縛り勇者の異世界無双 ~腕一本縛りからはじまる異世界攻略~

延野 正行

文字の大きさ
12 / 48
第1章

第5.5話 ハンバーガーとスライム③

しおりを挟む
 俺の最初のクエストは、10体のスライム討伐だった。
 魔物の中で、スライムが1番弱いらしい。
 見た目はぶよぶよしていて、気持ち悪いが、核さえ潰せることが出来れば、子どもでも倒せるそうだ。

『リックさんなら大丈夫です! ファイト!』

 最後はエールを送ってくれた。
 俺のことを心配してくれているのだろう。

 ネレムさんの不安をよそに、俺は落ち着いていた。

 魔物という未知の生物に対して怖くないといえば嘘になる。
 それでも、歩みを止めるつもりはなかった。
 宿でルーナが待っている。
 彼女のためにも、そして自分自身が異世界で自立して生きていくためにも、お金はどうしても必要だ。

 そのためにスライムを狩る。
 フリークエストを達成すれば、宿代と今日の夕飯をたらふく食えるぐらいの褒賞金は貰えるらしい。

 しかし、スライムを狩るよりも、スライムを見つける方が大変だった。
 王都周辺に棲息していると聞いたが、どこにもいない。
 俺は目を皿にして、スライムを探した。
 すると――。

「いた!」

 1匹の青いスライムを見つける。
 草場の中を隠れるように進んでいた。
 俺はダッと地を駆ける。
 拳を振り上げ、一気にその核を潰そうとした。

 だが、俺はつと足を止める。

「あれは!?」

 その瞬間だった。

 ぐしゃっ!

 青いスライムが弾ける。
 核が割れ、飛び散った。

「お前……」

 やったのは俺じゃない。
 頬を張らした大柄の男だった。
 覚えている。いや、忘れもしない。
 俺が昨日ギルドでのしたヽヽヽ、元ギルドマスターだ。
 確かヴィンターという名前だったはず。

「よう、小僧……。こんなところで会うとは奇遇だな」

「あんた、何をしてるんだよ。こんなところで」

「見てわからないか? スライム狩りさ?」

 ヴィンターは、懐から丸い玉を取り出した。
 捕獲玉という魔法道具である。
 そこに魔物を閉じ込め、ギルドに提出しなければならない。

 男は捕獲玉を掲げた。
 すると、倒したスライムが、玉の中に吸い込まれていく。

 そして、また男と目が合った。
 へラッと笑みを浮かべる。
 明らかに俺を馬鹿にした笑顔だった。

「どうした、勇者様よ。まさか勇者様とあろうお方が、スライム1匹も倒せないとかいうんじゃないだろうな」

「倒せないんじゃない。見つからないだけだ」

「見つからない? そうか? オレはもう20匹も倒したぜ」

 捕獲玉を掲げる。

「おかしいなあ。スライムなんて簡単に見つけられるのに。それが見つからないなんて……。ぎゃはははは! やっぱりお前、外れ勇者じゃねぇの?」

「どうやら、まだ俺の実力を疑ってるらしいな。そんなに知りたいなら――」

 俺は構える。
 すると、ヴィンターは手を振った。

「おお、怖っ! 血の気の多い勇者様だ。痛い目を見ないうちに、退散するか。けど――」

「けど、なんだ?」

「あんた、そんなんじゃ。一生スライムを見つけられないぜ」

 ぎゃははははは!

 下品な笑みを浮かべて、ヴィンターは去って行った。

 全く……。
 気分の悪いヤツだ。

 あいつの魂胆はわかっている。
 俺を邪魔しにきたのだろう。
 そうでなければ、ヴィンターがスライムという雑魚魔獣を倒すはずがない。

 俺のクエスト達成を阻んでいるのだ。

 ネレムさん曰く、1度受けたクエストが未達成だと、ギルドの貢献度に大きく影響するのだという。
 ギルドがもっとも注視するのは、冒険者の強さではなく、信頼だと断言していた。
 いくら強くても、クエストを途中でほっぽり出すような人間に、仕事は依頼できないというわけだ。

 このままでは、俺の貢献度が下がってしまう。

 なんとかしなければ……。


 ◆◇◆◇◆


 夕方になって、俺はギルドへ帰還した
 スイングドアを開けて、中に入ると、ヴィンターが俺を出迎える。
 口角を上げながら、俺の方に近づいてきた。

「どうだった、勇者様? 成果は? ちゃんとスライム、10匹倒してきたんだろうな」

 俺は無視して、カウンターに進む。
 ネレムさんが待っててくれた。
 険しい俺の顔を見て、何かを察したらしい。
 不安そうな表情を、俺に向けた。

「どうでした、リックさん?」

「すまない、ネレムさん」

「え? もしや――」

 ネレムさんは口元に手を当てる。
 ヴィンターがニヤリと笑った。

 俺は捕獲玉を解放する。


(※ ④に続く)
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~

甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって? そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ
ファンタジー
 恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。  いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。  モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。  そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。  モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。  その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。  稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。 『箱を開けるモ』 「餌は待てと言ってるだろうに」  とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。 スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。 ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。 驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。 ※カクヨムで先行配信をしています。

処理中です...