1 / 74
第一章
プロローグ
しおりを挟む
鉛のように重い瞼を開いた時、視界に映ったのは火の海だった。
燃え上がる炎は天まで昇り、1本柱に括り付けた私を嘲笑っている。
熱い……。
熱い……。
熱い……!
炎が私を焼く。
襤褸を焼き、白い肌は真っ赤に染め、生きる力を消耗させていく。
息をするだけで、地獄のような痛みが喉を走り、体内の水気を奪っていった。
唇はカラカラ。汗は出ても、すぐに乾いてしまう。すでに足の感覚がない。
否応なく、私は火中にいた。
助けを呼ぼうにも、喉が嗄れて声がでない。
せめて目で訴えかけたが、見えるのは火の海と私を見て笑う人間たちの姿だった。
口々に罵詈雑言を浴びせ、怒りを私にぶつけている。
老婆が呪いの言葉を吐いて、祈っているのが見えた。
子どもが私に石を投げつけてくる。
(……なぜ? どうしてこうなったのかな?)
天を恨めしく覗き見て、己の半生を述懐する。
私は聖女だった。
魔王討伐の使命を帯び、勇者や戦士、他様々の名うての実力者と共に王国から旅立った。
旅は苦難の連続だ。それでも聖女と勇者はすべてを乗り越え、ついに魔王を討ち取った。
私と仲間たちは英雄となった。どこの街や国へ行っても歓迎され、称賛された。
旅を終えた私は、国の要職を担うことになった。だが、1年も経たないうちに私は国の王子に見初められ、婚約した。
そう。そこまでは良かった。私の人生は順風満帆――――のはずだった。
婚約が決まってから、私は王子の補佐に周り、それがいつしか政に口出すようになった。
聖女の言葉に民衆は傾いた。家臣たちも王や王子の言葉よりも、私の言葉を聞くようになった。
ある時から国王は戦争を始めようとしていた。
折角、魔王が倒され、平和な世になったというのに今度は今まで力を合わせていた人間と戦おうというのだ。
私は何度も国王にお目通り願い、戦さを止めるように進言した。
国王の息子である王子にも、王を諫めるように説得した。
しかし、うまくいかなかった。
それどころか王子から一方的に婚約破棄された。
理由を聞いたら「真実の愛に目覚めた」――のだそうだ。
さらに国王は私に付き従った家臣たちを、あらぬ罪で裁き、あるいは追放していった。
そして気が付いた時には、自分の周りに味方がいなくなっていた。
かつての仲間たちは田舎に帰り、残っていた勇者たちは全員王子の側についた。
結局、私は王族に対する侮辱罪で、火炙りが決まった。
私は進言しても、1度も国王や王子を侮辱したり、卑下するようなことを言ったことがない。
つまりは濡れ衣だった。
私が火刑台に吊されても、誰も助けようとはしない。
後ろの方で王子と国王、かつての仲間たちが笑っているのが見えた。
私は1人だ。
大勢の悪意と炎に包まれながら、私はまた天を仰ぐ。
「またか……」
私は聖女だ。
その前の前世も聖女だった。
その前の前も……。
そして、それはすべて悲劇的な終わりを告げた。
しかも、いずれも世界を救った後に起こっている。
初めは毒殺され、2度目は過労死、そして3度目は火あぶりだ。
さすがに3回目となると、もう感慨が浮かばないと思いきや、これはこれで悔しい気持ちでいっぱいだった。
私はその抱えた気持ちを吐き出すべく、息を吸う。
喉が焼け付くように痛かったが、もはやどうでもよくなっていた。
「どうしていつもこうなのよぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおお!!」
逆巻く炎の中に、私の声は飲み込まれていった。
燃え上がる炎は天まで昇り、1本柱に括り付けた私を嘲笑っている。
熱い……。
熱い……。
熱い……!
炎が私を焼く。
襤褸を焼き、白い肌は真っ赤に染め、生きる力を消耗させていく。
息をするだけで、地獄のような痛みが喉を走り、体内の水気を奪っていった。
唇はカラカラ。汗は出ても、すぐに乾いてしまう。すでに足の感覚がない。
否応なく、私は火中にいた。
助けを呼ぼうにも、喉が嗄れて声がでない。
せめて目で訴えかけたが、見えるのは火の海と私を見て笑う人間たちの姿だった。
口々に罵詈雑言を浴びせ、怒りを私にぶつけている。
老婆が呪いの言葉を吐いて、祈っているのが見えた。
子どもが私に石を投げつけてくる。
(……なぜ? どうしてこうなったのかな?)
