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1st season 第二章

026 甲冑の中の人

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夜もふけて、一時は湿っぽくなった空気も消え、二時間ずつの見張りシフトが組まれた。
護衛枠ではないので俺は要らないと言われたけれど、そういうわけにも行かないので最初のペアに割り込む事にした。
ヒャッハー系のライザさんと、強引親切なアベルさんだった。

他愛も無い話をしていると、森の方に違和感を感じる。
中途半端な月明かりの中で、背景に溶け込みきれない何かが行ったり来たりしていて、ときおり2つの反射光がぬるりと見える。

(熊っぽいな?)

「なんか居ますね」

来るのか来ないのかわからないが、ウロウロされるとかなり気になる。
うつ伏せに寝そべり、I.B.からアンチマテリアルライフルAMR(笑)を取り出す。
全長192cm、全幅88cm、ボルト直径18mm、LV21の腕力でも引けないので、ハンドルを付けてギヤ比で巻き上げる一点もののロマン武装。
零式と違い替えは無いので、しっかり狙って一撃で仕留めなければならない。
そういえばアメリカで、17歳の少女がコンパウンドボウを使い、200kgの熊を仕留めた動画が話題になってた事があった。
あれが熊なら俺も仲間入りできるか?

「それは・・・弓かな?」
「はい、カッコいいでしょ?試作品だけど使えると思います」
「うむ・・・見たことのない形だ」
「目の反射から一頭だけのはぐれのようなので、俺がやってみますね。お二人は待機でお願いします」
「・・・わかった。任せよう」

目測で100m。
ナルドさんと試射したときにはボルトが木の幹に深く入り込んで回収を諦めた距離。
生き物相手は初めてだけど、自信はある!・・・根拠は無い。

零式と違ってこいつのトリガーはダイレクトじゃない。
トリガーが引かれると、がズレて、弦を引っ掛けたがリリースされる。
トリガーがを引き下げるダイレクト方式よりも、弦にあたえるが小さく、挙動も毎回均一になる。
精密さを上げるための工夫の一つだ。

出来れば正面から狙いたい。
左手は弩に添えず、肘をついて躰を支えるのみ。
右肩でライフルストック押し込み、引き金に触れる。
深く息を吸い、呼吸を止めてサイト越しの獲物を見つめる。
狙うのはぬるりと光る反射光の間。
りきまないよう、均一な力加減で人差し指を絞ってゆく。

バシュッ!・・・バガャーーーーーンッ!!!

暗闇に赤黒い飛沫が見えた気がする。
背後のテントから驚きの声が上がるのを無視してアンチマテリアルライフルAMRをI.B.に回収、入れ替わりに零式を握りながら標的に向かって駆け出す。
駆け出したあとで、走る必要があるのか疑問が浮かぶがとりあえずそのまま走る。
50・・・30・・・減速・・・10・・・静止。
標的だったものの残骸に動きは無い。
明かりを持ってくるんだった。
遅れて背後からガチャガチャと明かりが近づいてくる。

「ビッグベアー・・・か?」

頭部正面から侵入したボルトがそのまま胴体を貫通、肋骨に当たったのか背中が破裂したように破れ、折れた肋骨が後方にめくれ上がっている。
ボルトは見当たらないので後方の森の中へ消えてしまったようだ。

「うーん、我ながらエゲツない威力でしたねー」
「それ以前にこの暗がりでこの距離を当てるとは・・・」
「そこはまぁ的が大きかったですから」

アーチェリーな人たちなら同じ距離を立射で当てる。
バイポッド使っておいて外したらまずい。

熊的な何かを回収し、焚き火の脇でAMRアンチマテリアルライフルを取り出す。
110cmのボルトをつがえ、弦にを引っ掛けると、ストック横の小さなハンドルをキコキコ回す。
ボルトが後退するにつれ、リム弾性体がたわんでゆく。
トリガー上のに弦がかかったら、少しハンドルを逆回転させ、弦からフックを外す。

「ふぅ~、一回使う毎にコレだと、やっぱり使いドコロ選びますね~」

沈黙と視線に耐え切れず、なんとなく口を開く。

「カイン君、エルダーサではこんな武器で狩りをするのかな?」
「いえ、ダンライザで半年掛かりで作った試作品なので、たぶんこの一本しか存在してないです」

その後も交替の時間まで代わる代わる質問責めにされたが、アンチマテリアルライフル(笑)AMRのカッコ良さを理解してもらうべく、ネチッこくニワカ風味のウンチクを語っておいた。

