういうわけでザックさん、皆さん、ユリアをよろしくおねがいします。あと、遅くなっちゃいましたが、今回は重ね重ね助けていただいて、本当にありがとうございます」
「うん、良かったよかった。じゃ、善は急げ、早速担当医さんと相談しようか」
~~~~~
三日後。
治療院にカインを残し、ユリアはダンジョンへと旅立っていった。
「*^%:<S%^@**^^%#(」
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「わた・・し・・せい・・・で・・・」
「・ん・・とは・・い・し・・よう・・・く・・」
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「ユリアっ!・・・くっ・・・痛え・・・あれ?」
「カインっ!・・・本当に良かった・・・死んじゃうかと思った...」
「ユリアっ、怪我は?大丈夫?」
「わたしは大丈夫。気を失ってただけみたい」
「カイン君、二日も意識が戻らなかったんだよ?普通なら死んでた」
「ザックさんが助けてくれたんですか?」
「メルだよ。エルベの森の帰りに、突然カイン君が現れたんだ。腕は変な方に曲がってるし、内蔵はみ出してるし、アンデッドかと思ったよ?ヒーラーのメルが居なかったらここまでももたなかったね」
「ありがとうございました。メルさんには改めてお礼に伺います」
「意識が戻ってよかった。担当の魔法医を呼んでくるよ」
「カイン・・・ごめんなさい」
「え、どしたの?」
「・・・わたしが無理に狩場を変えたから・・・わたしが林道をそれて森に入ったから・・・カインを殺しちゃうとこだった」
「ユリア、ちがう。二人で決めて、二人で失敗した。もうそんな事言っちゃダメだよ?」
「・・・ありがとう」
『コンコン』
「担当医のサガミです。意識が戻られてよかった」
「治療ありがとうございました。命の恩人です」
「いえ、それが私達の仕事ですから。経過の説明をさせて頂いても?」
「はい、お願いします」
「カインさんの傷病は主に四箇所。左肘の粉砕骨折。右橈骨の骨折と一部欠損。内蔵破裂および一部欠損。著しい血液の損失。以上四項が主で、その他全身打撲、裂傷諸々です。」
「はい。なんか言葉で聞くと重症みたいですよね?トウコツというのは手首の骨ですか?」
「みたいでは無く極めて重篤でした。発見時にヒールを使ってもらっていなければ、今、あなたは、ここにいませんでした。」
「・・・」
「内臓破裂と左肘粉砕骨折は各2回のエクストラヒールで完治しています。」
「エクストラヒールですか...」
「失った血液はまだ足りませんが、食事によって徐々に回復していきます」
「はい」
「問題は・・・右橈骨の一部欠損ですね...発見者から状況を聞いた限り、ユリアさんを担ぎ上げるために無茶をしたのでしょう。皮膚を突き破った骨の先端が3cm以上無くなってしまっているのです。」
「カイン・・・」
ユリアが泣きそうな声を漏らす。
「欠損は魔法治療だけでは治すことができないのです」
カインは右手に視線を向けるが木箱に入れられた右手首は確認する事が出来ない。
「現状は木箱の中で固定し、薬の効果で壊死を遅延させています」
「つまり・・・もう、動かない?」
「いえ、私は『魔法だけでは』と申しました。錬金術と組み合わせれば、完治させる事も可能です」
「先生っ!お願いします。カインの腕を治して下さい!」
「ここから先の選択肢は3つ。落ち着いて聞いて下さい。1.下肢切断、2.外装骨格による固定、3.錬金骨子による接合の3つです」
「切断・・・ですか?」
「はい。それが一番確実で、安価な方法です。2番の外装骨格とは手首から肘の手前までを部分板金鎧で覆い、固定する方法になり、指先の感覚はある程度残りますが、指そのものは僅かに動かせるだけでしょう。最後の錬金骨子とは、秘術で作り出された骨と融合する金属を用いる手術で、ほぼ元通りに治りますが、多少高額な施術となってしまいます」
「その、錬金術にはいくら必要ですか?」
「金貨20枚ほどでしょう。ここまでにエクストラヒールが計四回、他の治療を含めると金貨7枚がかかってしまっています。」
「27枚・・・」
カインが口を開く。
「少し考えさせて貰えますか?」
「はい。但しあまり時間はありません。遅くとも明日までには決めて頂かないと、切断以外の選択肢は無くなってしまいます」
「カイン・・・」
「わかりました。明日までに決めさせてもらいます」
カイン、ユリア、ザック・・・残された三人を沈黙が包む。
「参ったな・・・片腕じゃ冒険者はもう無理か」
「無理じゃないよ!金貨27枚、あと18枚、なんとかしよっ?ダメだよ、わたしのせいでカインが・・・」
「ユリアのせいじゃ無いって言ったろ?大丈夫、ユリアが無事だったんだから、むしろラッキーだよ」
「・・・」
「ザックさん、二人だけにしてもらっていいですか?」
「構わないよ・・・ただ、あとでもう一度顔を出しに来る。ウチのメンバーと相談したら何かいい手があるかも知れないしね」
「ありがとうございます。でも、ザックさんたちには命を救ってもらえただけでコレ以上のご迷惑は・・・」
「うん、まぁ期待はしないで。とりあえずまた来るよ」
平静を装いつつも、カインの心中は混乱を極めていた。
利き腕が無くなる。
冒険者で無くなる。
どうやって生きていく?
どうやってユリアを守る?
容易く生きられる世界じゃない。
ましてや不具者が生活するには...ユリアにその重荷を背をわせるのか?
