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2nd season 第二章
131 戦略"神"兵器
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大国に数えられる聖教国、その君主などと言っても実際は退屈なものだ。
まぁ、退屈なくらいがちょうどいい。
俺が必死になるって事は、もれなく大量の死人が出るって事だ。
おっとお嬢さん、俺には惚れちゃなんねぇ。
こう見えて俺は危険な男さ、迂闊に触ると火傷するぜ?
「猊下、暇なら少しは手伝って頂けませんかね?」
「だが断るっ!」
神殿カフェでパンチラウォッチングに勤しみつつ、苦虫君達を追い払うのが俺の日課だ。
名前に『虫』が付くだけあって、追い払っても追い払ってもわいてくる。
あれ程の殺戮劇を繰り広げたからには、もう少し畏怖的な何かがあっても良いんじゃないかな?
教育がなってない、責任者を呼べっ!・・・・・俺か。
「猊下」
「だが断・・・なんだ、フレッドか」
「特級郵便のお届けです」
「えっ?マジ?」
考えてみると、作ったはいいが送ってばかりで貰う事が無かった。
ちょっと嬉しい。
「特級とは豪奢だな。誰から?」
「ユサエル・アナザス・ペルシラ殿からだ」
「ぶふぉっ!」
「・・・親しき仲にも礼儀は必要だ。茶を吹きかけるのはよしたまえ」
「だっ!おまっ!それっ!」
「『王だろうと教皇だろうと関係ない。神殿郵便の前には等しく平等。只の依頼主と受取人であるべきだ』そうい言ったのはカインでは無いか?」
「・・・うん、言った・・・ような気がする」
フレッドの差し出すスキャナーに郵便カードを通し、受け取りのサインをする。
「ふむ。任務完了。さらばだ!」
靴音高くフレッドがカウンターの中へ・・・配達距離、15メートル。
特級郵便の最短記録だろう。
「どれどれ、世界の皇帝様は何を言ってよこしたのかね」
羊皮紙に蝋封。
なかなか格式高いお手紙だ。
これなら黒ヤギさんも食べれまい。
パリパリと封を外して羊皮紙を開くと、そこには一言。
『会談を希望す』
・・・羊さんに謝れっ!
まったく、サクラ満開の出会い系サイトじゃないんだから、金貨一枚で1メッセージとか!・・・儲かるな?
んんんっ?ちょっと待て?
ウチ、集荷サービスとかやってないぞ?
皇帝来たのかっ?
郵便局に自分で来たのかっ?
郵便カードは偽造できない。
そして本人がスキャナーに通さないと認証出来ない。
うん、来たんだ・・・マジかよ・・・帝都神殿の受付さん、焦っただろうな・・・。
さて、どうしたものか・・・二国間の首脳会議って言ったら、普通は何度も使者を行き来させ、お前が来い!いいやお前が来い!とかやりながら、結局国境の天幕で軍団並べてやるもんだが・・・皇帝は既に自ら出向いてる・・・ん?んんん?
コレっ!テストだっ!
猛ダッシュでナルドさんの工房に駆け込むと、パッと見で一番イケてる一本を引っ掴み、贈答用のこれまた一番高そうな箱に押し込んだ。
「ナルドさんっ!ちょっと帝国行ってくる!念の為、シリアたちを俺の部屋で待機させといて!俺が帰るまで、部屋から出ちゃ駄目っ!」
「あー?なんだそりゃ?」
「頼んだよっ!」
大勢ぞろぞろ引き連れてって、もしも向こうが少人数だったらみっともない。
ならばこっちは最少人数、俺一人で行くのが正解だ!
更にダッシュで自室に駆け込む。
うん、焦ってきたと思わるのも癪だな・・・深呼吸深呼吸。
よしっ!
ブゥンッ
帝都神殿の郵便局も聖都と同じ作りだ。
至って平静を装って、カウンターの内側からカフェを見渡す・・・までも無く・・・護衛、多すぎっ!
コレ、100人くらいは居んだろ?