「おや、もう交替の時間のようだ」
「そうですか。見張り役をやっていた記憶が殆どないんですが、お先に休ませて頂きますね」

ガシッ

自身の一人用テントに戻ろうと立ち上がると、アベルに肩を掴まれた。

「まぁまて、カイン君。もう少し我らの天幕で語らおうではないか?」

疑問形ではあったが、アベルさんとライザさんに両脇を抱えられ、甲冑改め鎧下4号5号さんに背を押されて、本日二回目の強制連行となった。

因みに鎧下3号6号さんは、再び甲冑3号6号に変身し、次の見張り番に立つらしい。

天幕とはいえさすが子爵家、長旅に寝台こそ置かれていないものの、床面積の2/3程が毛皮に覆われ、入り口側の1/3程が物置きとなっても、大人6人がゆったりと横になれるスペースがあった。

「すまないが、ここでブーツを脱いで、奥の方に座って貰えるかな。楽にして貰って構わない」

言われるがままに中に入り、毛皮の上に胡座をかく。猪や鹿では無い、モフモフと感触をしばし楽しむ。

「失礼して、我々も楽な格好にさせて貰うよ」

一人では脱ぎにくいのか、互いに手伝いながら甲冑さんが鎧下さんにクラスダウン・・・と見せかけて二階級降格のさんが四名爆誕してしまった!?
えっ何?どゆこと!?

着物文化だった日本で生まれ育つと誤解しがちなのだが、ニットの歴史はそれなりに古い。糸一本あればループ状に編み連ねていくだけなので、らねばならない布よりも、ある意味庶民にも身近である。
大陸では、13世紀にはニットの靴下が存在していた。

セーター程では無いものの、手編みゆえTシャツよりも目の荒いニットシャツ、そしてこの世界のブラジャーはコルセットと同じく、一部の貴婦人しか着用しない。
そしてこの場に貴婦人は居ない。

たゆんっ・・・

総括しよう。
この場にブラジャーの存在は確認出来ないっ!

「カイン君、いや、あれ程の武勇を見せられてはカイン殿と呼ぶべきだろうが、カイン君で構わないだろうか?」

そう訪ねながら車座くるまざになって腰を下ろす粗末な下着の面々。
が、何故かカインは車座の輪に並んで居ない、カインをに、車座が敷かれたのだ。

「えっと、はい。問題ないです」

「そう。なんだか弟分が出来たみたいね?」

ニコリとして語りかけながら、既に4号か5号か忘れてしまったがにじり寄る。

ぽふっ

「あっ、すみませんっ」

たじりっ、とカインが後ずさると、背後のアベルにぶつかった。

「いや、狭い天幕だ、気にすることはない」

再び前に出ようとするも、ガッシリと腰を掴まれて動けない。

「カインくん、さっき、婚約者と別れたって言ってたけど、今は居ないのかな?」
「えぇ、今はそういう感じの女性ひとは居ません」

一瞬ラティアが頭をよぎるが、彼女は事あるごとに「カイン様には白金貨一枚分、私をお使い頂くだけですから、私に遠慮するのは本末転倒ですよ!」言っているし、やはりユリアとの関係とは違っている。

「そうか。結局見張りでも我らは役に立てなかったし、活躍したカイン君にマッサージでもさせて貰うのはどうだろう?」
「いいですねー、皆でカインくんの疲れを癒しちゃいましょう!」

「うぐっ!・・・んーんっんっ!」

ちょっとエロい展開を期待してしまっていたカインの足ツボを4号とライザがガッツリと責めた。
激痛である。

「ぐっ・・・っふぅ思ってたよりっ・・・ぬぬぬぬっ疲れ溜まってたみたいでっ・・・んーーーす」

両足を延ばし、アベルにもたれかかって体を預ける。
暖かい血液が足裏から全身へ巡ってゆくのがわかる。
5号さんは右手の指と甲をモミモミしてくれた。
期待とは違ったが、これはこれで素晴らしい。

「次は脹脛ふくらはぎねー」
「ズボンだけ脱ぐよー」

あれよという間にズボンを降ろされ、裏返しにされてしまった。

「ふむ。肩もなかなかっているようだ。」

アベルさんの親指が僧帽筋を直撃する。
正座を崩したアベルさんの太腿ふとももが頬を掠め、ぼっと顔が火照る。
アキレス腱から脹脛ふくらはぎまで、力強く解されてゆく。
あまりの激痛でエビ反りに頭が跳ねる。

