縛り勇者の異世界無双 ~腕一本縛りからはじまる異世界攻略~

延野 正行

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第1章

第13.5話 武器屋とカタナ(後編)

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 他の剣とは違って、柄の形が変わっていた。
 拵えもやたら装飾されている。
 試しに握ってみる。

 あれ……。結構手に馴染むな。

 導かれるように鞘から剣を抜く。

 それはわずかに反りが付いた曲刀だった。
 剣と比べれば、刀身が細い。
 しかし、とてもしなやかで、獰猛な牙を思わせた。
 少し錆があるが、薄暗い店内の中でも妖艶に輝いている。

 その刀身の美しさに、俺は魅入られていた。
 何度も刀身の具合を確かめる。
 俺は自然と呟いていた。

「これは、カタナだな」

「カタナ? 聞いたことがねぇ武器だな」

 デレクーリさんは首を傾げる。

「なんとなく、そんな名前のような気がするんです」

「ふーん。もしかしたら、勇者様がいたっていう異世界の武器かもしれないな。たまにそういうのが持ち込まれるんだよ。たぶん、他の勇者様から流れて来たんだと思うんだけど」

 さらりと重要な情報を、店主は喋る。
 俺は思わず反応した。

「そういえば、他にも勇者がいるんだったな」

「そりゃいるさ。勇者ってのは定期的に召喚されているからな」

 王も5年がどうのっていったからな。
 いるとは思ってたけど。
 会ってはみたいな。
 共闘して、元の世界に戻るという選択肢もあるし。

 ……とりあえず、今は武器だ。

「試し切りしてみたいんだけど」

「マジで、そのほっそい剣が気に入ったのか? やめとけやめとけ。また折れちまうぞ」

「それを試すだけですよ」

「じゃあ、さっきの大剣を使いな」

 店主はカウンターから出てくると、大剣を床に突き刺した。

「いいんですか? 何かあったら……」

「そのカタナってヤツで、この大剣を切るっていうのか? 冗談だろ。そんなこと出来るんだったら、代金はタダでいいよ」

 デレクーリさんは自信満々である。
 代金はタダか。
 いいのか、そんなことを言って。
 本当に斬っちまうかもしれないぞ。

 なんとなくそういう気がするんだ。

 このカタナとは、長い付き合いになりそうだって。

 瞬間、文字を閃いた。


 『縛り;武器「カタナ」縛り』を確認しました。『縛り』ますか?  Y/N


 俺に迷いはない。
 答えはYESである。


 確認しました。『縛りプレイ』を開始します。


 ステータスが頭の中で自動的に開く。


  名前    リック
  年齢    22
  種族    人間
  職業    勇者
 ――――――――――――――
  レベル     1
  攻撃力   580
  防御力   320
  素早さ   320
  スタミナ  140
  状態耐性  810
 ――――――――――――――
  スキル   縛りプレイ
 ――――――――――――――
  現在の縛り 武器『カタナ』縛り(永続)
 ――――――――――――――
  称号    ギルドマスター
        呪解マスター
        達人 Lv3
 ――――――――――――――
  補正    武器強度  +Lv10
        武器切れ味 +Lv10


 すると、突然カタナが光り出す。
 それを見て、デレクーリさんは慌てた。
 「ちょっと待って! 兄ちゃん!」という声が聞こえた時には、俺は身体はカタナと同じく、しなやかに動いていた。

 コォンッ!!

 金属を打ち鳴らすような音が響く。
 ヒュッと風を切るような音が鳴った後、天井に何かが刺さっていた。
 見えたのは、折れた刀身の部分を含んだ柄の部分である。

 大剣は見事真っ二つに斬り裂かれていた。

「な、な、な、なんだと……」

 デレクーリさんは、あんぐりと口を開けたまま固まっていた。
 俺は残心を解き、カタナを鞘に収める。

 決まりだな。

「デレクーリさん、このカタナを買い取らせてください」

 俺は一生こいつと添い遂げると決めたのだった。
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