22 / 27
第22話
しおりを挟む
「今度はなんだ」
爆音に気付き、圭吾はその音がした方へ向かった。何故だかそこに蒼真がいる様な気がする。
吐き気はまだ治らない。『蒼真』の最後の手の感触も手に残っている。『この部屋を破壊してほしい』それが『蒼真』の願いだった。しかし…と迷っていたところにあの科学者の話だ。知らずのうちに銃を撃っていた。
あのマッド野郎は流石に殺しはしなかったが、あの装置を壊したと言うことは殺人になるのか…。『蒼真』の生きる装置を断ったと言う事なのだから…。
警報が鳴り響く中を圭吾は走った。
さっきの爆音は一体どこなんだ。蒼真がそこにいると思うのはただのカンだが、もう、そのカンを信じていないとやっていられなかった。
一刻も早く蒼真に会いたかった。圭吾にとっての蒼真に会いたい。その想い一心だった。
「待て!」
後ろからようやく辿り着いたセキュリティが追って来る。
研究の性質と、地下4階と言う場所柄、彼らが大きな火器を使ってくる可能性はゼロに近い。
捕まるわけにはいかなかった。
「くそっどこだ!」
さっきの爆音の出どころを辿って走る。圭吾は本当にカンだけを頼りに走り続けていた。
気付いたのは蒼真の方が早かった。
打った頭のせいで意識はちょっとだけ朦朧としているが、自分より少し離れたところにハワードが倒れているのが確認できるほどには回復している。
蒼真は銃をあげて再びシステム全体に弾を撃ち込んだ。
「何をしているんだ!やめろ」
ハワードも気づいたのか、這う様にして蒼真の方へ向かってくる。
「安心していいぜ。最後から2発目であんたもシステムと一緒に殺してやるから」
最後の一発で自分も死ぬとは言わなかったが。
「しつこいな」
走り回る圭吾をセキュリティは的確に追ってくる。中にはロボットもいるから、位置もきっとバレバレなんだろうなと思うがそう思うと気が削がれるので、とりあえず走った。
しかしこのままでは、逃げることが精一杯で蒼真を探すことなんかできやしない。
「前からもか…」
前方に十字路があり、足音の感覚だと右手の方からやってくるようだ。
どうする…一気に抜けるか…それとも…
考えが纏まらないまま十字路へ来てしまい、その時は叩きのめそう!と決めて十字路へ入る、
「うわっ!」
その途端腕を掴まれ、左路地に引き込まれた。
捕まったと思い、圭吾は掴まれた腕を反対方向に振り切り、その肘で相手に一撃を喰らわそうとして肘を思い切り横に引いた瞬間、相手が両腕をクロスして防御して来た。一瞬のうちに使えるやつに会っちまったな真剣にやらないと、と思い至り反対の手で拳を作りクロスした手の下から顎を打ちに行こうとしたときに
「俺だよおれ!圭吾!打つな!!」
ブロックした手のうち一本は、即座に腹のあたりでちゃんと手のひらを下向きに第二波を抑える動きまでしていて、ジョイスはー勘弁してくれよ~ーと、動きの止まった圭吾の拳を握った。
「しかもそれどころじゃないんだよね」
手を離してすぐにしゃがみこみ壁を盾にして、やってくる追っ手の足に的確にレーザーを打ち込む作業中だった。
忙しいんだな…と加勢をしながら、圭吾は傍に座っている翔にやっと気づく。
「翔!無事だったのか!よかった!」
ハグをしている暇はなかったが、心底嬉しかった。
「はい。助けてもらいました」
追手は大方通路に転がって動けなくなった。
「少し一息入れられるぜ…」
ジョイスはポケットからキャンディーを出して翔に一つ渡し、圭吾にも要る?と聞いてきた。
「いや、いい。しかしさっきから気になっていたんだが、何故急にそんなのを舐め始めた?」
「もう成就したからいうけど、翔を助けるまでたばこ断ちしてた」