物々しい甲冑軍団の真ん中で、そしらぬ顔で紅茶を啜る中年のイケメン。
確か資料では41歳。
パツキンロンゲで知的なオーラが半端ない!
「お待たせしてしまいましたか?」
「ほう・・・いや、想定よりも随分早かった」
「それは良かった。あっ、コレ、既にお持ちかとは思いますが、お招き頂いたのに手ぶらというのも何ですから」
豪奢な箱に入ったカイナルドを手渡す。
「遠慮なく頂戴しよう」
「さて陛下、本日はどのようなご用向きで?」
「・・・猊下と向き合うのは何やら調子が狂うな。担当直入に聞く、ミズーラ王都、どうやって消した?」
「それはさすがに、お教え出来ませんね」
「ほう・・・それを俺が許すと思うか?」
ガチャガチャ
甲冑さん達が一斉に腰の剣に手を添える。
うん、こういうのって練習とかするんだろうか?
よし、聞いてみよう。
「質問は公平に順番でいきましょう。剣を鳴らすタイミングって、やっぱり練習とかするものなんですか?凄く揃ってますよね?」
努めて平静を装っているが、まぁ当然結構緊張してる。
この世界で最強の暴力。
ペルシラ帝国皇帝の近衛達だ、この前のおっさん以上にヤバイのがゴロゴロ居るだろう。
「・・・練習はしない。こちらの番だ」
一層眼光が鋭くなった中年イケメンが俺を見据える。
「この帝都も消滅させられるのか?」
うん、ここは直球でしょう。
「させたいとは思いませんが、出来ます」
「・・・場所を変えよう。部屋は借りられるな?」
「ええ。と、言ってもこの人数で使える部屋となると・・・あー、受付さん、降臨の間に、椅子と机、用意してくれる?あと、お茶もね?では、参りましょう」
皇帝と甲冑軍団を引き連れスタスタと歩く・・・まずい。
「あー、皇帝陛下?つかぬことを伺っても?」
「ほぅ・・・聞こうか」
「降臨の間、どこにあるか知ってます?」
「・・・こちらだ」
うん、やっぱジモティーだよねー。
「いやぁ、さすが帝都、降臨の間も立派ですねぇ~」
「・・・当然だ。守護神様のおわす場所、帝国も寄付は惜しまん」
ほほぅ・・・それは良いことを聞いた。
「なるほどなるほど・・・その信仰心、教皇として報いねばなら無いでしょう・・・ホルジスさまぁぁぁあぁ!お手すきですかぁぁぁぁ!?」
ブゥンッ
「カインさん、随分と遠くにいますね・・・おや?コレは面白い方が」
「な”っ!」
ズザザザザ。
カエルが蛇には勝てないと本能で理解するように、人間もまた、一目で神を認識する。
中年イケメンと甲冑軍団が片膝をついて頭を垂れた。
「はいっ!こちらユサエル・アナザス・ペルシラ殿。職業は帝国の皇帝職に就かれておいでです。ペルシラ殿より『是非とも神理教の布教に、国を挙げて協力したい』との申し出がありまして、これはすぐにもホルジス様にご報告せねばと、急ぎお知らせした次第です!」
「なるほどなるほど・・・ぷっ・・・カインさんは相変わらず、面白い。ペルシラ殿、顔を上げて下さい。布教への尽力、嬉しく思います」
「はっ・・・光栄であります」
「いやぁ、素晴らしいですよね?よもや帝国の皇帝陛下がこれほど信心深いとは・・・人類の未来は明るいっ!」
タイミングよく机とお茶が来たので、ホルジス様が笑いを堪えながら去っていくまで、二人と一柱でしばしご歓談あそばされてみた。
「をい・・・」
うんうん、信仰とはコレ、素晴らしい。
ついこの間、軍を差し向けてきた相手ともこの通り、あっという間にお茶を酌み交わす仲に。
「をいっ!貴様っ!」
「陛下・・・いくら信仰を通して友情を感じられたからと言って、人前でその呼び方はどうかと」
「くっ・・・猊下・・・どういうつもりだ?」
「あれ、私何か間違いましたか?信心深い皇帝殿が神理教の教皇と会談を希望されるからには、間違いなく布教のお話だと思ったのですが?」
「・・・ホルジス様と謁見・・・どころか茶に同席する機会を賜った事には礼を言う、だが・・・僅か数刻で、我が夢、我が覇道を閉ざすとは・・・許されるならこの場でその頸、叩き落としている」
例えばこの場で俺が殺されたとして、はたしてホルジス様は報復までしてくれるだろうか?
まぁ、俺は無いと思ってる。
だが、相手はそうだと確信できない。
絶対に押さないだろうと思っていても、核のボタンはそこにある事に意味がある。
だから『戦略』核兵器なんだ。
「どうでしょう陛下?聖教国の・・・いえ、私の首は取るわけにいかないと、お互い理解したところで、もう少し踏み込んだ話など進めてみませんか?」
そう言いながら一枚の地図を机に広げる。
「ふんっ、今更そんなものに何の意味がある?その地図の真ん中はもはや埋められぬ!」
「おや?私はそのような意向、ホルジス様より伺ったことがございませんが?」
・・・・・
「ほぅ・・・全員下がれっ!この部屋には誰も入れるなっ!」
「へっ、陛下っ!なりませんっ!」
「余に二度も言わすなっ!」
甲冑軍団が追い出される。
さて、どうしたものか?
実のところホルジス様を呼んだのも、地図を出したのもただの勢い、俺の寝室で待機する医療チーム以外はノープランだ。
だが俺も前世ではプログラマー。
話しながら現在進行系でそれらしい体裁を整える事に関しては一家言あるっ!
「さて、聞かせてもらおうか?」
「俺が帝国の世界統一を阻もうとしていると考えるのは大きな間違い。むしろ神理教は、陛下の野望を大いに支援している・・・神理教無くして世界支配など成り立たちはしない」
「ほぅ・・・どういう意味だ?」
「そもそも『世界』があるから統一の絵が描ける。その『世界』が無くなったら、困るのでは?」
「何が言いたい?勿体ぶるな!」
「陛下ほどの方でも、実際にアレを目にしていなければ想像が付きませんか・・・何故今?五百年の沈黙を破ってまでホルジス様が降臨されたと?もちろん俺も全てを教えられてはいない。だが俺は見た。見せられた。アレは・・・あんなモノを相手にするなど、人類には無理だ・・・信仰は、祈りは神力となって神界に送られる。それが足りてないんですよ!支配云々じゃないっ!世界が続くか無くなるかって話をしてんですよっ!俺はっ!・・・ぜぇぜぇぜぇぜぇ・・・失礼、取り乱しました」
「・・・アレとはなんだ?」
「わかりません。我々の認識を超えるものです・・・神界は、そこまで人間に教えようとはしていない。俺は・・・国家にも世界統一にも微塵も興味なんて無い。ただし、惚れた女達と、年老いて寿命を終えるまで、世界には続いて貰わなきゃ困るんですよ。聖教国がほしければ、どうぞどうぞ、むしろ無駄な仕事が減って助かる。だが、神理教の、布教の邪魔をするものは、人だろうと国家だろうと、ミズーラと同じ目に合わせます」
「貴様と俺は、そもそも戦場が違うわけか・・・」
「いいえ陛下。あなたの戦場に俺は興味がない。だがあなたは、俺が負ければ共倒れなんです、だからあなたも、俺の戦場は無視できない」
「・・・なぜ、お前だったんだ?」
「わかりません。ヒントは幾つか見つけましたが、繋がらない」
「・・・日を改めて仕切り直そう。そうだな・・・3日後でどうだ?」
「構いませんよ。なんでしたら、次は俺が伺いましょうか?」
「・・・そうだな。そうしてもらおう」
これから長い年月を争う事になる予定だった帝国と、非公式ながら不可侵のコンセンサスが得られた。
俺ってば偉くね?
