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2nd season 第三章
145 シリア暗殺計画(8)
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北へ、ただひたすらに北へ。
先回りされるとは思えねぇ、だが、伏兵がいるかもしんねぇから、街道は通れねぇ。
紐で結わえた奥様を背負い、山を越え、森を抜け、草原をひた走る。
何時間経ったんだ?
あたりは真っ暗、追手の気配はねぇ・・・ユリアっち・・・。
「んっ・・・コフッ・・・コフッ」
「奥様っ!良かった!気がついたな!」
「ライザ・・・さん?・・・夢・・・じゃ、なかったのよ・・・ね?」
「あぁ・・・隊長が死んじまった。逃げる時間をかせぐ為に、ユリアっちも・・・」
「えっ!?ユリアが?どうして?」
「罠だった。千人以上の傭兵に囲まれて、神殿の転移門も破壊されちまって・・・ユリアっちにコレと奥様を託された」
奥様に隊長のネックレスを渡す。
隊長の一番の宝物。
飾りっ気の無い隊長が、ずっとずっと身につけて、何度も何度も革紐を換えて・・・。
「ちょっと整理させて」
「よし、そこの林で一休みするぜ」
奥様を木にもたれさせ、順を追って説明する。
言葉にして整理しちまうと・・・どんどん現実になってっちまう・・・。
「そう・・・でも、まだユリアは死んだと決まってないのね?」
「ああ・・・おれっちもそう信じてぇ・・・だが・・・あの数だ・・・主様とおれらは違う」
「うん・・・今は考えないようにしましょう?とにかく、ありがとう、一刻も早く帰るわよ?それで、ここはどのあたりかしら?」
「わかんねぇ・・・ずっと北に向かって走ってきた。100kmは走ったと思んだが・・・」
「方角があってれば・・・一番近い神殿まで200kmくらいよ・・・夜が明けたら、どこかの村で道を聞きましょう?あたしはまだ走れそうに無いから、わるいけど、お願いできる?」
連絡を取るだけなら、奥様を隠して、おれっちだけで走ったほうが速い。
でも、絶対にダメだ。
ユリアっちに託されたんだ。
何があっても奥様は自分の手で送り届ける。
「おうっ、それじゃいくぜ?」
「お願いね?」
~~~~~
時刻は少し遡り・・・。
「えっ!?シリア達が戻ってないの?」
「はいっ!様子を見に行こうにも、転移門のリストから消えてしまっていて・・・」
二日目の会議は紛糾した。
方針こそ定まったものの、具体案の検討に入ると現実味が増すのか、皆自国の利を確保しようと必死だ。
少し早めに切り上げ、疲労困憊の首脳たちを自国まで送り届けた。
そしてミズーラの鉱山神殿に戻ると、皆が駆け込んできた。
「えーと、その、目安箱の投書を確かめに、ホンジュラスに行ったんだよね?」
「はい・・・会議中の主様を煩わせるほどでは無くとも、放っておくわけにはいかないということに・・」
最初に投書を受け取ったラティア・・・珍しく落ち込んでいる。
「そうか・・・ホンジュラス・・・確かここからだと」
「4000kmくらいなっ・・・一番近いマドリナ神殿からでも320kmあるなっ」
「わかった・・・ヤザンっ!各国首脳に連絡を!明日からの会議は事態がハッキリするまで延期だ!」
「はっ!」
「暗部にも何か情報が無いか探らせろっ!スージーは文書室で調査。みんなは聖都神殿で待機。俺はマドリナに行く!」
「主様っ!わたしたちも!」
「ダメだっ!・・・すまんっ。マドリナから走るなら一人のほうが速い。行かせてくれ」
「・・・はい」
「他にも動きがあるかもしれない。皆絶対に一人にならないようにっ!」
「「「「「はいっ!」」」」」
頼む・・・無事で居てくれ・・・。
~~~~~
ライザが安全策を取らず、街道を探して北上していれば、南下するカインと出会えたかもしれない。
だが、安全策をとったライザを誰が責められるのか?