乙女でしょ?と笑っているが、ジョイスの表情は達成感で満ちていた。もらった飴を口に入れ、美味しいと笑う翔も表情が今までと全く違う。
圭吾は、蒼真も早くこんな顔して笑って欲しいもんだ…と考える。
「それにしても圭吾さっきの肘鉄本気だっただろ」
飴をカラコロ言わせて銃のカートリッジを替えながらジョイスが言う。
「そりゃあ…捕まったと思ったからな。一撃でのしておかないと、後々面倒だし。お前こそあれをよく止めたな。それに第二波の防御まで見事だった」
2人は顔を見合わせ、ーっち、まだ互角かーと言った顔をして、その話は終わったらしかった。
「それで蒼真なんだけど」
不意にジョイスが話を戻してくる。
「翔が言うにはコントロールルームにいるんじゃないかって」
ジョイスの言葉を引き取って翔が続ける。
「俺を追って来たのなら、絶対にそこにいるはず…。多分蒼真は生きてここを出ようとは思っていないはずだから…」
少し俯く翔に圭吾は
「わかった…」
と頷いて、改めて翔に向きなおった。
「さっき『蒼真』の一部始終を目にしてきた。わかるな。彼をみていたら翔のことを思ったよ。きっと翔も同じような気持ちだったんだろう…本当にがんばったんだな」
そう言って翔の頭を抱きかかえた。
翔はその言葉に涙が溢れる。
「蒼真が逃がしてくれたから…俺は彼ほどじゃ…」
「そうか…でも、あの頑張りは、すごいぞ。俺には耐えられない。だから、蒼真は必ず助けるから…一緒にここを出ような」
ジョイスにはわかりかねる話だが、いつか圭吾が話してくれると信じて、翔を軽くでも抱きしめたことは許しやることにする。
「はい」
頷く翔を確認して、次にコントロールルームの場所を翔に尋ねた。
「さっき走ってた通路をまっすぐ行って、右に曲がったらその右側が全部コントロールルームになってます。ドアは多分さっき爆発してたから開いていると思うけど…」
思ったより近くまで来ていたものだ。カンだけを頼りにきたが、当たっていたことに少し驚いていた。
「じゃあジョイス…行ってくる」
「後方支援は任せとけ。絶対連れ帰れよ」
の言葉にー当たり前だーと答えて走って行った。
ハワードはゆるゆると這って来て、蒼真の足元までやってきた。
「あのピンクのチューブが、下の原子炉につながってるんでしょ?アレ撃ったらお終いだね」
ハワードが好んだ絶品の笑顔を浮かべて、蒼真は立ち上がる。
露出した内部がバチバチと火花を散らし、先ほど圭吾を映し出していた画面も白い煙を上げていた。
蒼真は這っているハワードに銃を向ける。
「それなりに楽しい人生だったよ。ここにいた時も逃げてる時も。作ってくれて感謝する。でももう終わりにするよ。すぐに後を追うから…待っててよ」
「蒼真!」
コンソールがいかれてしまった部屋のドアは、ロックなどは効かなかった。
開け放したドアの前に圭吾が立っていて、その声に蒼真は顔を向ける。
「迎えに来たぞ」
多分『あの部屋』で負った傷が顔や腕についていた。
圭吾はゆっくりと近づいてゆく。刺激をしないように、自棄にならないように。
「来る…な。早く逃げてくれ。今からここは原子炉が爆発する」
ハワードに銃口を向けたまま、蒼真は言う。
「一緒じゃなければ、俺は逃げない。翔もジョイスが助けたぞ。何を迷うことがある?」
「構うなよ!お前見ただろう…あれ…見たんだろ?だったら俺なんか構わないでさっさと逃げろよ!」
蒼真が叫んだ瞬間だった。
ズンッと床が揺れて、部屋の1番大きなCPUが爆発を起こした
「うわあああああっ!」
床の真ん中に急に大穴が開き、床に這っていたハワードはその穴に飲み込まれていく。
「蒼真!」
バランスを崩した蒼真もその穴に向かって滑っている。
下はこれから爆発しかねない原子炉の待つ奈落だ。
圭吾は走って手を伸ばし、床が下へと折れ曲がった箇所へ手をついてなんとか蒼真の手首を捕まえた。
折れた床はいつ落ちるともしれない微妙な均衡を保っており、青年男子2人分の体重に耐えうるかは賭けだった。
死のうと思っていたのだ。
圭吾の前からも消えようと決意していた。ハワードが地下に飲み込まれ、一緒に逝ってやろうと思ってたのに…圭吾が伸ばした手に縋ってしまった。
「蒼真…っ俺の手首を握れ、離すなよっ」
片手をついている床はゆらゆら揺れて、踏ん張りも効かない上に危うい。
弾みをつけて正規の床へ手をつき直せた圭吾は、蒼真を掴んでいる腕に力をこめて肘を曲げ、先ほどの折れた危うい床に蒼真の手を引っ掛けた。それも一瞬ですぐに両手で蒼真の片腕をつかみ、徐々に上半身を起こしながらゆっくりと引き上げ、蒼真の手が床から上に出たところで勢いよく引っ張り上げた。
引っ張り上げた圭吾は弾みで後ろに倒れ、その上に蒼真を抱き抱える。
腕が軋むように痛んだが、それよりも蒼真だ
「無事か、蒼真。怪我はないか…」
腕の中で身動ぐ蒼真を優しく離した。
「なんで…」
「助けたかなんて聞くな…。お前が1番よく解ってるはずだ」
と、起き上がって再び蒼真を抱きしめる。
「一緒に暮らそう…蒼真」
抱きしめた耳元で圭吾はそう告白した。自分の中で蒼真がどれだけ大きくなっていたか…今回それを痛感した。
本来こんなところで囁くことではないが、今言いたかった。
「ずっと…蒼真がいなくなってからずっと、考えてた。体から何かを半分無くしてしまったみたいだった。側に…いてくれ…」
「そんな資格は、俺には…」
「資格なんて関係ないぞ。俺が良くて、お前が良ければそれでいいんだ」
蒼真をより強く抱きしめる。
「圭吾…」
蒼真の声にはまだ戸惑いが消えない。
それも仕方のないことだ。
ここの…自分の秘密を知られてしまったこともあるが、蒼真は世界中の警察から目をつけられているバイオレットなのだ。自分なんかと一緒にいたら、続けたい仕事(特捜部の仕事)ができなくなってしまう。
自分のせいでそうなってしまうのも嫌だった。
「圭吾、俺…」
ーもう何も言うな…ーの意味なのだろう、圭吾はより強く蒼真を抱きしめる。
「あの、お楽しみのところ、非常に申し訳ないんですが…」
妙な口上で現れたのは、言わずもがなのジョイスだった。
「蒼真!」
圭吾から離れた蒼真に、今度は翔が飛び付く。
「ハワードは?」
「あの中に落ちた」
圭吾が指差した部屋の中の穴をジョイスが覗き込む。
「すげえ穴だな…」
ーこれじゃあ生きてないねー と翔が言い、蒼真も頷いた。
「とにかくでよう。原子炉がいつ暴発するかわからん」
って、そんなこと簡単に言う圭吾に
「原子炉が爆発したら、いくら逃げてもダメなんじゃないのか…?」
すごい不安そうにジョイスが振り向いた。それはそうである。それに蒼真が説明してくれた。
「うん…なんていうか、この4階は3階との間に5mの厚さの石板と6mの厚さの鉄板が施工してあって…っていうか4階全体がそんなのに囲まれてるから、内部爆発で外に漏れることは設計上はないことになってるんだ」
うん、まあ大丈夫なのなら…と納得するしかない3人。
「それなら尚更はやくでないと。いつまでもここにいたら巻き込まれる」
ジョイスは翔の手を取って走り出す。
「蒼真行こう」
圭吾の促しに、蒼真の足は動かない。
「蒼真?」
「俺、やっぱ行けないよ。俺はここで死んだ方が…」
パンッとそんなに痛くはなさそうだが、蒼真の頬が鳴った。
「圭吾…」
「お前のオリジナルに…会った」