とか思いながら自室に転移したら、待機してた皆に死ぬほど怒られた。
うん、心配かけてスマン。
まぁ、退屈なくらいがちょうどいい。
俺が必死になるって事は、もれなく大量の死人が出るって事だ。
おっとお嬢さん、俺には惚れちゃなんねぇ。
こう見えて俺は危険な男さ、迂闊に触ると火傷するぜ?
「猊下、暇なら少しは手伝って頂けませんかね?」
「だが断るっ!」
神殿カフェでパンチラウォッチングに勤しみつつ、苦虫君達を追い払うのが俺の日課だ。
名前に『虫』が付くだけあって、追い払っても追い払ってもわいてくる。
あれ程の殺戮劇を繰り広げたからには、もう少し畏怖的な何かがあっても良いんじゃないかな?
教育がなってない、責任者を呼べっ!・・・・・俺か。
「猊下」
「だが断・・・なんだ、フレッドか」
「特級郵便のお届けです」
「えっ?マジ?」
考えてみると、作ったはいいが送ってばかりで貰う事が無かった。
ちょっと嬉しい。
「特級とは豪奢だな。誰から?」
「ユサエル・アナザス・ペルシラ殿からだ」
「ぶふぉっ!」
「・・・親しき仲にも礼儀は必要だ。茶を吹きかけるのはよしたまえ」
「だっ!おまっ!それっ!」
「『王だろうと教皇だろうと関係ない。神殿郵便の前には等しく平等。只の依頼主と受取人であるべきだ』そうい言ったのはカインでは無いか?」
「・・・うん、言った・・・ような気がする」
フレッドの差し出すスキャナーに郵便カードを通し、受け取りのサインをする。
「ふむ。任務完了。さらばだ!」
靴音高くフレッドがカウンターの中へ・・・配達距離、15メートル。
特級郵便の最短記録だろう。
「どれどれ、世界の皇帝様は何を言ってよこしたのかね」
羊皮紙に蝋封。
なかなか格式高いお手紙だ。
これなら黒ヤギさんも食べれまい。
パリパリと封を外して羊皮紙を開くと、そこには一言。
『会談を希望す』
・・・羊さんに謝れっ!
まったく、サクラ満開の出会い系サイトじゃないんだから、金貨一枚で1メッセージとか!・・・儲かるな?
んんんっ?ちょっと待て?
ウチ、集荷サービスとかやってないぞ?
皇帝来たのかっ?
郵便局に自分で来たのかっ?
郵便カードは偽造できない。
そして本人がスキャナーに通さないと認証出来ない。
うん、来たんだ・・・マジかよ・・・帝都神殿の受付さん、焦っただろうな・・・。
さて、どうしたものか・・・二国間の首脳会議って言ったら、普通は何度も使者を行き来させ、お前が来い!いいやお前が来い!とかやりながら、結局国境の天幕で軍団並べてやるもんだが・・・皇帝は既に自ら出向いてる・・・ん?んんん?
コレっ!テストだっ!
猛ダッシュでナルドさんの工房に駆け込むと、パッと見で一番イケてる一本を引っ掴み、贈答用のこれまた一番高そうな箱に押し込んだ。
「ナルドさんっ!ちょっと帝国行ってくる!念の為、シリアたちを俺の部屋で待機させといて!俺が帰るまで、部屋から出ちゃ駄目っ!」
「あー?なんだそりゃ?」
「頼んだよっ!」
大勢ぞろぞろ引き連れてって、もしも向こうが少人数だったらみっともない。
ならばこっちは最少人数、俺一人で行くのが正解だ!
更にダッシュで自室に駆け込む。
うん、焦ってきたと思わるのも癪だな・・・深呼吸深呼吸。
よしっ!
ブゥンッ
帝都神殿の郵便局も聖都と同じ作りだ。
至って平静を装って、カウンターの内側からカフェを見渡す・・・までも無く・・・護衛、多すぎっ!
コレ、100人くらいは居んだろ?