歯車とは、ひとつ狂い始めると、かくも脆く連鎖する・・・。
世界の半分のスタンピードを殲滅し続けた二年で、カインのレベルは既に79。
320kmの道のりを、休憩も挟まず六時間で走破しきった。
「・・・なんだよ・・・コレ・・・」
わずかに白み始めた東の空。
その静寂の中、無数の屍が散乱する平原。
未だ溶け切らぬ氷の岩が、ユリアの戦闘を物語る。
「頼む・・・頼むぞ・・・」
居ないはずだ、この中には居ないはずだ。
そう祈りながらも、薄闇の中で屍を探す。
歩みを進める中に、次第に闇が押し出され、朝焼けが全貌を浮き上がらせる。
溶けかけた氷の階段が幾つもそびえ立つ異様な光景。
どこからとも無く現れたカラスの群れが屍肉を貪り、その声がカインの神経を逆なでる。
聖教国の荘園であったはずの村は、何もかもが消し炭になっていた。
そしてカインは見つけてしまう・・・その消し炭の中に、燃え残った、一揃いの特別な衣服を・・・。
「はぁ はぁ はぁ はぁ」
心臓が早鐘を打つ。
その衣服には、あるべきところに頭部が無かった。
近くに転がる黒焦げの頭骨。
胸に抱きしめてみても、アベルなのか、ライザなのか、どちらの名を叫べばいいのか?
混乱する脳内をグチャグチャに思考が駆け巡る。
涙は溢れない。
ただ、奥歯がガチガチと鳴り続ける。
失われてしまった。
大切な、大切な人。
なのに・・・誰を失ったのかすらわからない。
「うぁぁぁあっぁぁぁあっぁあぁぁぁぁぁああああああぁぁぁぁぁああああああああああ」
朝もやの中。
カインの慟哭を受け止めるものは物言わぬ屍だけだった・・・。
~~~~~
「そう・・・あたしがターゲットだったのね?」
「多分そうだ。『亜人を、バケモノを殺した者には特別報酬』って叫んでやがった。人族至上主義の連中かもしんねぇ」
日が昇り、私達は街道に出た。
全力では走れないけど、自分の脚で走る方が気が紛れる。
アベルさんは・・・ユリアは・・・あたしに巻き込まれた・・・。
「ごめん・・・なんて言ったらいいのかわかんないわ。『あたしのせい』なんって言ったら、アベルさん、絶対怒るし」
「おれっちも、仲間に死なれるのは初めてだ。これまでは、運が良かったんだ・・・」
とにかく、アイツのとこに帰らなきゃ。
そして、ほんの僅かでも望みがある限り、ユリアを探し出さなきゃ。
例え死んでたとしても、絶対に見つける。
~~~~~
「このまま帰って、組織にヒンシュク買わないっすかね?」
「んー、しかたないっしょー?報酬でなかったら傭兵ははたらかないしぃ~、あたしらだけじゃ街道ふーさなんてできっこないしぃ~」
「そっすねー、組織組だけじゃ無理っすよねー」
スポンサーを失った傭兵達は、まるで日暮れに帰宅する子供たちのように、ブラブラとやる気なく散っていった。
そんなものだ。
「べつに怨みがあるわけじゃないしぃ~、逃げられちゃってもどうでもいいよねぇ~」
「いちおう、ボスのカタキっすよ?」
「んー、お互いさまっしょ?こっちは仕事だしぃ~?アッチは生きるか死ぬかだしぃ~?」
「まぁそっすねー、俺もなるべく死なないよーにするっす!」
かつての地球がそうであったように、この世界の命は未だ軽い。
法は存在していても、それは権力者の地位を維持するためのもので、弱者を守る類のものは少ない。
少しでも運が悪ければ、簡単に人は死ぬ。
巻き込まれた荘園の農民に至っては、彼らが消えたことに気づくものすら、まだ居なかった・・・。
先回りされるとは思えねぇ、だが、伏兵がいるかもしんねぇから、街道は通れねぇ。
紐で結わえた奥様を背負い、山を越え、森を抜け、草原をひた走る。
何時間経ったんだ?
