I.B.(そこそこリアルな冒険者の性春事情!)

リカトラン

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2nd season 第二章

129 善と悪と一人芝居

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王国歴335年11月25日、俺はバルコニーから終戦を宣言した。
と、言っても、あまり語ることが無い。

敵軍を殲滅したのは一昨日の朝で、聖都に居ながらコレを知らない奴はいないだろう。
そしてミズーラ王都は消滅したと言ってはみたものの、テレビどころか写真も無いこの世界、まぁ皆、半信半疑だろう。
対スタンピード支援の話を仰々しく持ち上げ、なんとか場を沸かせる事に成功、そそくさと退場した。

「猊下、ご裁量頂きたき件がございます」
「だが断るっ!」
「・・・」

うん、にわかに増えた723の囚人の話だろう。
ムシャクシャしてやった。
今も責任取るつもりは無いっ!

事の善悪とは絶対的なもんじゃない。
立ち位置によって善は悪となり、その逆もまた然り。

は地球から見ればコロニーとか落っことすテロリストだが、辺境の民から見れば、植民地政策の圧政にNOと言った革命の英雄だ。

そして俺はテロリストで誘拐犯だ!

「猊下・・・せめて方針だけでも決めていただかねば・・・」

そもそも723名の中では、戦争が起きてない。
ミズーラ王都で家族団らんを楽しんで居たら、突然拘束され、神殿の地下牢に放り込まれた。
しかも犯人一味は『一方的な宣戦布告を受け、報復に王都を消滅させた』などと意味不明な事を口走っており・・・うん、理解させんの無理じゃね?

が、無視するわけにもいかないか・・・『戦いの始まりは怨恨に根ざしている』って、有名な人が言ってたし。
可愛い嫁が逆恨みされたら大変だ。

地下へと続く階段を降り、巨大な牢獄棟へ踏み入れる・・・うん、突貫でリシェルに作らせた。

「ここから出してくれぇぇぇ!」
「俺は無実だ!無実なんだぁ!」
「お願いっ!家に帰してっ!私が何をしたって言うの!?」

うむ。至極まっとうなご意見が飛び交っている。

「あー、聞け。ミズーラの民よ。俺は聖教国国主、神理教教皇のロックハウスだ」

きょ、教皇様?
ざわざわ ざわざわ

「まず最初の質問だ。ミズーラが聖教国に侵攻したのは知っているか?」

しーん

「あー、知らないっぽいな?・・・じゃ次だ、ミズーラ軍が侵攻し、撃退され、王都は滅びた。この話、は居るか?」

しーん

「うん・・・それじゃあ最後の質問だ。ミズーラは聖都を急襲し、撃退され、王都は滅びた。『王都を滅ぼす前に一人でも多く助けたい。捕虜待遇でも構わない、命だけは助けてあげて』と、俺の妻たちが懇願するので、適当に目についたお前たちを、助けた。信じられなくても構わん。それを前提として、たとえ廃墟になっていても、ミズーラ王都に戻りたいものは居るか?よく考えろ?一度戻ったものは二度と受け入れん」

帰らせてくれるのかっ?
戻りたいっ!私は戻りたいわっ!
頼むっ!帰らせてくれっ!

うん、俺は悪くない。
ちゃんと言ったし。

「よかろう。帰りたい者は解放しよう。だがその後の事は、もはや神殿は関知しない。それでも帰りたい者のみついて来い・・・残るものは、またあとで考えよう」

541名が解放を望んだ。

うん、まぁ統計どおりだ。
集団の意志を決めるのは全体の2割。
肯定派の二割と、否定派の二割。
声のデカイ方に六割が従う。

ついてこようとするシリア達を神殿に残し、廃墟と化したミズーラに翔ぶ。
さすがに見せたくない。

「じゃぁ、あとは好きにしな。もう神殿は関与しない」

呆然とする541名をその場に残し、一人、廃墟の都を駆ける。
最初から一度は来ようと思っていた。
破壊規模の確認だ。

小規模なクレーターがそこかしこに広がっている。
隕石程の位置エネルギーは持っていなかったから、爆発はしなかったようだ。
この惨状を創り出したのは俺だ。

アイツラにしてみれば、自分は一方的な被害者、そして俺が悪の加害者だろう。
当然の事だ。
だが俺がそれに『イラッっと来る』のも当然だろう。
あの時の俺の、俺達の善意は・・・救われた当事者によって否定される。

