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22.花びら
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応接間の内装は白で統一されていた。壁も扉も調度品も白一色。白いテーブルクロスに白い食器。紅茶の色だけが鮮やかに浮かび上がって見える。
「お菓子をどうぞ。頂きものだけど」
レイのお母様が差し出した皿には見覚えのある薄いクッキーが載っていた。
「これは……」
「王都で流行っているお菓子なんですって。わざわざ送ってくれたのよ」
小さな箱を取り出しながら、レイのお母様は形のいい唇の端を上げる。
「これと一緒にね」
箱の中にはあの青い石の首飾りが入っていた。
「ジェシカちゃんが着けていたものでしょう?」
「そ、そうです。……でも、どうして」
王宮に没収されたと思っていたので、ここにあって大丈夫なのか不安になってしまう。
「わざわざ特別な早馬で届けに来たのよ。まあ元々これは我が家に伝わる精霊石だし、王族には嘘つきが多いから怖かったのかもしれないわねぇ」
「そうなのですか……」
王族は人の心を操る嘘をつくのだろうか。高貴な方々がそんなことをするなんて考えたくもないけれど、少しでも心当たりがあったら恐ろしくてそばに置きたくないと思うのかもしれない。
「この石は誓いの精霊石と言ってね、人の心から生まれたとても珍しい精霊石なのよ。……はい、レイ」
「えっ」
レイのお母様がレイに石を渡そうとすると、彼は驚いて目を丸くしていた。
「母さま、僕にも心の準備が……」
「まあ、何の準備が必要なのよ。ここに来る間ずっと一緒にいたというのに」
強引にレイの腕をつかんで青い石を握らせた後、レイのお母様はくるりとわたしの方を向いた。
「さ、ジェシカちゃんも」
どうしてかわからないけれど、わたしの手は勝手に伸びて精霊石を持っているレイの手に重なっていた。
「……」
何かに怯えるようなレイの表情に気を取られた瞬間、石から暖かい熱を持った光が出てくるのを感じた。
あふれ出た青い光は花びらの形になって、ヒラヒラと宙を舞っていく。
前に同じ現象を見ていたからあまり驚きはしなかったけれど、公爵夫人が『両想いであれば精霊が認めた証が現れる』と言っていたのを思い出して、頬のあたりがじんわり熱くなった。
こ、これはやはり、両想いと考えてもいいのかしら……。
おそるおそるレイに目を向けると、口をだらしなく開けてぽかんとした顔をしている。
「まあー素敵!」
目を輝かせて舞う花びらを見るレイのお母様とは対照的だ。
浮かれた気持ちの中にモヤモヤしたものが沈んでいるのを感じた。レイへの想いを自覚する度に抑え込んだことがこのモヤモヤの原因になっているのはわかっていた。
たとえ精霊に認められたとしても、これでは意味がない――ということも。
「レイ、あの……わたし」
意を決して振り絞った声は震えていた。
わたしにとってそれは恐ろしいことだった。もうあの妹も両親もいなくなったというのに、その恐怖だけが未だにわたしの心を縛っている。
「レイのことが……ずっと好きだったの」
決して口にすることのできなかった言葉。
想いを伝えられたらどれほど心が軽くなるのかと思っていたけれど、逆に息苦しくなるほど胸を締め付けられる。
好きだと言うことがこんなに苦しいなんて思っていなかった。
あの時のレイもこんな気持ちだったのかも――
「……僕がジェシカを好きだと言った時のことを覚えている?」
「えぇっ」
ちょうどその場面を思い出していたわたしは、驚くあまり変な声を出してしまった。
「ご、ごめんなさい……わたし、レイの言葉は覚えているけど、自分がなんて答えたか覚えてなくて……」
「そうなんだね」
目の前のすらりとした眉毛が少し下がる。
「あの時、『わたしはわたしが好きじゃない』――って、ジェシカは言ったんだよ」
記憶の中の靄がかかっていた部分が急に明るくなったのを感じた。
あれは風が心地良い初夏の昼下がりのことだった。
会話が途切れた瞬間、突然レイから告げられた好意に対してわたしは戸惑っていた。
両親からの愛を何度も期待しては裏切られ続けたわたしは、他人を信じることに臆病だったのだと思う。美しくて愛らしいエイミィが近くにいるのだから、彼女に劣る存在をわざわざ好きになるはずがないと。
素直に好意を受け取ることができなかったわたしは、つぶやくような小声で答えた。
『……わたしは、わたしのこと、好きじゃないから、よくわからないの』
あれは間違いなく本当の気持ちで、だからこそ血を吐く思いだった。
両親やエイミィよりも誰よりも――わたしが一番わたしを嫌っていた。
レイに触れているわたしの手を、彼はもう片方の手でそっと包み込んだ。それがとても優しくて、温もりを感じるのと同時に鼓動が早くなった。
「あの時、何ていうか……ジェシカは、ジェシカじゃない誰かになりたいのかなって、僕は思ったんだ」
彼の頬には赤みが差していた。窓の外は雪が降っていて、夕日が当たっているわけではない。彼もわたしと同じようにドキドキしているのだろうか。
「全くの別人というわけにはいかないけど、ここなら王都のジェシカ・シェリーズを知っている人間はいないから、名前を変えてみたり、なりたい自分になったりするのもいいんじゃないかと……」
「えっ?」
「もっとはっきりお言いなさい」
予期せぬ提案に驚いていたら、レイのお母様がイライラした様子で唇を噛んでいるのが見えた。
「……ジェシカ、僕と結婚してくれないか!」
「ええっ」
レイに手をぎゅっと握りしめられて、わたしの心臓の音はますます激しくなった。こんな風に求婚されることを夢見なかったと言えば嘘になる。それがレイからとなれば断ることなど考えられない。
でも……。
「と、とても嬉しいの、ですが……」
「何か問題があるの?」
レイのお母様が首を傾げる。
「……今のわたしは平民なので、ここのお家とは釣り合わないと……」
「まあジェシカちゃんつまらないことを気にするのね、あの王族が決めた身分なんかに意味はないのよ誰にも文句は言わせないわ!」
テーブルに身を乗り出して、レイのお母様は早口で一気に言った。
「ここの領地は百年くらい前まで別の国だったの。だから国王への忠誠心はほぼないし、結婚相手に口を出される筋合いもない。……それに、レイはジェシカちゃんへの気持ちだけで領主になったくらいなのよ。今さら他の娘と結婚するなんて無理でしょう。我が子ながら執着心が強くてうんざりしちゃうけど」
「母さま、それは少し言い過ぎでは……」
「あら、本当のことじゃないの」
仲のいい親子が微笑ましい言い合いをしている中、わたしはレイのお母様の言葉に驚いていた。
「領主って……レイが?」
「あっ、そうなんだよ。言うの忘れてた」
まるで紅茶に砂糖を入れるのを忘れていたような気安さでレイは笑った。
「ジェシカのために……って言いたいところだけど、父さまが病気になったからでもあるんだ」
あのお別れに青い石をくれた時、実はレイのお父様が倒れてしまっていて、レイとレイのお母様は急いで王都から戻らなくてはならなくなったのだそうだ。
「父さまは倒れてすぐに目を覚ましたから、その時は大丈夫だったんだ。でもその二年後にまた倒れて……今度は目を覚まさなかった」
「二年の間に領地のことは引き継ぎができたのよ。けど当時この子はまだ十四歳だったからねえ……今年十六歳になってようやく家督を譲ったの」
レイの家の領地はとても広いと聞いている。わたしが家族のことでウジウジ悩んでいる間、彼は領主の仕事をして両親を支えていたのだ。自分が子供すぎて恥ずかしい。
「た……大変だったのですね。わたし、知らなくて……」
「いいえ、そうでもなかったわ」
レイのお母様は意外にもあっけらかんとしていた。
「ジェシカちゃんを迎えに行くならこれくらいしないと……って焚きつけたら何でも『やる』って言うんだから、こっちは楽なものよ」
ほほほと高笑いをするレイのお母様の隣でレイの目はどんよりと曇っていた。
「大変だったのね……」
「いやまあ、いずれはやらなくちゃいけないことではあるから……。それより、さっきの求婚の答えは、まだもらえないかな……?」
ふわっと優しく微笑んだレイは、まだわたしの手を握ったままだった。
わたしはその上から、そっともう片方の手を乗せる。笑いかけたつもりだったのだけれど、涙で視界が滲んでいった。
「……なりたい自分になったらって、さっきレイは言ったけど、わたしは自分がどうなりたいのか……わからなくて」
まとまらない言葉をレイは静かに聞いてくれていた。
「でも、わたしは変わりたいんだと、思うの。だから……すごく、嬉しかった」
レイの青い目が近づいてきてわたしの顔をのぞき込む。
青い光の花びらは合わせた手の中からあふれ続けていた。前に見た時と違ってすぐには消えず、広い床を埋め尽くして降り積もっていく。
「ずっとジェシカを迎える準備をしてきたんだ。断られたらどうしようって思ったら、急に怖くなった」
「こ、断るなんて……! わたしで良かったら、喜んで、お受けします!」
近くで見つめられるのが恥ずかしくて、湯気が出そうなくらい顔が熱くなった。
「……ジェシカは、今のままでもいいと思うんだけどね」
髪に付いた青い花びらを取る振りをして、レイはわたしの頬にチュッとキスをする。
わたしは思わず真っ赤な顔をレイの胸に押し付けていた。
花びらは喜ぶように光りながら、何日間か部屋の中で舞い続けた――という話を後になって聞いた。
「お菓子をどうぞ。頂きものだけど」
レイのお母様が差し出した皿には見覚えのある薄いクッキーが載っていた。
「これは……」
「王都で流行っているお菓子なんですって。わざわざ送ってくれたのよ」
小さな箱を取り出しながら、レイのお母様は形のいい唇の端を上げる。
「これと一緒にね」
箱の中にはあの青い石の首飾りが入っていた。
「ジェシカちゃんが着けていたものでしょう?」
「そ、そうです。……でも、どうして」
王宮に没収されたと思っていたので、ここにあって大丈夫なのか不安になってしまう。
「わざわざ特別な早馬で届けに来たのよ。まあ元々これは我が家に伝わる精霊石だし、王族には嘘つきが多いから怖かったのかもしれないわねぇ」
「そうなのですか……」
王族は人の心を操る嘘をつくのだろうか。高貴な方々がそんなことをするなんて考えたくもないけれど、少しでも心当たりがあったら恐ろしくてそばに置きたくないと思うのかもしれない。
「この石は誓いの精霊石と言ってね、人の心から生まれたとても珍しい精霊石なのよ。……はい、レイ」
「えっ」
レイのお母様がレイに石を渡そうとすると、彼は驚いて目を丸くしていた。
「母さま、僕にも心の準備が……」
「まあ、何の準備が必要なのよ。ここに来る間ずっと一緒にいたというのに」
強引にレイの腕をつかんで青い石を握らせた後、レイのお母様はくるりとわたしの方を向いた。
「さ、ジェシカちゃんも」
どうしてかわからないけれど、わたしの手は勝手に伸びて精霊石を持っているレイの手に重なっていた。
「……」
何かに怯えるようなレイの表情に気を取られた瞬間、石から暖かい熱を持った光が出てくるのを感じた。
あふれ出た青い光は花びらの形になって、ヒラヒラと宙を舞っていく。
前に同じ現象を見ていたからあまり驚きはしなかったけれど、公爵夫人が『両想いであれば精霊が認めた証が現れる』と言っていたのを思い出して、頬のあたりがじんわり熱くなった。
こ、これはやはり、両想いと考えてもいいのかしら……。
おそるおそるレイに目を向けると、口をだらしなく開けてぽかんとした顔をしている。
「まあー素敵!」
目を輝かせて舞う花びらを見るレイのお母様とは対照的だ。
浮かれた気持ちの中にモヤモヤしたものが沈んでいるのを感じた。レイへの想いを自覚する度に抑え込んだことがこのモヤモヤの原因になっているのはわかっていた。
たとえ精霊に認められたとしても、これでは意味がない――ということも。
「レイ、あの……わたし」
意を決して振り絞った声は震えていた。
わたしにとってそれは恐ろしいことだった。もうあの妹も両親もいなくなったというのに、その恐怖だけが未だにわたしの心を縛っている。
「レイのことが……ずっと好きだったの」
決して口にすることのできなかった言葉。
想いを伝えられたらどれほど心が軽くなるのかと思っていたけれど、逆に息苦しくなるほど胸を締め付けられる。
好きだと言うことがこんなに苦しいなんて思っていなかった。
あの時のレイもこんな気持ちだったのかも――
「……僕がジェシカを好きだと言った時のことを覚えている?」
「えぇっ」
ちょうどその場面を思い出していたわたしは、驚くあまり変な声を出してしまった。
「ご、ごめんなさい……わたし、レイの言葉は覚えているけど、自分がなんて答えたか覚えてなくて……」
「そうなんだね」
目の前のすらりとした眉毛が少し下がる。
「あの時、『わたしはわたしが好きじゃない』――って、ジェシカは言ったんだよ」
記憶の中の靄がかかっていた部分が急に明るくなったのを感じた。
あれは風が心地良い初夏の昼下がりのことだった。
会話が途切れた瞬間、突然レイから告げられた好意に対してわたしは戸惑っていた。
両親からの愛を何度も期待しては裏切られ続けたわたしは、他人を信じることに臆病だったのだと思う。美しくて愛らしいエイミィが近くにいるのだから、彼女に劣る存在をわざわざ好きになるはずがないと。
素直に好意を受け取ることができなかったわたしは、つぶやくような小声で答えた。
『……わたしは、わたしのこと、好きじゃないから、よくわからないの』
あれは間違いなく本当の気持ちで、だからこそ血を吐く思いだった。
両親やエイミィよりも誰よりも――わたしが一番わたしを嫌っていた。
レイに触れているわたしの手を、彼はもう片方の手でそっと包み込んだ。それがとても優しくて、温もりを感じるのと同時に鼓動が早くなった。
「あの時、何ていうか……ジェシカは、ジェシカじゃない誰かになりたいのかなって、僕は思ったんだ」
彼の頬には赤みが差していた。窓の外は雪が降っていて、夕日が当たっているわけではない。彼もわたしと同じようにドキドキしているのだろうか。
「全くの別人というわけにはいかないけど、ここなら王都のジェシカ・シェリーズを知っている人間はいないから、名前を変えてみたり、なりたい自分になったりするのもいいんじゃないかと……」
「えっ?」
「もっとはっきりお言いなさい」
予期せぬ提案に驚いていたら、レイのお母様がイライラした様子で唇を噛んでいるのが見えた。
「……ジェシカ、僕と結婚してくれないか!」
「ええっ」
レイに手をぎゅっと握りしめられて、わたしの心臓の音はますます激しくなった。こんな風に求婚されることを夢見なかったと言えば嘘になる。それがレイからとなれば断ることなど考えられない。
でも……。
「と、とても嬉しいの、ですが……」
「何か問題があるの?」
レイのお母様が首を傾げる。
「……今のわたしは平民なので、ここのお家とは釣り合わないと……」
「まあジェシカちゃんつまらないことを気にするのね、あの王族が決めた身分なんかに意味はないのよ誰にも文句は言わせないわ!」
テーブルに身を乗り出して、レイのお母様は早口で一気に言った。
「ここの領地は百年くらい前まで別の国だったの。だから国王への忠誠心はほぼないし、結婚相手に口を出される筋合いもない。……それに、レイはジェシカちゃんへの気持ちだけで領主になったくらいなのよ。今さら他の娘と結婚するなんて無理でしょう。我が子ながら執着心が強くてうんざりしちゃうけど」
「母さま、それは少し言い過ぎでは……」
「あら、本当のことじゃないの」
仲のいい親子が微笑ましい言い合いをしている中、わたしはレイのお母様の言葉に驚いていた。
「領主って……レイが?」
「あっ、そうなんだよ。言うの忘れてた」
まるで紅茶に砂糖を入れるのを忘れていたような気安さでレイは笑った。
「ジェシカのために……って言いたいところだけど、父さまが病気になったからでもあるんだ」
あのお別れに青い石をくれた時、実はレイのお父様が倒れてしまっていて、レイとレイのお母様は急いで王都から戻らなくてはならなくなったのだそうだ。
「父さまは倒れてすぐに目を覚ましたから、その時は大丈夫だったんだ。でもその二年後にまた倒れて……今度は目を覚まさなかった」
「二年の間に領地のことは引き継ぎができたのよ。けど当時この子はまだ十四歳だったからねえ……今年十六歳になってようやく家督を譲ったの」
レイの家の領地はとても広いと聞いている。わたしが家族のことでウジウジ悩んでいる間、彼は領主の仕事をして両親を支えていたのだ。自分が子供すぎて恥ずかしい。
「た……大変だったのですね。わたし、知らなくて……」
「いいえ、そうでもなかったわ」
レイのお母様は意外にもあっけらかんとしていた。
「ジェシカちゃんを迎えに行くならこれくらいしないと……って焚きつけたら何でも『やる』って言うんだから、こっちは楽なものよ」
ほほほと高笑いをするレイのお母様の隣でレイの目はどんよりと曇っていた。
「大変だったのね……」
「いやまあ、いずれはやらなくちゃいけないことではあるから……。それより、さっきの求婚の答えは、まだもらえないかな……?」
ふわっと優しく微笑んだレイは、まだわたしの手を握ったままだった。
わたしはその上から、そっともう片方の手を乗せる。笑いかけたつもりだったのだけれど、涙で視界が滲んでいった。
「……なりたい自分になったらって、さっきレイは言ったけど、わたしは自分がどうなりたいのか……わからなくて」
まとまらない言葉をレイは静かに聞いてくれていた。
「でも、わたしは変わりたいんだと、思うの。だから……すごく、嬉しかった」
レイの青い目が近づいてきてわたしの顔をのぞき込む。
青い光の花びらは合わせた手の中からあふれ続けていた。前に見た時と違ってすぐには消えず、広い床を埋め尽くして降り積もっていく。
「ずっとジェシカを迎える準備をしてきたんだ。断られたらどうしようって思ったら、急に怖くなった」
「こ、断るなんて……! わたしで良かったら、喜んで、お受けします!」
近くで見つめられるのが恥ずかしくて、湯気が出そうなくらい顔が熱くなった。
「……ジェシカは、今のままでもいいと思うんだけどね」
髪に付いた青い花びらを取る振りをして、レイはわたしの頬にチュッとキスをする。
わたしは思わず真っ赤な顔をレイの胸に押し付けていた。
花びらは喜ぶように光りながら、何日間か部屋の中で舞い続けた――という話を後になって聞いた。
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