物々しい甲冑軍団の真ん中で、そしらぬ顔で紅茶を啜る中年のイケメン。
確か資料では41歳。
パツキンロンゲで知的なオーラが半端ない!
「お待たせしてしまいましたか?」
「ほう・・・いや、想定よりも随分早かった」
「それは良かった。あっ、コレ、既にお持ちかとは思いますが、お招き頂いたのに手ぶらというのも何ですから」
豪奢な箱に入ったカイナルドを手渡す。
「遠慮なく頂戴しよう」
「さて陛下、本日はどのようなご用向きで?」
「・・・猊下と向き合うのは何やら調子が狂うな。担当直入に聞く、ミズーラ王都、どうやって消した?」
「それはさすがに、お教え出来ませんね」
「ほう・・・それを俺が許すと思うか?」
ガチャガチャ
甲冑さん達が一斉に腰の剣に手を添える。
うん、こういうのって練習とかするんだろうか?
よし、聞いてみよう。
「質問は公平に順番でいきましょう。剣を鳴らすタイミングって、やっぱり練習とかするものなんですか?凄く揃ってますよね?」
努めて平静を装っているが、まぁ当然結構緊張してる。
この世界で最強の暴力。
ペルシラ帝国皇帝の近衛達だ、この前のおっさん以上にヤバイのがゴロゴロ居るだろう。
「・・・練習はしない。こちらの番だ」
一層眼光が鋭くなった中年イケメンが俺を見据える。
「この帝都も消滅させられるのか?」
うん、ここは直球でしょう。
「させたいとは思いませんが、出来ます」
「・・・場所を変えよう。部屋は借りられるな?」
「ええ。と、言ってもこの人数で使える部屋となると・・・あー、受付さん、降臨の間に、椅子と机、用意してくれる?あと、お茶もね?では、参りましょう」
皇帝と甲冑軍団を引き連れスタスタと歩く・・・まずい。
「あー、皇帝陛下?つかぬことを伺っても?」
「ほぅ・・・聞こうか」
「降臨の間、どこにあるか知ってます?」
「・・・こちらだ」
うん、やっぱジモティーだよねー。
「いやぁ、さすが帝都、降臨の間も立派ですねぇ~」
「・・・当然だ。守護神様のおわす場所、帝国も寄付は惜しまん」
ほほぅ・・・それは良いことを聞いた。
「なるほどなるほど・・・その信仰心、教皇として報いねばなら無いでしょう・・・ホルジスさまぁぁぁあぁ!お手すきですかぁぁぁぁ!?」
ブゥンッ
「カインさん、随分と遠くにいますね・・・おや?コレは面白い方が」
「な”っ!」
ズザザザザ。
カエルが蛇には勝てないと本能で理解するように、人間もまた、一目で神を認識する。
中年イケメンと甲冑軍団が片膝をついて頭を垂れた。
「はいっ!こちらユサエル・アナザス・ペルシラ殿。職業は帝国の皇帝職に就かれておいでです。ペルシラ殿より『是非とも神理教の布教に、国を挙げて協力したい』との申し出がありまして、これはすぐにもホルジス様にご報告せねばと、急ぎお知らせした次第です!」
「なるほどなるほど・・・ぷっ・・・カインさんは相変わらず、面白い。ペルシラ殿、顔を上げて下さい。布教への尽力、嬉しく思います」
「はっ・・・光栄であります」
「いやぁ、素晴らしいですよね?よもや帝国の皇帝陛下がこれほど信心深いとは・・・人類の未来は明るいっ!」
タイミングよく机とお茶が来たので、ホルジス様が笑いを堪えながら去っていくまで、二人と一柱でしばしご歓談あそばされてみた。
「をい・・・」
うんうん、信仰とはコレ、素晴らしい。
ついこの間、軍を差し向けてきた相手ともこの通り、あっという間にお茶を酌み交わす仲に。
「をいっ!貴様っ!」
「陛下・・・いくら信仰を通して友情を感じられたからと言って、人前でその呼び方はどうかと」
「くっ・・・猊下・・・どういうつもりだ?」
「あれ、私何か間違いましたか?信心深い皇帝殿が神理教の教皇と会談を希望されるからには、間違いなく布教のお話だと思ったのですが?」
「・・・ホルジス様と謁見・・・どころか茶に同席する機会を賜った事には礼を言う、だが・・・僅か数刻で、我が夢、我が覇道を閉ざすとは・・・許されるならこの場でその頸、叩き落としている」
例えばこの場で俺が殺されたとして、はたしてホルジス様は報復までしてくれるだろうか?
