I.B.(そこそこリアルな冒険者の性春事情!)

リカトラン

文字の大きさ
150 / 173
2nd season 第三章

146 シリア暗殺計画(9)

しおりを挟む
遺体をIBに収納した俺は、ひとまず神殿に戻った。

「・・・どう伝えればいいのか・・・ガザル村の荘園は焼き落とされてた・・・そして・・・遺体の損傷が酷くて特定できないが、俺達の家族が・・・一人殺された・・・たぶん・・・ライザかアベルだ・・・」

「「「「「なっ!」」」」」

「すまない・・・俺もまだ整理できてないんだ・・・でも、遺体は見ないほうがほいい・・・ユリアが戦った形跡があった・・・敵兵の死体も、少なくとも500はあったと思う」

「主様っ!さがさなきゃっ!」

「ホンジュラス王国は情報が少ない・・・地理、情勢、なんでもいい、みんなはここで情報を集めてほしい。俺は現地で情報を探す」

「私達も行きますっ!」

「ダメだっ!・・・たのむ・・・敵が何なのか・・・どれほど強いのか、まだわからないんだ・・・手分けして探してたら・・・また誰かが襲われるかもしれない」

「・・・わかりました」

「こまめに戻るから・・・みんな、絶対に一人にならないでくれ。それじゃ、行ってくる」

「「「「「お気をつけて」」」」」



~~~~~



誰かが死んだ・・・誰かって何?
まるで悪い夢でも見てるみたい・・・。
あんなカイン様・・・久しぶりに見たわ。

この七年、ずっと魔物を相手にして、誰も欠けることなく来れたのに・・・。
アリスにどう伝えたらいいのか・・・ううん、あの子ももう13歳・・・ちゃんと伝えなきゃいけないわ。
でも・・・お願い・・・どうか無事で居て・・・



~~~~~



「ほぅ・・・ホンジュラスで混乱があったと?」
「はい、ペルシラ陛下。事態の収束まで、会議は延期させて頂きたく、お知らせに上がった次第」

「ふむ・・・承知した。して、猊下は?」
「はい。現地で直接処理にあたっております・・・また一つ、国が消えるやも知れません・・・」

「ふむ・・・しかしわからぬ男だ・・・聖職者のようであり、商人のようであり・・・にも関わらず、誰よりも多くを殺し、誰よりも多くを生かしている・・・貴殿とも稀有な縁と聞くしな?」
「ええ・・・本当にわからない・・・それでいてわかりやすい・・・そんなお方です」



~~~~~



ガザル村から少し離れた林の中に転移した俺は、街道を南下して最初の街へ。
エルダーサと似たような街。
Aランクの冒険者ギルドカードを提示し、傭兵が多く出入りしなかった尋ねる。

当たりだ。
ここ最近傭兵が増えていて、昨日は門の閉まる直前に、50人近く戻ってきたという。
こんな遠くの国でさえ、Aランクの効力は絶大。
重要な任務中の為、言いふらさぬよう門兵に言い含める。

情報収集には・・・この服は向かないな・・・。
物陰に入ると同時に、戦闘服から平服に
宿の場所は門兵から聞き出し済みだ。

「あー、オヤジさん、朝飯をくれ。酒も頼む」

古びた食堂の一角に腰をおろし、聞き耳を立てる。
傭兵らしきグループが二組、冒険者が四人と二人。

食事が喉を通るとは思えないが、朝から一人、んで見せれば・・・

「おう、ニイちゃん、朝っぱらから随分なご身分じゃねーか?」

うん、ガラの悪い傭兵に絡まれる。

「いやぁ~、閉門に間に合わなくて、空きっ腹抱えて門の外で転がってたんすよ~、旦那もいっしょにいかがっすか?オヤジさんっ!こっちの旦那にも酒を頼むっ!」
「おっ?なんだ、気前がいいじゃねーか?」

「やっぱほら、ひとり酒はつまんないじゃないっすか?よかったら、お仲間のみなさんもいかがっすか?」
「ニイちゃん、俺達もご相伴にあずかっていいのかい?」
「もちろん。家おんだされて放浪の旅って奴をやってんすけど、金だけはちゃんとくすねてきたんで、おやっさんっ!酒を頼むっ!つまみもなっ!・・・男なら、やっぱ剣に生きるとか、憧れますよねぇ?」

「おう、まぁな?」

「俺も憧れてんすけどねー、腕っぷしの方はからっきしで・・・旦那がたは戦争とか行ったことあるっすか?」

「へっ、おれたちゃー毎日が戦争みてぇなもんよ」
「おうよ。昨日だっておめぇ?バケモノ相手に大立ち回りよ!信じられっか?千人の兵隊が半分も殺られたんだぜ?まぁ、俺達くらいになると、そんな修羅場でもこうして勝ち残んだけどな?」

こみ上げる殺意をぐっと抑える。
騒ぎを起こせば情報が消えるかもしれない。
今はみんなを見つけるのが最優先。

「うへぇ~、もしかして北の戦場っすか?俺、昨日通ったんすけど、もう、死体だらけでおっかなくて、マジちびりそうっしたよ?」

「うわっはっはっ、ニイちゃん、だらしねぇな?」

「いやぁ~、面目ないっ!いったい何があると、あんな事になるんすかね?」

「あー・・・」

たった四人の女を、千人で襲ったんだ、いくら傭兵でも言い淀むか・・・。

「ありゃ魔族だな。うん、間違いねぇ」
「おっ、おう。バケモノ退治って聞いてたが、まさか魔族とはな?」
「うっへぇ~魔族っすか?」

「おう。村に潜伏してる魔族の討伐に向かったのよ?二体は逃がしたが、残りの一体に500人はやられちまった。信じられっか?五百だぞ?」

ユリアだ・・・ユリアがたった一人で・・・だが、少なくとも二人は逃げ出せた?

「その魔族はどうなったすか?まだウロついてるっすか?」
「いや、凄腕の弓使いが仕留めたみてぇだぞ」

ユリア・・・いや、まだだ、この目で確認するまでは信じない!・・・ユリアだって、俺が死んだと思い込んで、それで生き別れになったんだ!

「うへぇ~、その、魔族の死体って見れたりするっすか?俺、魔族って見たことないんすよ!」
「どうだろなぁ?雇い主が殺られちまってっから、そのまんまあそこに落ちてんじゃねーか?」

「そうっすかー、残念っす・・・でも、逃げた魔族って、捕まって無いんすよね?もしまた戻ってきたら・・・」
「あー、そうだなー。俺たちゃかったるくて一晩泊まったが、仕事が終わってほとんどの連中が帰っちまってっから、こんな街、ひとたまりもねーんじゃねーか?」

「おっかねぇー・・・その魔族ってどっちに逃げたっすか?同じ方向には行きたくねぇっす!」
「あー、北だな?まっ、あっちには近づかねぇ方がいいかもしんねぇ」

「あざーす。さっ、旦那がた、もっとガンガンやっちゃって下さいっす!」

すぐにも飛び出したい気持ちをぐっとこらえて、雇い主が誰だったのか、どんな人間が集められたのか、根掘り葉掘り聞き出した。



~~~~~



あるじ様っ!奥様がっ!奥様とライザが戻りました!無事ですっ!」
「ほんとかっ!」

町の外に携帯転移門を隠し、聖都に戻ると吉報が届いていた。

「こちらですっ!」

部屋に飛び込む。
ほんの2日しか経っていないのに、もう何年も生き別れていたような気がする。

「シリア・・・ライザ・・・良かった・・・ほんとに良かった・・・」
「あんた・・・アベルさんが・・・ユリアも・・・あたしが狙われたの・・・なのに・・・なのに・・・」

腕の中で嗚咽を漏らすシリア・・・華奢な身体がカタカタと震えている・・・俺の、大切な女たち・・・。

「よく生き残ってくれた・・・それだけでいい・・・よしっ、幾つか情報がある、聞いてくれ・・・いや、その前に何があったのか、教えてくれ!」

再び戦場跡に戻った俺は、全ての死体を回収してきた。
氷の階段も、傭兵たちのむくろも、何もかも全てだ。
もしもユリアが死んでしまっているなら、遺体があったはず、だが無かった。
きっと生きてる。
生きてどこかで傷を癒そうとしているはずだ。

「うん、俺が聞いた話と概ね一緒だ。ターゲットはシリアだった。人族至上主義の一団が千人の傭兵を雇っていたらしい。そしてその半分は、ユリアが一人で倒したそうだ。最後は射抜かれて死んだと聞いたが、教えられた戦場にユリアの遺体は無かった。だから、生きていると思う」

「アンタっ!お願いっ!ユリアを探させてっ!」
「「「主様っ!」」」

傭兵たちが嘘をついているとは思えなかった。
大規模な罠はもう無いはずだ・・・考えられるのは2パターン。
ユリアが自力で逃げているか、何者かに拐われたか・・・いずれにしても一昼夜、後者なら50km圏内のハズ・・・いや、シリアのように高レベルのものが連れ去っていれば300kmも有りうる・・・どうする?

「わかった・・・但し、二時間待ってくれ。ガザル村を中心に、転移門の包囲陣を敷く。みんなが動くのはその後だ。ヤザンっ!」
「はっ!」
「動かせる暗部を全部集めろ。他の国が手薄になっても構わん。全てだっ!」
「はっ!」
「全員に言って聞かせろ!邪魔するものは殺していい!戦争になっても構わん!何が何でもユリアを取り戻すっ!いいなっ?」
「「「「「はっ!」」」」」


しおりを挟む
感想 240

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

処理中です...