縛り勇者の異世界無双 ~腕一本縛りからはじまる異世界攻略~

延野 正行

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第1章

第9.5話 幼女スキーと魔物の群れ(後編)

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 だが、もう1つの気配を感じる。
 ギラードウルフを挟んだ森の向こう。
 男が息を潜めているのが見えた。
 武器を持っているところをみると、おそらく同業者だろう。

 向こうも俺の視線に気付いたらしい。

 俺に獲物を獲られると思ったのだろう。
 冒険者はギラードウルフの前に踊り出た。
 奇襲とばかりに、剣を振るう。
 あっさりと成功し、体躯を傷つけた。
 だが、浅い。
 あれでは致命傷にならないだろう。

 冒険者とギラードウルフは睨み合う。
 再び攻撃が再開か、と思った時、あろうことか魔物は尻尾を巻いて逃げ始めた。

 うん? ちょっと待て?
 おかしい。
 ギラードウルフは矜恃の高い魔物じゃないのか?
 敵に背を向けるのは、何か……。

「あ……。待て!!」

 冒険者は追いかける。

「おい! 待て!! 何かおかしい」

「うるせぇ。お前にはやらせねぇ! あれはオレの獲物だ」

 すっかり功名心にはやった冒険者は、ギラードウルフが向かった森の奥へと走っていく。

 どうする?

 俺は一瞬迷ったが……。

「ほっとくわけにはいかないか」

 冒険者の後を追った。

 しばらくして悲鳴が聞こえる。
 同時に俺も森を抜けた。
 開けた場所に出る。

「――――ッ!」

 そこにいたのは、ギラードウォルフの群れだった。
 8、9、10体か。
 虎よりも大きな巨躯をそびやかし、俺たち人間を威嚇している。

 冒険者は尻餅をついていた。
 血気に逸った表情は一転し、蒼白になっている。
 涙を浮かべ、唇を震わせていた。

「おい。逃げろ!」

 俺は冒険者に向かって怒鳴る。
 だが、なかなか立ち上がらない。
 ややぬかるんだ地面に足を取られてばかりいた。

「こ、こしがぁ……。腰がぬけてぇ」

 はあ……。
 全く情けないヤツだ。
 さっきまでの威勢が完全に吹き飛んでるじゃないか。

 俺は冒険者の前に立つ。

「た、助けてくれるのか?」

「ああ。不本意だがな」

 よく見たら、知ってる顔だった。
 前ギルドマスター――ヴィンターと一緒につるんでいたヤツである。
 ったく、俺よりはベテランなんだろ。
 これぐらいの罠ぐらい見抜けよ。

 おそらく最初の1頭は、冒険者をおびき出す罠だろう。
 適当に戦ったところで退き、群れがいる方へと誘い出す。

 つまりは、この冒険者よりも、ギラードウルフの方が1枚上手うわてだったということだ。

「1歩も動くなよ」

「あ、ありがてぇ。ありがてぇ」

 冒険者は涙を流しながら感謝する。
 手を合わせ、俺を神様みたいに崇めた。

 一方、ギラードウルフが集まってくる。
 俺を中心にぐるぐると周りながら、徐々に輪を狭くしていった。

 慎重だな。
 人間よりも、外れ勇者といわれた俺のことを評価してくれているらしい。
 かなり知能があるようだ。

『わぉぉぉぉぉぉぉおおぉおぉおぉおぉおぉおぉおお!!』

 どこからか遠吠えが聞こえた。
 それが合図だったのだろう。
 9匹のギラードウルフは一斉に襲いかかってくる。

 速い!

 しかも同時多面攻撃。
 いくら俺が速くても対応ができない。
 その時、俺の視界にあるものが目に入った。

「お前の剣を借りるぞ!」

 承諾を得る前に、俺は男の手にあった剣を奪い取る。
 武器を使うのは初めてだ。
 ファイヤースライムを倒したのも素手だった。
 それは相手がぶよぶよしていて、倒しやすかったからだ。

 だが、目の前のギラードウルフは違う。
 大きな巨躯と、針金のような硬い毛に覆われている。
 拳1つで倒すせるのは、精々2匹。

 けれど、剣ならば――。

「うぉぉぉおおおおおぉおおぉおおおおぉおおお!!」

 裂帛の気合いを叫ぶ。

 同時に襲いかかってきたギラードウルフに向かって、剣を薙いだ。
 勢いを止めず、俺はその場で一回転する。

 ふわり……。

 砂煙が舞った。
 瞬間――。

 ブシャッ!

 魔物の青白い血の華が咲き乱れる。
 9体のギラードウルフが真っ二つに切り裂かれていた。

 どさり、と魔物は倒れ、青い血が地面に滲む。
 冒険者は自分の股下まで伸びてきた血におののいた。

「すげぇ……」

 俺は残心を解く。
 魔物の血に濡れた剣を振った。
 青い血が木に飛び散る。

 肩を刀身で叩きながら、俺は睨んだ。

「次はお前の番だぞ」

 岩の上に立つギラードウルフに宣戦布告するのだった。



Pick up!

  呼称    ギラードウルフ
  系統    魔物
  種族    魔狼族
 ――――――――――――――
  レベル     7
  攻撃力    56
  防御力    51
  素早さ   119
  スタミナ   91
  状態耐性   41
 ――――――――――――――
  称号    兵隊補正 +5
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