I.B.(そこそこリアルな冒険者の性春事情!)

リカトラン

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2nd season 第一章

107 福利厚生

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聖都へ戻った俺は、早速ヤザンに無茶振りを吹っかけた。

あのとき、ホルジス様の神託を聞いていない全ての地方神官を聖都に呼び戻し、代わりにを伝えるに足る理解力を持ったものを配置せよとの勅命だ。
交替の神官が現地で魔法陣を設置すれば、転移のための神力蓄積が開始される。

だが、神殿は何も国内だけではない。
国内とほぼ同数が世界中に点在している。
その人員の一斉交替など前代未聞、命じたとき、ヤザンが少し引きつっていたのが面白かった。

ついでに『カイナルドが国外持ち出し禁止の専売品となり、唯一例外として、エルダーサで手に入る』という噂もバラ撒かせることにした。

「じゃ、よろしくね。俺は風呂作るから」
「風呂・・・ですか?」
「うん、風呂」
「・・・差し支えなければ、理由を伺っても?」
「ヤザンは風呂入ったこと有る?」
「いえ、恥ずかしながら・・・ここの浴場は教皇様専用となっておりますゆえ」
「じゃ、教えなーい。出来たら入るといい、そうすればわかる」
「・・・はぁ・・・」

そう、それはビキニ王国へと至る布石っ!・・・じゃないんだな、今回ばかりは。
交替の神官が現地に着けば、状況が飲み込めてない跳ねっ返りどもがこぞってここに戻ってくる。
その前に、ここの神官たちだけでも少しは懐柔しておきたい。
ついでに一般開放もすれば、ホッコリして帰りに感謝の祈りも捧げちゃうだろうって寸法だ。
うん、もちろんビキニも貸し出すけど。