爆音に気付き、圭吾はその音がした方へ向かった。何故だかそこに蒼真がいる様な気がする。
吐き気はまだ治らない。『蒼真』の最後の手の感触も手に残っている。『この部屋を破壊してほしい』それが『蒼真』の願いだった。しかし…と迷っていたところにあの科学者の話だ。知らずのうちに銃を撃っていた。
あのマッド野郎は流石に殺しはしなかったが、あの装置を壊したと言うことは殺人になるのか…。『蒼真』の生きる装置を断ったと言う事なのだから…。
警報が鳴り響く中を圭吾は走った。
さっきの爆音は一体どこなんだ。蒼真がそこにいると思うのはただのカンだが、もう、そのカンを信じていないとやっていられなかった。
一刻も早く蒼真に会いたかった。圭吾にとっての蒼真に会いたい。その想い一心だった。
「待て!」
後ろからようやく辿り着いたセキュリティが追って来る。
研究の性質と、地下4階と言う場所柄、彼らが大きな火器を使ってくる可能性はゼロに近い。
捕まるわけにはいかなかった。
「くそっどこだ!」
さっきの爆音の出どころを辿って走る。圭吾は本当にカンだけを頼りに走り続けていた。
気付いたのは蒼真の方が早かった。
打った頭のせいで意識はちょっとだけ朦朧としているが、自分より少し離れたところにハワードが倒れているのが確認できるほどには回復している。
蒼真は銃をあげて再びシステム全体に弾を撃ち込んだ。
「何をしているんだ!やめろ」
ハワードも気づいたのか、這う様にして蒼真の方へ向かってくる。
「安心していいぜ。最後から2発目であんたもシステムと一緒に殺してやるから」
最後の一発で自分も死ぬとは言わなかったが。
「しつこいな」
走り回る圭吾をセキュリティは的確に追ってくる。中にはロボットもいるから、位置もきっとバレバレなんだろうなと思うがそう思うと気が削がれるので、とりあえず走った。
しかしこのままでは、逃げることが精一杯で蒼真を探すことなんかできやしない。
「前からもか…」
前方に十字路があり、足音の感覚だと右手の方からやってくるようだ。
どうする…一気に抜けるか…それとも…
考えが纏まらないまま十字路へ来てしまい、その時は叩きのめそう!と決めて十字路へ入る、
「うわっ!」
その途端腕を掴まれ、左路地に引き込まれた。
捕まったと思い、圭吾は掴まれた腕を反対方向に振り切り、その肘で相手に一撃を喰らわそうとして肘を思い切り横に引いた瞬間、相手が両腕をクロスして防御して来た。一瞬のうちに使えるやつに会っちまったな真剣にやらないと、と思い至り反対の手で拳を作りクロスした手の下から顎を打ちに行こうとしたときに
「俺だよおれ!圭吾!打つな!!」
ブロックした手のうち一本は、即座に腹のあたりでちゃんと手のひらを下向きに第二波を抑える動きまでしていて、ジョイスはー勘弁してくれよ~ーと、動きの止まった圭吾の拳を握った。
「しかもそれどころじゃないんだよね」
手を離してすぐにしゃがみこみ壁を盾にして、やってくる追っ手の足に的確にレーザーを打ち込む作業中だった。
忙しいんだな…と加勢をしながら、圭吾は傍に座っている翔にやっと気づく。
「翔!無事だったのか!よかった!」
ハグをしている暇はなかったが、心底嬉しかった。
「はい。助けてもらいました」
追手は大方通路に転がって動けなくなった。
「少し一息入れられるぜ…」
ジョイスはポケットからキャンディーを出して翔に一つ渡し、圭吾にも要る?と聞いてきた。
「いや、いい。しかしさっきから気になっていたんだが、何故急にそんなのを舐め始めた?」
「もう成就したからいうけど、翔を助けるまでたばこ断ちしてた」
乙女でしょ?と笑っているが、ジョイスの表情は達成感で満ちていた。もらった飴を口に入れ、美味しいと笑う翔も表情が今までと全く違う。
