I.B.(そこそこリアルな冒険者の性春事情!)

リカトラン

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2nd season 第一章

089 逃亡生活

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「エルダーサを追われ一年・・・俺達は未だ放浪の旅を続けていた・・・」

ぽっく ぽっく ぽっく ぽっく

「カインお兄ちゃん?一年は360日だよ?まだ10日くらいしかたってないよ?」
「そっかー、アリスは賢いなー、平和すぎてもう一年くらい経ったかと思ったよー」
「今日もいいお天気だねー」

ぽっくきゃー ぽっくきゃー ぽっく緊縛? ぽっくきゃー

王国歴334年10月5日、快晴。
クルスタット卿の馬車に鮨詰めでエルダーサを脱出した俺達は、王都で買った馬車に乗り換え、一路を目指していた。

聖教国の領土はグラム王国の1/5程度しかない。
だが、国境を越え、世界中に教会支部を持つ事でその影響力は王国に比肩するものとなっている。

エルダーサから国境まで910km、国境から聖都までが860km。
馬車移動なら40日といったところ、つまり、あと三十日は旅が続き、そのあとどうするかは微塵も決まって無い。

ぽっくきゃー ぽっくきゃー ぽっくフツメン? ぽっくブフォッ!

うん、南へ行こう。
南国の海辺を探してそこに拠点を構えよう。
何故って?
一年中ビキニに囲まれて過ごすために決まってるじゃん?
うん、そうだ。
そして世界をビキニ文化で満たしていこう!
生涯をかけるに相応しい大事業だ!

「カインお兄ちゃん?またエッチな事考えてるの?」

ギクッ・・・女子というのは子供でも侮れない。
"男女七歳ににして席を同じゅうせず"ってのは、明らかに女子の為の言葉だな。
男子とか絶対まだ鼻穴ホジってるし。

「そんな事無いぞー、人生をかけた大事業について構想を練ってるんだ」
「・・・あやしぃ」

ぽっくえっ、みんな無いの? ぽっくきゃー ぽっくエマ師匠! ぽっくマジ師匠!

「それよりもアリス、すっかり御者上手になったね」
「えっへん!すごいでしょ~!」

にしても・・・迫りくる王家の追手に怯える悲壮な逃亡生活とか・・・無いわな。
噂が伝わるだけで一月以上かかる世界だ、顔認証サーバーのバックドアを政府機関が好き放題できて、交通監視カメラの映像検索で逃げ場が無い世界とはわけが違う。
平和だ・・・実に平・・・あっ・・・なんか見つけちゃったかも・・・。

「あー、ご歓談中のところ申し訳ございません。また出たっぽい。ちょっと行ってくるから待ってて」
「ずっりーぞ、主様っ!昨日も一昨日も主様一人で行ったじゃんか!おれっちだって出番が欲しいぞっ!」
「「「「そうだそうだー!」」」」

「あー、ま、過保護も良くないか。うん、じゃ、アベル、六人で先行してくれる?俺は皆と馬車で行くから。あと、ライザはちゃんと確認してから殴るんだぞ?」
「うっひょぉ~!久々に出番だぜっ!」
「アベル、判断は任せる。安全第一な?」
「はっ!よし、状況確認のため近接になる可能性が高い、全員フル装備に帯剣せよっ!」
「「「「「はっ!」」」」」

「では主殿、行ってまいります」
「ああ、皆、危なかったらすぐ引くんだよ?」
「主様過保護ぉ~」
「一番槍はもらったぁ!」
「あっ、ライザっ!待ちなさいっ!」

うぉぉぉぉぉぉ どだだだだだだだだ

「皆さん、武装するとすごい迫力ですね」
「うん、盗賊と並んでもこっちが’絶対悪者に見えるわな」
「そんなことないよっ?おねぇちゃんたち、カッコイイよ?」
「アリス・・・お兄ちゃんはアリスの将来が心配だ」

~~~~~

「お父さーんっ!」

ザシュッ

「リンカ・・・すまない・・・」

ドサッ

「へへへっ、貧乏百姓の荷車なんて襲ったって喰いもんくれぇしかねぇと思ったが、こいつぁ当たりだな」
「ああ、女たちは殺すなよ?勿体ねぇからな?」
「ババァもっすか?」
「ババァは要らねぇ・・・いや、使いみちはあるか、生かしとけ」
「へいっ!」

なんでこんな目に・・・よりによって今日だなんて・・・どうせ不幸にするならもっと早くして欲しかった。
名もない貧しい村で生まれ、朝から晩まで百姓の重労働、それは隣村のシーバに嫁いでも変わらない。
でも、それでも、シーバと一緒になれる事だけがたったひとつの幸せだった。
なのに・・・なぜ輿入れの当日にこんな目に・・・神様・・・酷いです。
絶望させるために作ったなら、希望なんて抱かせないで・・・。

「おいおい、こいつはツイてるな、この女、花嫁だぜ?生娘だってこった」
「まっ、あっという間に使にするんだがな?ガハハハッ」

護衛を買って出てくれた村一番の腕っぷし、ゲンさんは真っ先に殺された。
どんなに喧嘩が強くても、10人からの盗賊に囲まれればどうする事も出来ない。
お父さんも殺された・・・そして私の輿入れを見届けるために着いてきてれた、幼馴染のヨッちゃんとナッちゃん、二人を巻き添えにして、私は盗賊たちの慰みものにされる・・・いっそ殺して・・・。

うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! ザンッ!・・・ドサッ

「あっ、順番間違った・・・、おい、お前が悪者ワルモノかっ?お前がワルモノだよなっ?」
「いやライザっ、それっ、死んでるからっ!しゃべれ無いからっ!」
「まったく・・・少しは大人しくなったかと思ったが、主殿から言われたばかりだろう?」

どこからやってきたのか、の衣服を全身に纏った恐ろしい鬼が、盗賊の一人を斬り殺した。

「なっ、なんだテメーらっ!」
「ははぁーん、顔隠しても体つきでわかるぜ、こいつら女だ・・・ひとり男も混ざってるがな」
「っ!てんめー、男っておれっちか?おれっちの事かっ?」

「あー、ライザはちょっと黙っててくれ。話がこんがらかる。で、そこな女?こいつら全部盗賊で相違無いか?」
「えっ・・・はっ、ハイ」
「よし、人数もまぁちょうどいいだろう、銃剣の訓練をする。も剣も禁止だ。使ったモノは・・・罰として10日間風呂掃除だ」

訓練って・・・何言ってるのこの人?
女が男に、それも倍以上の人数に勝てるわけ無いでしょ?

「ヲイヲイ、随分なめたこと言ってるくれるじゃねーか?」
「よーしオメーら、殺すなよ!殺したやつにはヤらせねぇかんな!」

「ほほぅ、女は殺さぬか・・・見かけによらず紳士だな」
「いやっ隊長、違うからっ!殺っちゃったらヤれないってだけだからっ!」
「問答無用っ!ウラぁっ!」

戦闘は互角・・・いいえ、やっぱりだめ、女の人達は防戦一方。
最初の鬼の人は押せてるけど、他はきっと時間の問題・・・やっぱり神様は酷い・・・ちょっとだけ助かるかもって期待させて・・・また取り上げる・・・。

「コラッ!ライザっ!訓練だと言ったろ!ちゃんとさばく練習しろ!すぐ殺そうとするなっ!」
「けっ、強がり言ってんじゃねぇぞ?ほれほれっ!ほれほれっ!」

うん。でも鬼の人は強い。
もう三人倒した。
これで9対6・・・もしかしたら・・・いえっ、違うっ!

待ってるだけじゃダメ、神様は助けてくれない。
ゲンさんの斧、あそこに落ちてる・・・。
慰み者にされるくらいなら殺されても一緒よ、自分で切り開かなきゃ!
私だって農家の娘、街のなんかよりずっと力持ちだ!

「あー、うん、心意気は買うけど、危ないからやめときなよ」
「きゃっ!?」

いつの間にかすぐ後ろに男の人が立ってる・・・土草色だ。

「あー、彼女らのあるじでカイン・ロックハウスという者だ。万が一にも負けることは無いから安心し・・・ごめん、間に合わなかったんだね。シリア、怪我人の治療頼む」
「お姉ちゃんたち~、がんばれぇ~!!!」

えっ・・・子ども?平気なの?

「スージー、弓のトコで斧を受けてはいかん。ちゃんとやいばの腹でなすように」
「そんなのむっかしぃよ!」
「うははははっ、スージーこうだっ!こうするんだっ!」

ガギンッ! ガッギーン!

「・・・いや、ライザ、それっ、なしてないしっ!殴ってるだけだしっ!」
「あー、みんな、怪我人もいることだし、そろそろ切り上げて欲しいんだけど・・・」
「はっ!皆聞いたな?切り上げるぞ」

ブシュッ ブシュッ  ブシュッ

・・・なんなの?ほんとに訓練だったの?あっという間に全部倒した。

「ライザ~、銃剣ついてるのになんでストックで殴るの?」
「いや、結構殴りやすいぞ?コレ?」

あ・・・お父さん・・・ゲンさん・・・オジサン達・・・死んじゃった。

「お母さんっ!お母さんっ!どうしよう?お父さんが、お父さんが・・・」
「リンカ、しっかりなさい。まずは助けていただいたお礼を言わないと」
「でも!でもぉっ!」

「あー、通りがかっただけなんで、お気遣いなく・・・で、不躾ですが、この後どうされますか?亡くなられた方々を弔うにしても、あまりゆっくりしていては獣が集まってきますから」
「いいえ、ありがとうございました。夫は殺されましたが、今日輿入れの娘はこうして無事、皆様が通りがかって下さらなければ私共は死ぬより辛い目にあわされていたでしょう。本当にありがとうございました」

「えーと、輿入れ?という事は今日がご結婚の?」
「はい・・・こんな事になってしまいましたが・・・いえ、こんな事になってしまったからこそ、娘だけは無事、嫁がせてやりたいと思います」
「お母さんっ!そんな事言ったってこれからどうするの?一人じゃ畑だって見られないじゃない?」

「あー、じゃ、皆さんで少し相談してみて下さい。我々は御遺体を整えてお待ちしますので」
「そこまで甘えてしまっては・・・」
「お気になさらずに、困った時はお互い様ですから」

そう言うと、男の人は部下?達の方へ向かっていった・・・だめだ、全然頭が働かない。
お父さんが死んじゃったのに、涙も出ない・・・どうしよう?どうしよう?

「・・・ちゃん。リっちゃん?」
「えっ?ヨッちゃん?」
「大丈夫?・・・じゃないよね・・・おじさん、死んじゃったんだもん」
「あ・・・どうしよう?ヨッちゃん?わたし?どうしたらいい?」

