I.B.(そこそこリアルな冒険者の性春事情!)

リカトラン

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1st season 第三章

060 始動

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ぽっく ぽっく ぽっく ぽっく

「じゃ、少し早いですが今日の移動はここで切り上げて、基本戦術の説明をしますね」
「「「「「「はーい」」」」」」

そう言うとカインはまた巨大なブロックを出した。
わたしと居た頃とは比べ物にならない力だ。
もしもこの力が七歳の時に与えられていたら、カインはあの日大怪我する事もなくて、わたしもダンジョンへ行くことは無かったのかも・・・ちがう、原因はわたしの意志が弱かったから、もしもこんな力があっても、きっと違う形でわたしは間違っていたと思う。

「リシェルさん、この真ん中あたりを縦横奥行き2mずつでくり抜いて貰える?」
「わかった」
「ちょっと待ってもらえるかな」
「なんでしょう、アベルさん?」
「我らは主殿の家臣となったのだ『さん』付けや敬語はやめた方が良いのでは?・・・良いのではありませんか?」
「あー、まぁ、確かに・・・でも冒険者流儀ってことで話し方は自然なままで行こう。敬称は省くね」
「お前たちも、カイン君呼びはベッドの中だけにするのだぞ?」
「「「「「「はーい」」」」」」

うっ・・・やっぱり皆んなともベッドの中があるんだ・・・嫉妬できる立場じゃないけど、すこし寂しい。
奥様は・・・寂しくないわけないよね。感謝してもしきれないな。

「じゃ、改めて、リシェル、よろしく」
「はい ピットフォール落とし穴!!!」
「うん、いい感じ。次は今開けた穴の奥から、ブロックの上まで、そうだな、幅2m、高さ2mで斜めに穴をあける。その後モーフ石変形で上まで登れる階段にするんだ」
「はい」

「そうしたら、二列で登ります。順番は、ライザ、エマ。スージー、リシェル。シリア、ユリア。アベル、ミラン。最後が俺」

「順番にも意味があるのかな?」

「そうですね。例えば五体のオーガと遭遇したとしましょう。その場合、オーガと俺たちの間にブロックを出して、今の順番で駆け上がります。先頭がライザで、アベル、ミラン、俺というのは固定ですが、あとは変えても構いません。ただ、咄嗟の時にも最速で動けるよう、その都度変えるようなのはダメです。先頭がライザなのはアベルに次いでタンク向きだからですね、上は安全なはずですが、という事に備えます」

「私と隊長が最後なのは?」

「前面にしか敵はいないですが、もしかすると見落としでバックアタックを仕掛けられるかも知れません、そうしたら咄嗟に迎撃できるのはミランのファイヤーボールだけですね。リシェルにはマナを温存して貰うので」

「その場合ユリア殿の方が良いのでは無いか?」
「えっと、今は9人バージョンの流れをやっていますが、アベル達6人だけのバージョンもあるので、なるべく役割が変わらないほうがいいでしょ?」
「なるほど」

「で、アベルさんが最後尾組なのは、バックアタックで俺が負傷した時にヒールしてもらう為です」
「了解した」

「では進みましょう。本番では最後尾の3名以外は一気に駆け上がりますが、今は階段の中ほどで止まって下さい」
「・・・結構急ね」
「そこはスペース的に仕方ないかな。で、最後尾の俺が中に入ったら蓋をします。ホイっと」

カインは2mのブロックで蓋をした。
すごいな。
ちゃんと考えてあるんだ。

「ここまでくれば後ろは心配ありませんね。ドラゴンとかこられたら別ですが」
「なるほどー」
「では上に上がりましょう」

「・・・高いな」
「はい、じゃシリアとユリア以外はみんなコレ持って」
「し、白金貨一枚2億円の武器が我が手に・・・壊したらカイン君、じゃなかった主様の奴隷に・・・」
「はい、値段の事は忘れてくださいね。いくらでも作れるので。そうしたら、うん、適当にあの辺の木を狙って見て下さい」
「狙いました」
「シリア、そっち見てあげて、俺こっち見るから」
「わかったわ」