圭吾は、蒼真も早くこんな顔して笑って欲しいもんだ…と考える。
「それにしても圭吾さっきの肘鉄本気だっただろ」
飴をカラコロ言わせて銃のカートリッジを替えながらジョイスが言う。
「そりゃあ…捕まったと思ったからな。一撃でのしておかないと、後々面倒だし。お前こそあれをよく止めたな。それに第二波の防御まで見事だった」
2人は顔を見合わせ、ーっち、まだ互角かーと言った顔をして、その話は終わったらしかった。
「それで蒼真なんだけど」
不意にジョイスが話を戻してくる。
「翔が言うにはコントロールルームにいるんじゃないかって」
ジョイスの言葉を引き取って翔が続ける。
「俺を追って来たのなら、絶対にそこにいるはず…。多分蒼真は生きてここを出ようとは思っていないはずだから…」
少し俯く翔に圭吾は
「わかった…」
と頷いて、改めて翔に向きなおった。
「さっき『蒼真』の一部始終を目にしてきた。わかるな。彼をみていたら翔のことを思ったよ。きっと翔も同じような気持ちだったんだろう…本当にがんばったんだな」
そう言って翔の頭を抱きかかえた。
翔はその言葉に涙が溢れる。
「蒼真が逃がしてくれたから…俺は彼ほどじゃ…」
「そうか…でも、あの頑張りは、すごいぞ。俺には耐えられない。だから、蒼真は必ず助けるから…一緒にここを出ような」
ジョイスにはわかりかねる話だが、いつか圭吾が話してくれると信じて、翔を軽くでも抱きしめたことは許しやることにする。
「はい」
頷く翔を確認して、次にコントロールルームの場所を翔に尋ねた。
「さっき走ってた通路をまっすぐ行って、右に曲がったらその右側が全部コントロールルームになってます。ドアは多分さっき爆発してたから開いていると思うけど…」
思ったより近くまで来ていたものだ。カンだけを頼りにきたが、当たっていたことに少し驚いていた。
「じゃあジョイス…行ってくる」
「後方支援は任せとけ。絶対連れ帰れよ」
の言葉にー当たり前だーと答えて走って行った。
ハワードはゆるゆると這って来て、蒼真の足元までやってきた。
「あのピンクのチューブが、下の原子炉につながってるんでしょ?アレ撃ったらお終いだね」
ハワードが好んだ絶品の笑顔を浮かべて、蒼真は立ち上がる。
露出した内部がバチバチと火花を散らし、先ほど圭吾を映し出していた画面も白い煙を上げていた。
蒼真は這っているハワードに銃を向ける。
「それなりに楽しい人生だったよ。ここにいた時も逃げてる時も。作ってくれて感謝する。でももう終わりにするよ。すぐに後を追うから…待っててよ」
「蒼真!」
コンソールがいかれてしまった部屋のドアは、ロックなどは効かなかった。
開け放したドアの前に圭吾が立っていて、その声に蒼真は顔を向ける。
「迎えに来たぞ」
多分『あの部屋』で負った傷が顔や腕についていた。
圭吾はゆっくりと近づいてゆく。刺激をしないように、自棄にならないように。
「来る…な。早く逃げてくれ。今からここは原子炉が爆発する」
ハワードに銃口を向けたまま、蒼真は言う。
「一緒じゃなければ、俺は逃げない。翔もジョイスが助けたぞ。何を迷うことがある?」
「構うなよ!お前見ただろう…あれ…見たんだろ?だったら俺なんか構わないでさっさと逃げろよ!」
蒼真が叫んだ瞬間だった。
ズンッと床が揺れて、部屋の1番大きなCPUが爆発を起こした
「うわあああああっ!」
床の真ん中に急に大穴が開き、床に這っていたハワードはその穴に飲み込まれていく。
「蒼真!」
バランスを崩した蒼真もその穴に向かって滑っている。
下はこれから爆発しかねない原子炉の待つ奈落だ。