放って置くつもりだったが、こうなれば話は別。
イラッっとさせられた分は、金銭で補填してもらう。
戦争捕虜を541名も解放すれば、相応の身代金が発生する。
そういえば、戦勝国は賠償金も貰えたはずだ。

街の中心部、おそらくは王城であったであろう、ひときわ酷い瓦礫の山を片っ端から収納する。
選別などしない。
ここ一帯を更地にしてやる。

超絶技巧防御術の訓練成果を無駄に発揮し、小一時間ほどで戦費の精算は完了した。
一瞬、このまま『携帯転移門』で翔んでやろうかと思ったが、後味悪そうな気がするのでトボトボと神殿へと向かう。
見渡す限りの瓦礫の山、本当に異様な光景だ。
が散乱しているのに、それをとしてしかとらえられない。

数百年、数千年の後に、この地が遺跡として発掘されて、やれ隕石の落下だの、大地震の証拠だの、後世の学者を賑あわせるのだろうか?
今なら火事場泥棒し放題だが、なんとなくその気にはなれない。
俺に正当な権利があるのは、政府の所有物だけだ。

神殿に戻ると、ほとんどそのまま、解放捕虜達が残っていた。
嫌味のひとつくらいは言わせて貰おう。

「なんだ?いつまでもこんな所に居たら日が暮れるぞ?」

・・・・・

「教皇様、本当でした」
「そうだな。神理の神殿は嘘など言わない。では達者でな」

スタスタと魔法陣へ向かう。

「おっ、お待ち下さいっ!」
「我らはこのあとどうすれば良いのでしょう?」

ピタリ。

「望みは既に叶えた。神殿はもはや関与しないと言っただろ?お前たちの好きにすれば良い」

スタスタスタスタ。

「おっ、お待ち下さいっ!どうか、どうかもう一度聖都へお連れくださいっ!」

ピタリ。
うん、ちょっとわざとらしいな、俺。

「それは虫が良すぎるだろう?本来であればお前たちも、あの日この瓦礫の山に埋もれていた。一方的に宣戦布告を受け、敵国の真っ只中、妻たちは命がけでお前たちの命を救った。にも関わらず、その妻達をお前たちは加害者扱いしたんだ。証拠がなければ信用しないなど、そんなものは信仰じゃ無い。信仰を持たぬ者を、神殿が救う義理は無いだろう?」

「・・・・・お許し下さい・・・どうかっ!どうかお許し下さいっ!」
「教皇様っ!」
「教皇猊下っ!」

・・・・・

「あー・・・俺は国主だ。戦争を挑まれ・・・不意打ちだったがな?それを撃滅した。この国を滅ぼしたのは俺だ。死んだ敵兵の家族に恨まれても仕方がない。だが、妻たちは違う。その妻達に、お前たちは無礼を働いた。命の恩人にツバを吐いたんだ。その罪、どうあがなう?」

「・・・・・忠誠を!王妃様に忠誠を!」
「奥様方に、どうか奥様方のご恩に、報いる機会をお与えくださいっ!」

「あー・・・言葉だけならどうとでも言えるな・・・だが俺は宗教家だ。証拠など無くても信じるべきだ。お前たちを信じよう・・・だが、その言葉が嘘だった時は・・・二度目は無いぞ?あの日妻たちはお前を助けなかった。その結果がやってくる」

「「「「「ははっー!」」」」」

411名が、再び地下牢へ戻った。

「あー、そうだな。いずれにしても住む場所と仕事がいるだろう?係の者をよこすから、まずは希望を聞いてもらえ。住む場所が決まるまでは、ここで寝泊まりしろ。飯は・・・うん、その前に、ヤザン、全員に郵便カードを用意しろ。夕食までにだ。夕食からは食堂でとらせていい」

さて、大急ぎで593名の食い扶持を考えなければならない・・・ヤザンがな(ニヤリ。

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