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1st season 第一章
011 煉獄のダンジョン(3)
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ダンジョン2日目の朝。
朝と言っても太陽のとどかぬダンジョンの中、本当に朝なのか定かでは無いが、ユリアは目を覚ました。
「おはよう、ユリアちゃん」
至近距離からもたらされた最初の挨拶は、慣れ親しんだカインのものでは無く、レイカの声だった。
「おはようございます?」
この部屋にいる限りモンスターは入って来ない、しかし壁一枚隔てた向こうは生と死が隣り合わせの危険な世界。
6人は部屋の片隅に肩を寄せ合うように眠っていた。
実際、ユリアはレイカの抱き枕になっていたようだ。
「よし、朝食をとったら身支度を整えてでかけようか。トイレも忘れずにね?」
「うー、・・・・・・・・」
死線を共にくぐり抜けた影響は大きい。
馬車での三日間では大きく変わらなかったユリアと要塞の距離感が昨日一日でぐっと縮まっていた。
「あの、なるべく早く慣れるようにするので、何か大きな音を出しておいて貰えませんか?」
モジモジとユリアが告げる。
「いいわよ。じゃ、男子三人で模擬戦ね。ザック・テッドチーム対レジーで」
「ちょ、おま?普通ザック対俺らだろ?」
「問答無用・・・しねっ!」
『ガンッ!ゴンッ!ギャーっ!』
騒々しい声がそれはそれで落ち着かないが、ユリアもなんとか乙女の威信を保つことが出来たようだ。
~~~~~
「氷礫!!!」
『グチュガガンガンガンガングチュガンガングチュガングチュガンガガガングチュガングチュガンガングチュガガガンガングチュガンガンガングチュガンガンガンガンガン』
「「「「「・・・・・」」」」」
第9、第10のボス部屋を素通りして第11階層、満を持して現れた小火竜三体に対し、ユリアが牽制の初手を放ったところである。
「なんか昨日の何倍にも増えてない?礫の数・・・」
「なんかこう、パンに石を投げたみたいにあっさり潰れるよね・・・」
「前回俺達の苦戦はなんだったのか・・・恐るべしっ、氷魔法」
「正直、水魔法も氷魔法も大差ないって思ってた・・・悲しいくらいに差を感じるわ」
「ユリアちゃん、もしかしてレベルあがってない?」
「ステータス!!!・・・えっ・・・23???エエエエエエ?」
「下手すりゃD級でもおかしくないね」
「昨日のガーゴイルが効いたのかしら?」
「考えてみたら一人でボスのHP削りきったんだもんね」
経験値は敵を倒した一人だけでなく、基本的には戦闘に参加した全員に振り分けられる。
しかし、出発前のカインとユリアでも12対13と僅差ながらレベル差があったように、やはりアタッカーに多めに振り分けられるようなのだ。
「出発前は13だったんですよ」
レベル上昇による底上げに加えて超絶性能のワンド、属性優位を差し引いても、ユリアはこの冒険で数段階の実力アップを果たしていた。
~~~~~
その後の探索では、むしろ氷槍の威力を、いかに妥当レベルまで下げるかの練習をしながら小火竜の乱獲を敢行した後、10階層のボス『フレイムナイト』を二桁の氷槍を突き立て、今日の冒険を終えていた。
「え~今日の成果。火属性の魔石×31。火炎属性の魔石×1。既に大幅黒字に到達しています」
「なんだろう・・・いい事のはずなのにから回った感が半端ないわね」
「来る前の決死の覚悟はなんだったのか?」
「もう俺達要らなくね?」
「「「「「・・・・・」」」」」
「ザック、今日はかなり早く切り上げたわね?」
「うん。急激に能力が上がった場合、力の加減がわからなくて想定外の事態がおこる可能性もあるし、稼ぎも申し分ない。明日からも集中して短時間アタックで行こうと思う。折角安全にやれるのに無理する理由はどこにも無いでしょ?」
「そうね」
「じゃ、ユリアちゃん、また氷壁出してもらっていいかな?」
「ちょっと待って!」
「「「「「?」」」」」
「テッド、その前に1仕事、いえ、2仕事お願いするわ」
昨日と同じようにテッドがトイレを作る。
「次はこっち、そうね、ココからこのくらいまで、形は適当でいいから1mくらい掘り下げてくれる?」
「でかいな、残りのマナ全部使い切らないと無理だぞ?」
「もう今日は戦闘お終い無いんだから構わないでしょ?掘りなさい?」
「ピットフォール」「ピットフォール」「ピットフォール」「ピットフォール」「ピットフォール」「ピットフォール」「ピットフォール」「ピットフォール」「ピットフォール」「ピットフォール」「ピットフォール」「ピットフォール」「ピットフォール」「ピットフォール」「ピットフォール」
「うん、いいわね。次はユリアちゃん、この穴に水を入れてくれる?」
「「「「「池か!」」」」」
「そうよ、二日も煉獄にいて汗でベトベトだもの。余裕があるなら多少の無駄は許されるでしょ?」
「ウォーター!!!」
『ガチャガチャッ』『バサッ』『ザブーン』
装備を外したレイカが躊躇なく下着を脱ぎ捨て、眼前の池に飛び込んだ。
「うっしゃあ、泳ぐか!」
男どもが勢いよく続く。
呆気にとられたユリアの横では、全裸のメイがしずしずと脱いだ服を畳んでいた。
「えっと、あれぇ?」
「ユリアもはやくいらっしゃい。茹だった血が引いていくわ」
男の前で肌を晒す。
絶対にしてはならない事・・・のはずなのに、自分が勘違いしているのだろうか?