まぁ、俺は無いと思ってる。
だが、相手はそうだと確信できない。
絶対に押さないだろうと思っていても、核のボタンはそこにある事に意味がある。
だから『戦略』核兵器なんだ。
「どうでしょう陛下?聖教国の・・・いえ、私の首は取るわけにいかないと、お互い理解したところで、もう少し踏み込んだ話など進めてみませんか?」
そう言いながら一枚の地図を机に広げる。
「ふんっ、今更そんなものに何の意味がある?その地図の真ん中はもはや埋められぬ!」
「おや?私はそのような意向、ホルジス様より伺ったことがございませんが?」
・・・・・
「ほぅ・・・全員下がれっ!この部屋には誰も入れるなっ!」
「へっ、陛下っ!なりませんっ!」
「余に二度も言わすなっ!」
甲冑軍団が追い出される。
さて、どうしたものか?
実のところホルジス様を呼んだのも、地図を出したのもただの勢い、俺の寝室で待機する医療チーム以外はノープランだ。
だが俺も前世ではプログラマー。
話しながら現在進行系でそれらしい体裁を整える事に関しては一家言あるっ!
「さて、聞かせてもらおうか?」
「俺が帝国の世界統一を阻もうとしていると考えるのは大きな間違い。むしろ神理教は、陛下の野望を大いに支援している・・・神理教無くして世界支配など成り立たちはしない」
「ほぅ・・・どういう意味だ?」
「そもそも『世界』があるから統一の絵が描ける。その『世界』が無くなったら、困るのでは?」
「何が言いたい?勿体ぶるな!」
「陛下ほどの方でも、実際にアレを目にしていなければ想像が付きませんか・・・何故今?五百年の沈黙を破ってまでホルジス様が降臨されたと?もちろん俺も全てを教えられてはいない。だが俺は見た。見せられた。アレは・・・あんなモノを相手にするなど、人類には無理だ・・・信仰は、祈りは神力となって神界に送られる。それが足りてないんですよ!支配云々じゃないっ!世界が続くか無くなるかって話をしてんですよっ!俺はっ!・・・ぜぇぜぇぜぇぜぇ・・・失礼、取り乱しました」
「・・・アレとはなんだ?」
「わかりません。我々の認識を超えるものです・・・神界は、そこまで人間に教えようとはしていない。俺は・・・国家にも世界統一にも微塵も興味なんて無い。ただし、惚れた女達と、年老いて寿命を終えるまで、世界には続いて貰わなきゃ困るんですよ。聖教国がほしければ、どうぞどうぞ、むしろ無駄な仕事が減って助かる。だが、神理教の、布教の邪魔をするものは、人だろうと国家だろうと、ミズーラと同じ目に合わせます」
「貴様と俺は、そもそも戦場が違うわけか・・・」
「いいえ陛下。あなたの戦場に俺は興味がない。だがあなたは、俺が負ければ共倒れなんです、だからあなたも、俺の戦場は無視できない」
「・・・なぜ、お前だったんだ?」
「わかりません。ヒントは幾つか見つけましたが、繋がらない」
「・・・日を改めて仕切り直そう。そうだな・・・3日後でどうだ?」
「構いませんよ。なんでしたら、次は俺が伺いましょうか?」
「・・・そうだな。そうしてもらおう」
これから長い年月を争う事になる予定だった帝国と、非公式ながら不可侵のコンセンサスが得られた。
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