縛り勇者の異世界無双 ~腕一本縛りからはじまる異世界攻略~

延野 正行

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第1章

第7.5話 奴隷と包帯エルフ(後編)

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「ボーヤーさん、これって……」

 俺は事情を尋ねる。
 ボーヤーさんは険しい顔のまま事情を話してくれた。

 ティレルは呪い憑きの奴隷エルフだった。
 様々な奴隷商を転々とし、ボーヤーさんのところにやってきた。
 奴隷が同じ奴隷商のところにいられるのは、最大3年間と法律で決められている。
 市場の流動性を高めるためらしい。

「その3年間が過ぎればどうなるんだ?」

「他の奴隷商に売るか、それとも……」

 ボーヤーさんは下を向く。
 その説明を補足したのは、ゲルダという奴隷商だった。

「国に引き渡して、魔導の実験サンプルになるかだ」

「それって――」

「生き残れば幸運ってヤツだな。かといって、放逐したところで運命は一緒だ。いずれくたばるさ。こんな呪い憑きのエルフ」

「ぐっ……」

 ゲルダはティレルの首の巻いた鎖を引っ張る。
 やっと聞いた彼女の声は、重苦しい悲鳴だった。

 ティレルは助けを求めることもない。
 濁った水色の瞳は、まるで涙を絞り尽くしたあとのようだ。
 光はなく、絶望に満ち満ちている。
 己の運命を受け入れているような目だった。

 その彼女を見ながら、俺は「助けてあげたい」と思った。
 何故だかわからない。
 今日、初めて出会った少女に、俺は強く同情していた。

 これが『勇者』の性っていうヤツだろうか。

「ボーヤーさん、俺が彼女を買います」

「兄さんが……? いや、しかし無理だ。交渉の優先権は先に契約したゲルダの方にある」

「でも、このままじゃ。ティレルが可哀想だ」

「わかってる! わかってるんだよ。たった3年間だが、彼女はここにいた。私にとって、ここにいる奴隷は商品であると同時に、家族なんだ。それを手放さなきゃならないなんて――」

 ボーヤーさんはぐっと奥歯を噛んだ。
 この件で、俺以上に心を痛めているのは、ボーヤーさんらしい。
 その彼は出来ないといっている。
 よっぽどのことがなければ、無理なのだろう。

 だったら……。

 せめて……。せめて呪いだけでも解いてあげたい。

 一時でもいい。
 彼女を笑顔にさせたい。
 たとえ、それが俺のエゴであってもだ。

 でも、どうすれば……。

「お兄ちゃん」

 ルーナは俺の服の裾を掴む。

「エルフのお姉ちゃんを助けてあげて」

 懇願した。
 その言葉を聞いた時、俺はすべての疑念を払い飛ばす。
 気がつけば、ティレルの前に立っていた。

 現れた俺を見て、ゲルダは怒声を上げる。

「てめぇ、何をしよってんだ?」

「ティレルの呪いを解く」

 ティレルの方を向き、俺は思考する。

 ステータスが異常に高いからといって、この呪いが解けるわけがない。
 あとはスキル『縛りプレイ』次第だが……。

 俺の言葉を聞き、ゲルダは目を細める。
 黒髪と黒目を見て、何か察したらしい。

「ははーん。お前、噂の外れ勇者だな。はは……。無駄だ、無駄。その呪いは解けないぜ。王都の司祭でも無理だったそうだからな」

「うるせぇ……。黙ってろ。こんな呪い。指先1つで吹ヽヽヽヽヽヽき飛ばしてやヽヽヽヽヽヽるよヽヽ

 そう俺が言った瞬間だった。
 いつもの文字が浮かぶ。


 『縛り;呪いを指先1つで吹き飛ばす』を確認しました。
 『縛り』ますか?  Y/N


 俺は呆然とした。
 出来るのか?
 いや、考えている場合じゃない。
 そうだ。俺が出来るのは、『縛る』ことだけだ。

「YESだ」


 確認しました。『縛りプレイ』を開始します。


 その瞬間、頭の中にステータスが浮かび上がった。


  名前    四條 陸 
  年齢    22
  種族    人間
  職業    勇者
 ――――――――――――――
  レベル     1
  攻撃力   580
  防御力   320
  素早さ   320
  スタミナ  140
  状態耐性  810
 ――――――――――――――
  スキル   縛りプレイ
 ――――――――――――――
  現在の縛り 呪いを指先1つで吹き飛ばす
 ――――――――――――――
  称号    ギルドマスター
        呪解マスター


 『状態耐性』が3倍になっていた。
 だが、それ以外の数値は動いていない。
 気になるのは、称号の『呪解マスター』だ。
 おそらくこの称号を得たことによって、状態耐性だけが増幅したのかもしれない。

 これで呪いが解けるのか?
 ええい! ダメもとだ! やってみよう。

 俺はティレルのおでこ付近に指先を近づけた。

 この時、初めて彼女が反応する。
 顎を上げて、「うう……」と呻いた。

「心配するな。軽くコツくだけだから」

 安心させるように笑う。

 そして、俺はティレルのおでこを指で突いた。


 ぶぉぉおおおぉぉぉおおぉぉおぉおぉおぉおぉぉおぉ!!


 瞬間、何か黒い霧のようなものが、ティレルから吐き出されるのだった。
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