160 / 173
2nd season 第四章
156 開示
しおりを挟む
「なぁ、主様?コレ、雨が降ったらどうなんだ?」
うむ、目の付け所が完全に小学生だ。
微笑みをたたえたフレッドが父兄に見える。
「ライザ、雨は何処から降るか知ってるか?」
「そんなん誰でも知ってんだろ?空の上の雲から・・・そっかっ!雲の上に居れば傘がいらねーのかっ!」
「しかし友よ、壮絶な景色だ。雲の海など想像すらした事がない」
「すげぇーよなー?籠から降りても泳げそうな・・・ライザ?やるなよ?」
「・・・やっぱ無理なのか?」
「朝陽はもっと凄いから、期待しとけよ?」
「ああ、楽しみにさせて貰おう。して、ヤザンどのとホイクト君を呼んでくれば良いのだな?」
「ああっ!くれぐれも、空の上とはバラすなよ?」
「くっくっくっ・・・カインは人が悪い」
~~~~~
「ふむ、アルフレッド様、この『球体零号』という所で猊下がお待ちなのですな?」
「ああ。旅の間の連絡手段に慣れる必要があるから、ホイクト君と二人で来るようにとの事だ」
「賜りました。すぐに向かった方が?」
「ああ、それが良いだろう」
「では、失礼して、ホイクト、参るぞ」
「はっ!」
猊下から『暫く旅に出る』と聞かされた時には大変な事になると思いましたが、こうしてこまめに連絡が取れるなら、普段と何も変わりませんな。
しかし『球体零号』とは・・・、また何か変わった馬車でも作られたのか?
ブブウンッ
「よく来たな、ヤザンっ!」
「はへっ???」
なっ、なんだココは?
頭上には巨大な球。
眼下には・・・海?だが・・・水では無さそうだ・・・
「ぶふふふっ!聞いたかアリスっ!『はへっ』って言ったぞ!『はへっ』って」
「もう、カイン兄さん?ヤザンさんに失礼でしょ?」
ふむ・・・アリス様が居るという事は危険な場所では無いはず・・・しかし足場が悪い、グラグラと踏ん張りが効かぬ・・・舟・・・なのか?
「猊下、これはいったい?」
「よく下を見てみろ?知っているはずだ」
ふむ・・・よく見ると海のようなものから浮いて・・・「浮いているっ!!!!!?」
「ぶふっ!聞いたかアリスっ!『浮いているっ!』ってゆったぞ!『浮いているっ!』って!」
「ヤザンさん、ごめんなさい。どうしても兄さんが内緒だって聞かなくって。ここは空の上ですよ」
「なんだよアリス~、ストレスの溜まってるヤザンにも少~し、ユーモアを味あわせようっていう折角の計らいなのにぃー」
空の上・・・ふむ・・・確かに飛んでいるというのはしっくりくる・・・「な”っ!?」
「ぶふぉっ!『な』に『”』ついた『”』!」
「アリス様?これは空を飛ぶ馬車で、我々はその馬車に転移したという事ですかな?」
「はい。そーです。ここは雲の上。凄い景色でしょー?」
「ええ・・・よもや空を飛ぶ日が来るとは・・・猊下?これは何時から?」
「あー、その前に苦虫くん、君には失望したっ!なんだその無表情はっ?もっと面白いリアクションは出来なかったのかっ?」
「・・・猊下・・・ホイクトはあまりの事態に固まっているのです・・・」
「ふむ・・・まぁ仕方がないか。これが、ミズーラ王都を消滅させた兵器だ。我が国最大の機密だから、絶対に言うなよ?」
「これが兵器???」
「ここから俺が岩を落とせば、都市が無くなる」
「な”っ!」
「見てみろ苦虫くん!これが正しいリアクションだ!しっかりと上司から学ぶように!」
「猊下・・・教務長はともかく、私のような者にまで教えて宜しいので?」
「うむ。秘密は一人で抱えるとストレスだからな?ヤザンの胃に穴が開かぬよう、分散してやった」
「「・・・」」
「まぁ、それはさておき、これが空の上だ!交代が来るまで一時間ある。満喫しろ!」
「・・・本当に猊下は、お優しいのか、恐ろしいのか、判断つきかねますな」
しかし空を飛ぶとは・・・六年前のあの日、謀略が叶っていれば、取り返しのつかぬ損失を人類に与えてしまったのだろう・・・いや、もとより成功するわけが無いのだな・・・あまりにも、大きすぎる・・・。
「どうだヤザン?世界は広いだろ?」
「えぇ・・・思い知らされます・・・そして、なんと美しい・・・一度この光景を目にしてしまえば、いかなる絵画も陳腐に思える」
「苦虫くんもしっかり目に焼き付けとけよ?こんな光景、ペルシラのおっさんですら見たこと無いんだぞ?」
「はい・・・だんだん実感湧いてきました。ここ、空の上なんですよね・・・飛んでるんだ・・・」
「苦虫くんはユリアを助けてくれた。実は結構感謝してる。ささやかな礼だ」
「・・・光栄です」
「よしっ、俺が居たらリラックス出来ないだろう?アリス、寝室に居るから、何かあったら呼んでくれ」
「いえっ、猊下。差し支えなければ居てください。この光景は、我らだけで見るには巨大過ぎますゆえ・・・」
ふむ・・・よもやな・・・良い上司と良い部下、私も随分と恵まれた男では無いか。
この世界がどこに向かうのか・・・それは皆、目の前の若き王にかかっているのだろう。
私はそれを間近で見届ける事が出来る・・・なんと贅沢な事か。
「アリス!大変だ!ヤザンが俺に惚れたかもしれんっ!」
「「「・・・」」」
ふっ、さもありなん。
私は本当に恵まれた男だ・・・。
うむ、目の付け所が完全に小学生だ。
微笑みをたたえたフレッドが父兄に見える。
「ライザ、雨は何処から降るか知ってるか?」
「そんなん誰でも知ってんだろ?空の上の雲から・・・そっかっ!雲の上に居れば傘がいらねーのかっ!」
「しかし友よ、壮絶な景色だ。雲の海など想像すらした事がない」
「すげぇーよなー?籠から降りても泳げそうな・・・ライザ?やるなよ?」
「・・・やっぱ無理なのか?」
「朝陽はもっと凄いから、期待しとけよ?」
「ああ、楽しみにさせて貰おう。して、ヤザンどのとホイクト君を呼んでくれば良いのだな?」
「ああっ!くれぐれも、空の上とはバラすなよ?」
「くっくっくっ・・・カインは人が悪い」
~~~~~
「ふむ、アルフレッド様、この『球体零号』という所で猊下がお待ちなのですな?」
「ああ。旅の間の連絡手段に慣れる必要があるから、ホイクト君と二人で来るようにとの事だ」
「賜りました。すぐに向かった方が?」
「ああ、それが良いだろう」
「では、失礼して、ホイクト、参るぞ」
「はっ!」
猊下から『暫く旅に出る』と聞かされた時には大変な事になると思いましたが、こうしてこまめに連絡が取れるなら、普段と何も変わりませんな。
しかし『球体零号』とは・・・、また何か変わった馬車でも作られたのか?
ブブウンッ
「よく来たな、ヤザンっ!」
「はへっ???」
なっ、なんだココは?
頭上には巨大な球。
眼下には・・・海?だが・・・水では無さそうだ・・・
「ぶふふふっ!聞いたかアリスっ!『はへっ』って言ったぞ!『はへっ』って」
「もう、カイン兄さん?ヤザンさんに失礼でしょ?」
ふむ・・・アリス様が居るという事は危険な場所では無いはず・・・しかし足場が悪い、グラグラと踏ん張りが効かぬ・・・舟・・・なのか?
「猊下、これはいったい?」
「よく下を見てみろ?知っているはずだ」
ふむ・・・よく見ると海のようなものから浮いて・・・「浮いているっ!!!!!?」
「ぶふっ!聞いたかアリスっ!『浮いているっ!』ってゆったぞ!『浮いているっ!』って!」
「ヤザンさん、ごめんなさい。どうしても兄さんが内緒だって聞かなくって。ここは空の上ですよ」
「なんだよアリス~、ストレスの溜まってるヤザンにも少~し、ユーモアを味あわせようっていう折角の計らいなのにぃー」
空の上・・・ふむ・・・確かに飛んでいるというのはしっくりくる・・・「な”っ!?」
「ぶふぉっ!『な』に『”』ついた『”』!」
「アリス様?これは空を飛ぶ馬車で、我々はその馬車に転移したという事ですかな?」
「はい。そーです。ここは雲の上。凄い景色でしょー?」
「ええ・・・よもや空を飛ぶ日が来るとは・・・猊下?これは何時から?」
「あー、その前に苦虫くん、君には失望したっ!なんだその無表情はっ?もっと面白いリアクションは出来なかったのかっ?」
「・・・猊下・・・ホイクトはあまりの事態に固まっているのです・・・」
「ふむ・・・まぁ仕方がないか。これが、ミズーラ王都を消滅させた兵器だ。我が国最大の機密だから、絶対に言うなよ?」
「これが兵器???」
「ここから俺が岩を落とせば、都市が無くなる」
「な”っ!」
「見てみろ苦虫くん!これが正しいリアクションだ!しっかりと上司から学ぶように!」
「猊下・・・教務長はともかく、私のような者にまで教えて宜しいので?」
「うむ。秘密は一人で抱えるとストレスだからな?ヤザンの胃に穴が開かぬよう、分散してやった」
「「・・・」」
「まぁ、それはさておき、これが空の上だ!交代が来るまで一時間ある。満喫しろ!」
「・・・本当に猊下は、お優しいのか、恐ろしいのか、判断つきかねますな」
しかし空を飛ぶとは・・・六年前のあの日、謀略が叶っていれば、取り返しのつかぬ損失を人類に与えてしまったのだろう・・・いや、もとより成功するわけが無いのだな・・・あまりにも、大きすぎる・・・。
「どうだヤザン?世界は広いだろ?」
「えぇ・・・思い知らされます・・・そして、なんと美しい・・・一度この光景を目にしてしまえば、いかなる絵画も陳腐に思える」
「苦虫くんもしっかり目に焼き付けとけよ?こんな光景、ペルシラのおっさんですら見たこと無いんだぞ?」
「はい・・・だんだん実感湧いてきました。ここ、空の上なんですよね・・・飛んでるんだ・・・」
「苦虫くんはユリアを助けてくれた。実は結構感謝してる。ささやかな礼だ」
「・・・光栄です」
「よしっ、俺が居たらリラックス出来ないだろう?アリス、寝室に居るから、何かあったら呼んでくれ」
「いえっ、猊下。差し支えなければ居てください。この光景は、我らだけで見るには巨大過ぎますゆえ・・・」
ふむ・・・よもやな・・・良い上司と良い部下、私も随分と恵まれた男では無いか。
この世界がどこに向かうのか・・・それは皆、目の前の若き王にかかっているのだろう。
私はそれを間近で見届ける事が出来る・・・なんと贅沢な事か。
「アリス!大変だ!ヤザンが俺に惚れたかもしれんっ!」
「「「・・・」」」
ふっ、さもありなん。
私は本当に恵まれた男だ・・・。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる