I.B.(そこそこリアルな冒険者の性春事情!)

リカトラン

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1st season 第四章

075 西ダンジョンの調査報告

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「神殿・・・ですか」
「はい。もう御本人に約束しちゃいましたので、街として不味ければ、城門の外に建てることになります」
「ちょっと待て、その前の魔族のとこもっと詳しく」
「いや、そこはまだホルジス様もこれから調査するって言ってたんで『恐らく魔族が』って事しかわかりませんよ?」

「・・・その先が知りたいなら、神殿が必要なわけですか?」
「そういう事になります。タダで調査結果だけよこせなんて、神様に言えませんから」
「神殿建てるから調査結果よこせってのもどうかと思うけどな?」
「まぁそこはお互い暗黙の了解って事で・・・で、どうでしょう?」

帰還したカインはその足でヴァルダークギルマスを捕まえ、クルスタット子爵の元を訪れていた。

「ふむ。問題は2つ。一つは聖教国、もう一つは・・・」
「あ、予算はウチが出しますんで。約束しちゃったの俺ですし」
「なら聖教国だけか・・・絶対なんか言ってくるぞ?」
「そこは御本人に丸投げで良くないですか?派手なの作ったらこまめに降臨するって言ってましたし・・・あ、寄付は要らないそうです。お供えだったら嬉しいって言ってました」

「・・・むしろ寄付も無しで神が降臨する神殿とか作ったら戦争もんだろ」
「・・・ですかね?でも、今回の件抜きにしても、エルダーサには神殿あった方がいいと思いますよ?試練の洞窟とか無茶苦茶な危険物抱えてるんだから」
「ん?ロックハウス卿?危険とは?」

「あ、えーと、クルスタット様は500年前の勇者の話、ご存知ですか?」
「ああ、魔王を打倒して世界を救ったと」
「その後の話は?」
「・・・そういえば知らないな?」

「権力争いに巻き込まれて、両手両足切り落とされて、目の前で恋人の聖女を貴族たちにレイプされて、世界を呪って死にました。その現場が試練の洞窟です」
「な、なんとっ!」
「本当の話です。ギルドの上層部には口伝で伝わってます。王家と貴族を信用してはならないと・・・」
「魔王を倒すほどの勇者の強力な呪い。それが試練の洞窟の秘密であり、そしてそれは今尚世界をヒビ割れさせかねない危険をはらんでいるそうです。ホルジス様が守護神として常時監視しなければならないほどに・・・」

「・・・聖教国との政治バランスなど、考慮している場合では無いか」
「ええ。政治的に考えれば、聖教国から神官を招いて、寄付金集めでご機嫌を取るのが正解でしょうけど、ホルジス様が嫌がると思います」
「ふむ。神を取るか政治を取るかか・・・わかった。ロックハウス卿、全面的に任せよう。もとよりこの街は卿が居なければ二度も滅んでいるのだ。卿の判断に委ねるべきだろう」
「賜りました。なるべく穏便に・・・とはいかないかも知れませんが、全力を尽くします」
「はぁ・・・ま、ギルドも全面的に協力するから、しっかりやってくれ」

~~~~~

「第一回、ロックハウス家、神殿建立会議~、はい、拍手!」

ぱちぱちぱちぱち

「の、前に、さっきギルドでB級に認定されてきました。Aになるには王都で活動しないといけないので、これにて昇給頑張る期間は終了です。はい、拍手!」

ぱちぱちぱちぱち

「では本題。この中で神殿作ったことあるひと挙手~」

しーん

「はい、居ませんね?俺もはじめてです。なので、基本的なところから行きましょう。神殿とはなんですか?」
「神様が居るところ?」
「はずれー。神様は神界で忙しく働いています。なので神殿には居ません」
「神様を呼ぶところ?」
「はい、そんな感じですね。例え降臨されなくとも、感謝を捧げ、お礼の供物とかをお渡しする場所です」

「あれ?寄付してお願いするところじゃないの?」
「神官様、そう言ってたよ?」
「みんなホルジス様と会ったよね?寄付くれって言ってた?」
「・・・お金は使い道が無いって言ってた」

「そう、寄付が必要なのは人間で、神様じゃありません。但し、神殿を建てたり、神の教えを布教したりするにはお金がかかるので、寄付がダメってわけじゃないとは思う」

「なるほど・・・でも、そもそも神様って何?なんか、主様との会話聞いた限りだと、思ってたのと違うっぽいんだけど・・・」
「あー、それはなー。俺もちゃんとわかってるわけじゃないし、一人ひとり違う捉え方でもいいと思うんだけど、俺の考え聞いとく?」
「是非聞いておきたい」

「多くの人が、お金持ちになりたいとか、病気を直して欲しいとか、そういうのをお願いするじゃん?もちろんそういう担当の神様も居るんだとは思うけど、少なくともホルジス様の仕事は違う。そうだな・・・例えば、地面が無くなったらみんなどうする?」
「えっ・・・地面って、この地面よね・・・どうなるの?」
「地面が無くなったら、立ってられないし、座ることも出来ない。ただ落ちていく。どこまでも、ずっと」
「ちょっと想像できない」
「そういう風に、世界が当たり前に、あるべき姿で有り続けられるように保守するのがホルジス様の仕事。つまり、お金があるとか無いとか以前に、ここに地面があって、こうして座って要られるのがホルジス様のおかげ。だから、お願いするなら『明日も地面がありますように』であって、寄付を出すから幸せにしてくださいっていうのはお門違い・・・だと俺は思う」

「なんとなく・・・わかった気がする」
「あ、ナザリア様とは話した事無いので、幸せ担当の神様がどんなかとかは全然わかんないよ?でも、似たような感じじゃないかな?明日も世界に男と女が存在するように、人間同士の間にはちゃんと人間の子が生まれるように、そういう原理的な所を維持してくれてるのが基本で『誰ソレさんと結婚させて欲しい』とかは、ちょっと話題が小さすぎな気がするし、平等性に欠く。だって、AさんとBさんが居て、どっちもCさんと結婚させて欲しいとか願われても困るだろうしね」
「まぁ、Cさんがアンタじゃ無ければ困るわね」
「・・・」
「なんか神官様の話と全然違ってショック・・・そして主様の話の方が筋が通ってて更にショック」

「でも、そんな気がしないか?食べ物が欲しいとかじゃなく、そもそも食べ物を口に入れたらおいしくて、更にそれで生きられるなんて、むしろ誰かと恋仲になるとかよりずっと奇跡的だろ?神様に感謝だろ?」
「・・・やばい・・・なんか凄い・・・キタ感じっ!」
「と、いう前提で、世界が当たり前であることに感謝する神殿を作りたいと思うんだけど、どうかな?」
「いいわねっ!でも・・・ぜったい聖教国からイチャモンつくわねっ?」
「そこは何度も言うけど、御本人?御本神?ホルジス様に丸投げします」

「わかった。で、どうするんですか?」

「『場所』『建物』『運営』の3つだな」
「運営?」
「うん。誰かが掃除しなきゃ汚くなっちゃうし、時が経てば修繕も必要でしょ?でもそれを口実に寄付寄付って嫌でしょ?だからスマートな運営方法も考えたい」
「ウチで出せばいいんじゃない?」
「千年先もロックハウス家があるかわかんないじゃん?」
「千年・・・ですか?」
「神様の事を考えるならそういう時間単位で考えたほうがよくない?」
「なるほど・・・難しすぎる」

「俺の考えとしては、まずはウチのみんなで掃除とか修繕とかする。しながら良い方法を考えていくっていう、かなりふわっとしたもんなんだけど、それでもちゃんと後世に続く運営方法は考えなきゃなって思う。作るだけ作って保守シラネとかちょっとな?」
「そうね。答えが出るまで待ってたら、おばあちゃんになっちゃうわ」

「よし、じゃ、運営方法はそれでいいね?まずはウチから、そして後世に続く良い方法を考え続ける」
「「「「「「はーい」」」」」」

「次は場所だな。ホルジス様が『信仰力』って言ってたから、やっぱ大勢の人が集まる場所が一番だと思うんだ」
「そうね・・・人里離れたところにあるのも神聖な気がするけど、あの感じだと人が沢山いたほうが喜んでもらえそうよね」
「候補として考えたのは二箇所。中央広場の噴水のあるところと、西地区のスラムの入り口」
「スラムなの?」
「うん、俺が領主だったら、街全体の事を考えて、スラムの入り口に建てるべき。理由は犯罪の減少ね。建築時には雇用が生まれるし、建ってからも、神様が見てる横で悪いことはしにくいだろ?しかも自分らが建てた神殿ともなれば尚更」
「なるほど、一理ある」
「でも俺は領主じゃないので、噴水のとこがいいかなと思う」
「何故かな?」
「ホルジス様に感謝する目的を脇に置いて、犯罪抑止を主目的にするのは何か違うかなと。あそこなら屋台とかも多いし、ちょっとおすそ分け感覚でお供えも増えるだろ?」
「アンタって・・・ほんと地味に色々考えてるわよね」
「おう・・・で、どうだろ?他に良さそうな案ある?」
「あんなど真ん中に建てられるのか?」
「あー、領主様も全面的に支援するって言ってたから、いんじゃないかな?」
「じゃあそうしちゃいましょ。ダメだったらそのときまた考えればいいわっ!」

「よし、じゃ、最後に建物な。今の所決まってるのは『派手』『赤』『お供えが置ける』『ホルジス様の像』の4つ。あとさっき話してて思いついたんだけど、石碑を一つ置きたいかな」
「石碑?」

『今日も変わらず大地が有り、見上げればそこに空がある。我らはそれに感謝する』

「って、床に彫っておいたら、教える人が居なくても、なんとなく伝わるかなって・・・あれ?なんか最初は魔族の情報貰うのが目的だったのに、段々真面目に神殿について考え始めてるな・・・ま、いいことだ。たぶん」
「たまにはいんじゃない?魔物潰す方法ばっかり考えてる人生とかアレだし、折角だから本気出しましょ!」

「一番問題は・・・ホルジス様の像だな・・・誰か、絵とか描ける?」

「「「「「「・・・」」」」」」

「うん。リシェル、頑張れっ!」
「ええええええ?」
「だって石像だし、俺達しか顔知らないし、リシェルしか作れないじゃん?」
「・・・ううう・・・そんなぁ・・・似てないって怒られませんか?」
「まぁ、一月ひとくらいやってみてダメだったら、話だけで作れる職人さんいないか探してみよう」
「最初から探しましょうよ~?」
「ホルジス様に努力をお捧げするチャンスよ!リシェル、がんばんなさいっ!」
「あぅぅぅ、そんな言い方されたら逃げられないです奥様~」
「神殿そのもののデザインは、話してる内に盛り上がってきちゃったので俺が描いていい?描きたい人いる?」

「「「「「「いませーん」」」」」」

「あっ・・・でもAMRも作んなきゃ・・・ハイオーガ対策装備も考えなきゃだし・・・結構忙しいな」
「そうね、いつ戦闘になるかわかんないし、まずAMRが最初よ。次に神殿デザインで、ハイオーガ対策は最後ね」
「ああ、そうしよう・・・その間、みんなはどうする?」
「アンタとリシェルが居ないなら無理に狩りに出ないほうがいいわね・・・少し考えるわ」
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