俺のせいでユリアの人生から希望が消える?
いっそ死んでいれば...
「ユリア・・・・・・キスして」
「カイン・・・んちゅ」
精一杯優しい顔をつくり、ユリアの瞳を見つめる。
「ユリア・・・愛してる。・・・・・・だから俺は・・・・・・シシラル・ヴィレッジに帰るよ」
「わかった。帰ろ?」
「いや、帰るのは俺だけだ」
「えっ?」
「ユリアにはギフトがある。ずっとどこまでも登っていける。俺は...ここで終わりだ」
「ダメ。そんなの意味がないよ。カインと結婚するための冒険者なのに。カインが居なかったなんにも意味がいないよっ」
「ダメだ。ユリアには幸せになって欲しいんだ。落ちていくだけの俺と居たらダメだ!」
「わかった。私が働く。私が冒険者でいっぱい稼いで、カインは家で待ってて。お願い。男の人にそんな暮らしは辛いかも知れないけど、カインが居なくなるのだけは絶対ダメ!カインが居なくなったら、わたし、死んでやるんだから!」
「お願いだ」
「お願いよ・・・」
互いが大切であればこそ、二人の意見は平行線を辿る・・・どうしようもない・・・どうしたらいいのかわからない。
紡ぎ出す言葉が見つからず、涙だけがとめどなく溢れる。
泣き疲れた二人は、いつしか眠りに落ちていた・・・
『コンコン』
『・・・』
『コンコン』
「「「「「はいるよ(わよ)?」」」」」
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「「ダンジョンですか?」」
カインとユリアの声が重なる。
ザックは要塞のメンバーを連れて治療院に戻ってきた。
「そう、ダンジョン。はっきり言えば、2~30,000レアの金なら俺達はどうにでも出来る。でもそれは要塞の全員が文字通り命をチップに稼いだ資金だ。他所のパーティーの君たちに、それをタダでやるとか貸すとかいうのは、冒険者の矜持に欠く話だ」
「はい」
「だが、依頼なら話は別だ」
「依頼・・・ですか?」
「煉獄というダンジョンは知っているかな?」
「いえ、Dランクに上がらないとダンジョンには入れないそうなので、調べていません」
「そうか。馬車で三日ばかり南に行った山の中に煉獄というダンジョンがあるんだ。そのダンジョンには小火竜が出る」
「竜種ですか?」
「そうだ。分厚い鱗に覆われて剣撃は通らず、火炎を吐く魔物だから火魔法への耐性も高い。僕たちでも複数と遭遇したらかなりまずい相手で、討伐ランクはCになる。」
「そんな危険な相手に・・・」
「ところがユリアちゃんが同行してくれるなら、話が180度変わるんだ。」
「氷魔法・・・ですか?」
「そう。サラマンダーの弱点は水、その上位互換である氷魔法はやつらの天敵さ、氷礫でも極端に行動がノロくなるし、氷槍なら一撃で倒せる」
「ほんとうですか!?」
ユリアの目に力が戻る。
「狙いは小火竜の魔石100個。攻撃魔道具に必須の魔石の割に供給が少ないの。ひとつ1,000レアはかたいわ。20個もあればカイン君の治療代、足りない分が賄えるでしょ?」
レイカさんが続ける。
「どんなに強いパーティーでも普通なら一度に100個も集められないわ。ダンジョン煉獄はその名の通り暑いの。灼熱に長時間さらされるだけで人間の体はおかしくなる。根性云々は関係ないわ。血が茹だってしまうの。サラマンダーの出る階層まで行っても、一匹か二匹仕留めたらそそくさと帰らなきゃいけない。でも、ユリカちゃんが居れば、日に一度くらい氷でひんやり体調戻せるでしょ?そして10日間籠もって乱獲するの。だから・・・」
「ユリカちゃんへの指名依頼を出す。」
「内容は要塞のダンジョンアタックへの同行。同行だからEランクでも許可が降りるわ。依頼料は全額前金で金貨20枚。マナポーションはこっち持ち。但し、ダンジョン内では100%こっちの指示に従って貰うし、追加報酬は無しよ」
「勿論、絶対の安全なんて無いから、リスクの事もしっかりと考えて決断して欲しい」
沈痛な面持ちでカインは沈黙する。
しかしユリアの反応は違った。
「行かせて下さいっ!」
「ユリア・・・」
「さっき言ったよね?カインが私を置いてシシラルに帰った死んでやるって?わたし、本気よ?」
「おいおい物騒だな」
「どんな冒険にも危険はつきものでしょ?ザックさんやレイカさん達が居るなら、カインとわたしの二人だけよりずっと安全よ?」
「でも...それでもしもユリカに何かあったら...俺は...」
「わかった。こうしましょ?もしもダンジョンでわたしが死んじゃったら、その時はカインも死んでいいよ。それならわたしは一人で危険を背負うんじゃない。二人で決めて、二人で背負うの!」
「「「「「・・・・・」」」」」
「わかったよ、ユリカ。二人で背負おう。」
「・・・なんつーか、ユリカちゃんて結構凄いな。」
「私が死んだらアンタも死んでいいとか男前過ぎ・・・」
「そういうわけでザックさん、皆さん、ユリアをよろしくおねがいします。あと、遅くなっちゃいましたが、今回は重ね重ね助けていただいて、本当にありがとうございます」
「うん、良かったよかった。じゃ、善は急げ、早速担当医さんと相談しようか」
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三日後。
治療院にカインを残し、ユリアはダンジョンへと旅立っていった。
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