~~~~~

「あー、アベル、あとは任せていいか?俺、こういうのダメだわ」
「はっ、お任せ下さいっ!」

うん、あたしも人助けとかね?無理だからね?
なんて言ったらいいのかわかんないし。
っていうか挙式当日に盗賊に襲われて、目の前で父親殺されちゃった花嫁にかける言葉とか絶対無いからっ!

あっ、さすがアベル、いきなり仕切りだしたわ!
うぁー、花嫁さんガン泣き・・・うんうん、泣かせてあげたほうがいいよ。

「ねぇ、なんで盗賊しまってんの?」
「いや、俺達逃亡犯じゃん?持っておいたらなんか使い道ありそうじゃん?」
「・・・うん、やっぱあたしらには人助けとか向いてないわ。アベルに丸投げして正解ね」

それにしてもI.B.の中ってどうなってんのかしら?

「ねぇ、考えてみたらそん中に役人の死体も入ってんのよね?あたしの服と死体が一緒にしまってあるってどうなの?っていうか死体とか持ち歩いてキモくない?」
「あー、その発想は無かった。そうか、この世界には異次元とかの概念は一般的じゃないもんなー」

「何よ!その異次元って!」
「あー、ほら、俺の前世ってこことは違う世界じゃん?人がいる世界や、だーれも居ない世界、実はむちゃくちゃいっぱいあるんだよ。んで、俺のI.B.は、俺専用の時間が止まった、だーれも居ないだだっ広い世界と繋がって、そこに荷物を放り込む感じ。だから確かに死体も服も食料も全部その世界に置いてあるけど、食料がここなら死体は王都くらい遠くに置いてある。だからキモくない」
「んー、よくわかんないけど服が死体臭くならないならいいわっ!」

「主殿!あの者たちを近くの村まで送ってやりたいのだが、良いだろうか?」
「あー、うん。それがいいね。引き続き任せたぞ?アベル?」
「はっ!お任せ下さいっ!」

「ねぇ、アベルって、人助けするときめちゃくちゃ活き活きしてるわね?」
「なぁ?ほんっと、俺も出会った時はあのノリでグイグイ引きずり込まれた」
「で、ズボンも脱がされちゃったんだ?」
「・・・うん。今思い出すとこっ恥ずかしい・・・俺、めっちゃ狼狽えてた気がする・・・」
「ウンウン、カイン君はちょー可愛かったかな~?ちなみ、ズボン脱がせたのはエマお姉ちゃんでした~っ!」
「エマ師匠っ!そこんとこ詳しく聞きたいわっ!」
「いやっ、お前らっ!状況状況っ!自重自重っ!」
「あっ・・・そうね、今度ね?」

移動の準備が出来たみたい。
村人の荷車に御遺体を積んで、あたしらの荷馬車にみんなを乗せた。
うん、外歩いてた方が気まずくなくていい。

ぽっく ぽっく ぽっく ぽっく

「あんのぅー、皆さんのお名前をば教えでもらえねべが?命の恩人の名前ば知らんのも恥ずかしっけしゃ?」

くっ、逃げ切れなかった。

「あ、あたしはシリア、こいつの妻よ!よろしくね?」
「愛人のラティアと申します」
「せっ、性奴隷のユリアですっ!」

ざわざわっ ざわざわっ

・・・ユリア・・・なんで『性』って付けたし?

「お兄ちゃんの愛人の娘のアリスですっ!」

・・・しーん(重い空気

アリスちゃん・・・それじゃあ認知されてない可哀そうな子だからっ!

「隊を預かるアベルだ。勿論あるじ殿のご寵愛を頂いているっ!」
「ライザだ!おれっちも主様のごちょー愛してる?」
「エマよ。主様を寵愛してるかな?」
「リシェルで~す。主様が出したのを無理やり飲ますんですぅ~」
「スージーっす。あーしもお手つきっす~」
「ミランです。お手つきです・・・おもにお風呂当番です・・・」

うぁー、村人が汚物を見るような眼差しに・・・。

「あー、うん。諸君の言いたい事はわかる。言い訳はしない。節操の無いあるじのカイン・ロックハウスだ・・・・・・・・・ごめんなさい・・・勘弁してください」
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