カインと奥様がみんなの構えを直していく。
わたし、何にも出来ないな。
希少な氷魔法使いとかチヤホヤされて、その気になってダンジョンなんか行っちゃって・・・ダメだ、もう後ろ向きはやめたんだ。
ちゃんと自分の役割を探して生きよう。

「はい、あとは練習あるのみなんで、とりあえず今言った通りに、狙った木を撃って下さい」

バシュッ ガッ バシュッバシュッ ガッガッ バシュッ ガッ バシュッバシュッ ガッガッ

「・・・・・・」
「はい、みんな当たりましたね?これで五体しか居なかったオーガが何故か六体死にました」
「カッ、カイン君・・・じゃなくて主様???なんで???弓術スキルも無いのに一回で当たったよ?」
「その代り、二矢目を番えるのに最初は10秒くらいかかります。お手本見せますね」

バシュッ ガッ

「はい、こんな感じです。やってみて下さい」

「うーん、確かに結構かかるな」
「シリア、やってみせて」
「撃つわ」

バシュッ ガッ ・・・・・・・・・・・・ バシュッ ガッ ・・・・・・・・・・・・ バシュッ ガッ

「と、シリアのは装填が速く出来る代わりに射程が短くした専用品ですが、皆さんの腕力なら慣れれば同じくらいの速度でやれるはずです」
「主殿はもっと速いのかな?」
「いえ、俺も似たようなもんですね。でも、I.B.があるので」

バシュッ ガッ バシュッ ガッ バシュッ ガッ バシュッ ガッ バシュッ ガッ

「と、こんな風に戦います」
「「「「「ずるーいっ!」」」」」

「あ、あの。わたしは持たなくていいの?・・・でしょうか」
「例えば、想定外の飛翔型とかが飛んできたら、咄嗟に落とすにはユリアの魔法が最適でしょ?だから、周辺警戒、主に空とかね、が、ユリアの仕事」
「はいっ!」

良かった。
わたしにも出来ることがある!

「じゃ、次、六人バージョンやるので一回降りようか」

登りよりも降りるときの方が躓きそうになるかな、気をつよけよう。

「六人の場合、リシェルがロック石生成一回でこれを作れるようにならないといけません」
「えええええ、無理だよー」
「大丈夫。マナポーションの瓶を見るとクラっとくるくらい毎日練習すれば、すぐに出来るようになります」
「うぅぅぅぅ」
「今は俺が出すね、で、さっきと同じ順番で、リシェルだけ俺の隣に」
「はい」

またブロックに入る。

「ここで、リシェルがロック石生成で蓋をして」
ロック石生成!!!」
「あとは一緒だね、上がろう」

タッ タッ タッ タッ タッ タッ タッ

「上がったら狙って~、撃つ」

バシュッバシュッバシュッガッバシュッガッガッバシュッバシュッガッガッガッ

「はい。これで俺が居なくてもオーガ六体倒せたね。ボルト・・・えっと、この矢の事はボルトって呼ぶ。で、ボルトが尽きない限り、どんだけ囲まれても倒せるでしょ?仮に死体が積み上がって登ってこられそうになっても、リシェルがこのサイズのブロック落とせばペシャンコになるから問題なし・・・唯一懸念点は、俺が居ないと使ったあとのコレ、回収できないよね・・・それくらいかな。明日からコレの繰り返し練習。そしてリシェルは寝る前にマナが尽きるまで作る練習」
「ううううう」

「なんだろう・・・こんな簡単な事でいいのか?」
「うーん、エルダーサのスタンピードは、基本、ブロック落としだけで殲滅したので、リシェルがマナポーション沢山飲めるようになったら、結構無敵だと思います。みんなが防衛、俺が殲滅に出る分担で、俺達だけもスタンピード潰せるようになりますよ?」

ほんとに凄い。
こんな戦い方、考えたことも無かった。
コレならわたしも、マナポーションが尽きない限り、いくらでも戦える。
あの頃よりもずっとずっとカッコよくなっちゃったな、カイン・・・。

「うーん。やはり今後は全面的に主殿の指示に従っていこう。我々はとんでもなく幸運な仕官が出来たようだ」
「まぁこれは平野用なんで、森林用とか対人用も考えていかないといけませんね」
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