ま、打算抜きでも公衆衛生は重要課題。
病気で死にそうなやつが神に感謝とか無理だしな。

「と、いうわけで、ナルドさん、リシェル、張り切ってどーぞっ!」
「「・・・・・」」

風呂炊きと水張りは冒険者ギルドに依頼を出すことにしよう。
ユリアとミラン任せにしたら何処にも行けなくなるからね。

価格はエルダーサと同じ銅貨一枚二千円、但し、神理教団所属の者は無料。
勿論無料開放日もやる。

「おれっちも!おれっちも手伝っていいか!?」

うむ、この世界最大のウォータースライダーも設置される模様。

~~~~~

「よーし、じゃ、次は食堂行くよ~・・・食堂ってどこだ?」
「げ、猊下っ!よっ、よろしければワタクシが案内させていただきますっ!」

名もなき神官さんがプルプルしながら申し出てくれた。

食堂は、ちょー普通の食堂だった。
普通と違うのは、料理してるのがおばちゃんじゃなく見習い神官ってだけ。

「教皇や上長の食事もここで?」
「いえっ、猊下には専用の料理人と厨房がございます。教務長様はお見かけしますが、他の皆様は外に行かれることが多いのかと」
「ふむ・・・その料理人さん、呼んでもらえる?」
「も、申し訳ございませんっ!ユザール前教皇様がお連れに・・・」

驚くかもしれないが、前教皇は殺していない。
だってね?画策したのはヤザンで、デブは推定無罪。
デブだからってだけで殺すのはマズイでしょ?
だから確定している私財の没収もしてないし、神殿から籍を抜いて放逐しただけ。
隠し財産で悠々自適な老後を送ることだろう。

「そう。次は雇わなくていいから。とりあえず、一人前を貰ってきてくれる?」
「はっ!只今!」

クズ野菜のスープに黒パンが一つ、そしてチーズが一欠片かけら
うん、聖職者の食事としては充分・・・っていうか銀の剣亭もこんな感じだったな。
スープをすくって口に運ぶ。
・・・こっ、これはっ!

「まどぅい・・・」
「カイン様?」
「ラティア、意地悪じゃないんだ、必要なことだから、一口飲んでみてくれ」

匙を受け取ったラティアが口に運ぶ。

「ケフッ ケフッ ・・・ 確かに、これはよくありませんね?」
「よしっ、料理長を呼んでもらえるか?」
「お、おりませんっ!」
「?」
「その、見習い神官の当番制なもので・・・料理長的な役職はございませんで・・・食材管理の上級神官様であればお部屋にいらっしゃると思うのですが・・・こちらにはお見えになりませんので・・・」

「そ、そうか。では俺達が厨房へ行こう」

「げ、猊下!」
「「「「「ははぁーっ」」」」」

厨房に居たイモっぽい見習いの若者たちが跪く。

「お前たちの努力は認めよう。だがっまずいっ!聖職者たるもの、贅を貪るのはよろしくない、だがっ、これは食材への、命への冒涜だっ!」
「もっ、申し訳ございませんっ!・・・その、食材は用意されているのですが、いかんせん、知識も調味料も無く・・・」

「うん、諸君を責める気は無い。ラティア、神殿料理管理官に任命する。アリスはその補佐だ」
「「はいっ!」」
「今も言ったが、贅沢にする必要は無い。粗食でも、精一杯旨いものにしてやって欲しい。そして・・・うん、そうだな、月に三回『5』のつく日は感謝の日とする。その日は誰もが食に感謝を持てるような、少し贅沢なものを出してくれ。肉がいいな?」

「げ、猊下?良いのですか?」
「うん、肉はダメとかホルジス様言ってなかったし。そもそも俺達、肉食ってるし。普段の食事にも少しくらい入れて構わん」

ここが純粋な宗教施設であれば、布施浄財で賄われる食事は、精神修養の為にも徹底した粗食を追求するのもありだろう、だが、聖教国においては神殿職員=国家公務員、駆け出し冒険者と同じくらいの生活水準は保証すべきだ。

何より『飯うまっ!神様、ありがとー!』というのは一番簡単な教化だ。

「いいか?飯が旨ければ、神に感謝したくなるだろう?その味を感じることが出来る事が、どれほど神々の恩恵を賜ってのことか。食事当番というのは雑用ではない、同僚を真に神にお仕えさせるための、重要な教導係なんだ。わかるな?」

(((((コクコク)))))

「ラティア達の地位は俺に次ぐものだ。しっかり学べ?」
「「「「「はっ!身命にかけて!」」」」」

うん、みんな身命にかけるの好きだよね・・・。

「主殿はいつもこのような事を考えているのか?」
「ん?どれの話?」
「いや、実に見事な説法だった」
「そうか?言いながら考えただけだぞ?」

シリアとナルドさんにスージーの3人はカイナルド班へ。
ラティアとアリスの2人は食堂改善班へ。
ラティアとナルドさんにライザの3人がスパ建設班。
そして俺とナルドさんの2人がミシンの再現班。

3+2+3+2で、12人中10人の割り振りが終わり、残るは二人・・・アベル、ユリア、エマ、ミラン・・・おかしい四人いるな?
さすが俺!無意識のうちに予備人員を確保していたか!?

「あー、ちょっと問題発生。ナルドさんが足りない」

屋上のスパ建設現場に向かう、案の定、作りかけのカイナルド片手にボイラーを作るナルドさんが居た。

「あー、ちょいストップー」
「なによ?いちいち止めてたら予定本数に届かないわっ!」
「うん、その件だ。どう考えてもナルドさんが足りないので、買いに行こうと思います」
「何を?」
「影武者?」

訝しげな、名もなき神官さんに連れられ、俺達は奴隷商の元へ向かった。
立場的に、本来ならば呼びつけるべきらしいが、時間が惜しい。

「はぁ・・・」
「何、あんた、どったの?」
「いやぁ、気がすすまないなぁ~と思って」
「何よ?今更奴隷買うのは良心が痛むっての?」
「あー、まぁ。似たような感じだけどちょっと違う」
「言いなさいよ?」
「うん。ユリアみたいな美女を買いに行くならまだしも、モジャモジャのおっさん買い増しに行くとか、気が滅入らない?」
「カインっ!てっめっ!喧嘩売ってんのかっ!」

「いやいや、考えてみてよ?今から行く奴隷商のとこで、ピチピチの娘さんとモジャモジャのおっさんが居たとしよう。ナルドさん、どっち連れて帰りたい?」
「そりゃおめぇ、娘さんに決まってんだろ?」
「でしょ?なのに俺達、モジャモジャ持って帰んの決まってんだよ?不幸でしょ?マジで?」
「おっ、あー・・・うん、ちげぇねぇな?」

「おっちゃん、騙されてっから。思いっきりコイツに騙されてっから!」

ナルドさんの生き別れた兄弟が、偶然囚われているとかいうイベントも無く、金属魔法持ちのドワーフを三人、サクサク買ってみた。
安かったのか高かったのかはわからんが、ユリア1人分で750人は買える。

「じゃ、スパは一旦リシェル任せにして、ナルドさんは三人をカイナルドに仕込んじゃって下さい」
「おう・・・秘密さえ守らせりゃ、酒飲ましてもいいだろ?」
「いいですが、シリアにシバかれない程度におねがいしますよ?」
「オメェラ聞いたな?ちゃんと働きゃ酒も飲める。この職場は当たりだかんよ。しっかり頼むぜ?」

こうして俺達の神殿生活一日目は過ぎていった。
そういえば、食堂行ったら、アリスが『アリス様』になって、部下も出来てた。
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