愛の行方

澤村 通雄

文字の大きさ
3 / 15

誘い

しおりを挟む
10分も経たないうちに、店のドアがカランカランと音を立てて空いた。

額にうっすらと汗を滲ませた明だった。

どうやら走って来たみたいだった。


喜美子は、あれからまだプリンアラモードにひと口しか口にしていない。
こんな子供のような物を食べているのを知られるのが恥ずかしかった。
そこまでは、明の顔を見るまで気付かなかった。



ゴメン、待った?


全然待っていない。
早すぎるくらいだ。
喜美子は、プリンアラモードのことばかりが気になった。



だ、大丈夫です...。
随分早かったのですね。
走られたのですか...?



帰ってしまうのかもと思って...!
突然にメモを渡してしまい申し訳ないっ!
さぞ、びっくりされたでしょう。
僕みたいなだいの大人が..。
ハッハッハッ。


明は笑って誤魔化した。

喜美子は、ちょっとチャーミングだなと思った。


実は僕はね。


すかさず、マスターが現れる。

お客様、ご注文は?


ウチの店の常連に、唾をつけるなというような勢いだ。


あっ、コーヒーお願いします。


承知しました。

マスターは、スッとカウンターに戻った。


喜美子さん、美味しそうですね。
僕も頼もうかな?


フッ、氷室さん冗談がお上手ですね。


ハッハッ、本音なんだけどなぁ。


オッホッホ。


少し、場が和んだ。



今日は、どうなされたのですか?
今、決算期でお忙しい時なのに。


だからですよ、仕事は仕事。
プライベートはプライベートで区切りをつけなくては!
一度、喜美子さんとプライベートでゆっくりお話ししたかったんです!
迷惑でしたか..?


め、迷惑だなんて...
ただ、ちょっとビックリはしました。
突然のことだったんで...。


僕はね、この歳になるまで学生の時以来、女性とお付き合いしたことが無いんですよ。
恥ずかしい話ですが。
喜美子さんのような、聡明な綺麗な方と同じ職場で働けて、こうしてお話出来ることがとても光栄なんです。


そんなこと言って、今日も経理部の千賀さんにお誘い受けていらしたじゃないですか...?


いやいや、本当に困ったもんで僕は実は喜美子さんをお誘いすることを、もう半年以上前から悩んでいたんです。
それが千賀さんの今日のことがあって、勢いというか、今しかない、みたいな..。


と、いうと...?



ゴホンッ、えー、つまり...
僕と真剣にお付き合いして下さい!



はい、コーヒーお待ちどうさま。

マスターがタイミング悪く、テーブルにコーヒーを置いた。

ごゆっくり。


あ、あの、私にも彼女と同じもの追加で!


はい、プリンアラモード追加ですね。


マスターは、少しおかしそうに見えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

今宵、薔薇の園で

天海月
恋愛
早世した母の代わりに妹たちの世話に励み、婚期を逃しかけていた伯爵家の長女・シャーロットは、これが最後のチャンスだと思い、唐突に持ち込まれた気の進まない婚約話を承諾する。 しかし、一か月も経たないうちに、その話は先方からの一方的な申し出によって破談になってしまう。 彼女は藁にもすがる思いで、幼馴染の公爵アルバート・グレアムに相談を持ち掛けるが、新たな婚約者候補として紹介されたのは彼の弟のキースだった。 キースは長年、シャーロットに思いを寄せていたが、遠慮して距離を縮めることが出来ないでいた。 そんな弟を見かねた兄が一計を図ったのだった。 彼女はキースのことを弟のようにしか思っていなかったが、次第に彼の情熱に絆されていく・・・。

【完結】シュゼットのはなし

ここ
恋愛
子猫(獣人)のシュゼットは王子を守るため、かわりに竜の呪いを受けた。 顔に大きな傷ができてしまう。 当然責任をとって妃のひとりになるはずだったのだが‥。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

白椿の咲く日~ひそかな恋、遠い日の思いは

紫さゆり
恋愛
結婚を控えた真由子は、久しぶりに異母姉の稚子(わかこ)と会う。 真由子の母、雪江は大学教授であり、著名な歌人の水上実之(みなかみさねゆき)の後添いとして水上家に嫁いだ。 婚約者の諒人(りょうと)のことなど、真由子は稚子と色々語り合ううち、庭の白椿の木は真由子がなついていた異母兄、靖之が植えたものだと知る。 白椿の木をめぐっての、ひそかな大人の恋物語です。

元婚約者が修道院送りになった令嬢を呼び戻すとき

岡暁舟
恋愛
「もう一度やり直そう」 そんなに上手くいくのでしょうか???

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

ホウセンカ

えむら若奈
恋愛
☆面倒な女×クセ強男の不器用で真っ直ぐな純愛ラブストーリー! 誰もが振り返る美しい容姿を持つ姫野 愛茉(ひめの えま)は、常に“本当の自分”を隠して生きていた。 そして“理想の自分”を“本当の自分”にするため地元を離れた大学に進学し、初めて参加した合コンで浅尾 桔平(あさお きっぺい)と出会う。 目つきが鋭くぶっきらぼうではあるものの、不思議な魅力を持つ桔平に惹かれていく愛茉。桔平も愛茉を気に入り2人は急接近するが、愛茉は常に「嫌われるのでは」と不安を抱えていた。 「明確な理由がないと、不安?」 桔平の言葉のひとつひとつに揺さぶられる愛茉が、不安を払拭するために取った行動とは―― ※本作品はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。 ※イラストは自作です。転載禁止。

降っても晴れても

凛子
恋愛
もう、限界なんです……

処理中です...