圭吾は走って手を伸ばし、床が下へと折れ曲がった箇所へ手をついてなんとか蒼真の手首を捕まえた。
折れた床はいつ落ちるともしれない微妙な均衡を保っており、青年男子2人分の体重に耐えうるかは賭けだった。
死のうと思っていたのだ。
圭吾の前からも消えようと決意していた。ハワードが地下に飲み込まれ、一緒に逝ってやろうと思ってたのに…圭吾が伸ばした手に縋ってしまった。
「蒼真…っ俺の手首を握れ、離すなよっ」
片手をついている床はゆらゆら揺れて、踏ん張りも効かない上に危うい。
弾みをつけて正規の床へ手をつき直せた圭吾は、蒼真を掴んでいる腕に力をこめて肘を曲げ、先ほどの折れた危うい床に蒼真の手を引っ掛けた。それも一瞬ですぐに両手で蒼真の片腕をつかみ、徐々に上半身を起こしながらゆっくりと引き上げ、蒼真の手が床から上に出たところで勢いよく引っ張り上げた。
引っ張り上げた圭吾は弾みで後ろに倒れ、その上に蒼真を抱き抱える。
腕が軋むように痛んだが、それよりも蒼真だ
「無事か、蒼真。怪我はないか…」
腕の中で身動ぐ蒼真を優しく離した。
「なんで…」
「助けたかなんて聞くな…。お前が1番よく解ってるはずだ」
と、起き上がって再び蒼真を抱きしめる。
「一緒に暮らそう…蒼真」
抱きしめた耳元で圭吾はそう告白した。自分の中で蒼真がどれだけ大きくなっていたか…今回それを痛感した。
本来こんなところで囁くことではないが、今言いたかった。
「ずっと…蒼真がいなくなってからずっと、考えてた。体から何かを半分無くしてしまったみたいだった。側に…いてくれ…」
「そんな資格は、俺には…」
「資格なんて関係ないぞ。俺が良くて、お前が良ければそれでいいんだ」
蒼真をより強く抱きしめる。
「圭吾…」
蒼真の声にはまだ戸惑いが消えない。
それも仕方のないことだ。
ここの…自分の秘密を知られてしまったこともあるが、蒼真は世界中の警察から目をつけられているバイオレットなのだ。自分なんかと一緒にいたら、続けたい仕事(特捜部の仕事)ができなくなってしまう。
自分のせいでそうなってしまうのも嫌だった。
「圭吾、俺…」
ーもう何も言うな…ーの意味なのだろう、圭吾はより強く蒼真を抱きしめる。
「あの、お楽しみのところ、非常に申し訳ないんですが…」
妙な口上で現れたのは、言わずもがなのジョイスだった。
「蒼真!」
圭吾から離れた蒼真に、今度は翔が飛び付く。
「ハワードは?」
「あの中に落ちた」
圭吾が指差した部屋の中の穴をジョイスが覗き込む。
「すげえ穴だな…」
ーこれじゃあ生きてないねー と翔が言い、蒼真も頷いた。
「とにかくでよう。原子炉がいつ暴発するかわからん」
って、そんなこと簡単に言う圭吾に
「原子炉が爆発したら、いくら逃げてもダメなんじゃないのか…?」
すごい不安そうにジョイスが振り向いた。それはそうである。それに蒼真が説明してくれた。
「うん…なんていうか、この4階は3階との間に5mの厚さの石板と6mの厚さの鉄板が施工してあって…っていうか4階全体がそんなのに囲まれてるから、内部爆発で外に漏れることは設計上はないことになってるんだ」
うん、まあ大丈夫なのなら…と納得するしかない3人。
「それなら尚更はやくでないと。いつまでもここにいたら巻き込まれる」
ジョイスは翔の手を取って走り出す。
「蒼真行こう」
圭吾の促しに、蒼真の足は動かない。
「蒼真?」
「俺、やっぱ行けないよ。俺はここで死んだ方が…」
パンッとそんなに痛くはなさそうだが、蒼真の頬が鳴った。
「圭吾…」
「お前のオリジナルに…会った」
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる