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第1章
第2話 『縛り』と『約束』(前編)
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信じられねぇ……。
俺は男を殴った拳に目を落とした。
当然だが自分の手である。
その手が、人を吹き飛ばしたとは到底思えなかった。
あ。そうだ。
ステータスはどうなったんだ?
俺は男を腕一本で倒した。
目的が達成されたことによって、何か変化しているかもしれない。
目をつむり、俺は自分のステータスを覗き見る。
「――――ッ!」
やはり『現在の縛り』の項目が、また空欄になっていた。
だが――。
名前 四條 陸
年齢 22
種族 人間
職業 勇者
――――――――――――――
レベル 1
攻撃力 120
防御力 60
素早さ 70
スタミナ 30
状態耐性 50
――――――――――――――
スキル 縛りプレイ
――――――――――――――
現在の縛り なし
ステータスはそのままになっている。
行動を縛り、目的を達成すれば、数値は引き継がれるのか。
俺は試しに倉庫にあった木箱に拳をぶつけてみた。
バギィン!!
軽々と木箱をぶち抜く。
それもかなり軽い力で。
やっぱりだ。
ステータスの数値は間違いない。
俺は強くなっていた。
「ひゃっ!」
悲鳴を上げたのは、ルーナだった。
少し離れたところで、俺を見ている。
尻尾を垂らし、身体を振るわせていた。
「リックお兄ちゃん、どうしたの?」
「ああ。ごめんごめん。怖がらせちまったな。大丈夫なんでもない。むしろいいことだから」
「そう……」
不安げな顔で、俺を見つめる。
まだちょっと信頼を得てないみたいだな。
無理もないか。
それよりも、俺はルーナとあってからずっと気になっていたことがあった。
「な、なあ、ルーナ。さっき、俺のことなんて言った?」
「え? えっと……。リックお兄ちゃん」
「はああああ」
俺は天に昇るような気持ちだった。
「お兄ちゃん」という言葉が、頭の中で鐘のように鳴り響く。
胸がいっぱいになり、幸せな気持ちが俺を包んだ。
どうやら俺は「お兄ちゃん」というワードに弱いらしい。
ルーナは十分魅力的だしな。
あと、くるくる動く耳も、フワフワの尻尾も愛くるしい。
身なりを整えてやれば、かなりの美少女になるだろう。
ちょっと楽しみだ(にやり)。
俺はルーナを見ながら、和んでいると、外から声が聞こえた。
「お、おい! なんだ?」
「仲間が伸びてるぞ」
「さっき倉庫の方で物音がしたぞ」
「もしかして、あの黒髪が逃げたのか?」
どんどん人が集まってくる。
げっ! 仲間がいたのか!
そりゃそうか。
1人で奴隷を集められるわけがないしな。
「ルーナ! ともかく逃げるぞ」
「う、うん!!」
俺たちは倉庫を出る。
そこは暗い森の中だった。
倉庫の背後には、屋敷跡がある。
廃墟寸前だが、人には見せられないものを隠すにはちょうどいいだろ。
「いたぞ!」
暗闇の中で、禿頭の男が叫ぶのがわかった。
俺はルーナの手を引き、森の中を逃げる。
迎え撃ってもいいが、まだ『縛りプレイ』は未知数すぎる。
複数を相手にするには、もっと使いこなしてからだ。
「キャッ!」
ルーナは木の根に足を取られる。
そのまますっ転んだ。
膝には血が滲んでいた。
これでは走るのは無理である。
仕方ない……。
結局、男たちを迎え撃つ。
下品な笑みを浮かべ、悪党顔が5人――俺たちを囲んだ。
手にはショートソードが握られている。
「ここまでだ。お? ルーナじゃねぇか。お前、裏切るのか? 父ちゃんと母ちゃんを探せなくなるぞ」
「ルーナの両親は俺が探す。責任を持ってな」
「おうおう。ヒーロー気取りかよ、兄ちゃん」
「お前らみたいなヤツを、弟に持った覚えはないぞ」
「へらず口は1人前だな」
「ルーナはどうする?」
「やっちまっていいじゃないか?」
「生かしておいても意味ないしな」
「生かしてて、何の役にも立たねぇからな」
およそ人間が話す言葉とは思えない。
男達から発せられたものは、絶望的な内容だった。
ルーナは耳を隠するように頭を抱える。
その小さな身体は震えていた。
見ればわかる。
こいつらに相当ひどい仕打ちをされてきたのだろう。
怒りがこみ上げてきた。
それをそのまま言葉にし、俺は叫ぶ
「ルーナには指一本たりとも触れさせねぇ《ヽヽヽヽヽヽ》!」
すると、俺の頭の中で文字が閃いた。
『縛り;ルーナには指一本触れさせない』を確認しました。
『縛り』ますか? Y/N
また出た!
今度の縛りは違う。
どうやら俺の言葉の中に、行動の制限に関する文言があった場合、自動的に発動するのだろう。
今回はさっきの縛りとは違う。
俺だけではなく、ルーナにも関係してくることだ。
もし、この縛りが失敗したら……。
考えている時間はない。
決めろ!
俺が彼女を守るんだ。
「YESだ!」
確認しました。縛りプレイを開始します。
(※ 後編へ続く)
俺は男を殴った拳に目を落とした。
当然だが自分の手である。
その手が、人を吹き飛ばしたとは到底思えなかった。
あ。そうだ。
ステータスはどうなったんだ?
俺は男を腕一本で倒した。
目的が達成されたことによって、何か変化しているかもしれない。
目をつむり、俺は自分のステータスを覗き見る。
「――――ッ!」
やはり『現在の縛り』の項目が、また空欄になっていた。
だが――。
名前 四條 陸
年齢 22
種族 人間
職業 勇者
――――――――――――――
レベル 1
攻撃力 120
防御力 60
素早さ 70
スタミナ 30
状態耐性 50
――――――――――――――
スキル 縛りプレイ
――――――――――――――
現在の縛り なし
ステータスはそのままになっている。
行動を縛り、目的を達成すれば、数値は引き継がれるのか。
俺は試しに倉庫にあった木箱に拳をぶつけてみた。
バギィン!!
軽々と木箱をぶち抜く。
それもかなり軽い力で。
やっぱりだ。
ステータスの数値は間違いない。
俺は強くなっていた。
「ひゃっ!」
悲鳴を上げたのは、ルーナだった。
少し離れたところで、俺を見ている。
尻尾を垂らし、身体を振るわせていた。
「リックお兄ちゃん、どうしたの?」
「ああ。ごめんごめん。怖がらせちまったな。大丈夫なんでもない。むしろいいことだから」
「そう……」
不安げな顔で、俺を見つめる。
まだちょっと信頼を得てないみたいだな。
無理もないか。
それよりも、俺はルーナとあってからずっと気になっていたことがあった。
「な、なあ、ルーナ。さっき、俺のことなんて言った?」
「え? えっと……。リックお兄ちゃん」
「はああああ」
俺は天に昇るような気持ちだった。
「お兄ちゃん」という言葉が、頭の中で鐘のように鳴り響く。
胸がいっぱいになり、幸せな気持ちが俺を包んだ。
どうやら俺は「お兄ちゃん」というワードに弱いらしい。
ルーナは十分魅力的だしな。
あと、くるくる動く耳も、フワフワの尻尾も愛くるしい。
身なりを整えてやれば、かなりの美少女になるだろう。
ちょっと楽しみだ(にやり)。
俺はルーナを見ながら、和んでいると、外から声が聞こえた。
「お、おい! なんだ?」
「仲間が伸びてるぞ」
「さっき倉庫の方で物音がしたぞ」
「もしかして、あの黒髪が逃げたのか?」
どんどん人が集まってくる。
げっ! 仲間がいたのか!
そりゃそうか。
1人で奴隷を集められるわけがないしな。
「ルーナ! ともかく逃げるぞ」
「う、うん!!」
俺たちは倉庫を出る。
そこは暗い森の中だった。
倉庫の背後には、屋敷跡がある。
廃墟寸前だが、人には見せられないものを隠すにはちょうどいいだろ。
「いたぞ!」
暗闇の中で、禿頭の男が叫ぶのがわかった。
俺はルーナの手を引き、森の中を逃げる。
迎え撃ってもいいが、まだ『縛りプレイ』は未知数すぎる。
複数を相手にするには、もっと使いこなしてからだ。
「キャッ!」
ルーナは木の根に足を取られる。
そのまますっ転んだ。
膝には血が滲んでいた。
これでは走るのは無理である。
仕方ない……。
結局、男たちを迎え撃つ。
下品な笑みを浮かべ、悪党顔が5人――俺たちを囲んだ。
手にはショートソードが握られている。
「ここまでだ。お? ルーナじゃねぇか。お前、裏切るのか? 父ちゃんと母ちゃんを探せなくなるぞ」
「ルーナの両親は俺が探す。責任を持ってな」
「おうおう。ヒーロー気取りかよ、兄ちゃん」
「お前らみたいなヤツを、弟に持った覚えはないぞ」
「へらず口は1人前だな」
「ルーナはどうする?」
「やっちまっていいじゃないか?」
「生かしておいても意味ないしな」
「生かしてて、何の役にも立たねぇからな」
およそ人間が話す言葉とは思えない。
男達から発せられたものは、絶望的な内容だった。
ルーナは耳を隠するように頭を抱える。
その小さな身体は震えていた。
見ればわかる。
こいつらに相当ひどい仕打ちをされてきたのだろう。
怒りがこみ上げてきた。
それをそのまま言葉にし、俺は叫ぶ
「ルーナには指一本たりとも触れさせねぇ《ヽヽヽヽヽヽ》!」
すると、俺の頭の中で文字が閃いた。
『縛り;ルーナには指一本触れさせない』を確認しました。
『縛り』ますか? Y/N
また出た!
今度の縛りは違う。
どうやら俺の言葉の中に、行動の制限に関する文言があった場合、自動的に発動するのだろう。
今回はさっきの縛りとは違う。
俺だけではなく、ルーナにも関係してくることだ。
もし、この縛りが失敗したら……。
考えている時間はない。
決めろ!
俺が彼女を守るんだ。
「YESだ!」
確認しました。縛りプレイを開始します。
(※ 後編へ続く)
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