「あっ、こら、こそばゆいでは無いか」

太腿で頭部を固定されてしまった。

ぽふっ

「背中もほぐしていきますねー」

腰の上に柔らかな人肌を感じる。
その柔らかさからは想像できない剛力で、肩甲骨の裏側をグリグリと圧迫される。

「うぐっ・・・んっー・・・っうっ」
「カインくん、いたきもちーでしょ?」
「はい、痛いけど、気持いいです(ビクッ)っねっ???」

脚担当の二名が膝の裏に尻を乗せ、両の手で太腿ふとももを揉みしだく。

「カイン君、ビクってなったよー?」
「いゃ、なんっ・・・そのっ・・・くすぐったいていうか」

擦るように撫で上げる指先が、太腿の付け根にまで滑り込み、玉袋の側面を掠めるのだ。

「ふーん、ここもくすぐったいー?」

背中を押していた指が滑り初め、サワサワと脇をぜる。

「っんふ・・・っん!・・・っんんんん」

ゾクゾクと甘美な刺激が駆け抜け、カインはモゾモゾと躰をよじる。

「カイン君。我々が『躰を差し出して剣を与えられた』と蔑まれる話をしたろう?あの話、半分はホントなのだ」

クラクラとしていた頭がいっそう混乱する。

「騎士とは言え我らも一介の使用人。あるじに『脚を開け』と言われれば拒む術は無い」

カインの心を同情と嫌悪が濡らす。

「それはいいのだ。末席といえど貴族の家に生まれた身、あるじになるはむしろほまれ」

話に耳を傾けながらも、全身を駆け巡るゾワゾワとした刺激に、思考する事が難しい。

「だがな、気まぐれにとなった我らに機会などそうあるも無く、かといって他に言いよる勇気のあるものも無く、特に命を奪った今日のような日は、女の身とて劣情を持て余す」

太腿ふとももぜていた女の手は、既にカインの下着に潜り混んでおり、脇をなぞっていた指先は、硬い胸板の小さな突起をクリクリと摘んでいる。

「何も考えず。ただ我らに身を任せてくれればいい」

仰向けにされたカインの唇をアベルが覆う。
割って入る柔らかな舌がカインの口腔を優しく撫でる。
全身に女たちの肌が纏わりつき、母の胎内に戻ったかのような安寧と、せり上がる射精の欲求に我を忘れる。

ふと、ユリアの愉悦に悶える表情かおが浮かんだ。
(男達に溺れたユリアも、こんな感覚だったんだろうか?)
まったくの無意識にカインの頬を涙がつたった。

「すっ、すまんっ。そんなに嫌だとはつゆも思わず」

涙に動揺したアベルが身をすぼめる。

「いえ、ちょっとユリアを、婚約者の事を思い出しちゃいまして。綺麗なお姉さん達にこんなにされて、嬉しく無い男なんていませんよ?もう頭のなかがトロトロになって、女の子みたいな声がでちゃいそうです」

「カイン君・・・全部忘れて、淫らにけて無くなってしまうといい」
「お姉さんたちが、たくさん、たくさん、きもちくしてあげるからねっ♡」

一番のりで馬乗りになったライザが、自らの入り口にカリ首だけを迎え入れる。

「っん、ほーらカイン君、カイン君のおちんちん、お姉ちゃんに食べられちゃうぞー?」

カインの目をニヤニヤと見つめたまま、ゆっくりと、味わうように尻を降ろすと、ため息のような嬌声が漏れる。

「っンンン、っつ、っんふぅ~」
「ライザ、おっさんくさい!」

ねっとりと、すべての壁面でその感触を愉しむように、円を描くように腰をクネらせる。

イチモツの快感に歪むカインの表情かお、左右の胸板に抱きついた別の女達がじっとりと見つめる。
半開きになった二人の唇は、まだあまり触れられた事の無いカインの胸先に添えられ、だらしなく放り出された舌が、固くなったチクビをチロチロと転がす。

カインの両の手は女達の太ももに挟み込まれ、その先の濡れそぼった花芯へと奉仕を強いられる。

年上の女達におもちゃにされ、身悶える顔をじっくりと見つめられる。
たまらず目をぎゅっと閉じようとすると。

「目をつぶってはダメだ。もっともっといやらしい顔を見せておくれ」

膝の上にカインの頭をのせ、生え際や耳をサワサワと撫でるアベルにたしなめられてしまう。

「うっ・・・あっっ・・・で、出るっ」

びゅるっ びゅるるっ びゅるー びゅっ

耳元に唇を寄せたアベルが、囁くように小声で唱える

「ヒール!!!」

見張りの二人と入れ替わりに、たっぷりと精を味わった二人が天幕を離れても、カインが解放される事は無く。
アベルの乳房を口に含みながら、他の女の舌にザーメンを絡め取られ。
ライザの陰核をちゅーちゅーと吸いながら、また別の子宮に射精する。

おすの威厳を飾ることなどとうに忘れて、めくるめく快楽の渦に融け合いながら呑まれてゆく。

その夜カインが自らの寝床に戻る事は無かった。
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