あたりは真っ暗、追手の気配はねぇ・・・ユリアっち・・・。
「んっ・・・コフッ・・・コフッ」
「奥様っ!良かった!気がついたな!」
「ライザ・・・さん?・・・夢・・・じゃ、なかったのよ・・・ね?」
「あぁ・・・隊長が死んじまった。逃げる時間をかせぐ為に、ユリアっちも・・・」
「えっ!?ユリアが?どうして?」
「罠だった。千人以上の傭兵に囲まれて、神殿の転移門も破壊されちまって・・・ユリアっちにコレと奥様を託された」
奥様に隊長のネックレスを渡す。
隊長の一番の宝物。
飾りっ気の無い隊長が、ずっとずっと身につけて、何度も何度も革紐を換えて・・・。
「ちょっと整理させて」
「よし、そこの林で一休みするぜ」
奥様を木にもたれさせ、順を追って説明する。
言葉にして整理しちまうと・・・どんどん現実になってっちまう・・・。
「そう・・・でも、まだユリアは死んだと決まってないのね?」
「ああ・・・おれっちもそう信じてぇ・・・だが・・・あの数だ・・・主様とおれらは違う」
「うん・・・今は考えないようにしましょう?とにかく、ありがとう、一刻も早く帰るわよ?それで、ここはどのあたりかしら?」
「わかんねぇ・・・ずっと北に向かって走ってきた。100kmは走ったと思んだが・・・」
「方角があってれば・・・一番近い神殿まで200kmくらいよ・・・夜が明けたら、どこかの村で道を聞きましょう?あたしはまだ走れそうに無いから、わるいけど、お願いできる?」
連絡を取るだけなら、奥様を隠して、おれっちだけで走ったほうが速い。
でも、絶対にダメだ。
ユリアっちに託されたんだ。
何があっても奥様は自分の手で送り届ける。
「おうっ、それじゃいくぜ?」
「お願いね?」
~~~~~
時刻は少し遡り・・・。
「えっ!?シリア達が戻ってないの?」
「はいっ!様子を見に行こうにも、転移門のリストから消えてしまっていて・・・」
二日目の会議は紛糾した。
方針こそ定まったものの、具体案の検討に入ると現実味が増すのか、皆自国の利を確保しようと必死だ。
少し早めに切り上げ、疲労困憊の首脳たちを自国まで送り届けた。
そしてミズーラの鉱山神殿に戻ると、皆が駆け込んできた。
「えーと、その、目安箱の投書を確かめに、ホンジュラスに行ったんだよね?」
「はい・・・会議中の主様を煩わせるほどでは無くとも、放っておくわけにはいかないということに・・」
最初に投書を受け取ったラティア・・・珍しく落ち込んでいる。
「そうか・・・ホンジュラス・・・確かここからだと」
「4000kmくらいなっ・・・一番近いマドリナ神殿からでも320kmあるなっ」
「わかった・・・ヤザンっ!各国首脳に連絡を!明日からの会議は事態がハッキリするまで延期だ!」
「はっ!」
「暗部にも何か情報が無いか探らせろっ!スージーは文書室で調査。みんなは聖都神殿で待機。俺はマドリナに行く!」
「主様っ!わたしたちも!」
「ダメだっ!・・・すまんっ。マドリナから走るなら一人のほうが速い。行かせてくれ」
「・・・はい」
「他にも動きがあるかもしれない。皆絶対に一人にならないようにっ!」
「「「「「はいっ!」」」」」
頼む・・・無事で居てくれ・・・。
~~~~~
ライザが安全策を取らず、街道を探して北上していれば、南下するカインと出会えたかもしれない。
だが、安全策をとったライザを誰が責められるのか?