天を恨めしく覗き見て、己の半生を述懐する。
私は聖女だった。
魔王討伐の使命を帯び、勇者や戦士、他様々の名うての実力者と共に王国から旅立った。
旅は苦難の連続だ。それでも聖女と勇者はすべてを乗り越え、ついに魔王を討ち取った。
私と仲間たちは英雄となった。どこの街や国へ行っても歓迎され、称賛された。
旅を終えた私は、国の要職を担うことになった。だが、1年も経たないうちに私は国の王子に見初められ、婚約した。
そう。そこまでは良かった。私の人生は順風満帆――――のはずだった。
婚約が決まってから、私は王子の補佐に周り、それがいつしか政に口出すようになった。
聖女の言葉に民衆は傾いた。家臣たちも王や王子の言葉よりも、私の言葉を聞くようになった。
ある時から国王は戦争を始めようとしていた。
折角、魔王が倒され、平和な世になったというのに今度は今まで力を合わせていた人間と戦おうというのだ。
私は何度も国王にお目通り願い、戦さを止めるように進言した。
国王の息子である王子にも、王を諫めるように説得した。
しかし、うまくいかなかった。
それどころか王子から一方的に婚約破棄された。
理由を聞いたら「真実の愛に目覚めた」――のだそうだ。
さらに国王は私に付き従った家臣たちを、あらぬ罪で裁き、あるいは追放していった。
そして気が付いた時には、自分の周りに味方がいなくなっていた。
かつての仲間たちは田舎に帰り、残っていた勇者たちは全員王子の側についた。
結局、私は王族に対する侮辱罪で、火炙りが決まった。
私は進言しても、1度も国王や王子を侮辱したり、卑下するようなことを言ったことがない。
つまりは濡れ衣だった。
私が火刑台に吊されても、誰も助けようとはしない。
後ろの方で王子と国王、かつての仲間たちが笑っているのが見えた。
私は1人だ。
大勢の悪意と炎に包まれながら、私はまた天を仰ぐ。
「またか……」
私は聖女だ。
その前の前世も聖女だった。
その前の前も……。
そして、それはすべて悲劇的な終わりを告げた。
しかも、いずれも世界を救った後に起こっている。
初めは毒殺され、2度目は過労死、そして3度目は火あぶりだ。
さすがに3回目となると、もう感慨が浮かばないと思いきや、これはこれで悔しい気持ちでいっぱいだった。
私はその抱えた気持ちを吐き出すべく、息を吸う。
喉が焼け付くように痛かったが、もはやどうでもよくなっていた。
「どうしていつもこうなのよぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおお!!」
逆巻く炎の中に、私の声は飲み込まれていった。
7
あなたにおすすめの小説
十六歳の妹の誕生日、私はこの世を去る。
あいみ
恋愛
碌に手入れもされていない赤毛の伯爵令嬢、スカーレット。
宝石のように澄んだ青い髪をした伯爵令嬢、ルビア。
対極のような二人は姉妹。母親の違う。
お世辞にも美しいと言えない前妻の子供であるスカーレットは誰からも愛されない。
そばかすだらけで、笑顔が苦手な醜い姉。
天使のように愛らしく、誰からも好かれる可愛い妹。
生まれつき体の弱いルビアは長くは生きられないと宣告されていた。
両親の必死に看病や、“婚約者の献身的なサポート”のおかげで、日常生活が送れるようになるまで回復した。
だが……。運命とは残酷である。
ルビアの元に死神から知らせが届く。
十六歳の誕生日、ルビアの魂は天に還る、と。
美しい愛しているルビア。
失いたくない。殺されてなるものか。
それぞれのルビアを大切に思う想いが、一つの選択をさせた。
生まれてくる価値のなかった、醜いスカーレットを代わりに殺そう、と。
これは彼女が死ぬ前と死んだ後の、少しの物語。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、すれ違いの末に離れ離れになった夫婦の物語。
再会したとき、二人が選ぶのは「離婚」か、それとも「再構築」か。
妻を一途に想い続ける夫と、
その想いを一ミリも知らない妻。
――攻防戦の幕が、いま上がる。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる