I.B.(そこそこリアルな冒険者の性春事情!)

リカトラン

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2nd season 第四章

157 旅路

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空気の流れは視認出来ない。
どの高度に移動すれば、自分が行きたい方向の風に出会えるのか?
を見つけるのは至難の技だ。

それが地球であったなら、気象学に基づいたロジックが存在するかもしれない。
だがこの世界では、船長たる俺の経験が物を言う・・・・・はずだった。

「キタキタキタキタッーーーーッ!おれっちの風を捕まえたぜぇぇぇぇぇぇ!」
「・・・ライザさん、いい勘してるわね?」
「くやしぃ・・・素直にくやしぃ・・・」

当初の予定では、小島を見つけてはそこに着陸、キャンプしながら進む予定だったのだが・・・。

「次あーし!あーしがやるっ!」

ライザが異様な勘の良さを発揮したのがきっかけで、突如として操船?操球?ブームが訪れ、24時間体制で飛び続ける事になった。

「いやコレ、絶対ギフト発動してるだろー?」
「馬が居なくても有効なのかな?」

定員四名のつもりだった四平方メートルの狭いカゴに、ギュウギュウ詰めで皆はしゃいでいる。
考えてみると訓練ばっかりで、こういう娯楽競技ってやったこと無かったな。
帰ったらみんなで楽しむ事ももっと考えよう。

「ぶっ通しで飛んでるせいか、結構遠くまで来たな」
「あっ、ほんとだ」

転移門の脳内インターフェースで見ると、出発地点のサジウ東端がはるか彼方、八千キロは飛んでるっぽい。

「たぶん、このあたりから北上すると魔大陸があるんだよな」
「旦那様?行かないですよね?」
「行かない行かない。俺は魔族とか一生事にしてる・・・っていうか旅に出てもう五日じゃん?そろそろどっかの島で一休みしないか?」

「そうね?毎日聖都に戻ってても味気ないし、そろそろ野営して、ニェリーザさんも呼んであげましょ?」

ニェリーザも既にロックハウス家の一員だが、ギルマスの仕事があるのでずっとは居られない。

「じゃ、次に島を見つけたら降りてみよう」
「「「「「はーい」」」」」



~~~~~



「ん?どうしたホイクト?手が止まっているぞ?」
「あっ・・・申し訳ありません。なんだかまだ、身体がふわふわしてまして」
「ふむ・・・私もだよ・・・アレは、素晴らしい体験だった」

「また、呼んでいただけるでしょうか?」
「ふむ・・・そのうちに・・・頼んでみるとしよう」

「・・・教務長・・・変わられましたよね?」
「ん?何がだ?・・・ふむ・・・そうかもしれんな・・・」



~~~~~



離陸は難しくないが、着陸は酷く難易度が高い。
風の穏やかな内陸ですら難しいのに、海風に煽られながら小さな砂浜に降りるとか・・・。

「だぁぁぁぁぁっ!ヤバイっ!ヤバイっ!全員っ!緊急離脱っ!」

ブブブブブブブウンッ

皆が転移避難すると同時に気球を収納、当然足元には何も無くなり・・・

「ぬぉぉぉぉぉぉぉっ!」 ・・・ グシャッ!

痛っっったぁぁぁ・・・低レベルだったら絶対死んでだ。
パラシュートとか作っとくべきだった。

傍らに携帯転移門を設置する。
インターフェース上では『集合場所』という名の神殿になっている。

「アンタ、だいじょぶだった?」
「・・・だいじょばなかった・・・ちょー痛かった・・・慰めて」
「はいはい、よちよち」

まぁこの程度で怪我するとは誰も思ってないだろう。

「よし、痛かったから今日はバーベキューだ!久しぶりにエルダーサのみんなも呼んでこよう」
「じゃ、わたしが呼んできますね?」
「ああ、ユリア、頼んだ」
「いってら~」

「いや、ライザ、おまえもフレッド呼んできてやれよ?」
「うぃ~、じゃ、ニェリーザの姉御も呼んでくっか」
「あっ、待った。どうせならヤザン達も呼んでやろう」
「うぃ~、酒も買ってくるぜ~」
「おう、ほどほどにな?」



~~~~~



パチパチッ パチッ パチパチッ

浜辺で焼くオーク肉はうまかった。
キャンプファイヤーなう。

「カイン様の周りも、ずいぶんと賑やかになりましたよね・・・」
「そうだな・・・ラティアに拾われたあの頃は、狭い世界でポツンと一人だったな」
「ふふふ、酷く擦り切れていましたわね・・・お互いに・・・。懐かしいですわ」

夜の潮風が冷んやりとして、波の音が心地いい。

「あー、みんな、聞いてくれ。
俺の大切な人はみな、ここにいる。
良い機会なので言っておきたい。
この旅が終わったら、子供を作るつもりだ。
最初はシリアだが、他のみんなとも考えたい。
同時に、教皇職は世襲にしないと発表する。ホルジス様に頼んで、指名制にして貰うつもりだ。
俺は子供が嫌いだけど、産まれたらなんか可愛く思える気がしてきた。
だが、子がどう育つかはわからない。
ロックハウスの名は子に継がせるが、アベルの名は、血縁を越え、相応しいものに継がせるべきだと思う。
それだけ、覚えておいて欲しい」

「・・・そうね。いいと思うわ?」

「それから・・・っていうかついでみたいな言い方しちゃアレなんだけど、ユリア、ラティア、エマ、リシェルも、公式に妻として発表しようと思ってる。ユリアは辞退禁止だからな?」
「旦那様・・・うううっ」

「良かったわね?ユリア?」
「ふふふ、ちょっと嬉しいかな?」
「私が教皇婦人・・・」

「あの・・・カイン様?私は今の愛人のままで居させてください。この立場が気に入っていますので」
「ラティア?本当にいいのか?」
「はい」
「わかった、気が変わったら、いつでも言ってくれ。ミランとスージーも・・・まぁその気にはならなそうだけど、その気になったらな?」
「「はーい」」

「ぬ?私はダメなのか?」
「ニェリーザは・・・微塵も俺のこと好きとか無いでしょ?」
「まぁ無いが?」
「ダメじゃん!」

「しかしよぉ?ホントにあんのか?別の大陸なんてよ?」
「出るまでは半信半疑だったけど、今は確信してるよ、あるね。新大陸」
「ほぉ?その自信はどっから来たんだ?」
「ホルジス様が『驚きの旅になる』って言ってたんだ。間違いないだろ?」

「で、その大陸も征服すんのか?」
「俺、征服なんてしたこと無いぞ?宗教家として、真摯に教えを説き、神への感謝を欠かさない敬虔な民を増やすのが俺のお仕事」

「ふむ、だが、他の大陸の噂など聞いたことなど無いぞ?」
「ニェリーザに断言されると、ちょっと自信無くなる・・・でもあると思うんだよなー」

「あるにはあったが、ドラゴンの国だった・・・とかなんじゃねーか?」
「・・・うっわぁ~、そういう事言っちゃうとホントになりそうだからヤメテ!」
「ドラゴンって、どうやって倒すの?」
「おとぎ話だと魔法で倒してるけど・・・ぜったい届かないわよね?」
「無理だな」

「よし、ホントに出たら逃げよう」
「なんだ?倒さねーのか?」
「そういうのはヴァルダークさんに任せます。我が家はみんな平和主義なので・・・っていうかヤザン?大人しいな?」

「いえ・・・こういった集まりには、馴染みが無いもので」
「よしっ、ライザっ!ヤザンを酔わせろ!」
「待ってましたぁ!」

前世でも、現世でも、俺は宴会の類が苦手だった。
忘年会は開始と同時に、いつ逃げ出すか算段し始めるタイプ。
そして現世でも、白兎亭に住み着くまでは、大勢で食卓を囲むなんて絶対にしなかった。

その壁を問答無用でブチ壊したのはアベルだ。
あんなにも鬱陶しかった他者との会話が今は楽しい。
それは相手が違うからなのか、自分が変わったからなのか・・・まぁ、どちらでもいい。

「よし、ペルシラのおっさんからとっておきを出そう!」
「猊下・・・酒の窃盗が原因で戦争とかやめてくださいね?」

アベル、俺はちゃんと幸せに生きてるぞ?
遠くに見える水平線に、流れ星が一つ、見えた気がした。

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