歯車とは、ひとつ狂い始めると、かくも脆く連鎖する・・・。
世界の半分のスタンピードを殲滅し続けた二年で、カインのレベルは既に79。
320kmの道のりを、休憩も挟まず六時間で走破しきった。
「・・・なんだよ・・・コレ・・・」
わずかに白み始めた東の空。
その静寂の中、無数の屍が散乱する平原。
未だ溶け切らぬ氷の岩が、ユリアの戦闘を物語る。
「頼む・・・頼むぞ・・・」
居ないはずだ、この中には居ないはずだ。
そう祈りながらも、薄闇の中で屍を探す。
歩みを進める中に、次第に闇が押し出され、朝焼けが全貌を浮き上がらせる。
溶けかけた氷の階段が幾つもそびえ立つ異様な光景。
どこからとも無く現れたカラスの群れが屍肉を貪り、その声がカインの神経を逆なでる。
聖教国の荘園であったはずの村は、何もかもが消し炭になっていた。
そしてカインは見つけてしまう・・・その消し炭の中に、燃え残った、一揃いの特別な衣服を・・・。
「はぁ はぁ はぁ はぁ」
心臓が早鐘を打つ。
その衣服には、あるべきところに頭部が無かった。
近くに転がる黒焦げの頭骨。
胸に抱きしめてみても、アベルなのか、ライザなのか、どちらの名を叫べばいいのか?
混乱する脳内をグチャグチャに思考が駆け巡る。
涙は溢れない。
ただ、奥歯がガチガチと鳴り続ける。
失われてしまった。
大切な、大切な人。
なのに・・・誰を失ったのかすらわからない。
「うぁぁぁあっぁぁぁあっぁあぁぁぁぁぁああああああぁぁぁぁぁああああああああああ」
朝もやの中。
カインの慟哭を受け止めるものは物言わぬ屍だけだった・・・。
~~~~~
「そう・・・あたしがターゲットだったのね?」
「多分そうだ。『亜人を、バケモノを殺した者には特別報酬』って叫んでやがった。人族至上主義の連中かもしんねぇ」
日が昇り、私達は街道に出た。
全力では走れないけど、自分の脚で走る方が気が紛れる。
アベルさんは・・・ユリアは・・・あたしに巻き込まれた・・・。
「ごめん・・・なんて言ったらいいのかわかんないわ。『あたしのせい』なんって言ったら、アベルさん、絶対怒るし」
「おれっちも、仲間に死なれるのは初めてだ。これまでは、運が良かったんだ・・・」
とにかく、アイツのとこに帰らなきゃ。
そして、ほんの僅かでも望みがある限り、ユリアを探し出さなきゃ。
例え死んでたとしても、絶対に見つける。
~~~~~
「このまま帰って、組織にヒンシュク買わないっすかね?」
「んー、しかたないっしょー?報酬でなかったら傭兵ははたらかないしぃ~、あたしらだけじゃ街道ふーさなんてできっこないしぃ~」
「そっすねー、組織組だけじゃ無理っすよねー」
スポンサーを失った傭兵達は、まるで日暮れに帰宅する子供たちのように、ブラブラとやる気なく散っていった。
そんなものだ。
「べつに怨みがあるわけじゃないしぃ~、逃げられちゃってもどうでもいいよねぇ~」
「いちおう、ボスのカタキっすよ?」
「んー、お互いさまっしょ?こっちは仕事だしぃ~?アッチは生きるか死ぬかだしぃ~?」
「まぁそっすねー、俺もなるべく死なないよーにするっす!」
かつての地球がそうであったように、この世界の命は未だ軽い。
法は存在していても、それは権力者の地位を維持するためのもので、弱者を守る類のものは少ない。
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