確かに治療院では服を脱ぐし、昨日はみんなとおしっこを・・・というか今朝は大きい方までしてしまった。
何よりも、要塞の皆に裸を見られることに何故か嫌悪を感じない。
パーティーって、家族?・・・みたいなもんなのかな?
冷やした方がいいには違いない。
一人だけ服を着て突っ立っている方がイヤラシイような気がして、すごすごと服を脱ぐ、が、さすがに胸を隠すくらいの事はする・・・。
「ヤバイっ!美少女が女神様にクラスチェンジした!」
「ふふふ、男ども、池を発案したあたしに感謝しなさいっ!」
「いや、さすがにそんなに見られると恥ずかしい・・・」
命がけの仕事をしているとはいえ未だ16歳、少し年上のお兄さん、お姉さんとはしゃぐのは楽しい。
水を掛け合い、何年ぶりかで泳ぎ周り、そのあとは汗まみれの衣類を洗って岩の上に干した。
さすがに裸のままでは心もとないので、わずかばかりの布を胸に巻き、夕飯を食べた。
男性陣の視線が、時折、自身の肢体に吸い寄せられるのにも気づいたが、外の男たちに見つめられるような嫌悪感はなかった。
村の小川で遊んだ、子供時代に戻ったみたいですごく楽しかったのだ。
レイカさんの抱き枕にされながら皆んなで一塊に眠った。
朝と言っても太陽のとどかぬダンジョンの中、本当に朝なのか定かでは無いが、ユリアは目を覚ました。
「おはよう、ユリアちゃん」
至近距離からもたらされた最初の挨拶は、慣れ親しんだカインのものでは無く、レイカの声だった。
「おはようございます?」
この部屋にいる限りモンスターは入って来ない、しかし壁一枚隔てた向こうは生と死が隣り合わせの危険な世界。
6人は部屋の片隅に肩を寄せ合うように眠っていた。
実際、ユリアはレイカの抱き枕になっていたようだ。
「よし、朝食をとったら身支度を整えてでかけようか。トイレも忘れずにね?」
「うー、・・・・・・・・」
死線を共にくぐり抜けた影響は大きい。
馬車での三日間では大きく変わらなかったユリアと要塞の距離感が昨日一日でぐっと縮まっていた。
「あの、なるべく早く慣れるようにするので、何か大きな音を出しておいて貰えませんか?」
モジモジとユリアが告げる。
「いいわよ。じゃ、男子三人で模擬戦ね。ザック・テッドチーム対レジーで」
「ちょ、おま?普通ザック対俺らだろ?」
「問答無用・・・しねっ!」
『ガンッ!ゴンッ!ギャーっ!』
騒々しい声がそれはそれで落ち着かないが、ユリアもなんとか乙女の威信を保つことが出来たようだ。
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「氷礫!!!」
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第9、第10のボス部屋を素通りして第11階層、満を持して現れた小火竜三体に対し、ユリアが牽制の初手を放ったところである。
「なんか昨日の何倍にも増えてない?礫の数・・・」
「なんかこう、パンに石を投げたみたいにあっさり潰れるよね・・・」
「前回俺達の苦戦はなんだったのか・・・恐るべしっ、氷魔法」
「正直、水魔法も氷魔法も大差ないって思ってた・・・悲しいくらいに差を感じるわ」
「ユリアちゃん、もしかしてレベルあがってない?」
「ステータス!!!・・・えっ・・・23???エエエエエエ?」
「下手すりゃD級でもおかしくないね」
「昨日のガーゴイルが効いたのかしら?」
「考えてみたら一人でボスのHP削りきったんだもんね」
経験値は敵を倒した一人だけでなく、基本的には戦闘に参加した全員に振り分けられる。
しかし、出発前のカインとユリアでも12対13と僅差ながらレベル差があったように、やはりアタッカーに多めに振り分けられるようなのだ。
「出発前は13だったんですよ」
レベル上昇による底上げに加えて超絶性能のワンド、属性優位を差し引いても、ユリアはこの冒険で数段階の実力アップを果たしていた。
~~~~~
その後の探索では、むしろ氷槍の威力を、いかに妥当レベルまで下げるかの練習をしながら小火竜の乱獲を敢行した後、10階層のボス『フレイムナイト』を二桁の氷槍を突き立て、今日の冒険を終えていた。
「え~今日の成果。火属性の魔石×31。火炎属性の魔石×1。既に大幅黒字に到達しています」
「なんだろう・・・いい事のはずなのにから回った感が半端ないわね」
「来る前の決死の覚悟はなんだったのか?」
「もう俺達要らなくね?」
「「「「「・・・・・」」」」」
「ザック、今日はかなり早く切り上げたわね?」
「うん。急激に能力が上がった場合、力の加減がわからなくて想定外の事態がおこる可能性もあるし、稼ぎも申し分ない。明日からも集中して短時間アタックで行こうと思う。折角安全にやれるのに無理する理由はどこにも無いでしょ?」
「そうね」
「じゃ、ユリアちゃん、また氷壁出してもらっていいかな?」
「ちょっと待って!」
「「「「「?」」」」」
「テッド、その前に1仕事、いえ、2仕事お願いするわ」
昨日と同じようにテッドがトイレを作る。
「次はこっち、そうね、ココからこのくらいまで、形は適当でいいから1mくらい掘り下げてくれる?」
「でかいな、残りのマナ全部使い切らないと無理だぞ?」
「もう今日は戦闘お終い無いんだから構わないでしょ?掘りなさい?」
「ピットフォール」「ピットフォール」「ピットフォール」「ピットフォール」「ピットフォール」「ピットフォール」「ピットフォール」「ピットフォール」「ピットフォール」「ピットフォール」「ピットフォール」「ピットフォール」「ピットフォール」「ピットフォール」「ピットフォール」
「うん、いいわね。次はユリアちゃん、この穴に水を入れてくれる?」
「「「「「池か!」」」」」
「そうよ、二日も煉獄にいて汗でベトベトだもの。余裕があるなら多少の無駄は許されるでしょ?」
「ウォーター!!!」
『ガチャガチャッ』『バサッ』『ザブーン』
装備を外したレイカが躊躇なく下着を脱ぎ捨て、眼前の池に飛び込んだ。
「うっしゃあ、泳ぐか!」
男どもが勢いよく続く。
呆気にとられたユリアの横では、全裸のメイがしずしずと脱いだ服を畳んでいた。
「えっと、あれぇ?」
「ユリアもはやくいらっしゃい。茹だった血が引いていくわ」
男の前で肌を晒す。
絶対にしてはならない事・・・のはずなのに、自分が勘違いしているのだろうか?
確かに治療院では服を脱ぐし、昨日はみんなとおしっこを・・・というか今朝は大きい方までしてしまった。
何よりも、要塞の皆に裸を見られることに何故か嫌悪を感じない。
パーティーって、家族?・・・みたいなもんなのかな?
冷やした方がいいには違いない。
一人だけ服を着て突っ立っている方がイヤラシイような気がして、すごすごと服を脱ぐ、が、さすがに胸を隠すくらいの事はする・・・。
「ヤバイっ!美少女が女神様にクラスチェンジした!」
「ふふふ、男ども、池を発案したあたしに感謝しなさいっ!」
「いや、さすがにそんなに見られると恥ずかしい・・・」
命がけの仕事をしているとはいえ未だ16歳、少し年上のお兄さん、お姉さんとはしゃぐのは楽しい。
水を掛け合い、何年ぶりかで泳ぎ周り、そのあとは汗まみれの衣類を洗って岩の上に干した。
さすがに裸のままでは心もとないので、わずかばかりの布を胸に巻き、夕飯を食べた。
男性陣の視線が、時折、自身の肢体に吸い寄せられるのにも気づいたが、外の男たちに見つめられるような嫌悪感はなかった。
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